お兄ちゃんと呼んでくれ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「えっ、転校するんですか?」
お茶会タイムに、まさに青天の霹靂な話をいただいて顔をしかめてしまい、またも白龍さんと紅玉さんを怖がらせてしまった。
違うんです、威嚇した相手はあなたたちのお兄さんたちです。
威嚇した相手は、まったく意に介した表情をしてはいないが。
「ここからでは遠いだろ。なによりも、また迷子になられたら心配する」
「一緒に昼ご飯も食べような、春蓉!」
「迷子になっても、高等部には兄上たちと紅炎殿がおりますし、中等部には紅明殿も私もおります。初等部には紅覇殿、紅玉殿と白龍がおりますので安心してください」
「大丈夫だ、白瑛。まず、俺が目を離さん」
各々、言いたい放題言って、ちくしょう、私は赤ちゃんか、と腹が立つ。
しかも、既に転入手続きを終わらせているらしく、私が駄々をこねるのを理解しているから手を回すのが早い。
もう諦めよう。
この人たちに反抗するのは、あまりにも無駄な労力だ。
「制服とかいただけますか?明日の準備をしたいので」
「あとででもいいんじゃないか?もう少し、お茶を楽しもう」
白雄さんの言葉を「いえ、仕度は早めに終わらせたい性分ですので」と、それっぽい言い訳をして、受けとる物を受けとりこの賑やかな場所から逃げ出す。
やはり、人が多いと落ち着かない。
制服のサイズ合わせは後回しにし、もらった時間割に記載された明日必要な教科書やノートを詰めていく。
「春蓉~。いま、いい~?」
間延びした声に「どうぞ」と作業をやめることなく返せば、障子が開き予想通り紅覇さんが立っていた。
「どうかしましたか?」
「話したいから来たんだよ」
にっ、とイタズラっぽく笑い、私の隣に座り「春蓉はさ、人が多いところ苦手でしょ?」と言われた。
「苦手、というわけではなく落ち着かないんです。一人が好きなので」
「一人の時間が長すぎて、どう振る舞えばいいのかわからないから?」
「っ!」
言葉につまった私を見て「あたり」と言いたげに笑う紅覇さんに、「ち、がいます」と取り繕うも、年下だと言うのにいやに察する能力が高い。
じりっ、と距離をとろうとするが足に体重を乗せ体を寄せ「自分がなにであればいいかわからないんだよね」と言われる。
「わ、私は私です!」
「そうだよ、春蓉は春蓉」
「へ?」
「離れて暮らしてたり、両親がいる手前は本家とか分家とか気にしないといけないけど、僕らだけの時はただの練春蓉でいいんだよ」
そう言いながら、笑って私の頭を撫でる姿は完全にお兄さんで、ただ、私はそんな優しい言葉に「いまさらできるわけないだろ!」と、またもや理不尽に怒りを覚えてしまっていた。
それが嫌で、顔をしかめていたら「嫌なんでしょ、いまさら優しくされるのが」と、真面目な顔で断定的に問われた。
「助けてほしい時に助けてくれなかったのに、なにをいまさら、て思っちゃうんでしょ」
「なんで……」
完全に図星をつかれ固まっていると、困ったように笑い「僕たちもそうだったから」と言われ、「僕たちも?」と首を傾げてしまった。
「僕と紅玉はさ、父親の正式な子供じゃないんだ。僕の母親はさ、そんな理由で嫌がらせされて精神的におかしくなっちゃって。数年して、本家が母さんを病院に入れて僕を引き取ったんだ。紅玉に至っては、孤児院育ちなんだ」
知られざる事実になにも言えず、私の環境なんて、と思ったら「可哀想に差なんてないよ」と見透かされたように言われ、ぎょっとしてしまう。
心が読めるのか、この子。
「僕たちは可哀想だったかも知れないけど、春蓉も可哀想なんだよ。自分なんか、なんて思わないでね。そういう顔、してたよ」
「すみません……」
「謝らなくていいよ。僕もさ、いまさら、て思って暴言吐くし暴れて炎兄殴っちゃうし、物だって壊したからいまの春蓉より酷かったよ」
この理性的な少年に、そんな暴力的時代があったのか。
意外である。
「そんな僕にさ、雄兄たちが『憐れみのつもりで接しているつもりはない。紅覇も家族で、そしてこれは俺たちの罪滅ぼしだ。付き合ってはくれないか?』てさ。だから、いま雄兄たちがしてるのは春蓉が可哀想ってわけじゃなくて、気が付けなかったことへの罪滅ぼしなんじゃないかな」
建前かも知れないけど、と付け加え、今度は恥ずかしそうに「あと、さっき春蓉は春蓉って言ったけど、あれ、僕が炎兄に言われたことなんだ」と話してくれた。
「僕が春蓉にこの話をするのは、同情を誘う為じゃなくて、紅玉や春蓉みたいに自分に自信がなくなって見失ってる子を見ると、自分を見てるみたいだから炎兄たちに自信をもたせてもらったから、僕もそうしたいんだ」
照れくさそうに笑った顔は、年相応に兄に憧れる少年のそれで少し安心した。
「雄兄たち、距離感とか考えないでぐいぐいくるからさ、最初は僕と二人で慣れていこうよ~。そのうち、自分ってものを取り戻せるだろうし~」
「そうですね、紅覇さんとなら……」
「なんなら、紅覇お兄ちゃんって呼んでいいよ~」
「なんででしょうね。紅覇さんなら、呼んでもいい気がします。私の方が歳上のはずなんですけどね」
「なら、二人きりの時には呼んでよ~」
「紅覇お兄ちゃん」
そう呼ぶと、「なに~春蓉~」と頭を撫でられ、本当に歳上なのに気分は妹になってしまうな……。
お茶会タイムに、まさに青天の霹靂な話をいただいて顔をしかめてしまい、またも白龍さんと紅玉さんを怖がらせてしまった。
違うんです、威嚇した相手はあなたたちのお兄さんたちです。
威嚇した相手は、まったく意に介した表情をしてはいないが。
「ここからでは遠いだろ。なによりも、また迷子になられたら心配する」
「一緒に昼ご飯も食べような、春蓉!」
「迷子になっても、高等部には兄上たちと紅炎殿がおりますし、中等部には紅明殿も私もおります。初等部には紅覇殿、紅玉殿と白龍がおりますので安心してください」
「大丈夫だ、白瑛。まず、俺が目を離さん」
各々、言いたい放題言って、ちくしょう、私は赤ちゃんか、と腹が立つ。
しかも、既に転入手続きを終わらせているらしく、私が駄々をこねるのを理解しているから手を回すのが早い。
もう諦めよう。
この人たちに反抗するのは、あまりにも無駄な労力だ。
「制服とかいただけますか?明日の準備をしたいので」
「あとででもいいんじゃないか?もう少し、お茶を楽しもう」
白雄さんの言葉を「いえ、仕度は早めに終わらせたい性分ですので」と、それっぽい言い訳をして、受けとる物を受けとりこの賑やかな場所から逃げ出す。
やはり、人が多いと落ち着かない。
制服のサイズ合わせは後回しにし、もらった時間割に記載された明日必要な教科書やノートを詰めていく。
「春蓉~。いま、いい~?」
間延びした声に「どうぞ」と作業をやめることなく返せば、障子が開き予想通り紅覇さんが立っていた。
「どうかしましたか?」
「話したいから来たんだよ」
にっ、とイタズラっぽく笑い、私の隣に座り「春蓉はさ、人が多いところ苦手でしょ?」と言われた。
「苦手、というわけではなく落ち着かないんです。一人が好きなので」
「一人の時間が長すぎて、どう振る舞えばいいのかわからないから?」
「っ!」
言葉につまった私を見て「あたり」と言いたげに笑う紅覇さんに、「ち、がいます」と取り繕うも、年下だと言うのにいやに察する能力が高い。
じりっ、と距離をとろうとするが足に体重を乗せ体を寄せ「自分がなにであればいいかわからないんだよね」と言われる。
「わ、私は私です!」
「そうだよ、春蓉は春蓉」
「へ?」
「離れて暮らしてたり、両親がいる手前は本家とか分家とか気にしないといけないけど、僕らだけの時はただの練春蓉でいいんだよ」
そう言いながら、笑って私の頭を撫でる姿は完全にお兄さんで、ただ、私はそんな優しい言葉に「いまさらできるわけないだろ!」と、またもや理不尽に怒りを覚えてしまっていた。
それが嫌で、顔をしかめていたら「嫌なんでしょ、いまさら優しくされるのが」と、真面目な顔で断定的に問われた。
「助けてほしい時に助けてくれなかったのに、なにをいまさら、て思っちゃうんでしょ」
「なんで……」
完全に図星をつかれ固まっていると、困ったように笑い「僕たちもそうだったから」と言われ、「僕たちも?」と首を傾げてしまった。
「僕と紅玉はさ、父親の正式な子供じゃないんだ。僕の母親はさ、そんな理由で嫌がらせされて精神的におかしくなっちゃって。数年して、本家が母さんを病院に入れて僕を引き取ったんだ。紅玉に至っては、孤児院育ちなんだ」
知られざる事実になにも言えず、私の環境なんて、と思ったら「可哀想に差なんてないよ」と見透かされたように言われ、ぎょっとしてしまう。
心が読めるのか、この子。
「僕たちは可哀想だったかも知れないけど、春蓉も可哀想なんだよ。自分なんか、なんて思わないでね。そういう顔、してたよ」
「すみません……」
「謝らなくていいよ。僕もさ、いまさら、て思って暴言吐くし暴れて炎兄殴っちゃうし、物だって壊したからいまの春蓉より酷かったよ」
この理性的な少年に、そんな暴力的時代があったのか。
意外である。
「そんな僕にさ、雄兄たちが『憐れみのつもりで接しているつもりはない。紅覇も家族で、そしてこれは俺たちの罪滅ぼしだ。付き合ってはくれないか?』てさ。だから、いま雄兄たちがしてるのは春蓉が可哀想ってわけじゃなくて、気が付けなかったことへの罪滅ぼしなんじゃないかな」
建前かも知れないけど、と付け加え、今度は恥ずかしそうに「あと、さっき春蓉は春蓉って言ったけど、あれ、僕が炎兄に言われたことなんだ」と話してくれた。
「僕が春蓉にこの話をするのは、同情を誘う為じゃなくて、紅玉や春蓉みたいに自分に自信がなくなって見失ってる子を見ると、自分を見てるみたいだから炎兄たちに自信をもたせてもらったから、僕もそうしたいんだ」
照れくさそうに笑った顔は、年相応に兄に憧れる少年のそれで少し安心した。
「雄兄たち、距離感とか考えないでぐいぐいくるからさ、最初は僕と二人で慣れていこうよ~。そのうち、自分ってものを取り戻せるだろうし~」
「そうですね、紅覇さんとなら……」
「なんなら、紅覇お兄ちゃんって呼んでいいよ~」
「なんででしょうね。紅覇さんなら、呼んでもいい気がします。私の方が歳上のはずなんですけどね」
「なら、二人きりの時には呼んでよ~」
「紅覇お兄ちゃん」
そう呼ぶと、「なに~春蓉~」と頭を撫でられ、本当に歳上なのに気分は妹になってしまうな……。