天世良 (軽くR18)
世良はダイヤの中では特に人気で、
プロポーズを断るのに時間を要していた。
「‥来るわけねーか。時間がねーな‥」
待ってるだけじゃダメだ。
ダイヤという立場に甘んじず行動に移さねーと。
自ら会いに行かねーとな。
「ダイヤがこんなとこに居ていーのかよ」
事前に情報を辿りおおよその検討をつけ彼を見つけられた。
「‥天地、おまえ外に戻るんだろ。オレも連れてってくれ」
「‥なんだと」
「城に居たらオレはこのまま強制的に契りをさせられ、
此処に縛られちまう。オレは此処から離れてーんだ」
「‥‥」
「頼む‥!」
世良は天地の胸に飛び込んでいた。
「‥勝手にしろ」
天地の移動手段が黒色の馬とは驚いた。
天地たちが潜む棲家に世良もお邪魔したら周りの視線をいっぺんに浴びる。
東「オイ‥その格好!」
康「初めて見たぜ、ダイヤだろおめー‥!」
「‥あぁ」
天地の仲間に話しかけられる。
事前に調べて大まかには把握していた。
しばらく一緒に暮らせてはいるが、
そもそもダイヤのクラウンを掴みに来たのに相変わらず天地の態度は変わらない。
バカみてーだなと思う。
城から出てこんな辺鄙な森の中で隠れ棲むなんて。
「‥‥」
贅沢は言ってられない。
オレはあいつと共にいたいから付いてきたんだ。
⭐︎
世良は仕事を手伝う上で知りたくない情報に接触した。
天地に問いただして殴りそうになる。
「天地テメー‥舐めンじゃねーよ‥!」
「フッ‥‥‥そっちのが合ってんぜ」
「ッ‥だと!」
仕事上の仮面夫婦であり、まだ未婚だと天地から知らされる。
世良は胸ぐらを掴んでいた手を離した。
肩の力も抜ける。
「‥期待させたくねーから言うぜ。オレはダイヤは取らねーよ」
「なんでだ?不自由なく暮らせんだぞ」
「んなもん望んでねー。今の仕事が性に合ってんだよ」
「‥フッ、そーか」
世良もその言葉で決心がついた。
オレはダイヤをやめる。
これで城へは関われなくなる。
棲家にて世良は尋ねた。
「なぁ、服余ってねーか?」
康「ア?余ってねーよ。着替えんのか?それって権利を剥奪されちまうんじゃねーのか」
「そーだ。この服を来なきゃただの人間だ。オレはもう城を出たんだ。
仕事を手伝っておまえたちの力になりたい」
東「‥」
みな驚いていた。
康「もったいねーな‥!オレだったら喉から手が出るほど欲しーぜ、権力や金をよ」
東「服は街まで行って買い付けるしかねーよ」
「そーか!金は多少持ってきてるし方向は分かってるからちょっと行ってくるぜ」
「‥‥」
世良は一人で買い出しに行ってしまった。
康「オイ、天地!いーのか?あいつおめーを追って城を出てきたんだろ」
善「あのままで彷徨うとかっこうの餌食だぜ!」
「‥‥」
東「天地、この森は慣れねー上に1人じゃ無理だ。賊に囲まれちまったら、死んじまうぜ」
「‥‥」
「天地」「天地!」「天地!」
名を呼ぶ声が飛び交う。
「うるせーな‥!」
戸を強く締め付け天地は出て行った。
黒色の馬に乗り森の中を駆け抜ける。
⭐︎
「こいつ本物か?なんでこんなとこにいやがんだ?」
「この服間違いねーよ‥!ここらじゃこんな高価なもん見た事ねーっ」
「本当のダイヤだったらそれ以上の価値だ」
「‥こいつ、顔に傷があるぜ」
「とりあえず服を剥いで、こいつも運ぶか」
馬は立ち止まり、天地は降り立つ。
「なんだオメーは!?」
天地は世良直樹が意識を失っているのを確認した。
こいつらに殴られやられちまったようだ。
賊は武器も所持していた。
「‥‥」
「ひっ‥!」
目が合った奴も逃げそうな腰抜けも全員逃がさねー。
天地は一人残らず殴り続けた。
素手だけではない。ここで生き抜く為にはあらゆる武器を隠し持っている。
「‥はぁ‥はぁ‥」
世良を担ぎ馬に乗せ街へ向かった。
宿へ着き、医者と呉服屋の女を呼べと店主に指示した。
⭐︎
「ん‥」
世良は起きたらベッドの上だった。
明るい日差しが差し込んでいて朝になっている。
身体中が痛くて顔に触れたら手当をされているのに気付く。
近くの丸テーブルには水のボトルと服が畳まれて置かれていた。
「‥!」
とりあえず水を飲み、痛みに耐えながら隣に寝ている人を確認しにベッドから出た。
天地だ。
布団を肩まで被り背を向けて寝ていた。
世良は丸テーブルの方へ振り返り、
置かれていた服を広げたら欲しかった衣装で笑みがこぼれた。
「フッ‥‥」
床が軋み、天地は目を開く。
静かに寝返りしたら世良が背を向けて着替えていた。
世良は高価なダイヤの服を床に滑り落とす。
ダイヤの下着は布面積が少なく臀部が露わになっている。
世良は全ての荷を下ろしたような感覚だった。
新たな服を試しに着たら身体にフィットして動きやすかった。
そのまま鏡を見たら髪が汚れていることに気付き、部屋にあるシャワー室へ入った。
シャワーから出て新しい服に下着から全て着替え、着ていた服は全て手洗いし中に干した。
「‥‥」
「起きたか」
天地はベッドに座っていた。
干し終えたら向かいのベッドに世良は腰掛ける。
「ありがとうな」
「‥城の周りとはワケが違うんだ。次はねーぞ。自分で身を守れ」
「あぁ、悪かった。これに着替えたんだ。オレはもうヘマはしねーよ」
「‥‥」
「そーだ、洗いたいもんあるか?ついでに干してやる」
「オレはいい」
「どこ行くんだ?」
黙って行こうとする天地を引き留めた。
「天地!」
「付いてくるな」
「どこ行くかくらい言え。連絡手段がねーんだ」
「‥街に来たんだ。ついでに買い出ししてくるだけだ」
「‥‥」
不安げな世良を横目に天地はようやく伝えた。
「午前には宿を出る。それまでにはここに戻る」
⭐︎
天地といると一喜一憂してしまう自分がいて、
これ以上何も望まないと思っていたのにな。
「傷付いた顔してんじゃねー」
「‥してねーよ‥」
「‥‥バカだなオメーは。言っただろ?
オレは温かいのが苦手なんだよ。
此処が冷め切ってるのが分かるだろ。
おまえとオレじゃはなから合わねーんだ」
「‥‥」
それでもおまえに強く惹かれたんだ。
放っておけなくて。
城の窓辺から仕事で現れる天地をいつも目で追っていた。
「‥ダイヤは、んな脆いのか‥」
「‥砕けねーよ?けど、今だけは胸を貸してくれ」
世良が天地に抱きついたのは城を出たとき以来だ。
ダイヤは捨てると言っていた。
けどこいつは芯からダイヤだった。
変わろうとしても変われない。
城の人間という縛りから逃れようと抗った世良を不憫に思う。
「‥」
涙を流すこいつに口付けていた。
「諦めきれなくなるだろ‥っ」
「‥‥もういい」
「?」
「もう城とは関係ねーんだ。自由に生きろ」
「‥‥おまえといてーんだ‥っ」
声を震わせ天地に想いを伝える。
「‥‥分かってる」
⭐︎
「部屋替えだ。世良のベッドをオレの部屋に運べ」
康「お!‥てーっと、親分がクラウンか?」
「とっくにんなもんねー」
康「ア?よくよく考えたら服は残してあんだからよ、着るだけじゃねーのか」
世良は手放していた服がまだある事に驚く。
「天地、服は売るって言ってなかったか?」
「‥あれはとっておく。いざという時にな。
一番高価な代物だからな」
一番高価な価値があるのはこいつだ。
本人の自覚はねーがな。
簡単に身分を捨てやがるし。
「オレとこいつは今日から同部屋になる。さっさと運んどけ」
康「へーへー」
⭐︎
世良は仕事と必要なこと以外は喋らなくなった。
こいつなりの気遣いだろうが。
二人いるのにやけに静かに感じる。
「オレの部屋だけ防音壁が厚いんだ」
「そうなのか?なんでだよ」
「‥一番良い部屋を自分のにしただけだ」
「なるほどな」
世良はパジャマを着ていて本を読んでいた。
こいつの読書量は半端なく頭もキレて間違いなく此処では役に立つ。
「‥オイ、もー読むな」
「?」
「こっちに来い」
本を閉じて天地のベッドに乗る世良。
「‥構って欲しかったのか?悪かったな、
話しかけて欲しくねーのかと思ってた」
「‥‥」
天地の手で世良を引き寄せた。
「!‥なんだ、防音ておまえ‥ここに女連れ込んでねーだろうな」
「‥」
「天地」
「連れてねーよ」
「‥」
「ったく‥」
泣いてた時とえらい違いだ。
押し倒して眼鏡を投げた。
「投げるなよ‥」
「‥」
「っ‥ン‥」
初めから一つだったんじゃねーかってくらい自然と二人は重なっていた。
初めて交わって世良は余裕なく涙を溜めていた。
なんども体勢を変えては求められて、世良は顔を歪ませる。
強い刺激で痺れてしまい、やめない天地を止めようと引っ掻き、叫んでせがむ。
天地は中に出した。
⭐︎
東「大丈夫か?体調悪くなる事が多いな」
「わりー‥」
「身籠ってるからおまえが代わりにやれ」
天地の言葉に二人とも仰天していた。
「おまえが気付いてないわけねーよな」
「なんで知ってんだよ!城の事をよ」
ダイヤは妊娠できる。
康「みんな知ってんぜ」
ガ「あぁ」
東「外にも広まってるぜ」
「うそだろ‥」
「おまえは城にいて気付かなかっただけだ」
⭐︎
康「ダイヤさんよ‥座っててくれよ。オレが怒られちまう」
「体調良い時くらい動きてーんだ。座り続けるのも身体に悪いしな」
休憩を挟んでいた世良は部屋のベッドで座っていた。
天地は世良に寄り添った。
「不安じゃねーのか?‥城に戻るか」
「‥おまえがいてくれれば安心だ」
「‥‥」
初めて守りたいものが出来た。
この仲間とこいつも失いたくない。
「おまえが望むなら城に行ってもいい」
「‥おまえのやりたい事を奪っちまうだろ」
「そんな事言ってる状況じゃねーんだ。産む環境がねーんだぞ」
「あるさ、どこでだって産める」
「‥あの服を着ろ」
世良の顔色の悪さは日に日に増している。
「おまえのクラウンになってやるって言ってんだ!」
「‥‥」
「オイ!」
天地は周りに助けを呼び、すぐさま城へ向かうよう皆で手配した。
東「頼むぜ、旦那!」
みな世良を見守り心配していた。
城へ着き、すぐさま世良は医務室へと運び出される。
オレは歓迎されてないようだった。
「丁重に扱えよ。オレはあいつのクラウンだ」
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