お兄ちゃんと呼んでくれ
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事故死した両親の葬儀。
事務的にこなしながら、頭の中では今後どうしようかという考えばかりが駆け巡っていた。
父と母の持ち会社が二つ、マンションが三つ。
その会社の運営、マンションの管理、入ってくる遺産、将来の事。
考える事が多すぎて葬儀どころではないのが本心だ。
正直、殆ど仕事で帰ってこず顔も殆ど合わせていない両親の死を悲しむ理由などどこにもない。
面倒くさいな、誰か一括してやってくれないかな。
そう思っていたら、葬儀後に練家本家の玉艶伯母さんと白徳伯父さんが私に「今日からうちで暮らしなさい」と言った。
「玉麗達が持っていた会社とマンションは私達が引き継ぎます」
ちっ、遺産の横取りかと思ったが高校生の私に、その判断に逆らう事はできない。
しかも、相手は本家だし。
私は深く頭を下げてお願いした。
「ですが、住居ならば今住んでいるマンションがあるので大丈夫です」
そう断りを入れたのだが、伯母さんはにこりと微笑みながら「女の子の、それも高校生の一人暮らしなんて危ないですよ」と言った。
「大丈夫です。今までも一人で暮らしていた様なものですから」
頑なに断るのも、正直本家に行きたくないのだ。
あそこは人が多すぎてどうすればいいのかわからなくなる。
けれども、伯母さんは引かず「来なさい、春蓉」と有無を言わせぬ圧力ある声色で言った。
本家の人間には逆らえない。
それが私に刷り込まれた分家の根性だった。
「……わかりました」
こうして私の本家生活が始まる事になった。
正直気が重い。
荷造り中、溜息を何度吐いた事か……。
家具などの処理は伯母さんがしてくれるそうなので、衣類や本などを持って電車に乗ってタクシーを捕まえ東京郊外の本家へとやって来た。
広い庭のある木造家屋。
いつ来ても大きく広い家だ……。
「本日からお世話になります、練春蓉です。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますね、春蓉。白徳様と私はあまり家にはいませんが、気兼ねなく過ごしてください」
ずらりと居間に居並ぶ本家のご子息とご息女、海外勤務でいない紅徳様のお子様たちに見つめられながら挨拶をすると、一番に本家の長男である白雄さんが笑顔で「よろしく、春蓉」と握手を求めてきた。
はぁ、いつみても品行方正なお坊ちゃんだと思いながらその手を握り返す。
「荷物はもう届いているよ。母上、俺が案内していいですか?」
「よろしくお願いしますね、白雄。私はもう出なくてはいけないので」
「おいで、春蓉」
先を歩く白雄さんの後ろに黙ってついて行くと、二階の一室に通された。
家具一式は既に用意されているらしく、障子を開けると畳の部屋で低い勉強机と箪笥と本棚が設けられていた。
「布団は襖の中に入っているから」
「ありがとうございます」
荷物を部屋の中に置くと、白雄さんが「不安か?」と尋ねてきた。
「何故ですか?」
「いつもより、表情が硬い」
いつもより、と言っても私と白雄さんが合うのは年末年始の集まり位だ。
その時だって、私たちは会話など殆どしない。
新年の挨拶程度。
私は表情を変えず「いつも通りです」と答える。
「そうか?」
「そうです」
私の言葉に、何故か白雄さんは困り笑顔をしながら「無理はするなよ」と言った。
無理?私が?
よくわからない事を言う人だと思いながら「気を付けます」とだけ返す。
「そろそろ昼の時間だな。今日は白蓮が作ると言っていたから、たぶん肉だな」
「そうですか。……申し訳ないですが、私は部屋で食べます」
「そう言うな。一緒に食べよう」
「結構で……ちょっと!」
抵抗する私の手を掴み、白雄さんは一階へと降りた。
何とか逃げようと白雄さんの手を引きはがそうとするが、がっちりと掴まれてしまい離れない。
しかも、席に着くと逃げない様に肩を抱きこまれた。
眉根が寄りそうになるのを我慢しながら、白雄さんに「逃げませんから放してください」と言うも、ぐっと更に抱き寄せられる形になる。
「まぁ、いいじゃないか」
何がいいものか。
そう怒鳴りつけてやりたいのを何とか飲み下す。
事務的にこなしながら、頭の中では今後どうしようかという考えばかりが駆け巡っていた。
父と母の持ち会社が二つ、マンションが三つ。
その会社の運営、マンションの管理、入ってくる遺産、将来の事。
考える事が多すぎて葬儀どころではないのが本心だ。
正直、殆ど仕事で帰ってこず顔も殆ど合わせていない両親の死を悲しむ理由などどこにもない。
面倒くさいな、誰か一括してやってくれないかな。
そう思っていたら、葬儀後に練家本家の玉艶伯母さんと白徳伯父さんが私に「今日からうちで暮らしなさい」と言った。
「玉麗達が持っていた会社とマンションは私達が引き継ぎます」
ちっ、遺産の横取りかと思ったが高校生の私に、その判断に逆らう事はできない。
しかも、相手は本家だし。
私は深く頭を下げてお願いした。
「ですが、住居ならば今住んでいるマンションがあるので大丈夫です」
そう断りを入れたのだが、伯母さんはにこりと微笑みながら「女の子の、それも高校生の一人暮らしなんて危ないですよ」と言った。
「大丈夫です。今までも一人で暮らしていた様なものですから」
頑なに断るのも、正直本家に行きたくないのだ。
あそこは人が多すぎてどうすればいいのかわからなくなる。
けれども、伯母さんは引かず「来なさい、春蓉」と有無を言わせぬ圧力ある声色で言った。
本家の人間には逆らえない。
それが私に刷り込まれた分家の根性だった。
「……わかりました」
こうして私の本家生活が始まる事になった。
正直気が重い。
荷造り中、溜息を何度吐いた事か……。
家具などの処理は伯母さんがしてくれるそうなので、衣類や本などを持って電車に乗ってタクシーを捕まえ東京郊外の本家へとやって来た。
広い庭のある木造家屋。
いつ来ても大きく広い家だ……。
「本日からお世話になります、練春蓉です。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますね、春蓉。白徳様と私はあまり家にはいませんが、気兼ねなく過ごしてください」
ずらりと居間に居並ぶ本家のご子息とご息女、海外勤務でいない紅徳様のお子様たちに見つめられながら挨拶をすると、一番に本家の長男である白雄さんが笑顔で「よろしく、春蓉」と握手を求めてきた。
はぁ、いつみても品行方正なお坊ちゃんだと思いながらその手を握り返す。
「荷物はもう届いているよ。母上、俺が案内していいですか?」
「よろしくお願いしますね、白雄。私はもう出なくてはいけないので」
「おいで、春蓉」
先を歩く白雄さんの後ろに黙ってついて行くと、二階の一室に通された。
家具一式は既に用意されているらしく、障子を開けると畳の部屋で低い勉強机と箪笥と本棚が設けられていた。
「布団は襖の中に入っているから」
「ありがとうございます」
荷物を部屋の中に置くと、白雄さんが「不安か?」と尋ねてきた。
「何故ですか?」
「いつもより、表情が硬い」
いつもより、と言っても私と白雄さんが合うのは年末年始の集まり位だ。
その時だって、私たちは会話など殆どしない。
新年の挨拶程度。
私は表情を変えず「いつも通りです」と答える。
「そうか?」
「そうです」
私の言葉に、何故か白雄さんは困り笑顔をしながら「無理はするなよ」と言った。
無理?私が?
よくわからない事を言う人だと思いながら「気を付けます」とだけ返す。
「そろそろ昼の時間だな。今日は白蓮が作ると言っていたから、たぶん肉だな」
「そうですか。……申し訳ないですが、私は部屋で食べます」
「そう言うな。一緒に食べよう」
「結構で……ちょっと!」
抵抗する私の手を掴み、白雄さんは一階へと降りた。
何とか逃げようと白雄さんの手を引きはがそうとするが、がっちりと掴まれてしまい離れない。
しかも、席に着くと逃げない様に肩を抱きこまれた。
眉根が寄りそうになるのを我慢しながら、白雄さんに「逃げませんから放してください」と言うも、ぐっと更に抱き寄せられる形になる。
「まぁ、いいじゃないか」
何がいいものか。
そう怒鳴りつけてやりたいのを何とか飲み下す。
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