皇子と私
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新しい魔術の研究をし、釜にあれやこれやと混ぜいい感じになってきたと思ったのも束の間。
釜が明らかな異常を示し爆発した。
げほげほと噎せながら、部屋の窓を全開にして煙を逃がす。
「げほっ!げほっ!ふっ……。この予想のつかない感じ……。これだから、魔術はやめられないぜ……」
などと魔導師は一人言が多いせいで、各部屋一人一人に研究室を設けられるのだ。
ある程度、空気が入れ替わったので窓の外で呼吸するのをやめて振り向くと、赤い髪の男の子がちょこん、と椅子に座っていて思わず「うおっ!誰?!」と言ってしまった。
どこか、こけしを彷彿とさせる面立ちの男の子は「練紅徳の第一子、練紅炎だ」と名乗った。
皇子かよ!
何で、皇子がこんな所にいるんだよ!
混乱する気持ちを押し殺し、紅炎様の足元に跪く。
「これは大変失礼致しました、紅炎様。何分、お姿を拝見するのが初めてでして。どうかご容赦ください」
「気にするな」
「して、紅炎様。私にどの様なご用向きでしょうか?」
私の問いかけに、紅炎様は一言「話に来た」と仰った。
話ってなんだ!?
何かやらかしたか?!
白雄様関連なら、既に色々やらかしてるけど今更それを問うとかないよな?!
私はゆっくり「どの様なお話でしょうか」と聞くも、紅炎様はやはり一言「煙い」と仰った。
でしょうね!
さっき、思い切り爆発しましたしね!
私は研究室の外を指し「中庭でお待ちください。お茶をお持ち致します」と言い、窓の脇にある扉から中庭へ出て、いつも私が使っている敷布を敷いて「どうぞ」と勧める。
紅炎様は黙って中庭に出て、敷布の上に正座をする。
流石は皇族!
どんな所でも姿勢を崩さない!と思ったが、白雄様は普通に長椅子でだらしなく横たわっているから、一概には言えないか。
茶釜を持ち部屋を出て、手早く魔法でお湯を作りお茶を淹れる。
お盆に私が持っているお茶っ葉で一番いい物を使用したお茶を乗せ、中庭へと戻った。
「お待たせしました、紅炎様。お口に合うか分かりませんが、どうぞ」
紅炎様は「すまない、ありがとう」としっかりお礼を言える良い子だった。
どっかの、かっこつけ魔なお子様など、お茶を淹れてもらうのが当たり前になったせいで、礼を言うどころか急かしてくるからなぁ。
今度、しっかりお礼の大切さを思い知らせてやろう。
お礼の言える良い子、紅炎様は一口お茶を口に含むと「美味いな」と言ったきり、言葉を口にはせずにお茶をゆっくり飲んでいる。
話があったんじゃないのか?
自分のお茶を飲みながら紅炎様が話し出すのを待つが、そよ風の音がよく聞こえる程に静寂だ。
あ、従姉の悲鳴が聞こえた。
お茶も飲み干してしまったので、私から「お話があったのでは?」と尋ねると、紅炎様は「特に……、話すことがない……」と仰った。
え、何しに来たのこの人。
話しに来たけど話すことがないとは?
トンチかな?
う、うーん……。
「で、では世間話でもしましょうか?」
「あぁ」
何か、何か世間話を……。
こういう時、気の利いた話題が思い付かないんだよなぁ。
普段、白雄様以外と長話しないからな……。
私と紅炎様の共通点……。
「あっ!この間、白蓮様と僭越ながら手合わせをさせていただきました。やはり、お強いですね。ちょっと本気をだしただけだと言うのに、全く太刀打ちできませんでした」
「白蓮様の“ちょっと本気”は、ほぼ全力だ」
「な、なるほど……」
よく死ななかったな、私。
そういえば、白蓮様が私に会いに来たのはどうしてだったっけ?
あぁ、確か私を見極める為に来たんだっけ?
そこで、一つ思い付いた仮説。
「もしかして、白雄様と私がどうのって話の真意を確かめに来たとか?」
私の問いかけに、表情を崩さずに紅炎様は数秒黙り、静かに頷いた。
ははっ、やっぱり。
茶海からお茶を注ぎながら「それで、どんな噂を耳にされたのですか?」と尋ねると、紅炎様はゆっくり「魔女が、白雄様に色を使って様々な手練手管で白雄様を意のままにし、国を乗っ取ろうとしていると……」と語った。
「ぶっ……くっ、はははははははっ!!ひぃー!なにそれ!!あははははははははっ!!!」
お茶を飲む前に聞いてよかった。
あまりに酷い尾ひれなので、皇子の前ということを忘れて、お腹を抱えて笑ってしまった。
大笑いする私を、紅炎様はポカンとした表情で見ているのに気がつき、咳払いを一つして体面を整える。
「失礼致しました。いやぁ、でも、白雄様が聞いたら爆笑に加えて小馬鹿にされそうですね……」
「爆笑、されていた。あんなに笑う白雄様は、初めて見た……」
もう話したのか。
外面かっこつけ仮面が爆笑するとは、相当笑いのツボに入ったのだろう。
そして、紅炎様は続きを話し出す。
「白雄様は、こう仰っていた。『李鈴に色の使い方などわかる筈もない。そもそも、そういった知識があるのかも怪しい。あいつ、絶対に子供はコウノトリが連れてくるとまだ信じているな。あと、サンタクロースも。もし、俺が李鈴に誘惑され落ちる日が万が一来たら、李鈴を担ぎ裸で躍りながら城内巡って市内を回ってやる。紅炎も一度、李鈴と話せば、そんな女ではないと分かるはずだ』と」
乱心どころの騒ぎじゃないぞ。
だが、言ってくれるじゃないか、あの野郎……。
相当、私を甘く見ているな。
知ってるわ!
子作りの仕方くらい!
「ま、まぁ、それはそうと、もし私が色の使えて様々な手練手管を使えたとしても、ありえない話ですよ」
「なぜ……?」
「だって、あの白雄様ですよ?清廉潔白、高潔で志も高く、国を思う気持ちは人一倍。それが、女のために国を傾け、民を苦しめることは絶対にしない。絶対に」
悔しいけれど、あの人の真面目で真っ直ぐな所はとても尊敬している。
そういう所に、惹かれるんだろうな。
紅炎様の知っている白雄様も、そういう方ではありませんか?と問うと、二、三回瞼をしばたたかせ、手元の茶杯に視線を落とし「自分が、恥ずかしい」と溢す。
「噂などに惑わされ、白雄様を疑うなど……」
「うーん、致し方ない部分はありますね。私の一族は秘密主義な部分がありますから。万が一って考えるのは仕方ないです」
フォローを入れるも、落とした視線は上がらない。
何か話題を変えなくては。
「紅炎様は、なにか好きなものはないですか?」
「……歴史が、好きだ」
「歴史、私も結構好きで色々調べたりするんですよ。今は、トラン語の研究を……」
「トラン語!」
今まで何を考えているのか分からない目をしていた紅炎様の目が、獣のような瞳に変わった。
物凄い食い付き方だな!
その後、物凄い食い付きようを見せた紅炎様と、日が暮れるまで歴史について語り明かしてしまった。
釜が明らかな異常を示し爆発した。
げほげほと噎せながら、部屋の窓を全開にして煙を逃がす。
「げほっ!げほっ!ふっ……。この予想のつかない感じ……。これだから、魔術はやめられないぜ……」
などと魔導師は一人言が多いせいで、各部屋一人一人に研究室を設けられるのだ。
ある程度、空気が入れ替わったので窓の外で呼吸するのをやめて振り向くと、赤い髪の男の子がちょこん、と椅子に座っていて思わず「うおっ!誰?!」と言ってしまった。
どこか、こけしを彷彿とさせる面立ちの男の子は「練紅徳の第一子、練紅炎だ」と名乗った。
皇子かよ!
何で、皇子がこんな所にいるんだよ!
混乱する気持ちを押し殺し、紅炎様の足元に跪く。
「これは大変失礼致しました、紅炎様。何分、お姿を拝見するのが初めてでして。どうかご容赦ください」
「気にするな」
「して、紅炎様。私にどの様なご用向きでしょうか?」
私の問いかけに、紅炎様は一言「話に来た」と仰った。
話ってなんだ!?
何かやらかしたか?!
白雄様関連なら、既に色々やらかしてるけど今更それを問うとかないよな?!
私はゆっくり「どの様なお話でしょうか」と聞くも、紅炎様はやはり一言「煙い」と仰った。
でしょうね!
さっき、思い切り爆発しましたしね!
私は研究室の外を指し「中庭でお待ちください。お茶をお持ち致します」と言い、窓の脇にある扉から中庭へ出て、いつも私が使っている敷布を敷いて「どうぞ」と勧める。
紅炎様は黙って中庭に出て、敷布の上に正座をする。
流石は皇族!
どんな所でも姿勢を崩さない!と思ったが、白雄様は普通に長椅子でだらしなく横たわっているから、一概には言えないか。
茶釜を持ち部屋を出て、手早く魔法でお湯を作りお茶を淹れる。
お盆に私が持っているお茶っ葉で一番いい物を使用したお茶を乗せ、中庭へと戻った。
「お待たせしました、紅炎様。お口に合うか分かりませんが、どうぞ」
紅炎様は「すまない、ありがとう」としっかりお礼を言える良い子だった。
どっかの、かっこつけ魔なお子様など、お茶を淹れてもらうのが当たり前になったせいで、礼を言うどころか急かしてくるからなぁ。
今度、しっかりお礼の大切さを思い知らせてやろう。
お礼の言える良い子、紅炎様は一口お茶を口に含むと「美味いな」と言ったきり、言葉を口にはせずにお茶をゆっくり飲んでいる。
話があったんじゃないのか?
自分のお茶を飲みながら紅炎様が話し出すのを待つが、そよ風の音がよく聞こえる程に静寂だ。
あ、従姉の悲鳴が聞こえた。
お茶も飲み干してしまったので、私から「お話があったのでは?」と尋ねると、紅炎様は「特に……、話すことがない……」と仰った。
え、何しに来たのこの人。
話しに来たけど話すことがないとは?
トンチかな?
う、うーん……。
「で、では世間話でもしましょうか?」
「あぁ」
何か、何か世間話を……。
こういう時、気の利いた話題が思い付かないんだよなぁ。
普段、白雄様以外と長話しないからな……。
私と紅炎様の共通点……。
「あっ!この間、白蓮様と僭越ながら手合わせをさせていただきました。やはり、お強いですね。ちょっと本気をだしただけだと言うのに、全く太刀打ちできませんでした」
「白蓮様の“ちょっと本気”は、ほぼ全力だ」
「な、なるほど……」
よく死ななかったな、私。
そういえば、白蓮様が私に会いに来たのはどうしてだったっけ?
あぁ、確か私を見極める為に来たんだっけ?
そこで、一つ思い付いた仮説。
「もしかして、白雄様と私がどうのって話の真意を確かめに来たとか?」
私の問いかけに、表情を崩さずに紅炎様は数秒黙り、静かに頷いた。
ははっ、やっぱり。
茶海からお茶を注ぎながら「それで、どんな噂を耳にされたのですか?」と尋ねると、紅炎様はゆっくり「魔女が、白雄様に色を使って様々な手練手管で白雄様を意のままにし、国を乗っ取ろうとしていると……」と語った。
「ぶっ……くっ、はははははははっ!!ひぃー!なにそれ!!あははははははははっ!!!」
お茶を飲む前に聞いてよかった。
あまりに酷い尾ひれなので、皇子の前ということを忘れて、お腹を抱えて笑ってしまった。
大笑いする私を、紅炎様はポカンとした表情で見ているのに気がつき、咳払いを一つして体面を整える。
「失礼致しました。いやぁ、でも、白雄様が聞いたら爆笑に加えて小馬鹿にされそうですね……」
「爆笑、されていた。あんなに笑う白雄様は、初めて見た……」
もう話したのか。
外面かっこつけ仮面が爆笑するとは、相当笑いのツボに入ったのだろう。
そして、紅炎様は続きを話し出す。
「白雄様は、こう仰っていた。『李鈴に色の使い方などわかる筈もない。そもそも、そういった知識があるのかも怪しい。あいつ、絶対に子供はコウノトリが連れてくるとまだ信じているな。あと、サンタクロースも。もし、俺が李鈴に誘惑され落ちる日が万が一来たら、李鈴を担ぎ裸で躍りながら城内巡って市内を回ってやる。紅炎も一度、李鈴と話せば、そんな女ではないと分かるはずだ』と」
乱心どころの騒ぎじゃないぞ。
だが、言ってくれるじゃないか、あの野郎……。
相当、私を甘く見ているな。
知ってるわ!
子作りの仕方くらい!
「ま、まぁ、それはそうと、もし私が色の使えて様々な手練手管を使えたとしても、ありえない話ですよ」
「なぜ……?」
「だって、あの白雄様ですよ?清廉潔白、高潔で志も高く、国を思う気持ちは人一倍。それが、女のために国を傾け、民を苦しめることは絶対にしない。絶対に」
悔しいけれど、あの人の真面目で真っ直ぐな所はとても尊敬している。
そういう所に、惹かれるんだろうな。
紅炎様の知っている白雄様も、そういう方ではありませんか?と問うと、二、三回瞼をしばたたかせ、手元の茶杯に視線を落とし「自分が、恥ずかしい」と溢す。
「噂などに惑わされ、白雄様を疑うなど……」
「うーん、致し方ない部分はありますね。私の一族は秘密主義な部分がありますから。万が一って考えるのは仕方ないです」
フォローを入れるも、落とした視線は上がらない。
何か話題を変えなくては。
「紅炎様は、なにか好きなものはないですか?」
「……歴史が、好きだ」
「歴史、私も結構好きで色々調べたりするんですよ。今は、トラン語の研究を……」
「トラン語!」
今まで何を考えているのか分からない目をしていた紅炎様の目が、獣のような瞳に変わった。
物凄い食い付き方だな!
その後、物凄い食い付きようを見せた紅炎様と、日が暮れるまで歴史について語り明かしてしまった。