女装喫茶 迫蓮


親が旅行で居ないと知られ、ツトム家に複数人で泊まる事になった。

「ツトム‥オレの顔と身体になんか付いてるか?」

努「あ、いや‥!なんでもないっすよ」

「‥‥。あいつから何か聞ーたのか?」

努「いーえ、何も。ただ、」

「ただ?」

努「分かりやすく喜んでたんで。学校でも外でも、ガキみてーに」

「‥‥」

努「‥あんたのそーいう私服珍しーんで見過ぎました。すいません」

今日の服装はいつもより肌の露出が多かった。
その上、薄いピンク色と下はクリーム色。
女子のような色味で着こなせているのがすごいなとツトムは見入っていた。

「んな謝んなくていーぜ。触ってもいねーのに」

努「!?さわ‥っ」

「‥あいつは勝手に触ってきて謝んねーから、
おめーの爪の垢でも煎じて飲ませてやらねーとな」

努「はぁ‥‥。その話タブーじゃなかったんすか?」

「‥‥。そーだぜ。オレはいーんだ」

努「そ、そーすね‥!蓮次さんはあいつと違ってヘマとかしねーから」

「‥ツトム。そーいやシャワーまだだったよな」

努「はい」

「一緒に入るか?」

ツトムは目を見開いて驚いていた。

努「い、いーーンすか?!?」

「ん。おれはいーけど、どーする?」

努「あいつがいぬ間にちゃっちゃと入っちゃいましょう!!」

「ん。おまえもえっちだな‥」

ツトムは赤くなりそうになるのを誤魔化すように咳き込んだ。

努「そりゃーーあんたっすよ‥!魔性っすか?」

「お オレが?んなわけねーだろ。押すな、押すなよ」

努「はやく、はやく」

ツトムは蓮次の肩を触って風呂のある洗面所へ連れて行った。


「おー蓮次!風呂入っちまったのか?待ってろよ!」

「おせーよ。もーすぐ飯だから早く入れ」

ツトムはニッと笑っていた。

「あー?なんだよ。どけ。洗面どこだ」

汗だくになってる迫田を風呂場へ案内する。

「機嫌いーな。おめー誰と入った?」

努「‥‥。誰だと思います?」

「‥‥‥。おい‥なんだよ、その言い方。ハハハ‥‥まさか‥」

ツトムはニッと笑って、
「お風呂ごちそーさまでした」と伝えて廊下に出て行った。

蓮次は様子見をしに行ったら、ドン!と扉にぶつかった
大きな衝突音が聞こえて、案の定二人は取っ組み合いになっていた。

「テメーまさか‥ッのヤローーッ!!!コロスゾォッ!!!」

努「るせーーーッ!!!やってみろコラァ!!」

「やめろ!!家ん中壊れンだろ!!やるなら外でやれ!!」

「‥っはい!」

ピタリとツトムは止まり、迫田を煽って外に誘導した。

努「てめーだけのもんだと思うなバカ!みんなの蓮次さんだ!!
分かったか、遅漏ヤローッ!」

言い放ってしまったら迫田はこの上ないほど震えていた。

「オイ‥ッ‥こ‥コロス‥‥ッ!!!
‥テメーン家の前が‥テメーの墓場だ‥ッ!!!!」


「寅!花を呼んできてくれ!」

寅「わ、わかった!」

ツトムは地面に倒れていた。

努「(やべ‥モロにくらった‥っ!‥つえー)」

立ち上がろうとしたら、白目を剥いて完全に
キレてイッちまってる迫田が迫っていた。

努「(やべー‥!やられる‥!)」

花が来てくれて、ストップがかかった。
暴れる恐竜を花が抑えてくれていた。

努「た 助かった‥‥」

寅「どーしたんだよ、迫っちゃん!正気に戻れ!」

寅が恐竜へ健気に話しかける少年のように見えてきて、
ツトムは蓮次の方を向いたら少し笑っているように感じた。

「‥‥‥」
努「あ‥」

蓮次さんはわざとやったのか。こうなるって分かって。
本当に魔性なのでは?
あの人の手でオレたち二人は転がされてるみてーな感覚になる。

努「蓮次さん‥勘弁してください。マジで埋められるとこだったぜ」

「‥珍しく弱気だな?」

努「つ‥次こそは、勝ちますけどね!」

「そーでなくちゃな、おまえは」

努「‥‥」


花「どーどー!迫田!」

寅「しっかり!白目むいてる!」

見兼ねた蓮次が話しかけた。

「迫田!銭湯にだって行くんだ。裸なんて今更だろ!」

「ふざけんな‥ッ‥一家ならまだいー!
けど、そいつはちげーーだろ!?
まだオレたちと対等は、はえーー!」

「オレたちは仲間だ!花組同士裸の付き合いもすんだろ!これからだって、」

「‥つーか銭湯じゃねーだろ!テメー
あのせめー風呂であのバカデカと入ったのか!!アー!?」

「‥背中洗ってもらっただけだ。なにかおかしーか?オレたちの大事な後輩だろ」

「‥蓮次てめー‥話があるから来い」

「もっ回二人で風呂入ってこい!そーしたら話聞ーてやる」

「‥なにさまだてめーは‥?」

花「迫田!落ち着け!なんだか分からねーが、土だらけだから三人で入るぞ!」

寅「‥‥」

「花、三人は入らねーから。花と寅、迫田とツトムで
さっさと風呂入ってこい。腹減ったろ?」

花「超ーーー腹へったわ!!!」

「なに勝手に決めてんだこら‥れんじ‥!」

寅「オレら先入るから、迫っちゃんたちも早くね?」

「‥れんじ‥!ぐっ‥!」

花「迫田いー加減にしろ。
ツトムん家で飯食ってみんなで泊まんだぞ?喧嘩すんな!」

努「す、すげー‥‥パワーだ‥」

「分かった!離せ!」

花「よし!」

「どけ、オレらが先入る!」

花「いーぜ」

家に入ろうと歩く動線で、迫田は蓮次をはたいた。
ビンタの音が響いて、蓮次の口端から血が垂れる。

花「コラー迫田!!!」

寅「蓮ちゃん!だいじょぶ?ふっ飛んだよ‥!?」

勢いよく開いてた戸までふっ飛んだのだ。

「早く来い!ツトム!」

努「ウッ‥!はい‥!」

迫田は自身を落ち着かせるように冷水でシャワーを浴びて、
先に風呂へ浸かっていた。

「ツトム‥‥どっちが風呂誘った?」

努「‥‥蓮次さんです」

「‥‥」

努「本当スよ」

「‥あとでビンタだおめーも。
オレの気持ち分かっててやったんだ。おめーら同罪だ」

努「言わせて貰いますけど‥。
風呂入るくらい、ヤロー同士でこれから先も普通にあんだろ!
‥キレ過ぎなんだよ‥毎回この先キレてくつもりかよ!?
なにもしてねーし」

「‥‥。あたりめーだ!オレァな、あいつをやらしー目で
見てるヤローらですら嫌なんだよ!!!」

あの日、女装した日でツトムも蓮次も嫌というほど知っていた。
彼が嫉妬深いことを。

「あの画像だって勝手に拡散しやがって‥!誰かオカズにしてただろ‥ッ」

全員のフォルダから削除してやりたいってずっと言っていたのを思い出す。

努「あのな‥。その中にオレは‥オレも入んのか?‥一緒にすんなよ!
‥あんただけなんだよ!!そーゆー目で見てんのは!!!」

「ッ‥‥」

努「束縛タイプは嫌われるぜ」

「っ‥‥るせー」

蓮次は脱衣所で二人の会話を聞いていた。
花と寅にはリビングで待ってもらっていた。

「‥‥‥」


「分かってっけど‥分かってっけどよ‥頭にキてグチャグチャになんだよ‥ッ!」

風呂の水面をはたいて湯が飛び散った。

努「‥‥。蓮次さん、ずっとあんたを念頭において話してましたから」

「‥‥」

努「あの人‥あんたの事しか考えてねーと思うぜ。
‥試してんのかなって、オレもあんたも。
もしそーじゃなかったら、コエーぜ」

「‥‥‥ほんとかよ、そりゃ」

努「オレが嘘つくよーに見えるか?」

「‥‥つかねーな‥」

迫田はようやく落ち着いてきたようだ。
風呂の水面の揺らぎが減った。

「‥わるかった、おめーは許す」

努「‥‥」

「花組は許すことにするぜ。他はダメだ。オレのルールだがな」

努「まぁ、いーんじゃねーすか。それで‥
それでもずいぶん我慢した方だし」

「‥ツトムおまえ、どんな女がタイプだ?」

努「はあ‥?なんだよ急に‥。
好きになってくれた子がタイプだ。
そーしたら、全力で好きを返すぜ」

「オレもだ」

努「は?」

「オレもな‥好き合ってると思ったから全力で返したつもりだった」

努「‥蓮次さんが先にあんたを好きに?逆だろ、どー見ても」

「‥オレからだけどよ、ちゃんとあいつは受け止めてたぜ。
むしろ好きに見えた。‥けどよ、おめーと話してて分かってきたかもな‥。
オレは本当は女が好きなんだよ」

努「‥えぇ、そりゃーまぁ‥」

「けど、あいつも‥同じなんだ」

努「同じって?」

「‥言わせんなよ。女もあいつも好きって事だよ」

努「‥‥。で、分かってきたってのは?」

「おめーよく人の話覚えてんな‥。
あいつはよ、性欲だけだったのかもな」

努「ハハハ‥まさか‥。んなのはあんたのおハコだろ」

「そー思うだろ。あいつは◯◯◯◯◯◯◯の経験にしか興味ねーわけ。
思い返すと‥そー見えてきたぜ。
ただ、気持ちよくなりてーだけだってな」

努「‥オイ‥、やめろよ。生々しい言葉出すなよ‥」

「‥わるかったな、ツトム。おめーのおかげで目ェ覚めたわ」

努「‥いや待てよ。いつものあんたの勘違いだろ。
蓮次さんの事あんなに‥想ってたんだろ?あんなにキレるくれー」

「仮に好き同士だとしても‥‥
同じ目線で、同じ熱量じゃなきゃ、イミねーだろ?」

努「‥‥。初めて、まともな事言ったな」

「‥オイ、ハハハ‥笑わせんなよ」

努「そーだな。そのとーりだ」

「‥‥‥。ツトム、先上がれ」

努「え‥。花さんと寅さんは?」

「オレが上がるまで待ってろって伝えろ」

努「‥はい‥!」

「いー返事だな。ちゃんとお利口に出来るじゃねーか。
オレも初めて聞ーたぜ?」

努「‥‥」

あぁ、なんだか。
この人をよく知ってるわけでもないのに、泣きそうな顔をしてるなって思った。
ムリして笑ってるよーに見えた。

脱衣所に蓮次さんがいて驚いたけど、
サイレントを指で伝えられて静かに着替えてリビングに向かった。
次は腹を空かせてる花さんをなだめる役が周り、
この先輩たちは大変だなと思ったのだった。

「‥っ‥」

水滴が垂れて何度も水面が同じ模様に揺れた。
あいつがあんな事を全て受け止めてくれたから本気で勘違いしていた。
同じ熱量なら、全力で返そうと思っていた。
だから全力で相手をしたんだ。
それがオレも男気だと思っていて、ツトムもいー事を言語化してくれんなって思う。

本気で抵抗してないように見えたが
ちゃんとあいつは嫌だって言っていた。
聞き入れてやれなかった。
今度はちゃんと、落ち着いて話を聞いてやろうと、少しは思った。

オレとツトムを試す‥?
なんのために‥?
考えれば考えるほどポジティブなイメージになってしまう。
どう考えても、あいつはオレの気持ちを試したんだとか考えちまうが、
普通に落ち着いて考えたら、オレへのあてつけだろう。


***


「‥蓮次‥いたのか。先食ってろよ」

「‥おせーよ、みんな待ってんだ。花たちは後で風呂入るから、早くしろよ」

「あぁ」

さっと着替えてタオルを首にかけたままリビングに来た。

花「遅え!!!」

「すまねーな、花」

花「腹ペコでしぬかと思ったぞ!」

「よし、食べよーぜ」

いただきます!と響いた。
ツトム以外はみなビールを飲んでいた。


「もっとビールよこせ」

努「飲み過ぎんなって!」

「‥迫田、話があるからセーブしとけ」

「‥‥話?いつすんだ」

「今からでもいい。ちょっと来い」

「‥‥」

蓮次と迫田は外に出た。

ツトムは二人に伝え忘れていた。
家周りは夜になると皮膚を噛んでくる生物がウヨウヨいるんだという事を。

「‥どこまで行くつもりだ?話ってなんだ」
「‥椅子あんだろ。そこまで」

二人は隣に座った。

「あのな、わるかったな。試すよーな事して」

「‥なんでそんな事したんだ?」

「‥からかいたくて。サイテーだよな?
二人ともあの日からオレを特別扱いしてくれるからよ。
悪いとこが出た」

「‥‥」

迫田が聞きたかったのは、謝る言葉じゃなかった。

「‥で?」

「‥でな、これからどーするか話し合いてーと思って。
ビール飲み過ぎてたから、ちゃんと覚えとけよ?」

「‥これからどーするか?‥てっきり別れ話されんのかと思ったぜ」

「‥別れ話?‥そもそも、付き合ってたのか?」

「は?‥あー‥‥付き合ってなかったのか?
キスしたしよ、それ以上も‥」

「付き合おうって言われてねーよ」

「‥必要かそれ?自然と、だろ」

「‥‥そーなのか?」

「‥‥。付き合ってねーのに最後まで出来んだな、おめーは?」

「‥おまえだって‥女とそーいうチャンスあったらするだろ?」

「‥オレに置き換えんなよ。‥そりゃー‥するけどよ‥」

「だろ?」

「‥‥で。どーしたいんだ?おまえは」

「‥オレはな、‥付き合いたい」

「‥‥‥。‥はあ?」

「‥おまえは?」

迫田は完全にフラれモードになっていたので、立ち上がった。

「はぁ!!??」

急な声量に蓮次はビクッとなり、周りの生物たちも散っていった。

「‥なんだよ‥っ‥オレァてっきり‥!」

「‥迫田、落ち着け。声量、落とせ」

「‥‥誰のせーだと思ってんだ」

蓮次から仲直りのハグをされた。

「‥わりィ」

「‥‥あのよ、仲直りのつもりか?」

「‥そーだよ」

「それなら、こっちだろ」

蓮次は言う通りにしてあげた。かかとを上げて口付ける。

「ッ‥」
「‥‥」

蓮次は違和感を感じて自身の腕を触っていて、
今度は迫田から強く口付けた。

「ン‥待て!噛まれた‥っ」

「‥あ?」

「かゆい‥!」

「暗くて見えねー‥」

騒ぐので玄関に戻ったらたしかに蓮次の白い肌だけ何かに噛まれていた。

「おま、よりによって‥!今日に限って短パンで肩出してよ‥!」

「‥やべー‥超かゆい‥っ!」

「待てまてまて!跡残んだろ!かくな!」


努「おかえりなさい。って、ア!」

ツトムが言うには虫刺されとの事だ。
ムヒをもらって部屋で迫田が塗った。

努「うわ、かゆそー‥」

「っ‥‥」

「クソ、なんつーえっちな虫だよ‥!内股もえれー噛まれてんじゃねーかっ!」

努「えぇ‥‥今度は虫に嫉妬かよ」

「そもそもオメーがわりィ!ツトム!」

努「ホントにすいません‥蓮次さん」

「蓮次、我慢しろ。オレを引っ掻いても噛んでもいーからよ」

「‥うぅっ‥!こんなに噛まれたことねーんだよ‥ッムリだ!」

迫田に両手首を掴まれて身体をかけなくて苦しそうだった。

努「‥にしても蓮次さんだけ噛まれるなんて、虫も人を選ぶんだな」

「オイ‥!」

「っこた‥少しくれーいーだろ別に!かいたって!ムリだ!」

「ダメだ!触ってやるから」

「うう‥ッ‥爪切ってんだから大丈夫だって‥!」

「このツトムのアホの皮膚見てみろ、跡残ってんだろ!
おめーは白いから目立っちまうだろ!」

蓮次さんが言い合いしてる一面をツトムは初めて見た。
学校ではいつも気配りが出来てクールな印象だったから。
驚いたが二人とも同じ言い回しで、同じ言葉で、
段々幼稚になってきて、まるで‥。

努「まさか‥あんたらが似た者同士だったなんて‥」

「ア?」

努「‥夫婦は似てくるっつーだろ。思い返せば行動とか、
今の言動とか、あんたらそっくりだぜ」

「ハッ‥だとよ!おれらフーフだとよ!」

「うう‥ッ‥かゆ」

「付き合うとかキョーダイだとか飛び越えてもうそー見えてんだ。
ずっと気ィ合うだろ」

「い、いまはそれどころじゃねー‥ッ!」

「おー‥よしよし」

蓮次は迫田の肩を噛んで抱きついていた。
迫田は頭を撫で、下ろされて癖っ毛な柔らかい髪を指で通すように撫でていた。

「カワイソーになー‥。おめーの血がよっぽど美味かったんだろーな」

オレが虫だったらと迫田はなにか言っていたがツトムと蓮次はスルーした。

「サイアクだ!もー着ねー!こんな薄着!」

「アー?それは関係ねー着ろよ!生脚で肩出して最初は驚いたけどよ!
こーいう服は積極的に着てけ!バンバン着てけ!」

「バカヤロー‥!最初っからオメーのために着てった服で‥ッ
ほんと、おまえと居るとろくなことがねーな!!」

「ッれのためにだ‥!?ま マジか!?言えよ!!!」

「言えるかー!!」

蓮次さんはバンバン迫田を叩いていて、まるで
バカップルだなと思えてきて、だんだん呆れて見てるしかなく。

「マーメ◯ドコーデ最高だからまた着ろよ!」

「なんだそりゃ!」

「生脚魅惑の♩だよ!全体の色味的にもだ!」

「アホかー!!!/////」


努「‥もーオレ部屋戻っていースか?」

「いろ!」
「おー!帰れ!」

努「どっちっスか!できれば帰りてーんだけど!?」

「おめー虫刺されはオレ関係ねーだろ!」

「てめーのせーでこーなってんだろーが!」

「てめーも人のせーにしてんじゃねーかッ!」

「覚えてねーのかよ!そもそも外で話したのはなァ!」


努「ちょっともー、何にも話進展しねー!!
オレがわりーという事で終わりにしてくれ!」


「‥ツトム、分かったぜ。明日ビンタでチャラな」

努「ま‥マジっスか‥」

「かっかっかっ!良かったなーーツトム!
こいつのビンタはなかなかくらえねーぞ〜〜!金的よりレアだぜ!」

努「なんで嬉しそーなんだよ!金的ってなんだよ!
こえー事言うな!食らったことあんのか!?」

迫田はさっきまでのキレっぷりが嘘のように
爆笑していたからツトムはムカついた。

「ツトム、この部屋防音になってっか?」

「たぶん、防音だと思うスけど。この家ん中では一番奥の部屋だし」

「そーか。もー帰っていーぞ、おやすみな」

努「失礼します。おやすみなさい」

「蓮次!防音かどーか確認するとかよ〜服だけでなく積極的だなー!?
今日はヤル気満々ってー事かよ!♡
鈍感な男でわるかったな!大歓迎だぜそーゆー積極さはよ!」

「迫田‥!ちげーよ!!いまの会話聞かれたくねーんだよ!!バカヤローが!」

「アー?!花と寅に聞かれたとこでどーーって事ねーだろがッ!!
恥ずかしがり屋も大概にしろ!!」

「ッ‥!ツトム!」

努「は はい!?」

「部屋もうひとつねーのか!こんな奴とベッドひとつで寝られるか!」

努「え、えーと‥そんな部屋ないっすよ。2:2でってなったじゃねースか」

「ここは広えからツトムはこのアホと寝ろ!オレがおまえの部屋使うぜ」

「ふざけんな!刺されたとこ全部触ってやっから大人しくしてろ!」

「◯ね!」

「まぁた言ーやがったな!!ソレやめろっつったろ!!花にちくったろーか!?」

「ッ‥!触んなッ!花には言うな!」

「おめ〜〜〜弱点は花かよ!頭ん中ァ上書きしてやっから覚悟しろテメーー‥!!!」

「ッ‥!?」

努「おやすみなさい!あと鍵閉めろよ!」

バン!とツトムは勢いよく戸を閉めた。


寅「ツトム、どったの?音したけど」

努「いえ、戸を閉めた音っスよ。オレァもー寝るんで好きにしてください」

寅「えー、もー寝んの!?まだ早えーよ!
花ちゃんリビングで寝ちゃったし。
蓮ちゃんと迫っちゃんはまだ部屋で話し合いしてんだろ?」

努「おい、嘘だろ‥。花さん、こんなとこで寝んな、風邪引くだろーが!
オレが明日怒られちまう!」

寅「なんでツトムが怒られんのさ?」

努「あした蓮次さんにビンタされるんで、
このままだとプラス蹴り食らっちまう‥!」

金的だけは避けたい。恐ろしいワードを聞いてしまった。

寅「蓮ちゃんがおまえにビンタ‥?迫っちゃんが
蓮ちゃんにしてたけど‥‥おまえら何やってんだよ」

努「聞かないでください。しぬほどアホらしーんで!」

寅「だろーな」

寅は花には布団を掛けてあげれば良いと提案してツトムは従った。

寅「ツトムもリビングで寝んの?ならオレもー♩」

努「はあ‥好きにしてくれ。花さん布団跳ねのけてるし‥」

寅「大丈夫。あいつはごはんいっぱい食ってポカポカだから」

努「‥ならいーすけど」

寅はツトム家のDVDなどをチェックしてテレビを見ていた。
花とツトムは眠りについていた。


***


「なんだ、リビングにみんな居んのか」

二人はリビングで極力小声で話した。

「おい、ツトム」

努「まだ夜じゃねーか‥なんで起こすんだよ、オレを‥!」

「おまえん家だからだよ」

アレはどこだと物の場所を聞かれるだけに起こされてイラッとした。

「それとよ、ツトム‥ナイスだ!」

にっかり笑う迫田は清々しいほどに分かりやすい。

努「‥‥。‥また機嫌いーな」

「今度ご褒美に奢っちゃる。ガッコーでも外でもいーぜ」

努「フーン‥あした槍が降るんじゃねーか」

「ハハハ‥降るわけねーだろ」

努「ものの例えだよ!」

「よー、あの後どーなったか少し教えてやろーか?」

努「聞きたくないんで。結構っス」

「そーゆーなよ‥!聞きてーだろ!」

努「全然、全く」

「そー言われると言ーたくなんだろ!」

努「あのな‥!」


廊下からゆっくり足音がして、壁を叩く音でツトムは体が跳ねた。
幸いにもその音で花と寅は起きず。

「おせーーよ‥ッ!はやく持ってこい‥!」

「わーってるよ。部屋で待ってろ」

また壁を殴るような音がしてツトムは震えた。

努「イッ‥‥こえー‥‥!」

ツトムはまだ心臓がバクバクしていた。

「おー‥あいつは怒らすとオレより凶暴だからなー?気ィー付けろよ?」

努「それマジだったのかよ‥っ!なんで笑顔なんだよ!
オレあしたあの人のビンタ食らうのかよ‥‥」

「レアだっつったろ!」

努「‥‥」

底なしの笑顔だな。蓮次さんはしぬほど機嫌悪かったけど。


***


蓮次とのやりとりを振り返る。

「泣くほどかいーのか」

「かいーよ‥ッ見りゃ分かんだろ!離せよッ」

「オイ、それ以上蹴ったら腕縛んぞ‥!本気だぜ?朝までな」

「ッ‥」

「舐めてやりてーけどムヒ塗ってっからな。触るだけだぜ」

「頼んでねーよ‥!」

「跡残っちまうからダメだ!」

「‥も、かこうとしねーから‥ッ離せ‥!」

「いーぜ。気が紛れる事しよーぜ?」

予感はしていた。服に手をかけられ裸に剥かれる。

「我慢してる顔いーなー‥」

「‥っ‥かゆくて‥しにそーだ‥」

「忘れさせてやっから、今から」

さんざん触られて、迫田の肩を噛んでたら
後ろに這わされていた長い指をすんなり飲み込んでいった。

「準備万端じゃねーーか‥」

「‥ッ‥今日の服で分かんだろ‥っ」

「‥‥」

迫田はずっと誘われていたんだと知る。

「蓮次、ヤリてーだけじゃねーよな?ほんとに
オレの事好きなんだな?セフレは望んでねーぞ」

「‥‥っ」

「キスできるか‥ディープ。好きならできんだろ‥?」

今度は蓮次を試した。
嫌いな奴だったら出来ないのは口付けの方だ。特に濃厚な方。

「‥いま試すなよ‥我慢してんのに‥っ」

「‥‥はぐらかすなよ」

蓮次からの深い方をさせるよう促した。

「付き合うってなったろ‥今じゃなくても、」

「今じゃなきゃダメだ」

ここで決めちまおうと思った。
こいつがどれ程想ってくれてるのか。今決める。

「‥‥」

痒がってるから少しは待ってやって、なかなか行動に移さないこいつ。
迫田がこの場を去ろうと立ち上がり、
戸の鍵を開けたらようやく背に温かい体温を感じた。

「‥‥なんだよ」

「‥‥待てよ」

ずっと後ろに張り付かれてるだけで、息を吐いた。

「‥‥。蓮次‥‥それだけか?やれなきゃよ、もう構わねーぞ」

「っ‥恥ずかしーだろ‥‥目、瞑れよ!」

「‥あ?‥へーへー」

鍵をかけ直して、ベッドに座って目を瞑ってやった。

「‥‥」

蓮次からようやく口付けられて、舌も入れられた。

「おめーも動かせよ‥舌‥!やりづれーだろ‥っ」

「‥‥。おー‥」

頑張ってる感じと辿々しさは伝わってきた。
どれくらいしてくれんのか知りたいから待っていたが、少し応えてあげる。

舌を絡めてくれたし、長いことやってくれたから、
少なくとも嫌いじゃねーのは分かった。
だから動きが止まったら次はオレから口を塞いで返してやった。
こいつは痒みなのか恥ずかしいのか何なのか、
睫毛が濡れてて泣きながら受け止めていた。

「さこた‥‥こんなこと‥セフレにしてーなんて思わねーくれーな‥‥
とんでもねーことしてんだ‥‥!そこは分かれよ‥っ」

「‥おう‥」

呼吸が早まってて、ディープキスからのこいつはずっと
本当に恥ずかしかったんだなと知れて口が綻びそうになる。
笑うと機嫌が悪くなりそうなので我慢した。

噛まれた箇所を撫でられた蓮次はかかないようずっと迫田の身体を掴んで我慢できた。


ムヒを朝塗ってもらった蓮次は痒みを誤魔化すために、
ちゃんと迫田の手を使って紛らわしていた。

「そこちげーだろ‥ッ何回目だバカ!」

「似てんだろ笑」

乳首を触れば良い反応をする癖に嫌がるのだ。
調子に乗ってるとマジ切れされかねないので、名残惜しいが離してやった。


***


「ツ・ト・ム」

努「うるせーな!」

「ア!?まだ何も言ってねーだろ!」

努「フン!穢らわしーから近付くんじゃねー!」

「?」

努「‥跡残し過ぎだろ」

「バカか?クソ虫の噛み跡なんてひとつも残してねーーよ!」

努「ちげーよ!‥洗面でちらっと見えたんだよ。
生々しーもんが。ガッコーとかどーすんだよ!?」

「ア?‥オレらのガッコーで怪我だらけとかフツーだろ?」

努「あんたの方を言ってんだ‥」

迫田はツトムに更に伝えた。

「心配ありがとよ、ツトム。
ガッコーで昼飯今度こそ奢ってやっから、嫉妬すんなよ」

努「‥‥は?‥はぁ!?!?あんたに?」

「蓮次に」

ツトムはついにキレてしまったのか迫田に物申していた。
今度こそは倒してやろうと意気込んで。
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