人に贈った遊戯王SS

街を歩いていたら、少し先に見覚えのある後ろ姿があった。
背筋がまっすぐで、歩き方が妙にきっちりしている。

「お、エドじゃん」

声をかけると、エドはぴたりと足を止めて、振り返った。

「……十代?」

一瞬だけ目を見開いて、それからすぐに表情を整える。
驚いたのをごまかそうとしているのが、なんとなくわかった。

「こんなところで会うとは思わなかった。キミは――」

そこまで言ったところで、空気がひやっとした。
次の瞬間、ぽつ、と冷たいものが頬に当たる。

「ん」

言葉を続ける前に、雨が落ちてきた。
ぽつぽつ、から、すぐにざあっと音が変わる。

「……降ってきたな」

エドは何か言いたそうに口を開きかけて、結局そっちを選んだ。
俺は空を見上げてから、さっと周りに目を走らせる。

「結構来そうだな……お、あそこ行こうぜ」

近くの建物の軒を指差すと、エドは一瞬だけ視線を向けてから頷いた。
俺たちは並んで、急ぎ足で軒下に滑り込む。

軒下に入った途端、雨音が一段大きくなった。
雨は思ったより強くて、道が白く霞んでいく。
傘はどっちも持っていなかった。

「予報では、降らないはずだったのに」

「まあ、そういう日もあるよな」

俺が言うと、エドはそれ以上何も言わなかった。
スーツの袖を軽く払って、濡れていないか確かめている。
ふと見ると、エドは雨の向こうをじっと見ていた。
遠くを見るみたいな目だったけど、重たい感じはしない。ただ、静かだった。

理由は、わからない。
だから、聞かなかった。

「止むまで待つしかないな」

そう言うと、エドは小さく笑った。

しばらくして、雨は急に弱まった。
さっきまでの音が嘘みたいに、空が明るくなる。
俺が外に出ようとした、そのときだった。

「――少し、時間はあるか?」

エドが、こちらを見る。
雨の向こうを見ていた目とは違って、今はちゃんと俺を見ていた。

「歩きながらでいい。ほんの少しでいいんだが」

誘い方は控えめで、でも気まぐれじゃない感じだった。
理由を聞くほどでもないし、断るほど急いでもいない。
俺は一度、明るくなった空を見上げてから、頷いた。

「いいぜ」

俺たちは並んで、歩き出した。
濡れた舗道が、まだ少しだけ光っていた。
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