お兄ちゃんと呼んでくれ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
慣れない環境と視線で疲弊しきっていたのか、制服から私服に着替えたら一気に眠気が襲ってきた。
台所で夕飯を作っている白雄さんと白蓮さんに、「少し寝ます」と言いに行くと、「夕飯まで待てそうにないか?」と聞かれた。
ちょっと無理そうだということを伝えれば、悩んだ末に、「部屋では寝ないで、居間で寝るなら」と承諾を得たので、フラフラと居間へ向かうと、お皿の準備が終わったであろう他の住人たちが、テレビを見ながら団欒していた。
それを邪魔しないように、部屋の隅っこで丸まり、おやすみ三秒。
すやり、すやり、と心地好い浮遊感が夢へと代わり、一気に気分が悪くなった。
誰もいない家、自分で用意する不味いご飯、音のない空間。
全部、全部、不愉快だ。
夢だ、これは夢だ、覚めろ。
お願いだから、このぐずぐずと泣いている私をこれ以上見せないでくれ。
「パパ……ママ……。さみしいよ……」
うるさい、黙れ、寂しくなんかない。
「一人はやだよ……」
「うるさいっ!そんなこと言ったって、パパもママも、もういないんだ!私は……!私は……もう一人なんだよ……」
ずっと目をそらしていた現実を確認してしまい、胸がぐずぐずと痛んだ。
パパとママは私をひとりぼっちにした。
それでも、誕生日は祝ってくれた、たまにお出掛けもしてくれた、頭を撫でてくれた手を覚えている。
嫌いではなかったはずだ。
普通の家庭並みに、構ってほしいという気持ちがあり、それが消化されず文句はあった。
それでも、死んでよかった、いなくなって清々するなんてことはない。
悲しい、かなしい、カナシイ。
止めどなく溢れる涙が止められず、苦しくて、「たすけて」と口にすれば、誰かに強く抱き締められ「大丈夫だ」と言った。
誰だろう、白雄さんかな。
なら、もうご飯の準備ができたんだ。起きないと。
そう思っても、誰かは「俺がいる」と言ってさらに強く抱き締める。
私も離しがたくなり、ぎゅっ、と抱き締め返して、もう一度、心地好い微睡みへと帰るのだった。
人の心地好い体温で幸せな気持ちになっていたら、「春蓉、夕飯だよ」と白雄さんの優しい声がして目を開けたのに、真っ先に視界に入ったのは、紅炎さんの仏頂面。
寝ぼけていて状況が処理しきれないが、どうやら私は紅炎さんの膝に乗り、寄りかかって寝ていたようだ。
どうして、とぼんやりする頭で考えていたら、目元を親指で拭われ、自分が泣いていたことに気がついた。
「紅炎さんだったんですね」
「俺で悪かったな」
「いえ、ありがとうございます。とても、安心しました」
「……そうか」
体を起こせば、すっかり夕飯の準備ができていて、白雄さんたちが「おはよう」と言ってくれて、また涙がこぼれてきた。
「大丈夫、春蓉~」
「なんか怖い夢でも見たか?」
心配してくれる紅覇さんと白蓮さんに、思わず「さみ……寂しかった……!怖かった……!」と言ったら、堰を切ったように言葉があふれてくる。
「ずっと、ずっと、一人で寂しくて……。でも、パパとママがいるから大丈夫ってどこかで思ってて……。でも、パパとママが死んじゃって、本当に、一人になっちゃったから……。私は、皆さんと、仲良くなる方法がわからないから、どうすればいいか、わかりません……。ごめ、んなさい……」
泣きながら謝る私に、紅覇さんは「うん、うん。寂しかったんだね~」と言いながら頭を撫でてくれて、白蓮さんも「俺たちも春蓉と仲良くなりたいから、焦らなくていいんだぞ」と声をかけてくれた。
それでも涙が止まらず、それに焦ってしまい「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝ってばかりいる私を紅炎さんは抱っこして立ち上がり、「こいつが泣き止むまで、縁側の方にいます」と言った。
「わかった。春蓉と紅炎の分は残しておくよ」
「ありがとうございます、白雄様」
ぐずぐずと泣く抱っコアラの私の背中を撫でる、なんて優しいこともしないが、なにか厳しいことを言うわけでもない。
ただ、そこにいてくれることがありがたかった。
「あのね、紅炎さん。おはようって言ってもらえたのが、凄く嬉しいの。朝起きたら誰かいて、一緒にご飯食べて、行ってきますとか、ただいまとか、おやすみなさいが言えるのが凄く、嬉しいの。嬉しくて、どうすればいいかわからない」
「それは、もう寂しくはないということか」
「寂しいなんて、皆さん思わせてくれない。パパたちのことは悲しいけど、いまは、寂しくない」
「なら、いい。春蓉、なにかあったらすぐに俺を頼れ。白雄様たちではなく、俺をだ。お前には、俺がいる」
これは、白雄さんたちの手を煩わせるなという意味なんだろう。
本当に彼は白雄さんたち至上主義というか、尊敬しているんだな、と思うと、この慇懃無礼な男でも尊敬という感情があるのかと、愉快に気持ちになる。
「わかった、紅炎さんを頼ります」
「あぁ、そうしろ。落ち着いたなら、顔を洗って食事に行くぞ。腹が減った」
「はい、私もお腹が空きました」
台所で夕飯を作っている白雄さんと白蓮さんに、「少し寝ます」と言いに行くと、「夕飯まで待てそうにないか?」と聞かれた。
ちょっと無理そうだということを伝えれば、悩んだ末に、「部屋では寝ないで、居間で寝るなら」と承諾を得たので、フラフラと居間へ向かうと、お皿の準備が終わったであろう他の住人たちが、テレビを見ながら団欒していた。
それを邪魔しないように、部屋の隅っこで丸まり、おやすみ三秒。
すやり、すやり、と心地好い浮遊感が夢へと代わり、一気に気分が悪くなった。
誰もいない家、自分で用意する不味いご飯、音のない空間。
全部、全部、不愉快だ。
夢だ、これは夢だ、覚めろ。
お願いだから、このぐずぐずと泣いている私をこれ以上見せないでくれ。
「パパ……ママ……。さみしいよ……」
うるさい、黙れ、寂しくなんかない。
「一人はやだよ……」
「うるさいっ!そんなこと言ったって、パパもママも、もういないんだ!私は……!私は……もう一人なんだよ……」
ずっと目をそらしていた現実を確認してしまい、胸がぐずぐずと痛んだ。
パパとママは私をひとりぼっちにした。
それでも、誕生日は祝ってくれた、たまにお出掛けもしてくれた、頭を撫でてくれた手を覚えている。
嫌いではなかったはずだ。
普通の家庭並みに、構ってほしいという気持ちがあり、それが消化されず文句はあった。
それでも、死んでよかった、いなくなって清々するなんてことはない。
悲しい、かなしい、カナシイ。
止めどなく溢れる涙が止められず、苦しくて、「たすけて」と口にすれば、誰かに強く抱き締められ「大丈夫だ」と言った。
誰だろう、白雄さんかな。
なら、もうご飯の準備ができたんだ。起きないと。
そう思っても、誰かは「俺がいる」と言ってさらに強く抱き締める。
私も離しがたくなり、ぎゅっ、と抱き締め返して、もう一度、心地好い微睡みへと帰るのだった。
人の心地好い体温で幸せな気持ちになっていたら、「春蓉、夕飯だよ」と白雄さんの優しい声がして目を開けたのに、真っ先に視界に入ったのは、紅炎さんの仏頂面。
寝ぼけていて状況が処理しきれないが、どうやら私は紅炎さんの膝に乗り、寄りかかって寝ていたようだ。
どうして、とぼんやりする頭で考えていたら、目元を親指で拭われ、自分が泣いていたことに気がついた。
「紅炎さんだったんですね」
「俺で悪かったな」
「いえ、ありがとうございます。とても、安心しました」
「……そうか」
体を起こせば、すっかり夕飯の準備ができていて、白雄さんたちが「おはよう」と言ってくれて、また涙がこぼれてきた。
「大丈夫、春蓉~」
「なんか怖い夢でも見たか?」
心配してくれる紅覇さんと白蓮さんに、思わず「さみ……寂しかった……!怖かった……!」と言ったら、堰を切ったように言葉があふれてくる。
「ずっと、ずっと、一人で寂しくて……。でも、パパとママがいるから大丈夫ってどこかで思ってて……。でも、パパとママが死んじゃって、本当に、一人になっちゃったから……。私は、皆さんと、仲良くなる方法がわからないから、どうすればいいか、わかりません……。ごめ、んなさい……」
泣きながら謝る私に、紅覇さんは「うん、うん。寂しかったんだね~」と言いながら頭を撫でてくれて、白蓮さんも「俺たちも春蓉と仲良くなりたいから、焦らなくていいんだぞ」と声をかけてくれた。
それでも涙が止まらず、それに焦ってしまい「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝ってばかりいる私を紅炎さんは抱っこして立ち上がり、「こいつが泣き止むまで、縁側の方にいます」と言った。
「わかった。春蓉と紅炎の分は残しておくよ」
「ありがとうございます、白雄様」
ぐずぐずと泣く抱っコアラの私の背中を撫でる、なんて優しいこともしないが、なにか厳しいことを言うわけでもない。
ただ、そこにいてくれることがありがたかった。
「あのね、紅炎さん。おはようって言ってもらえたのが、凄く嬉しいの。朝起きたら誰かいて、一緒にご飯食べて、行ってきますとか、ただいまとか、おやすみなさいが言えるのが凄く、嬉しいの。嬉しくて、どうすればいいかわからない」
「それは、もう寂しくはないということか」
「寂しいなんて、皆さん思わせてくれない。パパたちのことは悲しいけど、いまは、寂しくない」
「なら、いい。春蓉、なにかあったらすぐに俺を頼れ。白雄様たちではなく、俺をだ。お前には、俺がいる」
これは、白雄さんたちの手を煩わせるなという意味なんだろう。
本当に彼は白雄さんたち至上主義というか、尊敬しているんだな、と思うと、この慇懃無礼な男でも尊敬という感情があるのかと、愉快に気持ちになる。
「わかった、紅炎さんを頼ります」
「あぁ、そうしろ。落ち着いたなら、顔を洗って食事に行くぞ。腹が減った」
「はい、私もお腹が空きました」
10/10ページ