怪怪
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「そういやぁ、お嬢ちゃんの名前を聞いてなかったな」
皿洗いをする私に、おじ様改めオヤジさんに聞かれ「ちゃんとした名前がないので、お好きに呼んでください」と言えば、思考を巡らしているのか沈黙が続く。
「そんなにしっかり考えなくていいですよ」
「ダメだろ。名前ってのは大切なんだ」
そういうものなんですかねぇ、と他人事の様に言いながら最後のお皿を水切りラックに乗せて「なら、オヤジさんの好きなお名前でいいですよ」と言えば、やはり難しい顔。
元からか。
「私に損得勘定なしで接してくれた方の好きな名前です。素敵じゃないですか」
「なら……鹿乃子でどうだ」
「可愛らしい名前ですね。はい、ではこれから鹿乃子と呼んでください」
改めて「よろしくお願い致します」と言えば、短く「あぁ」と返される。
「そんじゃ、忙しなくて悪いが今からおめェの生活雑貨買いに行ってくれ。治崎と」
治崎さんって、あの愉快なくちばしマスクの男性ですよね?
えぇ、あんな警戒心しかない状態の人と買い物って疲れそうだとは思うが、置いてもらう身の人間なのでワガママは言えないか。
手を拭き台所から出ると、既に出かける準備の出来ている治崎さんが待機していた。
「お待たせしました、治崎さ――」
「外で俺の名前を呼ぶな、俺に触れるな、俺の言う事は絶対に聞け。この三つを遵守しろ」
流れる様に言い渡された命令に「はーい」と答えつつ内心「こっわ」と引いてしまう。
警戒してるとか抜きで、ただ単に人間嫌いなんじゃないだろうか彼は。
治崎さんの運転する車に乗り、大きなショッピングモールに連れて来られる。
「まずは……下着です……ね……」
「……」
「あ、あの、そんな顔されても、結構必要なんですよ……」
殺気立った表情で睨まれているが、いや、その、ランジェリーショップなんて絶対に男性は入りたくないと思うんですけど、ほら、うち全焼して下着も今付けてるのだけなんでないと本当に困るんですよ……。
恐ろしい視線にさらされる事、数分。
盛大な舌打ちをしたあとに「十セット即座に選べ。それ以上買うな」と言われ、思わず興奮気味に「じゅ、十セットも買ってくれるんですか……!」と言ってしまった。
「あ、あの、結構高くつくと思うんですけど!」
「どれくだいだ」
「三万くらいかと……」
「安い、行くぞ」
そう言い、場所を把握しているのかさっさと向かってしまった。
あー!ちょっと待ってください!足の長さが違うので、そんなに颯爽と歩かれますと見失う……見失った……。
どうしよう、ケータイのアドレスも知らないし、下手に動いてすれ違ったらそれはそれで怒られそうだし……。
「こういう時は、迷子センター!」
意気込んで迷子センターに赴き「治崎……鹿乃子といいますが、兄とはぐれてしまいまして!」と見た目年齢高校生の女が必死に訴えて来てさぞ、係員のお姉さんも困っただろう。
私も、このあと治崎さんにどつきまわされるかと思うと本当に困る。
皿洗いをする私に、おじ様改めオヤジさんに聞かれ「ちゃんとした名前がないので、お好きに呼んでください」と言えば、思考を巡らしているのか沈黙が続く。
「そんなにしっかり考えなくていいですよ」
「ダメだろ。名前ってのは大切なんだ」
そういうものなんですかねぇ、と他人事の様に言いながら最後のお皿を水切りラックに乗せて「なら、オヤジさんの好きなお名前でいいですよ」と言えば、やはり難しい顔。
元からか。
「私に損得勘定なしで接してくれた方の好きな名前です。素敵じゃないですか」
「なら……鹿乃子でどうだ」
「可愛らしい名前ですね。はい、ではこれから鹿乃子と呼んでください」
改めて「よろしくお願い致します」と言えば、短く「あぁ」と返される。
「そんじゃ、忙しなくて悪いが今からおめェの生活雑貨買いに行ってくれ。治崎と」
治崎さんって、あの愉快なくちばしマスクの男性ですよね?
えぇ、あんな警戒心しかない状態の人と買い物って疲れそうだとは思うが、置いてもらう身の人間なのでワガママは言えないか。
手を拭き台所から出ると、既に出かける準備の出来ている治崎さんが待機していた。
「お待たせしました、治崎さ――」
「外で俺の名前を呼ぶな、俺に触れるな、俺の言う事は絶対に聞け。この三つを遵守しろ」
流れる様に言い渡された命令に「はーい」と答えつつ内心「こっわ」と引いてしまう。
警戒してるとか抜きで、ただ単に人間嫌いなんじゃないだろうか彼は。
治崎さんの運転する車に乗り、大きなショッピングモールに連れて来られる。
「まずは……下着です……ね……」
「……」
「あ、あの、そんな顔されても、結構必要なんですよ……」
殺気立った表情で睨まれているが、いや、その、ランジェリーショップなんて絶対に男性は入りたくないと思うんですけど、ほら、うち全焼して下着も今付けてるのだけなんでないと本当に困るんですよ……。
恐ろしい視線にさらされる事、数分。
盛大な舌打ちをしたあとに「十セット即座に選べ。それ以上買うな」と言われ、思わず興奮気味に「じゅ、十セットも買ってくれるんですか……!」と言ってしまった。
「あ、あの、結構高くつくと思うんですけど!」
「どれくだいだ」
「三万くらいかと……」
「安い、行くぞ」
そう言い、場所を把握しているのかさっさと向かってしまった。
あー!ちょっと待ってください!足の長さが違うので、そんなに颯爽と歩かれますと見失う……見失った……。
どうしよう、ケータイのアドレスも知らないし、下手に動いてすれ違ったらそれはそれで怒られそうだし……。
「こういう時は、迷子センター!」
意気込んで迷子センターに赴き「治崎……鹿乃子といいますが、兄とはぐれてしまいまして!」と見た目年齢高校生の女が必死に訴えて来てさぞ、係員のお姉さんも困っただろう。
私も、このあと治崎さんにどつきまわされるかと思うと本当に困る。