皇子と私
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私の一族は魔法という力が使える一族です。
魔法は自然界の現象をルフという物に命令式を組み込むことで意図的に起こす事のできる力です。
ですが、それはごく最近になってできる様になったのです。
以前は、命令式という物はなく魔法を使うには命を削らなければ使えない代物でした。
とある国では、魔導師が使い捨ての駒の様に使われ、最後は魔導師によってその国は滅ぼされました。
だから私の一族は軍事利用され使い潰される事も、呪い師として疎まれていた一族を召し抱えてくださった練家滅亡の一端にならぬ為にその力の事をひた隠しにしてきました。
「ですから、どうか、どうか此度の事はご内密に……!」
額を地に擦りつけ懇願する私に「その魔法というのは、お前の一族全員が使える物なのか?」と白雄様は問われた。
「いいえ。私は一族の中でも秀でた才の持ち主です。他にも使える者もいますが、奇跡を起こす程の力は持っていません。私とて一度戦局を変えるだけでも精一杯で、それに加えて負傷者の治癒までしたらこの命は長くはないでしょう」
「そうか」
「ですが、もし白雄様がこの力を、命を国に差しだせと仰れば私は喜んでこの命を捧げます。ですから、一族の皆には手出しをしないで頂きたいのです」
戦争に行くのは怖い。
誰かを殺すのも、誰かが死ぬのも、私が死ぬのも怖い。
けれど、これは私がまいた種だ。
私の命で一族が守れるならば、それこそ安い。
震える手を握りしめ、白雄様を見上げると徐に額を弾かれた。
バチンッ!
「っだ!」
「嘗めるな、李鈴。煌の国の兵士達は、女一人に頼るほど柔ではない。奇跡に頼り、自分の手で勝ち取らぬ勝利など意味はない。煌の国は自らの意思で歩み、自らの意思で未来を切り開く。お前の力など必要ない」
「は、はい……。出過ぎた真似を致しました……」
自身の力を過信した様な私の物言いに、今更ながら羞恥心がわき上がる。
ふいて顔を上げない私に、白雄様は「李鈴、俺が何に怒りを覚えているかわかるか?」と問いただす。
「約束を破った事でしょうか。それとも力を隠していたからでしょうか。それとも一族の存亡を顧みなかった私の愚かさにでしょうか。思い当たる事が山とあります。軽蔑されても仕方のない事ばかりです。もう、白雄様に向ける顔が分からないほどです。明日にでも私は旅に出ます。今までお世話になりました、白雄様。どうかお幸せにっ!」
捲し立てるように言葉を紡いでいたら、両頬を引っぱたく様に掴まれた。
白雄様が不機嫌そうな顔で「お前は混乱するとすぐ人の話を聞かなくなる。悪い癖だ」と仰った。
「確かに、お前は愚かしい事をした。約束も破った。それに関しては腸が煮えくりかえる程、怒りを覚えている。けれど、李鈴。俺が何よりも腹をたてているのは俺自身にだ。俺がお前にあんな話をしなかったら、こんなにお前を追い詰めなかったはずだ」
「そんな!白雄様は何も悪くはありません!」
「いいや、俺が悪い!」
「私です!」
「俺だ!」
さっきまであんなにもしんみりとしていた筈の空気が、一気にいつもの空気になった。
「私が悪いとお認めになったらどうですか!」
「お前こそ俺に責があったと認めたらどうだ!」
小一時間揉めた末に「お互い悪かった事にしよう」という着地点に落ち着いた。
「いいか、同時だぞ」
「わかってます。せーの」
「すまなかった」
「申し訳ありませんでした」
同時に深々と頭を下げての謝罪。
そろりと視線をあげると、同じタイミングで視線をあげた白雄様と目が合い、どちらからともなく笑いだした。
「はぁ、白雄様には敵わないなぁ」
「俺とてそうだ。……さっきは怒鳴って悪かったな」
「いえ、それは約束を破った私に責任があります」
「心底、心配したんだ。お前に何かあったらと。何もなくてよかった」
安堵の表情を浮かべる白雄様に、いつもの調子で「やだ~、白雄様、私の事大好きすぎ~」と茶化したら、真顔で「そうだが、何か?」と返された。
そんな真面目に返されるとこちらも「お、おう」としか返せないのだけれど。
「好きでなかったら俺とてあそこまで怒らん」
「そ、そうですか……」
気恥しくなって居心地が悪くなったので「今夜はもう帰りますね」と言い腰を上げると、白雄様が「お前はどうなんだ?」と尋ねてきた。
「何がですか?」
「俺の事を好きか?」
「好きですよ。好きでなかったら、こんなに心配しません」
私の答えに、白雄様は満足そうに笑い「なら、よかった。おやすみ、李鈴」と仰った。
魔法は自然界の現象をルフという物に命令式を組み込むことで意図的に起こす事のできる力です。
ですが、それはごく最近になってできる様になったのです。
以前は、命令式という物はなく魔法を使うには命を削らなければ使えない代物でした。
とある国では、魔導師が使い捨ての駒の様に使われ、最後は魔導師によってその国は滅ぼされました。
だから私の一族は軍事利用され使い潰される事も、呪い師として疎まれていた一族を召し抱えてくださった練家滅亡の一端にならぬ為にその力の事をひた隠しにしてきました。
「ですから、どうか、どうか此度の事はご内密に……!」
額を地に擦りつけ懇願する私に「その魔法というのは、お前の一族全員が使える物なのか?」と白雄様は問われた。
「いいえ。私は一族の中でも秀でた才の持ち主です。他にも使える者もいますが、奇跡を起こす程の力は持っていません。私とて一度戦局を変えるだけでも精一杯で、それに加えて負傷者の治癒までしたらこの命は長くはないでしょう」
「そうか」
「ですが、もし白雄様がこの力を、命を国に差しだせと仰れば私は喜んでこの命を捧げます。ですから、一族の皆には手出しをしないで頂きたいのです」
戦争に行くのは怖い。
誰かを殺すのも、誰かが死ぬのも、私が死ぬのも怖い。
けれど、これは私がまいた種だ。
私の命で一族が守れるならば、それこそ安い。
震える手を握りしめ、白雄様を見上げると徐に額を弾かれた。
バチンッ!
「っだ!」
「嘗めるな、李鈴。煌の国の兵士達は、女一人に頼るほど柔ではない。奇跡に頼り、自分の手で勝ち取らぬ勝利など意味はない。煌の国は自らの意思で歩み、自らの意思で未来を切り開く。お前の力など必要ない」
「は、はい……。出過ぎた真似を致しました……」
自身の力を過信した様な私の物言いに、今更ながら羞恥心がわき上がる。
ふいて顔を上げない私に、白雄様は「李鈴、俺が何に怒りを覚えているかわかるか?」と問いただす。
「約束を破った事でしょうか。それとも力を隠していたからでしょうか。それとも一族の存亡を顧みなかった私の愚かさにでしょうか。思い当たる事が山とあります。軽蔑されても仕方のない事ばかりです。もう、白雄様に向ける顔が分からないほどです。明日にでも私は旅に出ます。今までお世話になりました、白雄様。どうかお幸せにっ!」
捲し立てるように言葉を紡いでいたら、両頬を引っぱたく様に掴まれた。
白雄様が不機嫌そうな顔で「お前は混乱するとすぐ人の話を聞かなくなる。悪い癖だ」と仰った。
「確かに、お前は愚かしい事をした。約束も破った。それに関しては腸が煮えくりかえる程、怒りを覚えている。けれど、李鈴。俺が何よりも腹をたてているのは俺自身にだ。俺がお前にあんな話をしなかったら、こんなにお前を追い詰めなかったはずだ」
「そんな!白雄様は何も悪くはありません!」
「いいや、俺が悪い!」
「私です!」
「俺だ!」
さっきまであんなにもしんみりとしていた筈の空気が、一気にいつもの空気になった。
「私が悪いとお認めになったらどうですか!」
「お前こそ俺に責があったと認めたらどうだ!」
小一時間揉めた末に「お互い悪かった事にしよう」という着地点に落ち着いた。
「いいか、同時だぞ」
「わかってます。せーの」
「すまなかった」
「申し訳ありませんでした」
同時に深々と頭を下げての謝罪。
そろりと視線をあげると、同じタイミングで視線をあげた白雄様と目が合い、どちらからともなく笑いだした。
「はぁ、白雄様には敵わないなぁ」
「俺とてそうだ。……さっきは怒鳴って悪かったな」
「いえ、それは約束を破った私に責任があります」
「心底、心配したんだ。お前に何かあったらと。何もなくてよかった」
安堵の表情を浮かべる白雄様に、いつもの調子で「やだ~、白雄様、私の事大好きすぎ~」と茶化したら、真顔で「そうだが、何か?」と返された。
そんな真面目に返されるとこちらも「お、おう」としか返せないのだけれど。
「好きでなかったら俺とてあそこまで怒らん」
「そ、そうですか……」
気恥しくなって居心地が悪くなったので「今夜はもう帰りますね」と言い腰を上げると、白雄様が「お前はどうなんだ?」と尋ねてきた。
「何がですか?」
「俺の事を好きか?」
「好きですよ。好きでなかったら、こんなに心配しません」
私の答えに、白雄様は満足そうに笑い「なら、よかった。おやすみ、李鈴」と仰った。