女装喫茶 迫蓮
郁「おい、村川から聞ーたか?B組はメイド喫茶らしーぞ」
「ア!?聞ーてねーぞ!蓮次がはぐらかしてたのはそーいう訳か‥」
郁「オイ、迫田!コラ!サボんじゃねー!」
頼んだと郁美に丸投げして、
迫田はB組が仕切ってるエリアに向かった。
「尾崎!蓮次はどこだ」
尾「あ?トイレじゃねーのか。囲まれて一時避難してんじゃねーかな」
「‥囲まれただ?」
尾「おー、一番人気の看板娘だからな笑」
「オメーはなんで女装してねーんだよ?」
尾「オレは料理番」
迫田はB組の前で待ったら、それらしき人物と男二人に絡まれてる姿を目にする。
A「ダレ!誰?誰!?」
B「カワイーじゃん」
「‥‥‥」
「オイ」
絡んでる二人を突き飛ばして、念の為もう一度確認する。
「おまえか‥!?」
迫田に凄まれたそれらしき人は捕まって引きずられてしまう。
「お オイ!?」
「いーから来い!」
確信に変わった迫田は辺りを気にしていた。
人気のないとこで蓮次は抱きつかれ身体を触られる。
「な なにしてんだ!?コラ!」
「オイ、ガード履いてんじゃねー!」
「めくんなバカ!!かぐなっ!」
ツトムは一人で歩いていたら、揉めてる二人を目撃した。
努「アア!?おお女!?!?ち痴漢か?!」
ツトムは声を荒げて迫田を叱責する。
努「見損なったぜ!サイテーヤローだな‥!!
その子を離しやがれ!!痴漢ヤロー!」
「ア?なに言ってンだてめー」
ツトムと迫田が喧嘩になりド突き合い始めたので注意をした。
「やめろ!!」
「「はい‥っ♡」」
ピタ、と取っ組み合ってた二人の動きは止まる。
努「あの、大丈夫スから。コイツはいま退治しますんで!」
「‥‥」
迫田はピクピクと震えてまた怒りそうだった。
「いーー度胸だなァ‥コラァ‥ッ」
「二人とももーやめろ!店に戻らねーといけねーから」
「行く必要ねー!それより写真撮らせろよ」
「チェキは◯◯円。これメニューだ」
食事メニュー以外に指名料、チェキ代など細かく書いてあった。
「オレはいーだろ!つかいま店にいねーしよ」
「‥裏見ろ。''守らなかった者は出禁で接客サービスは一切いたしません''」
「‥‥‥。払う。払うぜ‥!」
迫田は膝をついて蓮次のメニュー表を持つ手を握った。
努「情けねーな!!そのナリと図体で女にかたなしかよ!
さっきから反吐が出るぜ!」
「おまえはどーする?」
努「トーゼン!払わせて頂きます!!!」
「テメーも一緒じゃねーーか!!コロスゾ!!」
蓮次は行こうとするも阻まれる。
「っ‥迫田!いつまで手ー握ってんだ!」
「行くな!ヤローに囲われたんだろ?
オメーを一人にするといつもこれだ!オレといろよ」
努「え‥」
「‥任されたことは最後までやりてーんだ。
こんな格好して腹ァくくって来てんだからよ。
店でなら相手してやる」
「おー‥それじゃあ、永久指名だ!いくらだ?」
「!ッ‥そんなのねーよ!バカ!」
努「あの‥もしかして‥その声は‥っ」
「蓮子だ!」
「蓮子じゃねー!名前勝手につけんな!」
努「蓮‥‥次さんですか!?ええええ!?」
ツトムと迫田は持ち前のタッパで、
蓮子のサイズ感に違和感を持たなかった。
「そーだ!よーやく気付いたかバカタレが!
蓮次!ハグは?それ以外は?書いてねーがいくらだ?」
「迫田!触り過ぎだ馬鹿力がッ!」
「特別贔屓してる客だけにはサービスしろよ」
「まだ店に来てねーだろ!二人ともちゃんと来いよ」
「おー、行ってやる」
大柄の二人は、結局大人しく接客を受ける。
接客のエースは蓮次で、もう一人は二番人気。
B組はこの二人で集客しているようなものだった。
食事やドリンクメニューも好評のようで意外と盛況だった。
「可愛すぎるだろ‥‥」
努「信じられねーが、あそこだけ‥需要がある‥」
「ジュ‥ヨウ‥?‥オイ、蓮子!こっちまだかよ?」
「誰が蓮子だ!」
努「め、メイドさん。あの‥アイスコーヒー」
「オレはコーヒーミルク」
「指名料も取るぜ?」
「もちろんだ。このテーブルだけ来い」
「お客様、みんなのメイドなので。永久指名はやっておりません」
蓮子は営業スマイルをして二人は面食らう。
「‥!」
「営業スマイル代もお二人から頂戴します♡」
努「は‥はい‥い いくらでも‥払います‥っ」
「‥‥。営業スマイルは他の誰かにしたか?」
「‥まだ誰にも」
「ならよ。永久がねーなら、さらうぜ?」
努「ちょっと!また触って、野蛮人か‥ッ!」
メニューを取ろうとした蓮次は手首を握られる。
「‥‥困ります」
「‥‥カワイーじゃねーか」
努「やめろよアンタ!空気読め!」
ツトムを筆頭に室内にいた輩たちの野次が迫田へ一斉に飛んできた。
「‥オイ、オメーらの罵声、顔、覚えたぜ?後で覚えてろよ」
客「「「「ウ‥‥ッ」」」」
「こんなゴミ共の目の肥やしになってどーすンだ。行くぞ」
尾「待て!迫田!エースを持ってかれちゃー困る。食品ロスに繋がるんでな」
「知るか!‥二人に集中して働かせ過ぎだ。
せめて休憩時間をよこしてやれよ」
尾「それは‥そーだな。蓮次、おまえ先に休憩入るか?」
「あ、あぁ‥」
「行くぞ」
迫田に連れてかれる蓮次だった。
努「‥強引だな。蓮次さんも嫌なら
蹴り飛ばすなり抵抗すりゃぁいーのによ」
尾「困ったもんだな‥」
***
「迫田‥!」
「飯なに食いてー?チョコバナナかフランクフルト買ってやる」
「‥それ以外で頼むぜ」
「なんでだよ!うめーぜ?」
「ッ‥離せバカ!屋台から遠ざかりやがって、よく言うな‥!」
「バレたか。オレァ食うもん決まってっからよ」
「‥‥っ」
蓮次は掴まれてた腕を引かれ抱きとめられてすっぽり収まっていた。
「んぐっ‥落ち着け‥ッなにやってっか分かってンのか‥!」
「オメーがんな煽るからだ」
「煽ってねー‥ッ接客だバカ!勘違いヤロー」
「ア?てめーな‥あれを他にやらせねー為にさらってんだ!
帰す気ねーぜ、諦めろ」
「‥いー加減にしろ、混同してンじゃねー!」
「してねーよ!メチャメチャタイプだぜ!」
「それを混同してるっつーンだ!アホ!」
「‥‥」
「!?」
迫田の緩急さが蓮次には読めなくて、尻餅をついた。
「‥おめーこんなに肌出しやがって‥ッ勝手によ‥!オレの許可取れよ!」
鎖骨、生脚。普段ガッコーでは見れない露出っぷりだ。
「オメーのもんじゃねーンだ!アホ!」
「オレのもんになれ。オレも、オメーのもんになる」
「‥うそ‥だろ‥?‥!?」
「うそでキスできっか?」
鎖骨に生脚にもキスされ蓮次は身震いする。
「〜〜迫田‥ッ!!」
「ヅラじゃねーのか!?どーなってんだっ?」
「‥エクステだ」
「ア?なんだそりゃ。本気じゃねーか‥っなんでそこまでした?」
二重にしてカラコンしてメイクしてつけまつ毛までした。
「‥‥やるなら、ちゃんとやりてーだろ。負けたくねーし」
誰にとかはない。やるなら本気で挑んでみた。
「ハッ‥オメーのそーいうとこダイスキだわ」
「!」
「ロン毛も似合うじゃねーか!オレの前ではいつもの髪型で
その格好しろよ。扉開きかかってっからいっそ開けてくれ」
「‥はあ?‥刺さり過ぎだろ」
「ここブチ抜くなよなぁ‥責任取れよ」
「あのな‥‥もう好き勝手してる癖によ‥っ」
「店には帰さねーぞ。好きなもんは食わしてやるからよ」
「‥‥腹減ってんだ、ずっと接客してよ。いーもん食わせろよ」
「おう!こんなとこおさらばしよーぜ?テイクアウトして家直帰だ!」
「‥この格好でか?」
「彼女とでも思われんだろ」
「‥こんなでかい彼女いるか?」
迫田に腕を組めだの手を繋げだの恋人同士と思わせるような事を言う。
「誰にも分かんねーだろ、オメーだって。
恋人繋ぎさせろ。手、出せ」
「‥‥」
食事を終えたら、部屋に連れてかれる。
「‥あれだけの奢りじゃーよ、これ以上すんのには足りてねーぜ?」
「‥合意の上だろ」
「どこがだよ!ッ‥」
「‥分かってねーのか?いーけどよ‥オレだけ悪者でもよ」
「ア!?ッ‥やり過ぎだバカ!」
「やっぱ下着ちゃんといーの穿いてんじゃねーか!さすがだぜ、蓮次」
スカートめくりを想定して上にガードを着ていた。
それをもう脱がされていた。
「っさこた、銭湯で裸見てんだろ‥ッ」
「‥このエロい格好もな、そそんだよ!」
「"も"?てめーはそんな目で見てたのか‥?」
「‥い、いーだろ。おめーは肌白いし、細いしよ、‥見ちまうんだよ」
「‥‥んな事も知らずにてめーの前で無防備だったわけだ‥」
「おー‥‥バイト中だってよ、おめーくれーしか見るもんなかったしな。
てめーがそーしたんだろ‥そーいうとこ選んだのはよー‥」
色々と知らなかった事を知らされ、あっさり一線を越えた。
文化祭の日だけど、家で二人きりでいつもより思い切れた。
本気で抵抗しなかった癖に。
触ってハグしてキスまでしても。
こんな事しても流されてた癖にと迫田は思う。
こいつはオレ以外とオレではキレ方が違うのは知っていた。
校内でカワイーって言ったら嬉しそうに少し笑んでいた。
口説いたら戸惑っていて、女だとしたら間違いなく、
男のおまえでもって、メイドの格好がきっかけだとしても、
好きなのには変わりねーってもう一度ちゃんと伝えた。
***
尾「あいつら‥どっかに隠れてっか、帰りやがったな‥クソ!
‥まぁ、食品ロスにはならなそーだけどよ」
努「‥‥今頃手遅れじゃねースか。花さんでもいない限り」
尾「‥やめろよ、生々しーこと言うんじゃねー。最初から花に頼めば良かったぜ」
努「‥蓮子さんほんとに可愛かったし‥あの野蛮人はマジだったし‥」
浅「‥‥」
蘭「‥見たかったぜ、んなオモシレーとこ。詳しく聞かせろよ笑」
尾「‥あいつの口説き文句オレに言わせる気か?ムリだ」
浅「‥そんなにか」
尾「すごかったよな、ツトム」
努「はい‥。オレは蓮子さんが襲われてるのを初っ端から見てんすよ?」
浅「まずその蓮子をオレらは見てねーんだ。写真ねーのか?」
蘭「おい、興味津々じゃねーか」
浅「うるせー、おめーもじゃねーか!」
努「つか花さんを呼んだとしてもムリっスよ。
ありゃスゲー執念で、オレにも止められなかったんすから」
後から合流した郁美・村川だけでなく、
他にも頼れる仲間の浅井、蘭丸にも探すのを頼んだがダメだった。
蓮子は完全に連れ去られてしまったのだ。
みな会いたくても二度と叶わなくなった。
ツトムの言葉を聞いて鎮まりかえり、
郁美と村川が来て何事だと騒がれた。
***
努「おはようございます」
「おう」
「おー‥珍しーなおめーの面ァ朝から見んのはよ」
努「体育館集合スけど、まだ全然来てねーすよ」
「いて‥」
蓮次は椅子に座ろうとして立ち上がる。
「またかよ。立ってるか?」
スルリと尻を撫でられていた。
明らかに機嫌の良い迫田と、
怒ってるのにどこか上手く反撃できない蓮次。
「腰いてー‥」
努「‥大丈夫スか?オレが代行して殴りましょうか?」
「頼む」
「おー、かかってこい!相手しちゃる♩」
努「‥‥。朝から元気いーな‥」
「さみーし‥オレァふけよーかな」
「あっためたろか」
「‥ツトム、後で内容教えてくれよ」
努「了解っす」
「蓮次」
「!おい、やめろ‥!」
迫田は簡単に抱き抱えていた。
「保健室行くぜ。オイ、ツトム、鞄!」
努「もう持ってる」
「そこまでじゃねーから‥!」
「ムリすんな」
努「おれも湿布もらいに行こ‥」
無理やり抱えていた蓮次をベッドにゆっくり下ろしていた。
「寝てろよ」
「‥これじゃー家と変わらねーよ」
「ツトム、湿布」
努「はいはい」
「はい、は一回だ!うつ伏せになれ」
「自分で貼れっから、二人とも戻っていーぞ」
努「そーはいかねースよ」
「そーだぜ。背は貼れねーだろ」
服をめくられ背に湿布を張られていた。
「なにしてんだ」
「ベルト緩めろよ。腰に張りにくいんだよ」
「‥‥」
ペタ、ペタと貼り終わる。
「どーだ?」
「‥ん。‥心地いーな」
「"気持ちー"だろ。他いてーとこねーか?」
「ねーよ」
「よし、ツトムご苦労だったな」
努「‥いや、あんたとオレは体育館だよ」
「オレァ看病すんだよ」
努「それは保健室の先生の役目だ」
「あー?そーだけどよ」
「二人とも行ってこいよ?」
「蓮次‥オレも腰いてーつってふけよーかな」
「バカ‥アホか。早く行け」
「フッ‥」
「あ?」
「いや」
「バカ、早く行けよ」
迫田はニッと笑ってるというよりはニヤニヤしていた。
背を向けて顔だけ振り向いて喋っていた蓮次は
疑問そうに体勢を変える。
「いて‥っ。なんだよ?」
「‥遅漏でわるかったな。イッてくるぜ」
迫田は自分の鞄だけ持って行った。
ツトムも蓮次に行ってきますと言って後を追った。
努「‥‥。あんた、全然隠さねーな」
「あー?なんの話だ」
努「蓮次さん少し赤くなってましたよ」
「ア!?先言えよ!戻るぞ」
努「ちょっと‥っ」
「あんのヤロー‥」
昨日同じ事を言っていたのを思い出した。
早くイケ、バカって。
「蓮次」
「!?////」
「コーヒー買ってきてやる」
努「それじゃあ目ー覚めちまうだろ」
「そーか。なに飲みてー?首まで赤えぞ?」
「‥‥。なんで戻ってくんだよオメーら‥。アイスコーヒー」
「ツトム。缶コーヒー買ってこい」
努「‥授業出るつもりっすか?本当にムリしない方が」
「‥迫田、オメーが買ってくんじゃねーのかよ!
ツトム、ヘーキだからよ。体育館は冷えてムリでも教室はあったけーし」
努「そーすか‥」
「おいツトム!」
努「蓮次さんはあんたをご指名ですが?」
「おー、オレを永久指名は分かってんだよ」
努「‥話が噛み合わねーな」
「おめーオレじゃなくて蓮次の言う事聞くのか?」
努「あたりめーだ」
「ほー」
目の前で取っ組み合いになったので、蓮次は止めた。
「やめろ!!」
「「はい‥っ♡」」
ピタリと止まる。昨日の再現みたいに。
「っいて‥」
蓮次は腰を浮かしていた。
「尻にも貼るか?」
「‥ツトム、湿布念の為置いてくれ。
迫田、おめーはとっとと体育館だ」
努「はい!どーぞ」
「‥‥終わったらコーヒー二人で買ってくっから待ってろ。ツトム行くぞ」
努「‥オレには?」
「‥あー?いーぜ、たまにはな」
努「うそ!?あんたがオレに奢りなんて初じゃねーか!」
「‥そーだったか?ま‥‥教えてくれたからな。1本な」
努「やった」
「教えてくれたってなにをだ?」
「‥なんでも。横になってろ」
「‥‥」
***
努「蓮次さん、見て!記念缶」
珍しい柄の缶が出たらしい。何かのコラボだろうか。
「はしゃいでよ、こいつカワイーとこあんだろ」
「フッ‥あぁ。にしても、たくさん買ってきたな?」
温かいシリーズでペットボトルまである。
「あったけーの飲んだ方がいーと思ってよ」
「‥!うめー‥しみる‥」
蓮次はコーンポタージュ缶を飲んでいた。
「何個か置いとくぜ」
努「そろそろ教室行きましょーよ」
「そーだな」
「‥ありがとな。ツトム、迫田」
「‥オレが先だろ」
努「いーだろ、どっちでも」
「金出したのオレだぞ!」
努「温かいのにした方がいーつったのはオレだぜ!」
「バカ!言うなよ!カッコつけさせろよ!」
努「あ‥」
ツトムは口止めされたのをポロッと言ってしまった。
「フッ‥ハハ!おめーらほんと、おもしれーな」
努「あんまりこの人とまとめて言わんで下さい」
「どーいうイミだコラ?!‥いーけどよ、今日は機嫌いーからな」
努「‥‥」
蓮次は二人がようやく授業へ行ったなと目で見送った。
努「蓮次さんの腰の原因はあんたっすか?」
「‥あー?イミ分かんねー事言うな」
努「分かるだろ‥朝挨拶した時から分かりましたけど。
つか昨日からだけどな」
「‥それあいつに言うなよー‥誰にもよ」
努「‥はい」
「‥あいつ機嫌わるくなると厄介だからな」
努「‥腰いたがっててなんかえろいっスね‥」
「だろ。顔あけーし、腰周りずっと気にしてるしよー。
からかいたくなる気持ち分かんだろ」
努「‥まあ‥」
「ただあいつのことエロ目で見ていーのはオレだけだからよ、分かったな?」
努「‥昨日の事で写真拡散されて、ファン出来てるみたいっスけど。蓮子さんの」
「なんだと!?‥画像持ってんのか!?」
ツトムの携帯から見せてもらった。
「‥‥。誰が撮ったか分かるか?」
努「あぁ、大丈夫ス。昨日尾崎さんが気付いてオレらがもう制裁入れといたんで」
「画像送れ!‥それによ、オレがもっぺん行く」
努「もっぺん‥」
イクとイケという言葉を蓮次さんがあの後避けていたのを思い出す。
「オレがケリをつけるぜ。二度と面ァ出せねーくれーにな」
努「‥‥オーバーキルだぞ?」
「にしてもよ‥誰のもん勝手に撮ってやがんだクソが‥ッコロしてやる‥!」
努「‥‥。そのおかげで写真が残ってるんスけどね?」
「‥どれもよく撮れてんなァ。オレァ昨日撮ったやつ持ってっけどな♩」
努「え!送ってくださいよ」
「‥‥‥。送っちゃダメなやつだ」
努「‥‥。ず、ズリィー!自慢かよ!!」
「コーヒー奢ったろ」
努「そんなんじゃ割に合わねーよ!」
「あんだと?‥‥仕方ねーな。昼一緒に食おーぜ。
蓮次はたぶん休むだろーしよ」
努「いーすけど‥焼きそばパン奢りスか?」
「おー、そんくれーいーぜ」
努「‥心、入れ替えたんスか?一周回って蓮次さんがすげー」
「なんでオレを褒めねーんだよ!アホ!!」
***
「もー寝んの飽きたんだよ」
「おい蓮次、行くな」
「‥離せよ」
昼休みに保健室から離れようとしていた蓮次を廊下で引き止めた。
「んな腰で行くな!」
尻を叩かれてよろめく。
「いッ‥!?」
「午後は保健室で過ごすか、家で過ごすかの二択だ」
「‥ッ‥てめー‥!」
努「‥‥」もぐもぐ
「‥オイ、ツトム、いま食うな!」
努「いや、長引きそーだから。次体育で食っとかねーとだし」
買ってもらった焼きそばパンではなく、
郁美さんから拝借したらしいカップ焼きそばをすする。
「‥蓮次、オレのカップ麺やるから」
努「(郁美さんのだろ‥)」
「仮にも体調不良で寝てたオレにんな身体にわりーもん食わす気か?
せめて栄養あるもんくれよ。オレの時間も取ったんだしよ」
「‥‥。そーだな!元気なもん食わしてやらねーとな。代わりに次は中に出していーんだな?」
「‥‥‥ア?」
努「ブッ‥!」
焼きそばを吹き出してカップ皿に半分戻ってしまう。
「今日はうんと食わしてやるけどよ、毎回はなしだぜ!
時間を取っただの言うのはよ!合意の上だろ」
「ッ‥!」
ツトムは蓮次にはたかれる迫田を見た。
躊躇ない痛そうなビンタだった。
「ッ‥オイ‥なに怒ってんだ。ツトムしか気付いてねーから安心しろ!」
「触んな!‥喋ったのか?」
「喋ってねーよ」
努「ち、違うっす、蓮次さん!
オレがオレがそうだって昨日から気付いてて‥!
勝手に‥すいません」
ツトムはキレた蓮次を見るのが初めてで思わず謝ってしまう。
「‥‥。おまえは謝る必要ねーよ」
努「え‥」
「ふざけんなよてめー!ソレしたらどーなるか分かるか?
次は腹痛で保健室で寝てろってーのかよッ!ア!?」
「‥腹痛?‥出したらそーなんのか?」
「調べてから言え!」
「おい‥知らねーんだよ!オレだって初めてなんだからよ‥」
「黙れ!もー喋んな!!」
「蓮次!わるかったって!家まで送るぜ」
「しね」
カップ麺を落としてって二人は帰ってしまったのでツトムは拾った。
***
「ガッコーではもー言わねー、からかわねー。
約束する!二人きりの時だけな。
ただよ、しねっつーのは二度とやめろ!」
「‥‥」
「傷付くだろ」
「‥傷付くタマかよ」
「ふざけんな!」
「‥オレの気持ちも少しは考えろ」
「‥分かんねーから、いつも言えっつってんだろ!?」
「‥‥はぁ。いてーんだよ今も」
「‥さっき軟膏買ったろ。塗ってやるから服脱げ」
「ふざけんな」
「ふざけてねー!パートナーの具合くらい共有すんだろ!」
「‥‥パートナー‥だ?」
「‥おー。何もしねーから見せろ。次は気をつけるからよ」
「二回目があると思ってんのか?」
「‥ねーのか?」
「‥‥」
「蓮次?‥あのよ、好き合ってる行為だろありゃあ‥」
「‥興味本位だっただけで‥」
「‥誰でもできたのか?アレを。本気で言ってんのか」
「‥‥」
「‥もう人前でいじらねーから機嫌直せよ」
「‥いてーからイライラすんだよ‥っ」
結局、押し負けて塗ってもらった。迫田に謝られながら。
「‥はぁ‥‥ばかのくせに‥なんでだよ‥っ」
なんでこんなにあいつが良いのか分からなかった。
丸め込まれるかのように後ろから覆われて、
恐さはなく心地よくて、なにより安心したのだ。
心から嫌じゃないって事なのか。
努「‥今日も機嫌いーのかよ。おい‥なにがあったんスか」
「かっかっかっ!ひ・み・つ」
努「‥口止めされたんスね。ま、いースけど。
あんた見てるとバレバレなんで」
「‥自慢してーがよ〜〜〜そーいう事だ。じゃな!」
努「‥なんだか、ムカついてきたぜ‥っ」
プリンに後ろから野次をかけられ、怒りを発散するかのようにツトムは追いかけた。
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