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第十七話 サバイバル
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第十七話 サバイバル
あれから谷垣はマタギの知恵を大いに使って、尾形一行を撒いた。
とはいえ、手負いであることには変わりがない。
隙をついて谷垣を仕留めるべく、尾形たちは冬山の中で火も起こさずに隠れていた。
ぶるぶると夢主が震える。
唇が紫になりつつあった。
「さ…寒い……。」
「来い。」
尾形は夢主を呼び寄せると、自分の足の間に座らせ、その上から外套で覆う。
二人羽織のような状態だ。
「あの、尾形さんこれ……物凄く恥ずかしいんですけど。」
「お前は俺の湯たんぽだ。」
「夢主さんだけずるい。いやむしろ尾形がずるい。」
くっついている二人に、二階堂は鼻水を垂らしながら抗議した。
「女は体を冷やしちゃいけねーんだと。バアチャンがよく言ってた。」
そう尾形は言う。
本気か冗談か夢主には理解できなかったが、尾形なりの優しさだろう。
動きにくいだろうが、用心深く尾形は銃をいつでも構えられるように持っている。
これは万が一谷垣が見つかったとき、銃を構える際に邪魔になるからその時は蹴り飛ばされるのでは、と夢主は考えていた。
事態が動いたのは夜が明けてからだった。
焚火の煙が見えたのだ。
尾形に包まれるようにして寝ていた夢主は二階堂に乱暴に起こされて若干不機嫌だった。
「こんな状況でマタギの谷垣さんが焚火なんかするわけないじゃないですか。」
「二階堂、行って調べてこい。谷垣の足跡であれば合図しろ。」
「エサですか俺は。」
そう文句を言いつつも、焚火の近くまで行った二階堂。
夢主は念のため銃を構えていた。
足跡は谷垣のものであったようで、二階堂は合図をした。
シカが転がっているすぐ横の焚火で二階堂が暖をとっていると、ヒグマが恐ろしい勢いで二階堂の後頭部に爪を立てて殴った。
「ヒグマ……!」
夢主が撃とうとすると、尾形が止める。
「撃つと発砲炎で居場所がバレる。」
「でも二階堂さんが……!」
夢主は狼狽えた。
尾形は撃つのをためらっている様子で、その間にも二階堂が撃て!と必死に叫んでいた。
もう限界だ、という瞬間に尾形は一発撃つ。
ヒグマはギャーッと悲鳴を上げて逃げた。
そして尾形は両手を広げて立ち上がる。
「さあ俺はここだぜ谷垣!!銃なしでどう戦う?石でも投げるか?」
「だめです尾形さん!身を隠して……」
夢主が尾形を座らせようとするも、次の瞬間にはドッと尾形の体は衝撃を受けて仰向けに倒れた。
「尾形さん……ッ!!」
夢主は尾形の体を一旦茂みに隠す。
そして出血した所を見ようとしていると、意識のないはずの尾形の手が夢主の頭を押さえて自分の胸に抱きよせる。
トクン、トクンと規則正しく心臓の音が聞こえてきて夢主はほっとする。
とはいえ谷垣が銃を持っているのは予想外で、突然のことに唖然としていると谷垣がいた方からわずかに人の気配がして、距離はあるはずなのに夢主は咄嗟に息を殺した。
「……三島さんだ。」
「お前、耳がいいな。」
けほ、と小さく咳き込んで尾形が起き上がる。
撃たれたはずの胸元からは出血はなく、双眼鏡がバリバリに割れて落ちてきた。
「ふぇ……尾形さん。死んじゃったかと思った。」
「泣くな泣くな。ちょっと三島片付けるわ。」
夢主の頭をわしわしと撫でた尾形は、何度か咳き込みながら照準を合わせて三島の脳天を撃つ。
尾形が生きていることに気付いた谷垣が動く前に、尾形の足元に銃弾が撃ち込まれる。
「伏せろ。」
尾形が夢主を地面にうつぶせに倒して、そのまま匍匐前進の要領で身を隠しながら逃げる。
「早いな。勘が良すぎる。」
「……鶴見中尉だ。二階堂さんは、置いていくしかないですね。」
二人で銃弾を避けながら進む。
その後ろから鶴見中尉の声が聞こえてくる。
「尾形の頭を撃ち抜いてよーし!夢主くんは傷つけないで捕まえろ!」
「そんな無茶苦茶な。」
思わずツッコミを入れた夢主。
こうして、谷垣を追う理由もなくなった二人はそのまま森へと姿を消した。
【あとがき:ここから茨戸の日泥馬吉までしばらくオリジナル入ります。どうぞよろしく。】
あれから谷垣はマタギの知恵を大いに使って、尾形一行を撒いた。
とはいえ、手負いであることには変わりがない。
隙をついて谷垣を仕留めるべく、尾形たちは冬山の中で火も起こさずに隠れていた。
ぶるぶると夢主が震える。
唇が紫になりつつあった。
「さ…寒い……。」
「来い。」
尾形は夢主を呼び寄せると、自分の足の間に座らせ、その上から外套で覆う。
二人羽織のような状態だ。
「あの、尾形さんこれ……物凄く恥ずかしいんですけど。」
「お前は俺の湯たんぽだ。」
「夢主さんだけずるい。いやむしろ尾形がずるい。」
くっついている二人に、二階堂は鼻水を垂らしながら抗議した。
「女は体を冷やしちゃいけねーんだと。バアチャンがよく言ってた。」
そう尾形は言う。
本気か冗談か夢主には理解できなかったが、尾形なりの優しさだろう。
動きにくいだろうが、用心深く尾形は銃をいつでも構えられるように持っている。
これは万が一谷垣が見つかったとき、銃を構える際に邪魔になるからその時は蹴り飛ばされるのでは、と夢主は考えていた。
事態が動いたのは夜が明けてからだった。
焚火の煙が見えたのだ。
尾形に包まれるようにして寝ていた夢主は二階堂に乱暴に起こされて若干不機嫌だった。
「こんな状況でマタギの谷垣さんが焚火なんかするわけないじゃないですか。」
「二階堂、行って調べてこい。谷垣の足跡であれば合図しろ。」
「エサですか俺は。」
そう文句を言いつつも、焚火の近くまで行った二階堂。
夢主は念のため銃を構えていた。
足跡は谷垣のものであったようで、二階堂は合図をした。
シカが転がっているすぐ横の焚火で二階堂が暖をとっていると、ヒグマが恐ろしい勢いで二階堂の後頭部に爪を立てて殴った。
「ヒグマ……!」
夢主が撃とうとすると、尾形が止める。
「撃つと発砲炎で居場所がバレる。」
「でも二階堂さんが……!」
夢主は狼狽えた。
尾形は撃つのをためらっている様子で、その間にも二階堂が撃て!と必死に叫んでいた。
もう限界だ、という瞬間に尾形は一発撃つ。
ヒグマはギャーッと悲鳴を上げて逃げた。
そして尾形は両手を広げて立ち上がる。
「さあ俺はここだぜ谷垣!!銃なしでどう戦う?石でも投げるか?」
「だめです尾形さん!身を隠して……」
夢主が尾形を座らせようとするも、次の瞬間にはドッと尾形の体は衝撃を受けて仰向けに倒れた。
「尾形さん……ッ!!」
夢主は尾形の体を一旦茂みに隠す。
そして出血した所を見ようとしていると、意識のないはずの尾形の手が夢主の頭を押さえて自分の胸に抱きよせる。
トクン、トクンと規則正しく心臓の音が聞こえてきて夢主はほっとする。
とはいえ谷垣が銃を持っているのは予想外で、突然のことに唖然としていると谷垣がいた方からわずかに人の気配がして、距離はあるはずなのに夢主は咄嗟に息を殺した。
「……三島さんだ。」
「お前、耳がいいな。」
けほ、と小さく咳き込んで尾形が起き上がる。
撃たれたはずの胸元からは出血はなく、双眼鏡がバリバリに割れて落ちてきた。
「ふぇ……尾形さん。死んじゃったかと思った。」
「泣くな泣くな。ちょっと三島片付けるわ。」
夢主の頭をわしわしと撫でた尾形は、何度か咳き込みながら照準を合わせて三島の脳天を撃つ。
尾形が生きていることに気付いた谷垣が動く前に、尾形の足元に銃弾が撃ち込まれる。
「伏せろ。」
尾形が夢主を地面にうつぶせに倒して、そのまま匍匐前進の要領で身を隠しながら逃げる。
「早いな。勘が良すぎる。」
「……鶴見中尉だ。二階堂さんは、置いていくしかないですね。」
二人で銃弾を避けながら進む。
その後ろから鶴見中尉の声が聞こえてくる。
「尾形の頭を撃ち抜いてよーし!夢主くんは傷つけないで捕まえろ!」
「そんな無茶苦茶な。」
思わずツッコミを入れた夢主。
こうして、谷垣を追う理由もなくなった二人はそのまま森へと姿を消した。
【あとがき:ここから茨戸の日泥馬吉までしばらくオリジナル入ります。どうぞよろしく。】