夜明けと神
「やっほー、カノ・エルウィングさん。人生お疲れ様でしたー」
ぼんやりとした意識が、突如はっきりとしたものに変わった。
前に意識を向けると、親しみやすい雰囲気をだした男が居た。
あぁ彼は神だ。と何故か急に理解した。
ここは天界で、彼は神で、私は死んで此処に戻ってきた。
「そそ、君は死んで、魂の洗浄をされ、またレストピアに戻って行く、はずだったよ」
(そ、う、でしたね。そうやって世界は魂の循環をしていてー・・・でも、なぜですか?)
「カノ・エルウィングの意識のままなのかって?
それはねー、ちょっと頼み事があってさー、厄介な頼み事なんだけども」
神は横を向き、空間に手を突っ込み引き抜くと、その手には割れかけのシャボン玉みたいな球を持っていた。
本能的に、なんだか嫌な感じはする。
「これは運命。誰かの、てわけじゃない。
運命を作る神が、ちょっと前に代替わりしてさー、初めて作った運命が、これ」
混ざり会う色は薄く、今にも壊れそうな感じがする。
「作られた運命は消すことができない。
誰かが、この運命を宿してレストピアに戻らないと行けないのだけれど、これがどうして、なかなかにヤバい」
割れそうな運命はふわりと神の手から浮き、ゆらゆらと揺れている。
見た感じからして、相当に危険な代物である。
それを、カノである私に言うと言うことは…
(私の運命にする、ということですか?)
カノの人生で起こした罪の罰と言うならば、これ以上ない罰である。
「そうだね、君の運命として宿してもらうけど、このままでは次の君では生きていけないんだ。
そうだなー・・・この運命だと、出生直後に災害に襲われて死亡、かな?」
なんと、儚いにもほどがある。
なんにも抗えずに死ねと、神は言うのか。
「いや、このまま渡すようなことはしないよ、っと」
神は両手で運命を掴み、ギュッギュと握っていく。
ゆっくりと小さくなっていく運命は、最後にはビー玉くらい小さな形となってしまった。
「カノ、君が受け入れるも良し。他の人に託すも良し、だけどね。
これが君以外の人に宿しちゃうと、んー、そうだなー・・・」
神は私にわかりやすいようにと、レストピアの世界地図を私の前に出してくれた。
「君の大切な人達のいるこの大陸が、滅んじゃうかな」
てへぺろー★と、言う神に、なんだか表現が古いな、と思考が逃避していった。