皇子と私
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
滞りなく、国王の処刑は決まった。
私はどういうわけか自室待機を命じられ、遠くで民衆の歓喜の声を聞き国王の死を感じた。
次の国王が決まるまで白雄様が政務をこなす事になり、国からは人員が補填されたので私は帰ろうとしたのだが、白雄様に「俺が帰るまでお前もここにいろ」とお達しがあった。
「お前と紅炎には俺の補佐をしてもらう」
「御意」
頭を垂れる紅炎様に見えない様あからさまに顔を顰めて見せるも、白雄様は紅炎様の手前私が文句を言えない事を知っているのか、得意満面の笑みでこちらを見下ろしている。
致し方なく少し間を置き、私も「御意」と了承した。
「紅炎、郊外の村々の状況を報告しろ」
「はい。物資は滞りなく行き届いております」
「李鈴、奴隷として売られていった者達の捜査はどうなっている」
「八割方捜索、保護は完了していますが残念ながら敵国に渡ってしまっている者がおります。その者達の救出は不可能かと」
私の報告に、白雄様は顔を顰めて「そうか」と仰った。
白雄様は深い溜息を吐きながら「俺は無力だな」と弱音を吐かれた。
激務に加え、どうしようもできない焦燥と無力感による心労。
私から何か言うのも烏滸がましいと思い口を噤んでいると、紅炎様が「殿下はとても奮闘されています!無力ではありません!」と言った。
「すまない、一人にしてくれ」
項垂れる白雄様に「御意」と私はすぐさま返事をし、部屋を出る。
紅炎様も心配そうに白雄様を見つめていたが「御意」と言い部屋から出てきた。
「白雄様は大丈夫だろうか……」
「心身ともにお疲れなのは見て取れますね」
他人事のように言った私の言葉が気になったのか、紅炎様が「貴殿は心配ではないのか」ときつめに問いただしてきた。
「心配ではありますが、私ができる事など茶を差し出すくらいです。ならば、白雄様の御心が乱れぬ様にいつも通り過ごす事しか出来ません」
「それもそうだが……。何か、何か俺にできる事はないだろうか……」
「焦っても損ずるだけです。落ち着いて、今何が必要かを見極めましょう」
私の素っ気ない返事に納得いかない様子ではあるが「そうだな」と紅炎様は返事をした。
その日の夜、起きている者は虫だけという時間。
香を数種と香炉と着替えを持って、白雄様の部屋の真下へと行く。
窓は開け放たれており、そこから白雄様が空を見ているのを確認し、側の木によじ登る。
「……何をやっているんだ、お前は」
呆れと驚きで複雑な顔をしている白雄様に「そこ退いてください。飛び移れないです」と言うと、白雄様は横にずれて部屋への道を開けた。
「よっと」
木から窓枠へと飛び移り、白雄様の部屋へと入った。
「それで、こんな夜更けに何をしていたんだ」
「ここ最近、日に日に目の下の隈を濃くされていたので眠れていないのではと思って、心配してきてあげたんですよ。予想通り、眠れていない様ですし」
「お前に隠し事はできんな」
私は窓を閉め、数種の香を取り出し白雄様に「どれがお好みですか?」と尋ねる。
白雄様は香りを確かめて「この香が一番落ち着く」と私愛用の香を選んだ。
手早く香を炊き白雄様に「マッサージでも致しましょうか」と振り向くと、真正面から抱きつかれた。
座っていたので後ろに倒れる事はなかったが、体重をだいぶかけられているので頑張れ私の腹筋。
「李鈴……」
「はい、ここにいますよ」
弱々しく私の名前を呼ぶ白雄様の背中をゆっくりと撫でる。
「今日は眠れるまで側にいますから」
「一緒に寝てくれないと嫌だ」
子供みたいな口調で言うので、少し笑いながら「言うと思いました」と言いながら体を離し袋から着替えを取り戻すと、漸く白雄様が笑った。
「じゃあ、着替えるので部屋から出て行ってください」
「部屋の主を追い出す気か」
「妻でもない女性の裸を見る気ですか」
「お前の体の発育を確認するのも皇族の務めだ」
「馬鹿言ってないで出て行ってください」
文句を垂れる白雄様を追い出し、手早く肌着へと着替える。
扉を叩くと、白雄様が部屋へと入って来た。
先に皇子が寝所に入り、私が広い布団を這って進んでいると唐突に白雄様が私の腕を引いた。
「わっと!」
ぼふんとふかふかな布団に身を沈めると、その上から白雄様がのしかかる様に覆いかぶさってきた。
私の胸に顔を埋め抱きしめてくる白雄様に「危ないじゃないですか」と文句を言うも、白雄様は構わず深呼吸をした。
「お前の匂いは落ち着くな」
「白雄様、変態くさいですよ」
胸元にある白雄様の頭を撫でると、不安気な表情で見あげてきたので「何かありましたか?」と尋ねる。
「いや最近、お前がいやに素っ気ないから、その、呆れられたのかと思っていたから」
意外な言葉に私は「私が白雄様の何に呆れると言うのですか?」と聞けば、白雄様はごにょごにょと「その、国の事で一睡もできないメンタルが弱い所とか、情けないなと思われたとか……」と仰るので呆れながら「そんなわけないじゃないですか」と否定する。
「白雄様はよくやっています。白雄様が尽力しなければ今もこの国の民は苦しみ、さらに被害が広がっていました。白雄様は頑張ってますよ」
「そんな事、今まで一言も言っていなかったじゃないか」
不満そうに文句を垂れる白雄様に「だって、下手な事を言って紅炎様の逆鱗に触れたくないですし」と弁明する。
「確かに、紅炎は俺の事になると頭に血が上りやすいからな。だが、よかった……。お前に見放されたわけではなくて。お前に嫌われたら俺は……」
奇妙な間を空けるので「俺は?」と先を促すと「どうなるんだろうな」と答えを出すのが難しい問いかけをしてきた。
私は「うーん」と悩みながら「どうもならないんじゃないですか?」と答える。
「惜しい女をなくしたくらいに思ってくだされば幸いですね」
「お前の目には、俺はそんなに薄情に見えているのか……」
「そうではないですよ。ただ、私一人がいなくなったくらいでは白雄様の心を乱す理由にはならないという話です。それとも、白雄様は私がいなくなったら折れるような柔い方なのですか?」
皇子は私の答えに悩みながら「そうだな」と仰った。
「変わらず毎日を過ごすだろうな」
「でしょう?」
「でも」
「でも?」
「一生、お前と過ごした日々を思い出しては悲しみに暮れる気がするな」
「意外と柔いですね」
おかしそうに笑いながら言うと抱きつく力を強めながら「うるさい」と白雄様は仰った。
「さ、不毛な事を考えないでもう寝ましょう」
「そうだな。おやすみ、李鈴」
「おやすみなさい、白雄様。よい夢を」
私はどういうわけか自室待機を命じられ、遠くで民衆の歓喜の声を聞き国王の死を感じた。
次の国王が決まるまで白雄様が政務をこなす事になり、国からは人員が補填されたので私は帰ろうとしたのだが、白雄様に「俺が帰るまでお前もここにいろ」とお達しがあった。
「お前と紅炎には俺の補佐をしてもらう」
「御意」
頭を垂れる紅炎様に見えない様あからさまに顔を顰めて見せるも、白雄様は紅炎様の手前私が文句を言えない事を知っているのか、得意満面の笑みでこちらを見下ろしている。
致し方なく少し間を置き、私も「御意」と了承した。
「紅炎、郊外の村々の状況を報告しろ」
「はい。物資は滞りなく行き届いております」
「李鈴、奴隷として売られていった者達の捜査はどうなっている」
「八割方捜索、保護は完了していますが残念ながら敵国に渡ってしまっている者がおります。その者達の救出は不可能かと」
私の報告に、白雄様は顔を顰めて「そうか」と仰った。
白雄様は深い溜息を吐きながら「俺は無力だな」と弱音を吐かれた。
激務に加え、どうしようもできない焦燥と無力感による心労。
私から何か言うのも烏滸がましいと思い口を噤んでいると、紅炎様が「殿下はとても奮闘されています!無力ではありません!」と言った。
「すまない、一人にしてくれ」
項垂れる白雄様に「御意」と私はすぐさま返事をし、部屋を出る。
紅炎様も心配そうに白雄様を見つめていたが「御意」と言い部屋から出てきた。
「白雄様は大丈夫だろうか……」
「心身ともにお疲れなのは見て取れますね」
他人事のように言った私の言葉が気になったのか、紅炎様が「貴殿は心配ではないのか」ときつめに問いただしてきた。
「心配ではありますが、私ができる事など茶を差し出すくらいです。ならば、白雄様の御心が乱れぬ様にいつも通り過ごす事しか出来ません」
「それもそうだが……。何か、何か俺にできる事はないだろうか……」
「焦っても損ずるだけです。落ち着いて、今何が必要かを見極めましょう」
私の素っ気ない返事に納得いかない様子ではあるが「そうだな」と紅炎様は返事をした。
その日の夜、起きている者は虫だけという時間。
香を数種と香炉と着替えを持って、白雄様の部屋の真下へと行く。
窓は開け放たれており、そこから白雄様が空を見ているのを確認し、側の木によじ登る。
「……何をやっているんだ、お前は」
呆れと驚きで複雑な顔をしている白雄様に「そこ退いてください。飛び移れないです」と言うと、白雄様は横にずれて部屋への道を開けた。
「よっと」
木から窓枠へと飛び移り、白雄様の部屋へと入った。
「それで、こんな夜更けに何をしていたんだ」
「ここ最近、日に日に目の下の隈を濃くされていたので眠れていないのではと思って、心配してきてあげたんですよ。予想通り、眠れていない様ですし」
「お前に隠し事はできんな」
私は窓を閉め、数種の香を取り出し白雄様に「どれがお好みですか?」と尋ねる。
白雄様は香りを確かめて「この香が一番落ち着く」と私愛用の香を選んだ。
手早く香を炊き白雄様に「マッサージでも致しましょうか」と振り向くと、真正面から抱きつかれた。
座っていたので後ろに倒れる事はなかったが、体重をだいぶかけられているので頑張れ私の腹筋。
「李鈴……」
「はい、ここにいますよ」
弱々しく私の名前を呼ぶ白雄様の背中をゆっくりと撫でる。
「今日は眠れるまで側にいますから」
「一緒に寝てくれないと嫌だ」
子供みたいな口調で言うので、少し笑いながら「言うと思いました」と言いながら体を離し袋から着替えを取り戻すと、漸く白雄様が笑った。
「じゃあ、着替えるので部屋から出て行ってください」
「部屋の主を追い出す気か」
「妻でもない女性の裸を見る気ですか」
「お前の体の発育を確認するのも皇族の務めだ」
「馬鹿言ってないで出て行ってください」
文句を垂れる白雄様を追い出し、手早く肌着へと着替える。
扉を叩くと、白雄様が部屋へと入って来た。
先に皇子が寝所に入り、私が広い布団を這って進んでいると唐突に白雄様が私の腕を引いた。
「わっと!」
ぼふんとふかふかな布団に身を沈めると、その上から白雄様がのしかかる様に覆いかぶさってきた。
私の胸に顔を埋め抱きしめてくる白雄様に「危ないじゃないですか」と文句を言うも、白雄様は構わず深呼吸をした。
「お前の匂いは落ち着くな」
「白雄様、変態くさいですよ」
胸元にある白雄様の頭を撫でると、不安気な表情で見あげてきたので「何かありましたか?」と尋ねる。
「いや最近、お前がいやに素っ気ないから、その、呆れられたのかと思っていたから」
意外な言葉に私は「私が白雄様の何に呆れると言うのですか?」と聞けば、白雄様はごにょごにょと「その、国の事で一睡もできないメンタルが弱い所とか、情けないなと思われたとか……」と仰るので呆れながら「そんなわけないじゃないですか」と否定する。
「白雄様はよくやっています。白雄様が尽力しなければ今もこの国の民は苦しみ、さらに被害が広がっていました。白雄様は頑張ってますよ」
「そんな事、今まで一言も言っていなかったじゃないか」
不満そうに文句を垂れる白雄様に「だって、下手な事を言って紅炎様の逆鱗に触れたくないですし」と弁明する。
「確かに、紅炎は俺の事になると頭に血が上りやすいからな。だが、よかった……。お前に見放されたわけではなくて。お前に嫌われたら俺は……」
奇妙な間を空けるので「俺は?」と先を促すと「どうなるんだろうな」と答えを出すのが難しい問いかけをしてきた。
私は「うーん」と悩みながら「どうもならないんじゃないですか?」と答える。
「惜しい女をなくしたくらいに思ってくだされば幸いですね」
「お前の目には、俺はそんなに薄情に見えているのか……」
「そうではないですよ。ただ、私一人がいなくなったくらいでは白雄様の心を乱す理由にはならないという話です。それとも、白雄様は私がいなくなったら折れるような柔い方なのですか?」
皇子は私の答えに悩みながら「そうだな」と仰った。
「変わらず毎日を過ごすだろうな」
「でしょう?」
「でも」
「でも?」
「一生、お前と過ごした日々を思い出しては悲しみに暮れる気がするな」
「意外と柔いですね」
おかしそうに笑いながら言うと抱きつく力を強めながら「うるさい」と白雄様は仰った。
「さ、不毛な事を考えないでもう寝ましょう」
「そうだな。おやすみ、李鈴」
「おやすみなさい、白雄様。よい夢を」