皇子と私
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「よく俺の前に顔を出せたな、白蓮」
予想通り、白蓮様は白雄様に怒られ座学へと戻っていった。
世話の焼ける人だな、と呆れながら私はどうしようかとも思ったが、白蓮様を引き渡したし白雄様もなんだかんだで元気そうなので「私は下がらせて頂きます」と礼をして下がろうとしても引き止められることなく、「あぁ」と言われるのみ。
調子が狂うな、とは思うがこれが正しい関係性であるし私が白雄様のなさることに口出しはできない。
帰ろう、帰ろう、と帰途に着こうとしたら「あの!」と可愛らしい声がした。
「あなたが李鈴ですか!」
キラキラとした、白雄様と白蓮様を足して二で割って幼くした容貌の幼女に名を聞かれ、まあ、間違いなく白雄様の血筋だと理解したので跪ずき「相違なく。私めが李鈴でございます」と申し上げれば、嬉しそうに私の手を取り先程出たばかりの白雄様の部屋へと取って返した。
「雄兄様!雄兄様!李鈴ですよ!」
「あ、あぁ、そう?だな?」
白雄様に「なんでお前まだいるんだ?」という顔で見られているが、私が一番聞きたい。
「白瑛。李鈴がなにかしたのか?」
なんでそうなるんですか、と文句を言ってやりたいが妹君の前でお互いにいつも通りの態度をとれるわけもなく、私は大人しく白瑛様の言葉を待つ。
「先程、そこの廊下を歩いていたのです!きっと、元気のない雄兄様を心配したあまり来てしまったはいいものの、入る勇気が湧かず帰ろうとしたところを白瑛が連れて参りました!」
いやいやいや、違う違う違う。
用事が済んで帰ろうとしてたんです。
「蓮兄様が仰っていました!雄兄様は李鈴をとても気に入っていると!しかし、二人は身分違い!叶わぬ恋!会えぬ日に身を割かれ枕を濡らす日々!白瑛はそんな二人の橋渡しをしました!」
この暴走具合、皇族の血を感じる。
長椅子に腰掛け俯き肩を震わせる白雄様に、白瑛様は「雄兄様!そんなに嬉しいのですか!」と瞳を輝かせ頬を上気させ興奮してるが、あれは違うな。
「白瑛様。申し訳ございませんが、白雄様と二人きりにしていただけますか?」
わざとらしく意味深な表情と口調でお願いすれば、白瑛様は「私ったら、気が利かなくてごめんなさい」と恥ずかしそうに退出していった。
白瑛様が扉を閉じたのを目視し、白雄様へと向き直り「行かれましたよ」とお知らせすれば、まだ戸の前にいるかも知れないという心配からか長椅子の上で暴れながら声を殺して笑いだした。
視界がうるさい。
白雄様が落ち着くまで静かに立って待っていれば、数回深呼吸してから「面白かった」と感想をのべられた。
でしょうね。
「我が妹ながら想像力が逞しい」
「妄想力、または暴走力と言った方が正しい気がしますが」
「妹をバカにすると俺が怒るぞ」
「失礼致しました」
「冗談だ」
目に溜まった涙を拭い息を整える白雄様はいつも通りに見える気もするが、それでもすぐ側で見ている人が異変を感じているのだからなにかあるだろう。
聞くべきかどうか悩んだが、身近だからこそ言えない悩みというのもある。
差し出がましいと思いつつも、「なにかありましたか?」と尋ねれば「なにか、とは?」と聞き返された。
「白蓮様も白瑛様も紅炎様も、白雄様にいつもの元気がないとご心配されております。なにか私にもお力になれれば、と思いまして」
「やめろ、なんだその堅苦しい話し方は」
「いや、まあ、最近会ってなかったので。で、なんかあったんですか?」
「なんだと思う?」
「めんどくせっ」
なんだ、本当に元気じゃないか。
「なにもないなら、もう帰りますね」とまた礼をして出ようとしたら、今度は「怒るな、もう少しいろ」と両肩を掴まれ引き止められた。
内心、「そうこなくては」などと思ったのは内緒である。
肩を押され、いつもの定位置へと座らせられたら「とりあえず、お前の方は変わりないか?」と私の近況を聞かれた。
「そうですね、概ね変わらずです。そこかしこで、白雄様に飽きられたのだと笑われてはいますが」
「俺が李鈴に飽きる日など来るはずもないのにな」
「それは面白おかしくからかわれるってことですかねぇ」
「こんな会話ができる相手なんてお前しかいないよ」
愛しそうに目を細めるその姿が、なんだかむず痒く感じる。
「そういう白雄様はお変わりなく?」
「変わったさ、勿論。李鈴に言われていた通り、ツケを払わさせられる状態で姫のところに通わさせられて正直疲れてる」
「按摩しましょうか?」
「すまない、頼む」
ごろり、とうつ伏せになった白雄様の肩を触れば、わかりやすく凝り固まっていた。
背中も、腰も、足も、ガッチガチでよく辛くなかったなと感心する。
凝りを揉みほぐすように、ゆっくりと施術をしていけば「あー効くー」と気持ち良さそうなおっさんの声がした。
「公務と相まってずいぶんと溜め込みましたね」
「んーまあなー」
「どうして突然、真面目に伽をしようと思ったんですか?前はあんなに面倒くさがっていたのに」
「……李鈴。俺が恋をしたと言ったら笑うか」
「わはははははっ!」
笑えという振りなのかと思って盛大に笑ったが、どうやら違ったようで蟹挟みをされた。
いや、別に私も面白いとは思っていませんよ?どちらかと言うと、いつも澄まして女など向こうから寄ってくるみたいな顔しておきながら枕投げにはしゃいじゃう男が、恋などという甘酸っぱいものに心揺さぶられる日が来たことに感動しているんで放してください。
「それで?そのことがどう関係してくるんですか?」
「その、まあ、なんと言うか……。自覚したら顔を合わせにくくなったのと……気を引けたら……と思ってだな……」
「わはははははっ!」
あの綺麗なイケメンが生娘みたいな顔で初々しいことを言うものだから、つい本気で笑ってしまった。
折角、一度解放されたのにまた蟹挟みである。
「女に関しては百戦錬磨みたいな顔してるくせに、そんなベタな気の引き方してるとかマジでウケるんですが」
「うるさいぞ、李鈴」
「それで効果はあったんですか?」
「……あったと思うか?」
「思うわけないじゃないですか」
正直に答えたのに、蟹挟みする足の力が強くなった。
痛い、痛い。中身出ちゃう。
「そんなまどろっこしいことしてると、他の男に取られちゃいますよ」
「そんな心配はいらない相手だが、俺の物にもならん相手だ」
「煌帝国第一皇子の手中に落ちないなんて、どういうことですか」
「白瑛の言う通り、身分違いの相手だ。身分をかさに無理に手に入れたくもないんだ」
「相変わらず真面目ですね。それなら、無理に駆け引きなんてせずに変わらず会いに行った方がいいですよ」
私のありがたい助言を白い目をしながら「そのようだな」と、不機嫌そうに口にする。
なにがそんなに不満だと言うのか。
恋愛初心者の皇子の為に助言してあげているというのに。
「それより、いつまで蟹挟みしてるんですか。放してくださいよ」
「いや、意外と収まりがよくてな」
そう言って、ぎゅっぎゅっと私の腹を弾みをつけて挟む白雄様。
やめろ、やめろ。本当に中身が出る。
予想通り、白蓮様は白雄様に怒られ座学へと戻っていった。
世話の焼ける人だな、と呆れながら私はどうしようかとも思ったが、白蓮様を引き渡したし白雄様もなんだかんだで元気そうなので「私は下がらせて頂きます」と礼をして下がろうとしても引き止められることなく、「あぁ」と言われるのみ。
調子が狂うな、とは思うがこれが正しい関係性であるし私が白雄様のなさることに口出しはできない。
帰ろう、帰ろう、と帰途に着こうとしたら「あの!」と可愛らしい声がした。
「あなたが李鈴ですか!」
キラキラとした、白雄様と白蓮様を足して二で割って幼くした容貌の幼女に名を聞かれ、まあ、間違いなく白雄様の血筋だと理解したので跪ずき「相違なく。私めが李鈴でございます」と申し上げれば、嬉しそうに私の手を取り先程出たばかりの白雄様の部屋へと取って返した。
「雄兄様!雄兄様!李鈴ですよ!」
「あ、あぁ、そう?だな?」
白雄様に「なんでお前まだいるんだ?」という顔で見られているが、私が一番聞きたい。
「白瑛。李鈴がなにかしたのか?」
なんでそうなるんですか、と文句を言ってやりたいが妹君の前でお互いにいつも通りの態度をとれるわけもなく、私は大人しく白瑛様の言葉を待つ。
「先程、そこの廊下を歩いていたのです!きっと、元気のない雄兄様を心配したあまり来てしまったはいいものの、入る勇気が湧かず帰ろうとしたところを白瑛が連れて参りました!」
いやいやいや、違う違う違う。
用事が済んで帰ろうとしてたんです。
「蓮兄様が仰っていました!雄兄様は李鈴をとても気に入っていると!しかし、二人は身分違い!叶わぬ恋!会えぬ日に身を割かれ枕を濡らす日々!白瑛はそんな二人の橋渡しをしました!」
この暴走具合、皇族の血を感じる。
長椅子に腰掛け俯き肩を震わせる白雄様に、白瑛様は「雄兄様!そんなに嬉しいのですか!」と瞳を輝かせ頬を上気させ興奮してるが、あれは違うな。
「白瑛様。申し訳ございませんが、白雄様と二人きりにしていただけますか?」
わざとらしく意味深な表情と口調でお願いすれば、白瑛様は「私ったら、気が利かなくてごめんなさい」と恥ずかしそうに退出していった。
白瑛様が扉を閉じたのを目視し、白雄様へと向き直り「行かれましたよ」とお知らせすれば、まだ戸の前にいるかも知れないという心配からか長椅子の上で暴れながら声を殺して笑いだした。
視界がうるさい。
白雄様が落ち着くまで静かに立って待っていれば、数回深呼吸してから「面白かった」と感想をのべられた。
でしょうね。
「我が妹ながら想像力が逞しい」
「妄想力、または暴走力と言った方が正しい気がしますが」
「妹をバカにすると俺が怒るぞ」
「失礼致しました」
「冗談だ」
目に溜まった涙を拭い息を整える白雄様はいつも通りに見える気もするが、それでもすぐ側で見ている人が異変を感じているのだからなにかあるだろう。
聞くべきかどうか悩んだが、身近だからこそ言えない悩みというのもある。
差し出がましいと思いつつも、「なにかありましたか?」と尋ねれば「なにか、とは?」と聞き返された。
「白蓮様も白瑛様も紅炎様も、白雄様にいつもの元気がないとご心配されております。なにか私にもお力になれれば、と思いまして」
「やめろ、なんだその堅苦しい話し方は」
「いや、まあ、最近会ってなかったので。で、なんかあったんですか?」
「なんだと思う?」
「めんどくせっ」
なんだ、本当に元気じゃないか。
「なにもないなら、もう帰りますね」とまた礼をして出ようとしたら、今度は「怒るな、もう少しいろ」と両肩を掴まれ引き止められた。
内心、「そうこなくては」などと思ったのは内緒である。
肩を押され、いつもの定位置へと座らせられたら「とりあえず、お前の方は変わりないか?」と私の近況を聞かれた。
「そうですね、概ね変わらずです。そこかしこで、白雄様に飽きられたのだと笑われてはいますが」
「俺が李鈴に飽きる日など来るはずもないのにな」
「それは面白おかしくからかわれるってことですかねぇ」
「こんな会話ができる相手なんてお前しかいないよ」
愛しそうに目を細めるその姿が、なんだかむず痒く感じる。
「そういう白雄様はお変わりなく?」
「変わったさ、勿論。李鈴に言われていた通り、ツケを払わさせられる状態で姫のところに通わさせられて正直疲れてる」
「按摩しましょうか?」
「すまない、頼む」
ごろり、とうつ伏せになった白雄様の肩を触れば、わかりやすく凝り固まっていた。
背中も、腰も、足も、ガッチガチでよく辛くなかったなと感心する。
凝りを揉みほぐすように、ゆっくりと施術をしていけば「あー効くー」と気持ち良さそうなおっさんの声がした。
「公務と相まってずいぶんと溜め込みましたね」
「んーまあなー」
「どうして突然、真面目に伽をしようと思ったんですか?前はあんなに面倒くさがっていたのに」
「……李鈴。俺が恋をしたと言ったら笑うか」
「わはははははっ!」
笑えという振りなのかと思って盛大に笑ったが、どうやら違ったようで蟹挟みをされた。
いや、別に私も面白いとは思っていませんよ?どちらかと言うと、いつも澄まして女など向こうから寄ってくるみたいな顔しておきながら枕投げにはしゃいじゃう男が、恋などという甘酸っぱいものに心揺さぶられる日が来たことに感動しているんで放してください。
「それで?そのことがどう関係してくるんですか?」
「その、まあ、なんと言うか……。自覚したら顔を合わせにくくなったのと……気を引けたら……と思ってだな……」
「わはははははっ!」
あの綺麗なイケメンが生娘みたいな顔で初々しいことを言うものだから、つい本気で笑ってしまった。
折角、一度解放されたのにまた蟹挟みである。
「女に関しては百戦錬磨みたいな顔してるくせに、そんなベタな気の引き方してるとかマジでウケるんですが」
「うるさいぞ、李鈴」
「それで効果はあったんですか?」
「……あったと思うか?」
「思うわけないじゃないですか」
正直に答えたのに、蟹挟みする足の力が強くなった。
痛い、痛い。中身出ちゃう。
「そんなまどろっこしいことしてると、他の男に取られちゃいますよ」
「そんな心配はいらない相手だが、俺の物にもならん相手だ」
「煌帝国第一皇子の手中に落ちないなんて、どういうことですか」
「白瑛の言う通り、身分違いの相手だ。身分をかさに無理に手に入れたくもないんだ」
「相変わらず真面目ですね。それなら、無理に駆け引きなんてせずに変わらず会いに行った方がいいですよ」
私のありがたい助言を白い目をしながら「そのようだな」と、不機嫌そうに口にする。
なにがそんなに不満だと言うのか。
恋愛初心者の皇子の為に助言してあげているというのに。
「それより、いつまで蟹挟みしてるんですか。放してくださいよ」
「いや、意外と収まりがよくてな」
そう言って、ぎゅっぎゅっと私の腹を弾みをつけて挟む白雄様。
やめろ、やめろ。本当に中身が出る。
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