雨上がりの虹
『注意事項が、何個かあるんだ。
あ、それと生まれるまでの時間は少し早送りさせてもらうね』
たゆたう時の中で、優しい声がいくつも落ちていく。
『生まれてすぐ死なれでもしたら意味がないから、運命の発動は君が魔法を使えるようになってからにしようか。
多少の猶予がないと抗うこともできないし』
ーーー女の子かしら、男の子かしら?
ーーーどちらでも。僕達の子だもの、きっと愛しいよ
『一生分の運命を凝縮したから、きっとそんなに長い期間ではないよ。
そうだな、子供の時だけの運命、くらいの短さだよ。その分、少し激しめな運命になってしまったけれどね』
ーーー楽しみ。ゆっくり、大きくなって
ーーー僕は早く会いたいよ
『君が成長し大人になるまでに、その運命に打ち勝てるとボクは願うよ』
ーーーもうそろそろね、まだかしら
ーーーそうだね、もう出てきてもいいよ・・・
『どうか生き延びて、夜明けの子』
ーーーんぁぁぁぁああぁぁんぁーー!
女性の甲高い悲鳴が聞こえると、徐々に苦しくなってきた。
充分に息が吸えないうちに、水に潜っているみたい。
狭いし、熱い。あ、なんか眩しくなってきた。
「!!!・・・ほぁぁ、ほぁぁ」
ぼんやりとだが、自分を支える大きな手が見える。
あぁ、私は産まれたのか・・・。
息をするだけで苦しいとは、赤子はとても大変だな、と他人事のように感じていた。
ぼんやりとした視界が徐々にピントが合ってくる。
柔らかいタオルにくるまれ、私は誰かに抱き締められた感覚がした。
「はぁ、はぁ・・・初めまして、可愛い子」
ゆらゆらと動かされ、心地がいい。
たゆたう時で聞いた高い声、きっと彼女が母親。
「もう見えているのかな?僕がお父さんだよ」
もうひとつ、高い声とは違う自分に話しかけていた声。
嬉しそうに私の顔を覗きこむこの人が父親か。
二人の顔を見て、私はとても嬉しくなった。
お父さん、お母さん。私の、血の繋がった本当の両親。
前の私が焦がれ諦めたものだ。
「ほぁぁ、ほぁぁぁぁぁん」
顔を真っ赤にして私は泣いた。
凄く、嬉しかったから。