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第十話 訓練の日々
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第十話 訓練の日々
実は最近、調子が良いです。
というのは、稽古をつけてもらってから体が活き活きとしているのが分かる。
意識的に動くことがこんなにも気晴らしになるなんて……と、とても晴れやかな気持ちだ。
月島さんは組手や護身術のようなものを教えてくださった。
やはり男性に比べれば小柄な私は敵の標的になりやすいということで、男の中でも小柄な方らしい月島さんが教えてくれるのだが、月島さんは身長など問題ではない。まじでガチマッチョの筋肉質だ。
私は恐らく世の男性のほとんどに対して力ではどうしても敵わないので、相手の急所を的確に狙うことや、確実に相手の動きを止める術を教えてくださった。
そしてその合間にロシア語もたくさん教えてくれた。
リスニングがあると理解のスピードが大分違って、イントネーションがわかっただけでもかなり勉強が進んだ。
月島さんはたまに、私を素で褒めてくれる。いつも堅苦しいくらいに礼儀正しく丁寧な彼が少し崩れた言葉や表情を見せるとき、少し私はほっとしてしまう。
鯉登さんは最初は私の服装に文句があったようだが、鶴見中尉がくださったと言うと途端に何も言わなくなった。
そして彼は薩摩の示現流を主体にしつつ、剣術の他に彼の得意な軽やかな身のこなしを教えてくれた。
剣術はさすがに一朝一夕には身につかなかったが、最初と比べればそれでも大分成長したと思う。
それと彼から教わったバランス感覚や身のこなしは、いずれきっと役に立つだろう。
彼曰く私もどちらかといえば体幹が良い方らしく、身のこなしは徹底的に教わった。
鯉登さんは私に好意でもあるのだろうか、それとも鶴見中尉にこういうことを逐一報告して好感度を上げろということだろうか。頻繁に何かしら手土産をくださる。
可愛らしいお花やブローチなど、私には勿体ないものばかりで、なんだか恐縮だった。
一応鶴見中尉の好感度をあげるためにその都度鶴見中尉に報告したけれど、仲良くやっているようなら良いとそれだけだった……力になれずごめんよ鯉登さん。
そしてたまーに、本当に稀に、尾形さんが銃の扱いを教えてくれる。
私たちがあまり近くにいすぎると怪しまれるとのことで、最初は尾形さんは私から逃げまくっていたのだが、ある日「避けすぎても不自然ですよ!」と叫ぶと能面のような顔をして私の方に歩み寄ってきてくれた。
その後、低い声で「全部バラすぞ未来人。」と脅されたけれども。
私の体格を考えると三十年式歩兵銃はもしかしたら大きすぎるかもしれないと尾形さんは渋い表情をしていたが、その後拳銃をどこかからもらってきて、拳銃と歩兵銃の二つを扱うことになった。
そういうときはなんだかんだで優しい尾形さんだが、指導はそれはそれは厳しく、涙目になりながらも必死で頑張った。
銃は剣よりは扱いやすいものの、正確な射撃を目指すとなるとかなり難しい。
ゲーム感覚で出来るもんじゃないな……と感じたが、言い訳をしている暇はない。
尾形さんと今後行動するためにはきっと人並み以上に動けなければいけない。
足手まといだと置いていかれるのは御免だ。
鶴見中尉は時折私を兵舎から連れ出した。
兵舎の中で引きこもって仕事や訓練ばかりでは頭がおかしくなるだろう、とのことだった。
いや、もう十分すぎるくらい狂ってしまっていると思います。
既に元の世界に帰るよりも、今はここで何かを成し遂げたくて仕方がないので。……などとこっそりと野望を抱いている。
そんな私に気付いていないのか、「たまには年頃の少女らしく買い物とかどうかな。」と話しかけてくる中尉は相変わらず紳士だ。
今の私があるのは中尉のおかげなので、なるべく鶴見中尉の喜ぶことをしたいと先回りして打算的に考えていた。
ある日、私がロシア語を学んでいることを月島さんから聞いたのだろう、「何か知りたいことがあるのかね?」と聞いてきた鶴見中尉の視線が鋭くて、ぞくりと悪寒がした。
せっかく北海道にいるのでついでに海外の寒いの国の読みたい文学がある、ということにしたが、鶴見中尉は信じてくれただろうか。
私があの日、読んだアイヌの埋蔵金についてはバレていないだろうか?
ドキドキしていると、なんと鶴見中尉の方から日本にだって面白いお話がある、とアイヌの金塊の話をもちかけられた。
これは好都合。
私はごく自然になるよう驚いた演技をした。
「そ、それは本当のお話なのですか?」
「ううぅん、本当だろうねえ。私は信用できる部下を使って刺青の囚人を探してるところだから、見つかれば現実味を帯びるよね。」
鶴見中尉は髭を撫でつけて何か考え込んでいる。
「……そうだ。夢主くんも、街に買い出しに行ったりするとき、聞いて回ってくれないかな?キミなら街の人もそんなに警戒しないだろう。」
「私で良ければ……協力いたします。」
「良かった、やはり軍の人間だと一部の街の人間は警戒しちゃってねえ。夢主くんなら皆もう心を開いてくれているだろう?」
「お力になれると良いのですが。」
ぐ、と拳を握った。
これで堂々と金塊を探る行動ができる。
鶴見中尉は嬉しそうにうんうん、と頷いていた。
それからは聞き込みをしたり(とはいえ街の人はいつもと変わりがないようだったので収穫はなかったが)、訓練をつけてもらったりと勉強と修行の日々だった。
気付けば季節が冬になって、色々な訓練を積んできた私にも一般人よりは様々な力がついてきたと思う。
いつ抜け出すと言われるかとビクビクしていたが、尾形さんや造反を企てている人たちは特に変わりはなかった。
そういえば最近、二階堂兄弟の2人とは少し話すようになったけれども、2人でいつもくっついているので私が入ると二人は少し不満そうにするので、なんだか微妙な距離感を保っていた。
そのうち、瓜二つの二人の違いが私にはわかるようになってきた。
そして時折、鶴見中尉、月島さん、鯉登さんと一緒に任務に行くことが増えた。
正当な兵士ではないので、女中を連れまわすと噂になるからという理由で仮装させているという名目だった。
それで誤魔化されるのが不思議であったが、鶴見中尉があちこちに根回ししているのだろうと予想する。
ちなみに大体このメンバーで動くときは、上層部に行くときだ。
同行しているうちに鶴見中尉が上から危険視されている理由も、少し納得がいってしまった。
周りにこびない態度、過激さ、危険さはむしろ反乱分子レベルだろう。
まあ、鶴見中尉が戦争の功績をないことにされて黙っているわけがないから、警戒するのも当然だけど……。
私は3人の身の回りの世話をしながら道中をフォローするのが仕事のはずだが、なぜかこの人たちは兵舎にいるときよりも私を甘やかそうとする。
少し豪華なものを食べに寄ったり、頻繁にお菓子やお土産を買いに行って寄り道ばかりしてこの間は約束していた相手に怒られてしまった。
でも鶴見中尉は何やら私のこと使って(記憶喪失で云々)、お偉いさんに気に入られたりと上手いことやっているようだった。
ただ一緒にいるだけで役に立てるならこんなに楽なことはないので、私は何も知らないふりをした。
尾形さんはこのように中尉たちと行動をする私をどう思っているのだろうか?
様子を伺っても特に興味はなさそうだったので、私は考えるのをやめた。
ただでさえ感情の変化が乏しい人だ、私には到底わからない。
引き続き私はロシア語の勉強と訓練だけ頑張ることにした。
【あとがき:次からやっと本編です。長らくお付き合いありがとうございました。またしばらくしたらオリジナル挟むと思います。どうぞよろしく。】
実は最近、調子が良いです。
というのは、稽古をつけてもらってから体が活き活きとしているのが分かる。
意識的に動くことがこんなにも気晴らしになるなんて……と、とても晴れやかな気持ちだ。
月島さんは組手や護身術のようなものを教えてくださった。
やはり男性に比べれば小柄な私は敵の標的になりやすいということで、男の中でも小柄な方らしい月島さんが教えてくれるのだが、月島さんは身長など問題ではない。まじでガチマッチョの筋肉質だ。
私は恐らく世の男性のほとんどに対して力ではどうしても敵わないので、相手の急所を的確に狙うことや、確実に相手の動きを止める術を教えてくださった。
そしてその合間にロシア語もたくさん教えてくれた。
リスニングがあると理解のスピードが大分違って、イントネーションがわかっただけでもかなり勉強が進んだ。
月島さんはたまに、私を素で褒めてくれる。いつも堅苦しいくらいに礼儀正しく丁寧な彼が少し崩れた言葉や表情を見せるとき、少し私はほっとしてしまう。
鯉登さんは最初は私の服装に文句があったようだが、鶴見中尉がくださったと言うと途端に何も言わなくなった。
そして彼は薩摩の示現流を主体にしつつ、剣術の他に彼の得意な軽やかな身のこなしを教えてくれた。
剣術はさすがに一朝一夕には身につかなかったが、最初と比べればそれでも大分成長したと思う。
それと彼から教わったバランス感覚や身のこなしは、いずれきっと役に立つだろう。
彼曰く私もどちらかといえば体幹が良い方らしく、身のこなしは徹底的に教わった。
鯉登さんは私に好意でもあるのだろうか、それとも鶴見中尉にこういうことを逐一報告して好感度を上げろということだろうか。頻繁に何かしら手土産をくださる。
可愛らしいお花やブローチなど、私には勿体ないものばかりで、なんだか恐縮だった。
一応鶴見中尉の好感度をあげるためにその都度鶴見中尉に報告したけれど、仲良くやっているようなら良いとそれだけだった……力になれずごめんよ鯉登さん。
そしてたまーに、本当に稀に、尾形さんが銃の扱いを教えてくれる。
私たちがあまり近くにいすぎると怪しまれるとのことで、最初は尾形さんは私から逃げまくっていたのだが、ある日「避けすぎても不自然ですよ!」と叫ぶと能面のような顔をして私の方に歩み寄ってきてくれた。
その後、低い声で「全部バラすぞ未来人。」と脅されたけれども。
私の体格を考えると三十年式歩兵銃はもしかしたら大きすぎるかもしれないと尾形さんは渋い表情をしていたが、その後拳銃をどこかからもらってきて、拳銃と歩兵銃の二つを扱うことになった。
そういうときはなんだかんだで優しい尾形さんだが、指導はそれはそれは厳しく、涙目になりながらも必死で頑張った。
銃は剣よりは扱いやすいものの、正確な射撃を目指すとなるとかなり難しい。
ゲーム感覚で出来るもんじゃないな……と感じたが、言い訳をしている暇はない。
尾形さんと今後行動するためにはきっと人並み以上に動けなければいけない。
足手まといだと置いていかれるのは御免だ。
鶴見中尉は時折私を兵舎から連れ出した。
兵舎の中で引きこもって仕事や訓練ばかりでは頭がおかしくなるだろう、とのことだった。
いや、もう十分すぎるくらい狂ってしまっていると思います。
既に元の世界に帰るよりも、今はここで何かを成し遂げたくて仕方がないので。……などとこっそりと野望を抱いている。
そんな私に気付いていないのか、「たまには年頃の少女らしく買い物とかどうかな。」と話しかけてくる中尉は相変わらず紳士だ。
今の私があるのは中尉のおかげなので、なるべく鶴見中尉の喜ぶことをしたいと先回りして打算的に考えていた。
ある日、私がロシア語を学んでいることを月島さんから聞いたのだろう、「何か知りたいことがあるのかね?」と聞いてきた鶴見中尉の視線が鋭くて、ぞくりと悪寒がした。
せっかく北海道にいるのでついでに海外の寒いの国の読みたい文学がある、ということにしたが、鶴見中尉は信じてくれただろうか。
私があの日、読んだアイヌの埋蔵金についてはバレていないだろうか?
ドキドキしていると、なんと鶴見中尉の方から日本にだって面白いお話がある、とアイヌの金塊の話をもちかけられた。
これは好都合。
私はごく自然になるよう驚いた演技をした。
「そ、それは本当のお話なのですか?」
「ううぅん、本当だろうねえ。私は信用できる部下を使って刺青の囚人を探してるところだから、見つかれば現実味を帯びるよね。」
鶴見中尉は髭を撫でつけて何か考え込んでいる。
「……そうだ。夢主くんも、街に買い出しに行ったりするとき、聞いて回ってくれないかな?キミなら街の人もそんなに警戒しないだろう。」
「私で良ければ……協力いたします。」
「良かった、やはり軍の人間だと一部の街の人間は警戒しちゃってねえ。夢主くんなら皆もう心を開いてくれているだろう?」
「お力になれると良いのですが。」
ぐ、と拳を握った。
これで堂々と金塊を探る行動ができる。
鶴見中尉は嬉しそうにうんうん、と頷いていた。
それからは聞き込みをしたり(とはいえ街の人はいつもと変わりがないようだったので収穫はなかったが)、訓練をつけてもらったりと勉強と修行の日々だった。
気付けば季節が冬になって、色々な訓練を積んできた私にも一般人よりは様々な力がついてきたと思う。
いつ抜け出すと言われるかとビクビクしていたが、尾形さんや造反を企てている人たちは特に変わりはなかった。
そういえば最近、二階堂兄弟の2人とは少し話すようになったけれども、2人でいつもくっついているので私が入ると二人は少し不満そうにするので、なんだか微妙な距離感を保っていた。
そのうち、瓜二つの二人の違いが私にはわかるようになってきた。
そして時折、鶴見中尉、月島さん、鯉登さんと一緒に任務に行くことが増えた。
正当な兵士ではないので、女中を連れまわすと噂になるからという理由で仮装させているという名目だった。
それで誤魔化されるのが不思議であったが、鶴見中尉があちこちに根回ししているのだろうと予想する。
ちなみに大体このメンバーで動くときは、上層部に行くときだ。
同行しているうちに鶴見中尉が上から危険視されている理由も、少し納得がいってしまった。
周りにこびない態度、過激さ、危険さはむしろ反乱分子レベルだろう。
まあ、鶴見中尉が戦争の功績をないことにされて黙っているわけがないから、警戒するのも当然だけど……。
私は3人の身の回りの世話をしながら道中をフォローするのが仕事のはずだが、なぜかこの人たちは兵舎にいるときよりも私を甘やかそうとする。
少し豪華なものを食べに寄ったり、頻繁にお菓子やお土産を買いに行って寄り道ばかりしてこの間は約束していた相手に怒られてしまった。
でも鶴見中尉は何やら私のこと使って(記憶喪失で云々)、お偉いさんに気に入られたりと上手いことやっているようだった。
ただ一緒にいるだけで役に立てるならこんなに楽なことはないので、私は何も知らないふりをした。
尾形さんはこのように中尉たちと行動をする私をどう思っているのだろうか?
様子を伺っても特に興味はなさそうだったので、私は考えるのをやめた。
ただでさえ感情の変化が乏しい人だ、私には到底わからない。
引き続き私はロシア語の勉強と訓練だけ頑張ることにした。
【あとがき:次からやっと本編です。長らくお付き合いありがとうございました。またしばらくしたらオリジナル挟むと思います。どうぞよろしく。】