皇子と私
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嫁に行くなと謎の命令をくだされ、「はぁ?なに言ってんだ?」という気持ちと一緒に、皇子と湯船に浸かり「どういう意味合いなんですか?」と問いかける。
「あぁ、俺としては、お前の婿になる男には俺くらいの男であってほしいし、最低でも白蓮か紅炎か紅明くらいであってほしい」
「最低ラインが既にヤバイ」
「かと言って、お前が後宮暮らしなんてまともにできるはずもない。それに、どんなにお前が友人としていつだって来るとしても、旦那に悪いし世間体も悪い」
「まぁ、そうですね」
「なら、行かなければいい!」
突然、話が跳躍したので星が綺麗だと余所事を考えてしまった。
そしてバレて耳を引っ張られた。
「幸いにも、李鈴の一族は子孫繁栄に力を入れていないと聞いた。なら、問題なく一生俺のモノとして呼びつけられる。どこの馬の骨ともわからん奴にやらんで済む!」
力強く語った白雄様に「俺のモノって……。そういうのって普通、恋人同士とか片想いの相手に言っちゃうセリフですよ」と、茶化したつもりだったのだが、隣からなにも反応が返ってこない。
どうしたのかと不審に思い隣を見れば、白蓮様の戦術書とにらめっこしている時のような苦難の顔をされていた。
「白雄様?」
声をかければ、「逆上せた、先にあがる」と言ってさっさと出ていってしまった。
なんだったんだろうか。
いぶかしんだところで、あの人が本当の事を言うとは考えられず、問いただす術もないだろう。
「ま、いいか」
なにか深刻な問題という感じでもなかったし。
風呂から帰ってきた兄上の様子がおかしい。
心ここにあらずといった状態で、話しかけても生返事。
ま、まさか!風呂場で李鈴となにか間違いがあったのでは……!
そんな邪推をし、兄上に「李鈴となにかありましたか?」と伺えば、窓の外を見ながら「なぁ、白蓮。聞いてもいいか」と答えずに質問をされた。
「はい!」
「誰にもわたしたくない、自分だけのものにしたい。死する時まで側にいさせたい、苦楽を共にしたい、他の男のものになどさせない。そういった感情は、友人に向けるものではないのか」
兄上の言う友人が誰かは、名前を出さずともわかった。
「それは……恋慕する相手に向ける独占欲かと、俺は思います……」
俺の返答に、兄上は「そうだな。俺も、そう思う」と、ゆっくり噛み締めるように呟いた。
正直、罠である留学の時や、この湯治に連れてくるほどの信の置き方や、毎夜自室に呼びつけたり、李鈴を見やる目だけでも愛しているのだなというのはわかっていた。
本人だけがわかっていなかったのだ。
全て友人に対する感情の範疇をでないと思っていたら、李鈴とのなにかしらのやり取りで自覚をしてしまったのだろう。
「兄上は……いかがなさるつもりですか……?」
妾として囲ったとしても、兄上の寵愛は李鈴のみに向けられるだろうし、そうなれば正室や側室からの嫌がらせは日々止むことはない。
まぁ、返り討ちにしそうな気もするが。
兄上の返答を待ち、ゆっくりとした語調で「いかがもなにもない。これから先も、俺は李鈴の友だ」と言う。
その横顔は、苦悩と悲しみに満ちているように見てとれた。
「立場を捨ててでも、と言わないとこが兄上らしいですね」
「俺は父上の天下泰平を支える義務がある。女一人の為に投げ捨てていいものではないし、もしそんなことをしたら俺は裸で李鈴を担ぎ躍りながら城内と市内を巡ることになる」
「なんの話ですか?」
「そういう約束をしてしまったんだ。それに、もし俺が立場も義務も投げ捨てでもしたら、あいつは怒るだろうな。『私の知る練白雄皇子はそのように女ごときで容易く救うべき者を忘れ投げ出す軟弱者ではない!』とな。不敬罪覚悟で殴られるやも知れん」
想像したのだろうか、クスクス笑いながらそして愛しそうに、悲しそうに「全くもってその通りだ」と呟いた。
「囲うつもりも、毛頭ない。あいつには自由に生きてほしいし、俺の妾としての負い目も感じてほしくない」
「ジレンマですね」
「そうだな……」
あの強く凛々しい兄上が、笑いながら一筋の涙を流したのを俺が見たのは、これが最初で最後だった。
愛しているの一言すら言うことが許されない。
言っても真に受けいられない。
なんとも残酷な運命なのかと他人の俺が思っているのに、兄上はすべてを受け入れ秘めた愛情を押し殺しこの先も最愛の女と“友”としているのかと思うと、やはり兄上は強いと感服してしまう。
俺は、そうあれるだろうか。
兄上のように、伝えるべきではない愛情を殺して変わらず……。
いや、俺はきっと口にしてしまうんだろうな……。
「兄上はお強いですね」
「俺は弱いよ、白蓮。なんと罵られても身分を捨てようと踏み出せない」
「そこが兄上の強さですよ」
「……そうか」
「あぁ、俺としては、お前の婿になる男には俺くらいの男であってほしいし、最低でも白蓮か紅炎か紅明くらいであってほしい」
「最低ラインが既にヤバイ」
「かと言って、お前が後宮暮らしなんてまともにできるはずもない。それに、どんなにお前が友人としていつだって来るとしても、旦那に悪いし世間体も悪い」
「まぁ、そうですね」
「なら、行かなければいい!」
突然、話が跳躍したので星が綺麗だと余所事を考えてしまった。
そしてバレて耳を引っ張られた。
「幸いにも、李鈴の一族は子孫繁栄に力を入れていないと聞いた。なら、問題なく一生俺のモノとして呼びつけられる。どこの馬の骨ともわからん奴にやらんで済む!」
力強く語った白雄様に「俺のモノって……。そういうのって普通、恋人同士とか片想いの相手に言っちゃうセリフですよ」と、茶化したつもりだったのだが、隣からなにも反応が返ってこない。
どうしたのかと不審に思い隣を見れば、白蓮様の戦術書とにらめっこしている時のような苦難の顔をされていた。
「白雄様?」
声をかければ、「逆上せた、先にあがる」と言ってさっさと出ていってしまった。
なんだったんだろうか。
いぶかしんだところで、あの人が本当の事を言うとは考えられず、問いただす術もないだろう。
「ま、いいか」
なにか深刻な問題という感じでもなかったし。
風呂から帰ってきた兄上の様子がおかしい。
心ここにあらずといった状態で、話しかけても生返事。
ま、まさか!風呂場で李鈴となにか間違いがあったのでは……!
そんな邪推をし、兄上に「李鈴となにかありましたか?」と伺えば、窓の外を見ながら「なぁ、白蓮。聞いてもいいか」と答えずに質問をされた。
「はい!」
「誰にもわたしたくない、自分だけのものにしたい。死する時まで側にいさせたい、苦楽を共にしたい、他の男のものになどさせない。そういった感情は、友人に向けるものではないのか」
兄上の言う友人が誰かは、名前を出さずともわかった。
「それは……恋慕する相手に向ける独占欲かと、俺は思います……」
俺の返答に、兄上は「そうだな。俺も、そう思う」と、ゆっくり噛み締めるように呟いた。
正直、罠である留学の時や、この湯治に連れてくるほどの信の置き方や、毎夜自室に呼びつけたり、李鈴を見やる目だけでも愛しているのだなというのはわかっていた。
本人だけがわかっていなかったのだ。
全て友人に対する感情の範疇をでないと思っていたら、李鈴とのなにかしらのやり取りで自覚をしてしまったのだろう。
「兄上は……いかがなさるつもりですか……?」
妾として囲ったとしても、兄上の寵愛は李鈴のみに向けられるだろうし、そうなれば正室や側室からの嫌がらせは日々止むことはない。
まぁ、返り討ちにしそうな気もするが。
兄上の返答を待ち、ゆっくりとした語調で「いかがもなにもない。これから先も、俺は李鈴の友だ」と言う。
その横顔は、苦悩と悲しみに満ちているように見てとれた。
「立場を捨ててでも、と言わないとこが兄上らしいですね」
「俺は父上の天下泰平を支える義務がある。女一人の為に投げ捨てていいものではないし、もしそんなことをしたら俺は裸で李鈴を担ぎ躍りながら城内と市内を巡ることになる」
「なんの話ですか?」
「そういう約束をしてしまったんだ。それに、もし俺が立場も義務も投げ捨てでもしたら、あいつは怒るだろうな。『私の知る練白雄皇子はそのように女ごときで容易く救うべき者を忘れ投げ出す軟弱者ではない!』とな。不敬罪覚悟で殴られるやも知れん」
想像したのだろうか、クスクス笑いながらそして愛しそうに、悲しそうに「全くもってその通りだ」と呟いた。
「囲うつもりも、毛頭ない。あいつには自由に生きてほしいし、俺の妾としての負い目も感じてほしくない」
「ジレンマですね」
「そうだな……」
あの強く凛々しい兄上が、笑いながら一筋の涙を流したのを俺が見たのは、これが最初で最後だった。
愛しているの一言すら言うことが許されない。
言っても真に受けいられない。
なんとも残酷な運命なのかと他人の俺が思っているのに、兄上はすべてを受け入れ秘めた愛情を押し殺しこの先も最愛の女と“友”としているのかと思うと、やはり兄上は強いと感服してしまう。
俺は、そうあれるだろうか。
兄上のように、伝えるべきではない愛情を殺して変わらず……。
いや、俺はきっと口にしてしまうんだろうな……。
「兄上はお強いですね」
「俺は弱いよ、白蓮。なんと罵られても身分を捨てようと踏み出せない」
「そこが兄上の強さですよ」
「……そうか」