怪怪
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大きな欠伸をひとつしてから、右を見て左を見て上も見て下も見……おぉ、上等な寝間着に着替えさせられている……。
あのおじ様がそんな事をするとは思えないから、たぶん誰か別の女性が着替えさせてくれたんだろうな。
軽く布団を畳んでから襖を開けると、廊下に短髪にノーネクタイスーツの男性が立っていた。まあ、そこまではいいのだけれど、え、なにそのくちばしみたいなマスク。
ヤバい、怖いな、と襖の影から一歩も動けずにいると、くちばしマスクの男性は善人を装った笑顔で「おはようございます。オヤジが待っています」と言い、先を促した。
あぁ、これ、かなり警戒されているな……。
長く生きている分、作り物の笑顔や警戒心などはすぐに気が付いてしまう。
先を歩かせているのも、私がなにかしたら即座に判断を下せる様にという意図だろう。
頬をかきながら「先に顔や口を洗わせてもらっていいですか?」と許可をとれば、探る様な視線を投げかけてから「構いませんよ」と返された。
一挙手一投足見逃さない、と言わんばかりの熱い視線を受けながら身支度を整えてから、言われた部屋へと入れば昨日と変わらず怖い顔をしたおじ様が座っていた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「はい、とてもよく。わざわざありがとうございました」
礼を一つ述べると、用意された和朝食を指差し「腹減ってるだろ。食べてけ」と言ってくれたので、喜んで食卓に着き「いただきます」と感謝を述べてからアサリの味噌汁に手をのばす。
「はぁ……。お酒を飲んだ翌日は、やはりアサリですね……」
「二日酔いは大丈夫ですか?」
隣に腰をおろした、胡散臭いくちばしマスクの男性に「はい、お気遣いありがとうございます」と当たり障りなく返答する。
できるだけ刺激しない様にと気を付けつつ白米に口をつけているとくちばしマスクの男性がぶしつけに「失礼ですが、年齢をお聞きしてもよろしいですか?随分とお若く見えますが」と聞いてきたので、あー、これは……。
「おい、治崎。女に年齢なんて聞くな」
「あぁ、そうですね。失礼、致しました……」
思い切り疑いの目を向けてきているので、これはもう、たぶん何かしら調べられているんだろうなと勘づいたので、指を折って久方ぶりに年齢を数えてみるも途中で断念した。
「もう、数えるのも面倒な歳ですね。歳とったなぁ……」
しみじみと言う私に、くちばしマスクの男性、治崎さんが「それは、三十年以上前だからという事ですか?」と畳みかけてくる。
「治崎、さっきからなんなんだ……」
「玄野にこの女の事を調べさせたが、調べても調べてもきりがないんだよ。三十年遡っても一向に終わりが見えねェ。何かの個性かと思って調べても、個性登録もなければ発現した形跡もない」
はぁ、いつから調べてたか知らないけど短時間で三十年も遡るだなんて中々の調査能力だと感心しつつ、おかずに手をつけていたら新たな第三者が登場した。
「あれから更に二十年遡ってもまだ先がありそうですよ」
声の方を向けば、これまた顔のいい男が資料と思われる紙束を持ちながら入って来た。
段々と険しい顔になっているおじ様に、さてどうしようかと食事をしつつ考えを巡らせる。
まあ、巡らせるまでもなく普通に素性を話せばいいんだろうけど。
別に、後ろめたい事はないのだし。
「そりゃ、五十年程度で私の事を知ろうだなんて甘いですよ」
「へぇ、じゃあ何十年調べればいいですか?」
「そうですねぇ。ざっと見積もって……五百年といった所でしょうか」
年表と、私の記憶がある頃に起こった事を照らし合わせればそれ位だろう。
私の言葉に、くちばしマスクの男性の眉間に青筋が寄りおじ様も険しい表情をしているが事実だ。
「今では“個性”なんてしっかりした認め方はされてるけど、私の時代は個性を持っている人間は“妖怪”て呼ばれてたんですよ。だから、個性に当てはめて名前を付けるなら……」
――座敷童子
あのおじ様がそんな事をするとは思えないから、たぶん誰か別の女性が着替えさせてくれたんだろうな。
軽く布団を畳んでから襖を開けると、廊下に短髪にノーネクタイスーツの男性が立っていた。まあ、そこまではいいのだけれど、え、なにそのくちばしみたいなマスク。
ヤバい、怖いな、と襖の影から一歩も動けずにいると、くちばしマスクの男性は善人を装った笑顔で「おはようございます。オヤジが待っています」と言い、先を促した。
あぁ、これ、かなり警戒されているな……。
長く生きている分、作り物の笑顔や警戒心などはすぐに気が付いてしまう。
先を歩かせているのも、私がなにかしたら即座に判断を下せる様にという意図だろう。
頬をかきながら「先に顔や口を洗わせてもらっていいですか?」と許可をとれば、探る様な視線を投げかけてから「構いませんよ」と返された。
一挙手一投足見逃さない、と言わんばかりの熱い視線を受けながら身支度を整えてから、言われた部屋へと入れば昨日と変わらず怖い顔をしたおじ様が座っていた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「はい、とてもよく。わざわざありがとうございました」
礼を一つ述べると、用意された和朝食を指差し「腹減ってるだろ。食べてけ」と言ってくれたので、喜んで食卓に着き「いただきます」と感謝を述べてからアサリの味噌汁に手をのばす。
「はぁ……。お酒を飲んだ翌日は、やはりアサリですね……」
「二日酔いは大丈夫ですか?」
隣に腰をおろした、胡散臭いくちばしマスクの男性に「はい、お気遣いありがとうございます」と当たり障りなく返答する。
できるだけ刺激しない様にと気を付けつつ白米に口をつけているとくちばしマスクの男性がぶしつけに「失礼ですが、年齢をお聞きしてもよろしいですか?随分とお若く見えますが」と聞いてきたので、あー、これは……。
「おい、治崎。女に年齢なんて聞くな」
「あぁ、そうですね。失礼、致しました……」
思い切り疑いの目を向けてきているので、これはもう、たぶん何かしら調べられているんだろうなと勘づいたので、指を折って久方ぶりに年齢を数えてみるも途中で断念した。
「もう、数えるのも面倒な歳ですね。歳とったなぁ……」
しみじみと言う私に、くちばしマスクの男性、治崎さんが「それは、三十年以上前だからという事ですか?」と畳みかけてくる。
「治崎、さっきからなんなんだ……」
「玄野にこの女の事を調べさせたが、調べても調べてもきりがないんだよ。三十年遡っても一向に終わりが見えねェ。何かの個性かと思って調べても、個性登録もなければ発現した形跡もない」
はぁ、いつから調べてたか知らないけど短時間で三十年も遡るだなんて中々の調査能力だと感心しつつ、おかずに手をつけていたら新たな第三者が登場した。
「あれから更に二十年遡ってもまだ先がありそうですよ」
声の方を向けば、これまた顔のいい男が資料と思われる紙束を持ちながら入って来た。
段々と険しい顔になっているおじ様に、さてどうしようかと食事をしつつ考えを巡らせる。
まあ、巡らせるまでもなく普通に素性を話せばいいんだろうけど。
別に、後ろめたい事はないのだし。
「そりゃ、五十年程度で私の事を知ろうだなんて甘いですよ」
「へぇ、じゃあ何十年調べればいいですか?」
「そうですねぇ。ざっと見積もって……五百年といった所でしょうか」
年表と、私の記憶がある頃に起こった事を照らし合わせればそれ位だろう。
私の言葉に、くちばしマスクの男性の眉間に青筋が寄りおじ様も険しい表情をしているが事実だ。
「今では“個性”なんてしっかりした認め方はされてるけど、私の時代は個性を持っている人間は“妖怪”て呼ばれてたんですよ。だから、個性に当てはめて名前を付けるなら……」
――座敷童子