お兄ちゃんと呼んでくれ
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剣道のハウツー本を読んで思ったのは、「当たったらメチャクチャ痛そう」だったので、早々に退部届けを出したくなった。
こんな叩く、ど突くみたいな部活、絶対に本気で取り組みたくない。
退部は許してもらえそうにないし、入るだけ入って、適当にやろう。
そう思っていたし、武術部とは剣道部的な物だと思っていたが、紅炎さんの小脇に抱えられ連れられてきた体育館では、防具なしで剣やら長槍やら弓やら素手で雄叫びをあげながら戦う生徒たちがいて、理解が追い付かない。
なにこれ、暴動?
目を白黒させる私などお構いなしに紅炎さんは中へ入り、暴動をいい笑顔で眺める白雄さんの前まで来ると「春蓉を連れてきました」と言う。
「ありがとう、紅炎」
「これくらい、お安いご用です」
そっ、と地面に下ろされ、震えながら「なんですか、この部活……」と問えば、「武術部だが」と不思議そうな顔で言われた。
「部活の内容説明をお願いします」
「ここはあらゆる武術を体得、修練することを目的とした部活だ。近接武器、中距離武器、長距離武器、素手。全ての武術と手合わせすることで肉体と精神力の強さを極め、時にはチーム戦で連携を覚える」
予想以上に脳筋部活だった。
なんだ、そのとんでも部活。初めて聞いたぞ。
この部活こそ、白蓮さんに相応しい気もするのだが。
なぜ白蓮さんは弓道部なのかと聞いたら、「武器の扱いは文句なしだが、集中力と冷静さが足りない」と、白雄さんが笑いながら言っていた。
納得しかできない。
「いや、と言いますか、私。武道の経験がないので、こんな野蛮……げふん!荒々しい部活にはちょっとついていけません」
逃げようとする私の腕を紅炎さんがしっかり掴んで離さないので、言葉での和解を試みてみるものの、白雄さんは晴れ晴れとした笑顔で「何事も慣れだ」と仰る。
ダメだ、この人もまあまあ脳筋だ。
「まずは白瑛と一緒に、武器を決めようか」
「素手は論外なんですね」
「いや、素手は一緒に覚えていく」
うわぁ、もう体育会系の上位互換じゃないか。
なにもしていないのに疲れきっている私を白瑛さんは体育館の隅に連れていき、色々ある作り物の武器から私でも扱えそうな物を選んでくれた。
「これ、作り物ですけど当たると痛いですよね」
「痛いですよ。ですが、慣れればどうということはありません」
きりっ!と凛々しい表情で言われても、私は一般人程度には痛みに対して恐怖を覚えているんですよね。
ドン引きする私など見えていないかのように、白瑛さんは「まずは扱いやすい短剣から」と、鍔付きの短剣を握らせてきた。
武器を握るなど初めてで、なにをどうすばいいのかわからない私に、白瑛さんは構えから握り方、攻撃の仕方まで丁寧に教えてくれた。
武器に精通している女子中学生のヤバさに恐れ戦いた。
「さすが、春蓉殿!筋がいいですよ!」
「はあ、ありがとうございます」
「では、手合わせをしましょう!」
「なんでそうなるの!」
こっちは武器握って二十分ちょっとしか経っていないんですよ?!
殻を尻につけて、ヨロヨロ二足歩行覚えたばかりの人間に手合わせとか、なにを考えているんですか?!
「青舜!いますか!」
「はい、白瑛様!」
青舜と呼ばれた小柄な生徒が駆け寄り、「いかがされましたか?」と問いかけ、それに「春蓉殿のお相手をしてあげなさい」と白瑛さんは言った。
「畏まりました。では、春蓉殿。こちらへ」
体育館の空いているスペースへ移動し、構えた青舜さんに「構えてください、行きますよ」と言われ、先ほど習った構えをする。
なにかしら合図があるのかと油断していたら、なんの合図もなしに青舜さんが一歩で間合いまで跳んできて、驚き構えを解き急所を晒し、軽く急所を突かれてしまった。
「油断しないでください。もう一度、行きますよ」
「は……はい……」
もう一度、最初からやり直し、いつでも青舜さんが攻撃に転じてもいいように、一挙手一投足に意識を集中する。
膠着状態が続いたが、青舜さんが軽く地面を蹴り先ほど同様、距離を詰めてきたので、体の位置をずらし構えを崩さず攻撃の軌道から逃げる。
構えは絶対に崩さない、急所を晒さない、退かない。
それだけを意識し、隙はないかと探るが初心者がわかる隙などあるはずもない。
攻撃だって、青舜さんが私が避けられるギリギリの速度で調節しているから、当たらないだけ。
どうしてこうなる、という気持ちと、手加減をされている屈辱で頭が沸騰しそうだ。
相手は一向に隙も見せず、体勢も崩さない。
しかし逆に、油断しているいまがチャンスなのではないか。
そう判断し、短剣を両手で握り、深く踏み込む。
それをいなそうと半歩退こうとした青舜さんの足を踏み邪魔をすれば、予想通り体勢を少し崩した。
いまだ!と短剣を振るも、体勢を崩したというのに軽く避けられた。
経験値の差!
完全に一か八かの奇襲だった為、避けられたあとのことなど考えていなくて、そのまま腕を引かれ倒される。
「みぎゃっ!」
派手に転倒した私に、白瑛さんと青舜さんが慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか、春蓉殿!」
「すみません!不意を突かれて、つい!お怪我はありませんか!」
「鼻が」
「赤くなっていますが、大丈夫ですよ」
白瑛さんが優しく語りかけてくるが、じんじんとした痛みで涙がでそうなのですが。
よろよろと立ち上がり、体育館の隅で泣くのを堪えていたら、「大丈夫か、春蓉?」と白雄さんまで来てしまった。
いまはそっとしておいてほしい。
「顔面を打ち付けただけで、情けない」
心配など微塵もしない紅炎さんの言葉にカチン、ときたが、私が噛みつく前に「顔を打つなんて、女の子なら普通経験ないさ。しかたないよ、紅炎」と白雄さんが窘めてくれたから、やめておこう。
「春蓉。今日は見学していなさい。見ることも勉強のうちだ」
「はい」
白雄さんに促されるまま、体育館の端で型が綺麗だと感じる白瑛さんと青舜さんの手合わせをまばたきも忘れて見つめていたら、途中で青舜さんが「あの、先ほどはすみませんでした」と謝りに来て、首を傾げてしまった。
「初心者の方相手に、まさか怪我をさせるとは……本当にすみません」
「あぁ、なるほど。怒ってないですよ。そういう部活なんですよね?」
「えぇ、まあ。打撲はよくします」
「なら、謝る必要はないですよ。私も、白雄さんたちの口振りで多少は覚悟していましたし」
とは言え、痛いものは痛いのだが。
「そうでしたか。先ほどから、ずっと睨まれている気がしたので、お怒りだったのかと」
「集中すると目付きが悪くなってしまうものでして。すみません」
「白瑛様も、集中すると目付きがきつくなりますが、血筋ですかね……」
「血筋でしょうね……」
こんな叩く、ど突くみたいな部活、絶対に本気で取り組みたくない。
退部は許してもらえそうにないし、入るだけ入って、適当にやろう。
そう思っていたし、武術部とは剣道部的な物だと思っていたが、紅炎さんの小脇に抱えられ連れられてきた体育館では、防具なしで剣やら長槍やら弓やら素手で雄叫びをあげながら戦う生徒たちがいて、理解が追い付かない。
なにこれ、暴動?
目を白黒させる私などお構いなしに紅炎さんは中へ入り、暴動をいい笑顔で眺める白雄さんの前まで来ると「春蓉を連れてきました」と言う。
「ありがとう、紅炎」
「これくらい、お安いご用です」
そっ、と地面に下ろされ、震えながら「なんですか、この部活……」と問えば、「武術部だが」と不思議そうな顔で言われた。
「部活の内容説明をお願いします」
「ここはあらゆる武術を体得、修練することを目的とした部活だ。近接武器、中距離武器、長距離武器、素手。全ての武術と手合わせすることで肉体と精神力の強さを極め、時にはチーム戦で連携を覚える」
予想以上に脳筋部活だった。
なんだ、そのとんでも部活。初めて聞いたぞ。
この部活こそ、白蓮さんに相応しい気もするのだが。
なぜ白蓮さんは弓道部なのかと聞いたら、「武器の扱いは文句なしだが、集中力と冷静さが足りない」と、白雄さんが笑いながら言っていた。
納得しかできない。
「いや、と言いますか、私。武道の経験がないので、こんな野蛮……げふん!荒々しい部活にはちょっとついていけません」
逃げようとする私の腕を紅炎さんがしっかり掴んで離さないので、言葉での和解を試みてみるものの、白雄さんは晴れ晴れとした笑顔で「何事も慣れだ」と仰る。
ダメだ、この人もまあまあ脳筋だ。
「まずは白瑛と一緒に、武器を決めようか」
「素手は論外なんですね」
「いや、素手は一緒に覚えていく」
うわぁ、もう体育会系の上位互換じゃないか。
なにもしていないのに疲れきっている私を白瑛さんは体育館の隅に連れていき、色々ある作り物の武器から私でも扱えそうな物を選んでくれた。
「これ、作り物ですけど当たると痛いですよね」
「痛いですよ。ですが、慣れればどうということはありません」
きりっ!と凛々しい表情で言われても、私は一般人程度には痛みに対して恐怖を覚えているんですよね。
ドン引きする私など見えていないかのように、白瑛さんは「まずは扱いやすい短剣から」と、鍔付きの短剣を握らせてきた。
武器を握るなど初めてで、なにをどうすばいいのかわからない私に、白瑛さんは構えから握り方、攻撃の仕方まで丁寧に教えてくれた。
武器に精通している女子中学生のヤバさに恐れ戦いた。
「さすが、春蓉殿!筋がいいですよ!」
「はあ、ありがとうございます」
「では、手合わせをしましょう!」
「なんでそうなるの!」
こっちは武器握って二十分ちょっとしか経っていないんですよ?!
殻を尻につけて、ヨロヨロ二足歩行覚えたばかりの人間に手合わせとか、なにを考えているんですか?!
「青舜!いますか!」
「はい、白瑛様!」
青舜と呼ばれた小柄な生徒が駆け寄り、「いかがされましたか?」と問いかけ、それに「春蓉殿のお相手をしてあげなさい」と白瑛さんは言った。
「畏まりました。では、春蓉殿。こちらへ」
体育館の空いているスペースへ移動し、構えた青舜さんに「構えてください、行きますよ」と言われ、先ほど習った構えをする。
なにかしら合図があるのかと油断していたら、なんの合図もなしに青舜さんが一歩で間合いまで跳んできて、驚き構えを解き急所を晒し、軽く急所を突かれてしまった。
「油断しないでください。もう一度、行きますよ」
「は……はい……」
もう一度、最初からやり直し、いつでも青舜さんが攻撃に転じてもいいように、一挙手一投足に意識を集中する。
膠着状態が続いたが、青舜さんが軽く地面を蹴り先ほど同様、距離を詰めてきたので、体の位置をずらし構えを崩さず攻撃の軌道から逃げる。
構えは絶対に崩さない、急所を晒さない、退かない。
それだけを意識し、隙はないかと探るが初心者がわかる隙などあるはずもない。
攻撃だって、青舜さんが私が避けられるギリギリの速度で調節しているから、当たらないだけ。
どうしてこうなる、という気持ちと、手加減をされている屈辱で頭が沸騰しそうだ。
相手は一向に隙も見せず、体勢も崩さない。
しかし逆に、油断しているいまがチャンスなのではないか。
そう判断し、短剣を両手で握り、深く踏み込む。
それをいなそうと半歩退こうとした青舜さんの足を踏み邪魔をすれば、予想通り体勢を少し崩した。
いまだ!と短剣を振るも、体勢を崩したというのに軽く避けられた。
経験値の差!
完全に一か八かの奇襲だった為、避けられたあとのことなど考えていなくて、そのまま腕を引かれ倒される。
「みぎゃっ!」
派手に転倒した私に、白瑛さんと青舜さんが慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか、春蓉殿!」
「すみません!不意を突かれて、つい!お怪我はありませんか!」
「鼻が」
「赤くなっていますが、大丈夫ですよ」
白瑛さんが優しく語りかけてくるが、じんじんとした痛みで涙がでそうなのですが。
よろよろと立ち上がり、体育館の隅で泣くのを堪えていたら、「大丈夫か、春蓉?」と白雄さんまで来てしまった。
いまはそっとしておいてほしい。
「顔面を打ち付けただけで、情けない」
心配など微塵もしない紅炎さんの言葉にカチン、ときたが、私が噛みつく前に「顔を打つなんて、女の子なら普通経験ないさ。しかたないよ、紅炎」と白雄さんが窘めてくれたから、やめておこう。
「春蓉。今日は見学していなさい。見ることも勉強のうちだ」
「はい」
白雄さんに促されるまま、体育館の端で型が綺麗だと感じる白瑛さんと青舜さんの手合わせをまばたきも忘れて見つめていたら、途中で青舜さんが「あの、先ほどはすみませんでした」と謝りに来て、首を傾げてしまった。
「初心者の方相手に、まさか怪我をさせるとは……本当にすみません」
「あぁ、なるほど。怒ってないですよ。そういう部活なんですよね?」
「えぇ、まあ。打撲はよくします」
「なら、謝る必要はないですよ。私も、白雄さんたちの口振りで多少は覚悟していましたし」
とは言え、痛いものは痛いのだが。
「そうでしたか。先ほどから、ずっと睨まれている気がしたので、お怒りだったのかと」
「集中すると目付きが悪くなってしまうものでして。すみません」
「白瑛様も、集中すると目付きがきつくなりますが、血筋ですかね……」
「血筋でしょうね……」