「 プロシュートが死んだ 」

目の前にいる暗殺チームのリーダー、リゾットはいきなり私の前に現れてそう告げた。



「……あぁ、プロシュートが、」


私は読んでいた雑誌から顔を上げる。
こうなることはよく分かっていた。
…ボスに関わる事を知ることは命懸けの行為。ましてや組織への裏切りなど、許されないものである。

……だから驚きの声なんて出なかった。




「お前は特にプロシュートと仲が良かった。……だから真っ先に言うべきだと思ったのだが」


リゾットは私が驚かなかったことが意外だった様で、言葉を詰まらせた。



「…いや、分かっていたことだから。気遣ってくれてありがとう、リゾット。」

私も頑張らないとね、なんてリゾットに笑いかける。

……ちゃんと笑いかけることが出来ていただろうか。
そう思いながら、雑誌を机の上におくと、ふとプロシュートが置いて行ったであろう煙草が目に入った。



「オマエはよぉ、まだマンモーナなんだから吸わなくていいんだｯ！」

「プロシュートってケチだなァ〜いいじゃん1本くらい！」

「ダメに決まってんだろ！」

「奪わなくたっていいじゃない！」

「……マンモーナを卒業したら俺が買ってやるよ。まぁ出来るならの話だけどな」




あの頃は、まだボスに歯向かうなんて考えていなかった頃はそんな話もしたなぁ、なんて考えても、もうプロシュートは帰ってくることはない。
彼が約束してくれた、マンモーナを卒業できたら煙草を買ってくれる話も、結局果たされることなく終わってしまった。



……私は彼にとって、どんな存在だったのだろうか。
少なくとも彼は、…プロシュートは私にとって偉大な存在だったのだけれど。



「……偉大なる君が、次に生まれてくるならば、どうか幸せな道を歩めます様に。」



彼が遺していった煙草を、箱から1本取り出して火をつける。


……まだマンモーナを卒業出来ていないのに、こんな事をしているとプロシュートに知られたらきっと怒られてしまうだろうな。

もういなくなった彼との思い出を、ひとつひとつ噛み締めるように思い出しながらタバコを吸う。



窓から見える空は、眩しすぎて目がくらみそうだった。