お兄ちゃんと呼んでくれ
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最後の一掬いを名残惜しく思いながら飲み込み、烏龍茶を飲み干し「ごちそうさまでした」と言えば、ひきつり笑いの白蓮さんが「お粗末様です……」と言った。
はて?なにかおかしなことをしたか?と思ったが、直ぐ様、自分が五合分の炒飯を一人でたいらげてしまったことに気がついた。
あまりにもジューシーな叉焼と濃くなく、かと言って薄くもない絶妙な味加減、そして家庭の台所では不可能と思っていたパラパラ加減が加わり、最高の炒飯に我を忘れてしまっていた。
顔面だけは冷静を装い「いい言い訳を募集します!」と脳内大慌てだ。
「……や、やはり、空腹時に美味しいご飯をだされるとたくさん食べてしまいますね」
「それ以前の問題だろ」
紅炎さんの鋭い突っ込みに「うぅぅぅぅ!」と唸れば、「犬か、貴様は」と馬鹿にされた。
昔からそうだ。
紅炎さんはなにかと私を馬鹿にする。
せっかくの美味しいご飯で気分がよくなっていたのに、台無しだ。
ブスッ、とした私の表情を見た紅覇さんが「春蓉はさ~」と間延びした投げ掛けをする。
「なんで普段から、その顔しないわけ?可愛いのに、勿体ないよ」
「その顔?」
はて?と首をまたも傾げれば、いつの間にやらカメラを携え向かい側に移動していた白雄さんからカメラを借り、なにやら操作してから「こんな顔」と画面を見せられた。
そこには、満面の笑みで子供みたいに炒飯を頬張る私が写っていた。
「へぁんふん?!」
「奇っ怪な声をあげどうされました、春蓉殿?!」
驚く白瑛さんには申し訳ないが、こんな表情を撮られていた事実に奇っ怪な声をあげるなという方が難しい。
消そうと手を伸ばすが、素早く白雄さんがカメラを引ったくっていった。
「久しぶりに、春蓉の無邪気な顔が見られて嬉しいよ」
「消してください消してください消してください消してください消してください消してください」
呪いのような私の言葉に、にこり、と綺麗な笑みを返すだけで消す気は毛頭ないご様子。
「春蓉は、昔はこんな顔ばっかりだったんだ。なぁ、白蓮?」
「そうそう!うちに来るなり、『白雄お兄ちゃーん!白蓮お兄ちゃーん!』て言って、抱きついて来てたよな」
「定位置は、俺か白蓮の膝の上だったな」
「へ~。見てみたいね」
「私も、その時分の春蓉殿の姿を拝見したいです。白龍たちの誤解も、解けるかも知れませんし」
思い出にふけ、楽しそうに頷く白雄さんと白蓮さんに聞こえぬよう、横から「よく言えば、天真爛漫」と紅明さん、「悪く言えば自分勝手」と紅炎さん。
ぐ、ぐぬぬ……!
「か、過去の話です……。いまは、分を弁えています」
「弁えなくていいんだぞ。いつでも、俺の膝に乗ればいい」
さぁ、来い。と白雄さんは構えているが、行くわけないだろうが。
このままでは、各々のゴーイングマイウェイに巻き込まれてしまう。
食器を持ち上げ、「とても美味しかったです!ご馳走さまでした!」と、台所に逃げた。
くそ、直ぐにあの人たちのペースに巻き込まれてしまう。
白龍さんと紅玉さんが唯一の救いだ。
がしがしと一心不乱に皿を洗っていたら、背後から「手伝おうか?」と白雄さんが声をかけてきて、驚いた。
「い、いえ、数は少ないので……」
「そうか」
それだけ言うと、調理台に背を預けじっ、とこちらを見つめている。
な、なんだろう……。
訝しく思いながらチラリと見つめると、バチリと視線がかち合う。
「春蓉、さっきは悪かった」
「写真のことなら消してください」
「それじゃない」
違うんかい。
「さっき、お前の話を聞く前に殴ってしまったことだ」
「あぁ、別に気にしてませ……なんで撫でるんですか」
「無意味に殴ってしまった罪滅ぼしだ」
そんな罪滅ぼしってありなのか。
手が泡で汚れてしまっているので振り払えずにいると、ふと悲しそうな声で「すまない」と言われた。
「ですから、もういいですって」
「そうじゃなくて……お前が“家族とはなにか”、と悩むほど追い詰められているのに手を差し伸べられなくて……」
「……それも、もういいです」
「そうだな。救えなかった俺が言えることじゃないな……」
そうではあるが、なんとか振り絞るように「そん……な、ことは……」とだすも、本心は「その通りだ」と理不尽に胸がざわつく。
そんなざわつきを感じ取ったのか、「だから、春蓉の“家族の形”を探そう」と、私の泡まみれの手を包み込むように握り、そう言った。
「家族の形がわからなくなったなら、ここでもう一度探そう、春蓉。その為なら、俺たちはいくらでも協力する」
「探そうって……どうやって……」
「そうだな……。手始めに、昔のように白雄お兄ちゃんと呼んで膝にでも乗ってみるか?」
「ご冗談を……」
「ははっ、本気なんだがな」
そう告げた白雄さんの目は笑っていなかった。
本気で言ってる、この人……。
はて?なにかおかしなことをしたか?と思ったが、直ぐ様、自分が五合分の炒飯を一人でたいらげてしまったことに気がついた。
あまりにもジューシーな叉焼と濃くなく、かと言って薄くもない絶妙な味加減、そして家庭の台所では不可能と思っていたパラパラ加減が加わり、最高の炒飯に我を忘れてしまっていた。
顔面だけは冷静を装い「いい言い訳を募集します!」と脳内大慌てだ。
「……や、やはり、空腹時に美味しいご飯をだされるとたくさん食べてしまいますね」
「それ以前の問題だろ」
紅炎さんの鋭い突っ込みに「うぅぅぅぅ!」と唸れば、「犬か、貴様は」と馬鹿にされた。
昔からそうだ。
紅炎さんはなにかと私を馬鹿にする。
せっかくの美味しいご飯で気分がよくなっていたのに、台無しだ。
ブスッ、とした私の表情を見た紅覇さんが「春蓉はさ~」と間延びした投げ掛けをする。
「なんで普段から、その顔しないわけ?可愛いのに、勿体ないよ」
「その顔?」
はて?と首をまたも傾げれば、いつの間にやらカメラを携え向かい側に移動していた白雄さんからカメラを借り、なにやら操作してから「こんな顔」と画面を見せられた。
そこには、満面の笑みで子供みたいに炒飯を頬張る私が写っていた。
「へぁんふん?!」
「奇っ怪な声をあげどうされました、春蓉殿?!」
驚く白瑛さんには申し訳ないが、こんな表情を撮られていた事実に奇っ怪な声をあげるなという方が難しい。
消そうと手を伸ばすが、素早く白雄さんがカメラを引ったくっていった。
「久しぶりに、春蓉の無邪気な顔が見られて嬉しいよ」
「消してください消してください消してください消してください消してください消してください」
呪いのような私の言葉に、にこり、と綺麗な笑みを返すだけで消す気は毛頭ないご様子。
「春蓉は、昔はこんな顔ばっかりだったんだ。なぁ、白蓮?」
「そうそう!うちに来るなり、『白雄お兄ちゃーん!白蓮お兄ちゃーん!』て言って、抱きついて来てたよな」
「定位置は、俺か白蓮の膝の上だったな」
「へ~。見てみたいね」
「私も、その時分の春蓉殿の姿を拝見したいです。白龍たちの誤解も、解けるかも知れませんし」
思い出にふけ、楽しそうに頷く白雄さんと白蓮さんに聞こえぬよう、横から「よく言えば、天真爛漫」と紅明さん、「悪く言えば自分勝手」と紅炎さん。
ぐ、ぐぬぬ……!
「か、過去の話です……。いまは、分を弁えています」
「弁えなくていいんだぞ。いつでも、俺の膝に乗ればいい」
さぁ、来い。と白雄さんは構えているが、行くわけないだろうが。
このままでは、各々のゴーイングマイウェイに巻き込まれてしまう。
食器を持ち上げ、「とても美味しかったです!ご馳走さまでした!」と、台所に逃げた。
くそ、直ぐにあの人たちのペースに巻き込まれてしまう。
白龍さんと紅玉さんが唯一の救いだ。
がしがしと一心不乱に皿を洗っていたら、背後から「手伝おうか?」と白雄さんが声をかけてきて、驚いた。
「い、いえ、数は少ないので……」
「そうか」
それだけ言うと、調理台に背を預けじっ、とこちらを見つめている。
な、なんだろう……。
訝しく思いながらチラリと見つめると、バチリと視線がかち合う。
「春蓉、さっきは悪かった」
「写真のことなら消してください」
「それじゃない」
違うんかい。
「さっき、お前の話を聞く前に殴ってしまったことだ」
「あぁ、別に気にしてませ……なんで撫でるんですか」
「無意味に殴ってしまった罪滅ぼしだ」
そんな罪滅ぼしってありなのか。
手が泡で汚れてしまっているので振り払えずにいると、ふと悲しそうな声で「すまない」と言われた。
「ですから、もういいですって」
「そうじゃなくて……お前が“家族とはなにか”、と悩むほど追い詰められているのに手を差し伸べられなくて……」
「……それも、もういいです」
「そうだな。救えなかった俺が言えることじゃないな……」
そうではあるが、なんとか振り絞るように「そん……な、ことは……」とだすも、本心は「その通りだ」と理不尽に胸がざわつく。
そんなざわつきを感じ取ったのか、「だから、春蓉の“家族の形”を探そう」と、私の泡まみれの手を包み込むように握り、そう言った。
「家族の形がわからなくなったなら、ここでもう一度探そう、春蓉。その為なら、俺たちはいくらでも協力する」
「探そうって……どうやって……」
「そうだな……。手始めに、昔のように白雄お兄ちゃんと呼んで膝にでも乗ってみるか?」
「ご冗談を……」
「ははっ、本気なんだがな」
そう告げた白雄さんの目は笑っていなかった。
本気で言ってる、この人……。