怪怪
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童子さんの恥ずかしい昔の恋愛話を廻にした瞬間、「馬鹿かあいつ」という呆れの言葉をいただいた。
「それで?そいつらを俺たちに重ね合わせてるって言うのか?」
「まぁ、そうですね。一応、別人だって認識は持っているので、感情を重ねることはないそうです」
巧妙に嘘と本当を混ぜてくるのでどこまでが本当かは知らないが。
それは置いといて、格好のイジリネタを手に入れた私がなにもしないわけではないので、顔を合わせる度に「そんなに似てたんですかい?」と尋ねてからかっている。
顔を真っ赤にして「忘れてくださいってば!」と、あの得たいのしれない女が狼狽する姿は好きだ。
「不穏な動きは特にありやせんから、今のところ安心ですよ」
「安心するのが早い」
睨みを利かされ、「すいやせん」と謝ってから「今日の夕飯どうしやす?」とメモを取り出して聞いたら黙られた。
あの深夜の鍋以来、なんやかんやで三食童子さんの飯になっている。
朝食、夕飯が家でとれるのもありがたいし、夕飯は廻と食べられるし、弁当は量も味付けも彩りも栄養価も完璧な最高弁当。
廻は最初嫌がっていたが、廻以外が童子さんの食事に胃袋掴まれているので、そこかしこで童子さん手作り弁当が食べられていて、元から好奇心はある方なので「玉子焼きだけだぞ」と言って、最終的に完食してからは弁当派へと転じた。
とはいえ、やはり警戒しているからというのもあるが、彼女のペースに乗るのが嫌なのか接触は相変わらずしない。
なので、夕飯などのリクエストを私が聞いて童子さんにお伝えするのが最近の流れ。
廻は悩みに悩んだ末、「豚肉の味噌焼き」と言った。
「美味しいですよね、豚肉の味噌焼き。他にありやすか?」
「さつま芋のレモン煮と、混ぜご飯」
「了解しやした、伝えておきやす」
なんだかんだで食べたい物が多いな。
あの廻が、廻自身とオヤジが作った料理以外を口にするなんて、奇跡に近いんだよなぁ。
「私の料理は食べてくれないのに……」
ついて出た言葉は廻には届かず、そのまま「下がれ」と言われて部屋から退出して童子さんにリクエストを届けに行く。
いいなぁ、童子さんは。
台所を預かれるのは、本当に信頼されていて廻の口に入るってことは、更に信頼されてるって気がして……モヤモヤする。
私なんて、ずっとずっと昔から廻といるのに料理を食べてもらえたのは数回だし、反応なんてなかった。
私の方が信頼されて然るべきなのに、なぜ私の料理は食べてくれないんだ廻……。
「眉間のシワ、すごいですよ。大丈夫ですか、玄野さん?」
ひょっこり現れた童子さんの呑気顔を見て、一気に体に入っていた力が抜けた。
なんて平和ボケした顔なんだ……。
「いえ、特になにもないですよ。童子さんこそ、どうしました?好きな人によく似た私に会いたくなりやしたか?」
「違いますよ!引っ張りすぎでしょ!お買い物行こうと思ったので、リクエストないか聞きにきたんです」
御年数百歳の女が頬を膨らませて怒っているのだと思うと、素直に可愛いと言いにくいな。
彼女がやると、すべて計算でやっているような気がするのだ。
触れるのはやめておこうと無視し、廻のリクエストメモを渡せば「オッケーです」と指で丸を作った。
「玄野さんのリクエストはないんですか?」
「私はだされた物を食べますよ」
私の返答に、童子さんは少し悩んでから「じゃあ、二人だけで秘密の餃子パーティーしませんか?」と瞳を爛々と輝かせ提案してきた。
「前からやってみたかったんですよ!餃子パーティー!」
子供みたいにはしゃぐ彼女に「まぁ、別にいいですよ」と快諾すれば、小指を差し出し「約束ですよ」と言われたので自分の小指を絡め「ゆーびきりげーんまん!」と子供のような約束をした。
「買い物、私も行きやすよ。自分が作る物の食材は自分で選びたいですし」
「玄野さん、お料理するんですか?!」
「滅多にはしないですけど、しやすよ」
「じゃあ、じゃあ!今度から一緒に作りましょうよ!」
悪意ゼロパーセントの面で誘われ、思わずしかめっ面になった。
それを彼女が見逃すはずもなく、あわあわしながら「なにか言ってはいけないことを言いましたか?」と怯えながら聞く。
「台所は童子さんが信頼されて任されてるのに、そう簡単に他人を自分のテリトリーに入れていいんですかい?」
「いや、別に台所は私のテリトリーじゃないので全然構いませんよ。人手が多ければ、料理のバリエーションも増えますし、ウェルカムです」
親指たててウィンクする姿が腹立たしいことこの上ないな。
「……だとしても、私は一緒には作れやせん。若は……私の料理は食べてくれやせんから……」
「そうなんですか?」
「昔だして、なにも言ってもらえなかったですよ」
「でも、全部食べたんですよね?」
「まぁ、一応……」
私の返答に、童子さんは顔文字の「(´・ω・`)」みたいな顔で、肺活量に感心したくなるレベルで長く長く「んー」と言い出した。
なんですか、いったい。
「玄野さんは……自己肯定が苦手なんですね……」
「は?」
「だって、あの治崎さんが文句ひとつ言わずに完食したなら、それは美味しかったってことじゃないですか。治崎さんは潔癖症ですし、不衛生だと判断した時点で箸もつけないですし、不味かったら一口目で下げさせるタイプだと思いますよ」
あんた、廻のことをなんだと思っているんだとは思うが、立場上食べなければいけない時以外はたしかに廻は箸をつけないな。
食べなければいけない時も、あれこれ会話で誤魔化して食べない時もあるくらいだし。
「それに、私だって未だに『美味かった……』て言われたことないですよ」
「今の、まさかとは思いますが若ですか?」
「似てませんか?」
「まったく」
不服そうにしてやすが、あれで似てるなんて言ったら私が廻に殴られる。
「まぁ、そんなわけですし、一緒にご飯作りましょうよ」
ぶんぶんと、子供のように私の手を前後に振り回す童子さんに「聞いておきますから、じゃれつかないでください」と言えば、「やったー!」とはしゃぎながら駆け出して言った。
子供か。
「あぁ、もう。気を付けてくださーー」
「邪魔だ、どけ!」
私の注意虚しく、童子さんは突如として現れた暴漢に横殴りにされ、その軽い体は宙を舞い受け身もとらず地面に叩きつけられた。
えー?そんなことってあります?
不運体質なのは知ってましたけど、酷すぎません?
予想以上の理不尽不運にドン引きしながらも、一応落とし前の為になにかしら悪さをして逃げていた暴漢を捕まえようと視線をやったら、こちらも前触れなく落ちてきた鉄板に首を落とされ辺り一面血の海だった。
マジかよ。
「おぉー、赤い噴水」
呑気に凶悪なコメントをしながら駆け寄ってきた童子さんには、土汚れはついていたが怪我はひとつもなかった。
私はそっと童子さんについた汚れを落とし、「私はあなたを大切にします」と言えば「はい?」と小首を傾げられ、その幼さがまた恐怖を掻き立てた。
「それで?そいつらを俺たちに重ね合わせてるって言うのか?」
「まぁ、そうですね。一応、別人だって認識は持っているので、感情を重ねることはないそうです」
巧妙に嘘と本当を混ぜてくるのでどこまでが本当かは知らないが。
それは置いといて、格好のイジリネタを手に入れた私がなにもしないわけではないので、顔を合わせる度に「そんなに似てたんですかい?」と尋ねてからかっている。
顔を真っ赤にして「忘れてくださいってば!」と、あの得たいのしれない女が狼狽する姿は好きだ。
「不穏な動きは特にありやせんから、今のところ安心ですよ」
「安心するのが早い」
睨みを利かされ、「すいやせん」と謝ってから「今日の夕飯どうしやす?」とメモを取り出して聞いたら黙られた。
あの深夜の鍋以来、なんやかんやで三食童子さんの飯になっている。
朝食、夕飯が家でとれるのもありがたいし、夕飯は廻と食べられるし、弁当は量も味付けも彩りも栄養価も完璧な最高弁当。
廻は最初嫌がっていたが、廻以外が童子さんの食事に胃袋掴まれているので、そこかしこで童子さん手作り弁当が食べられていて、元から好奇心はある方なので「玉子焼きだけだぞ」と言って、最終的に完食してからは弁当派へと転じた。
とはいえ、やはり警戒しているからというのもあるが、彼女のペースに乗るのが嫌なのか接触は相変わらずしない。
なので、夕飯などのリクエストを私が聞いて童子さんにお伝えするのが最近の流れ。
廻は悩みに悩んだ末、「豚肉の味噌焼き」と言った。
「美味しいですよね、豚肉の味噌焼き。他にありやすか?」
「さつま芋のレモン煮と、混ぜご飯」
「了解しやした、伝えておきやす」
なんだかんだで食べたい物が多いな。
あの廻が、廻自身とオヤジが作った料理以外を口にするなんて、奇跡に近いんだよなぁ。
「私の料理は食べてくれないのに……」
ついて出た言葉は廻には届かず、そのまま「下がれ」と言われて部屋から退出して童子さんにリクエストを届けに行く。
いいなぁ、童子さんは。
台所を預かれるのは、本当に信頼されていて廻の口に入るってことは、更に信頼されてるって気がして……モヤモヤする。
私なんて、ずっとずっと昔から廻といるのに料理を食べてもらえたのは数回だし、反応なんてなかった。
私の方が信頼されて然るべきなのに、なぜ私の料理は食べてくれないんだ廻……。
「眉間のシワ、すごいですよ。大丈夫ですか、玄野さん?」
ひょっこり現れた童子さんの呑気顔を見て、一気に体に入っていた力が抜けた。
なんて平和ボケした顔なんだ……。
「いえ、特になにもないですよ。童子さんこそ、どうしました?好きな人によく似た私に会いたくなりやしたか?」
「違いますよ!引っ張りすぎでしょ!お買い物行こうと思ったので、リクエストないか聞きにきたんです」
御年数百歳の女が頬を膨らませて怒っているのだと思うと、素直に可愛いと言いにくいな。
彼女がやると、すべて計算でやっているような気がするのだ。
触れるのはやめておこうと無視し、廻のリクエストメモを渡せば「オッケーです」と指で丸を作った。
「玄野さんのリクエストはないんですか?」
「私はだされた物を食べますよ」
私の返答に、童子さんは少し悩んでから「じゃあ、二人だけで秘密の餃子パーティーしませんか?」と瞳を爛々と輝かせ提案してきた。
「前からやってみたかったんですよ!餃子パーティー!」
子供みたいにはしゃぐ彼女に「まぁ、別にいいですよ」と快諾すれば、小指を差し出し「約束ですよ」と言われたので自分の小指を絡め「ゆーびきりげーんまん!」と子供のような約束をした。
「買い物、私も行きやすよ。自分が作る物の食材は自分で選びたいですし」
「玄野さん、お料理するんですか?!」
「滅多にはしないですけど、しやすよ」
「じゃあ、じゃあ!今度から一緒に作りましょうよ!」
悪意ゼロパーセントの面で誘われ、思わずしかめっ面になった。
それを彼女が見逃すはずもなく、あわあわしながら「なにか言ってはいけないことを言いましたか?」と怯えながら聞く。
「台所は童子さんが信頼されて任されてるのに、そう簡単に他人を自分のテリトリーに入れていいんですかい?」
「いや、別に台所は私のテリトリーじゃないので全然構いませんよ。人手が多ければ、料理のバリエーションも増えますし、ウェルカムです」
親指たててウィンクする姿が腹立たしいことこの上ないな。
「……だとしても、私は一緒には作れやせん。若は……私の料理は食べてくれやせんから……」
「そうなんですか?」
「昔だして、なにも言ってもらえなかったですよ」
「でも、全部食べたんですよね?」
「まぁ、一応……」
私の返答に、童子さんは顔文字の「(´・ω・`)」みたいな顔で、肺活量に感心したくなるレベルで長く長く「んー」と言い出した。
なんですか、いったい。
「玄野さんは……自己肯定が苦手なんですね……」
「は?」
「だって、あの治崎さんが文句ひとつ言わずに完食したなら、それは美味しかったってことじゃないですか。治崎さんは潔癖症ですし、不衛生だと判断した時点で箸もつけないですし、不味かったら一口目で下げさせるタイプだと思いますよ」
あんた、廻のことをなんだと思っているんだとは思うが、立場上食べなければいけない時以外はたしかに廻は箸をつけないな。
食べなければいけない時も、あれこれ会話で誤魔化して食べない時もあるくらいだし。
「それに、私だって未だに『美味かった……』て言われたことないですよ」
「今の、まさかとは思いますが若ですか?」
「似てませんか?」
「まったく」
不服そうにしてやすが、あれで似てるなんて言ったら私が廻に殴られる。
「まぁ、そんなわけですし、一緒にご飯作りましょうよ」
ぶんぶんと、子供のように私の手を前後に振り回す童子さんに「聞いておきますから、じゃれつかないでください」と言えば、「やったー!」とはしゃぎながら駆け出して言った。
子供か。
「あぁ、もう。気を付けてくださーー」
「邪魔だ、どけ!」
私の注意虚しく、童子さんは突如として現れた暴漢に横殴りにされ、その軽い体は宙を舞い受け身もとらず地面に叩きつけられた。
えー?そんなことってあります?
不運体質なのは知ってましたけど、酷すぎません?
予想以上の理不尽不運にドン引きしながらも、一応落とし前の為になにかしら悪さをして逃げていた暴漢を捕まえようと視線をやったら、こちらも前触れなく落ちてきた鉄板に首を落とされ辺り一面血の海だった。
マジかよ。
「おぉー、赤い噴水」
呑気に凶悪なコメントをしながら駆け寄ってきた童子さんには、土汚れはついていたが怪我はひとつもなかった。
私はそっと童子さんについた汚れを落とし、「私はあなたを大切にします」と言えば「はい?」と小首を傾げられ、その幼さがまた恐怖を掻き立てた。
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