萩原研二
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最近、放課後になると、どこからとも無く歌が聞こえて来る。この学校には合唱部も無いし、音楽の授業は選択科目になってるけど、明らかに合唱曲では無かった。最近流行ってる曲だったか、テレビか何かで聞いたような気がする。
方向的には、多分屋上。陣平ちゃんは委員会でまだ戻って来ないし、ただ教室で待ってるのも正直暇だし、声の主を探してみるか。
普段は立ち入り禁止だけど、入ったからと言って罰則も無く、特に鍵も掛けられてない入口の扉をそっと開ける。眩しい夕日と運動部の掛け声が響く屋上に、ポツンと影が見えた。逆光で顔は分からないが、髪の長い女子生徒。背は少し高めだけど、下級生だろうか。
「あれ、萩原君?」
その声には聞き覚えがあった。今までどうして気付かなかったのだろうか、それはクラスメイトの四方月さんだった。
「最近歌ってたの、四方月さんだったんだね。」
「あー、バレちゃったか。」
正直な話、意外だった。彼女は、クラス内ではどちらかと言うと大人しい子達のグループに属していて、立ち入り禁止の屋上に入り込むなんて事、しないと思ってた。制服だって校則通りきっちり着ているし、学校生活でも、所謂真面目ちゃんに入る部類だろう。
その彼女が、今、立ち入り禁止の屋上で歌っていた。
「歌、好きなの?」
「うん…好き。」
夕日に照らされて、ふにゃりと彼女が微笑む。ドクリ、と体内の血液が震えた気がした。え、何だ今の。今まで関わってきた女の子達相手には、こんな感じしなかったぞ。何なんだこれと戸惑いつつも、彼女に悟られまいと、俺は至って平静を務めて、更に問いかける。
「今の曲って、最近流行ってるやつだよね?」
「そうだよ。夢の続きを描こうってフレーズが、好きなんだ。」
「へぇ…ね、聴いててもいい?」
そう言うと彼女は「えぇっ」と口を尖らせたが、まあ萩原君なら、とその場に留まることを許してくれた。俺なら、ってどういう事だろう。後で聞いてみようか。
それから彼女は、何曲かの歌を披露してくれた。今やってるテレビアニメのちょっと悲しい主題歌だったり、ぱっと明るいアイドルソングだったりを数曲歌って、ふう、と息を吐いた。気付けば辺りは暗くなり始めていて、グラウンドに響いていた運動部の声も無くなっている。
「こんな時間になっちゃったし、今日はもうおしまいね。」
足元に置いていた鞄を肩にかけ、校舎へと繋がる扉、つまり俺の方に歩み寄ってくる。あ、陣平ちゃんの事忘れてた。それだけ彼女の歌に聴き惚れていたのか。とりあえず荷物を教室に置きっぱなしだし、鍵も掛けないといけないから一旦戻らないと。
「そうだ。また四方月さんの歌、聴かせてくれる?」
「んー、部活があるから毎日じゃないけど…萩原君ならいいよ」
「ねえ、その俺ならってどう言う…」
「内緒!」
そう言って彼女は俺の横を駆け抜けて行く。結局、彼女の言う俺ならってのは分からなかったけど、また彼女の歌を聴く権利を得た事だし良しとしようか。
その後、俺と葵は友達以上の関係になるんだけど…。その話はまた今度、な?
方向的には、多分屋上。陣平ちゃんは委員会でまだ戻って来ないし、ただ教室で待ってるのも正直暇だし、声の主を探してみるか。
普段は立ち入り禁止だけど、入ったからと言って罰則も無く、特に鍵も掛けられてない入口の扉をそっと開ける。眩しい夕日と運動部の掛け声が響く屋上に、ポツンと影が見えた。逆光で顔は分からないが、髪の長い女子生徒。背は少し高めだけど、下級生だろうか。
「あれ、萩原君?」
その声には聞き覚えがあった。今までどうして気付かなかったのだろうか、それはクラスメイトの四方月さんだった。
「最近歌ってたの、四方月さんだったんだね。」
「あー、バレちゃったか。」
正直な話、意外だった。彼女は、クラス内ではどちらかと言うと大人しい子達のグループに属していて、立ち入り禁止の屋上に入り込むなんて事、しないと思ってた。制服だって校則通りきっちり着ているし、学校生活でも、所謂真面目ちゃんに入る部類だろう。
その彼女が、今、立ち入り禁止の屋上で歌っていた。
「歌、好きなの?」
「うん…好き。」
夕日に照らされて、ふにゃりと彼女が微笑む。ドクリ、と体内の血液が震えた気がした。え、何だ今の。今まで関わってきた女の子達相手には、こんな感じしなかったぞ。何なんだこれと戸惑いつつも、彼女に悟られまいと、俺は至って平静を務めて、更に問いかける。
「今の曲って、最近流行ってるやつだよね?」
「そうだよ。夢の続きを描こうってフレーズが、好きなんだ。」
「へぇ…ね、聴いててもいい?」
そう言うと彼女は「えぇっ」と口を尖らせたが、まあ萩原君なら、とその場に留まることを許してくれた。俺なら、ってどういう事だろう。後で聞いてみようか。
それから彼女は、何曲かの歌を披露してくれた。今やってるテレビアニメのちょっと悲しい主題歌だったり、ぱっと明るいアイドルソングだったりを数曲歌って、ふう、と息を吐いた。気付けば辺りは暗くなり始めていて、グラウンドに響いていた運動部の声も無くなっている。
「こんな時間になっちゃったし、今日はもうおしまいね。」
足元に置いていた鞄を肩にかけ、校舎へと繋がる扉、つまり俺の方に歩み寄ってくる。あ、陣平ちゃんの事忘れてた。それだけ彼女の歌に聴き惚れていたのか。とりあえず荷物を教室に置きっぱなしだし、鍵も掛けないといけないから一旦戻らないと。
「そうだ。また四方月さんの歌、聴かせてくれる?」
「んー、部活があるから毎日じゃないけど…萩原君ならいいよ」
「ねえ、その俺ならってどう言う…」
「内緒!」
そう言って彼女は俺の横を駆け抜けて行く。結局、彼女の言う俺ならってのは分からなかったけど、また彼女の歌を聴く権利を得た事だし良しとしようか。
その後、俺と葵は友達以上の関係になるんだけど…。その話はまた今度、な?
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