怪怪
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廻に言われた通り、彼女に探りをいれる為に邸内を探し回っていたら、縁側で大量の洗濯物を畳んでいる件の女を見つけた。
こうして見る限り、面倒見のいい普通のお姉ちゃんって感じなんですけどね。
経歴が普通じゃないんですよねぇ。
「童子さん」
オヤジから与えられたという名字を呼べば、一拍置き振り返り「どうしました、玄野さん」と当たり障りない笑顔を向けてくれる。
組の連中は名前で呼ぶから、名字で呼ばれることにいまだ慣れないのだろう。
ゆっくりと側により、隣に腰掛け「防寒具、ありがとうございやした」と、とりあえず礼を言えば気恥ずかしそうに「すみません、センスがないのでオヤジさん頼みになってしまい」と言われた。
「すごいセンスでしたね」
「お恥ずかしい……。それで、なにか探りに来たんですか」
探りをいれる前に核心をつかれ「世間話しにきたらいけやせんか?」と誤魔化すも、「世間話するつもりなんて、ないじゃないですか」と困った顔をされた。
まぁ、そうなんですけどね。
「それじゃあ、さくっと聞いちまいやすけど、なんで私たちをそんなに気にかけてくれるんですかい?」
「理由が必要ですか?」
「そりゃ、ある程度の仲ならわかりやせんが、私たちはあんたを警戒してる。そんな相手に気遣いだなんて、取り入ろうとしてるんじゃ、なんて邪推しちまいやすよ」
どうなんですかー?と率直に聞けば、珍しくはぐらかさず即答せず悩む表情を見せた。
おや、珍しい。
なにかしら理由があると見て、「素直にゲロッちまった方が若も私も変な勘繰りしやせんよ?」と追い討ちをかければ、頬を染め「バカにしないでくださいよ」と乙女の表情をする。
これはもしや、私たちに気があるのでは?と勘ぐったがどうやら違うようだ。
「その、二人が似てるんですよ。昔、私が好きだった人たちに……。だから、つい心配になると言うか……」
モニョモニョと白状した彼女に、「未亡人?」と率直に私自身の性癖も含めた興味本意で尋ねれば、「違います」と悲しそうな顔で否定された。
なんだ、違うのか。
「どんな人たちだったんですかい?」
「それも探り、ですか?」
「ただの興味本意です」
化物染みた女の普通の部分など、気にならないわけないじゃないかと、先を促せば洗濯物を畳ながら昔話をしてくれた。
治崎さんに似た方は、江戸の頃にあった大きな旅館の若旦那でした。
私はそこに住み込みで働いていました。
若旦那は人といることを好まず、店先に立つ必要性がなければ自室で経理をするか本を読むような人でした。
私もどうせ、そのうち追い出されると踏んでいたので関わることはありませんでしたが、宿泊された方の坊っちゃん方に旅先の話を聞かせていたのを聞いたらしく、夜中に庭先で夜空を見つめている若旦那に羽織を差し出したら、そのまま旅先の話をせがまれました。
それから毎夜語り、私は若旦那の人嫌いなのに子供のような振る舞いを愛しく思い、若旦那も許嫁のいる身であり、私の異能を知りながら私に思いを寄せてくれていました。
それでも、私は人ならざる存在故に、若旦那は世話になった大旦那様の為にと気持ちを伝えるつもりはありませんでした。
毎夜の止めどない話だけが、私たちの繋がりでした。
それが、許嫁のお嬢様には気にくわなかったのでしょうね。
毎度の闇討ちで、半ば諦めていたというのに駆けつけた若旦那が大立回りをしましたが、多勢に無勢で半死半生。
私も半狂乱になり、若旦那が守ろうとしていたもの全てに「呪われろ」と願ってしまい、お嬢様は雷に撃たれ、旅館も雷が直撃し全焼してしまいました。
『次、お前と出会うときは、お前が見てきた世界を見たいものだな』
そう言って、若旦那は息を引き取りました。
玄野さんに似た人は、実は十代前半のお子様で、明治時代の華族のお坊ちゃんでした。
気難しい子で、長男として立派であれを必死に守ろうとしていたので、イタズラ心で夜中にレモンパイとホットミルクを持っていったらすぐに懐いてくれましたよ。
夜中のお夜食会が、彼が唯一気を休められる瞬間だとこぼしていました。
『わ、私が成人した暁には、お前を花嫁にしてあげますからね』
なんて、許されるはずもない事を言っていましたね。
それが旦那様の耳に入り、呼び出され入室した瞬間、射殺されました。
蘇生して目が覚めた時、お屋敷は血の海でしたね。
話終えた彼女に、「どの辺が私たちに似てるんですかい」と聞けば、懐かしそうに微笑んだ。
「義理堅くて目的の為なら諦めることを迷わず選べるところとか、自分を律しようとしてはいるけど実際思っていることは別だったりする我慢強いとこですかね」
「廻はそうだとして、私は違いやすよ」
そう否定したのに、彼女は「どうだか」と慈愛に満ちた瞳で見つめてくるから、どうにも勝てない。
見ていないはずなのに、よく見ている。
こうして見る限り、面倒見のいい普通のお姉ちゃんって感じなんですけどね。
経歴が普通じゃないんですよねぇ。
「童子さん」
オヤジから与えられたという名字を呼べば、一拍置き振り返り「どうしました、玄野さん」と当たり障りない笑顔を向けてくれる。
組の連中は名前で呼ぶから、名字で呼ばれることにいまだ慣れないのだろう。
ゆっくりと側により、隣に腰掛け「防寒具、ありがとうございやした」と、とりあえず礼を言えば気恥ずかしそうに「すみません、センスがないのでオヤジさん頼みになってしまい」と言われた。
「すごいセンスでしたね」
「お恥ずかしい……。それで、なにか探りに来たんですか」
探りをいれる前に核心をつかれ「世間話しにきたらいけやせんか?」と誤魔化すも、「世間話するつもりなんて、ないじゃないですか」と困った顔をされた。
まぁ、そうなんですけどね。
「それじゃあ、さくっと聞いちまいやすけど、なんで私たちをそんなに気にかけてくれるんですかい?」
「理由が必要ですか?」
「そりゃ、ある程度の仲ならわかりやせんが、私たちはあんたを警戒してる。そんな相手に気遣いだなんて、取り入ろうとしてるんじゃ、なんて邪推しちまいやすよ」
どうなんですかー?と率直に聞けば、珍しくはぐらかさず即答せず悩む表情を見せた。
おや、珍しい。
なにかしら理由があると見て、「素直にゲロッちまった方が若も私も変な勘繰りしやせんよ?」と追い討ちをかければ、頬を染め「バカにしないでくださいよ」と乙女の表情をする。
これはもしや、私たちに気があるのでは?と勘ぐったがどうやら違うようだ。
「その、二人が似てるんですよ。昔、私が好きだった人たちに……。だから、つい心配になると言うか……」
モニョモニョと白状した彼女に、「未亡人?」と率直に私自身の性癖も含めた興味本意で尋ねれば、「違います」と悲しそうな顔で否定された。
なんだ、違うのか。
「どんな人たちだったんですかい?」
「それも探り、ですか?」
「ただの興味本意です」
化物染みた女の普通の部分など、気にならないわけないじゃないかと、先を促せば洗濯物を畳ながら昔話をしてくれた。
治崎さんに似た方は、江戸の頃にあった大きな旅館の若旦那でした。
私はそこに住み込みで働いていました。
若旦那は人といることを好まず、店先に立つ必要性がなければ自室で経理をするか本を読むような人でした。
私もどうせ、そのうち追い出されると踏んでいたので関わることはありませんでしたが、宿泊された方の坊っちゃん方に旅先の話を聞かせていたのを聞いたらしく、夜中に庭先で夜空を見つめている若旦那に羽織を差し出したら、そのまま旅先の話をせがまれました。
それから毎夜語り、私は若旦那の人嫌いなのに子供のような振る舞いを愛しく思い、若旦那も許嫁のいる身であり、私の異能を知りながら私に思いを寄せてくれていました。
それでも、私は人ならざる存在故に、若旦那は世話になった大旦那様の為にと気持ちを伝えるつもりはありませんでした。
毎夜の止めどない話だけが、私たちの繋がりでした。
それが、許嫁のお嬢様には気にくわなかったのでしょうね。
毎度の闇討ちで、半ば諦めていたというのに駆けつけた若旦那が大立回りをしましたが、多勢に無勢で半死半生。
私も半狂乱になり、若旦那が守ろうとしていたもの全てに「呪われろ」と願ってしまい、お嬢様は雷に撃たれ、旅館も雷が直撃し全焼してしまいました。
『次、お前と出会うときは、お前が見てきた世界を見たいものだな』
そう言って、若旦那は息を引き取りました。
玄野さんに似た人は、実は十代前半のお子様で、明治時代の華族のお坊ちゃんでした。
気難しい子で、長男として立派であれを必死に守ろうとしていたので、イタズラ心で夜中にレモンパイとホットミルクを持っていったらすぐに懐いてくれましたよ。
夜中のお夜食会が、彼が唯一気を休められる瞬間だとこぼしていました。
『わ、私が成人した暁には、お前を花嫁にしてあげますからね』
なんて、許されるはずもない事を言っていましたね。
それが旦那様の耳に入り、呼び出され入室した瞬間、射殺されました。
蘇生して目が覚めた時、お屋敷は血の海でしたね。
話終えた彼女に、「どの辺が私たちに似てるんですかい」と聞けば、懐かしそうに微笑んだ。
「義理堅くて目的の為なら諦めることを迷わず選べるところとか、自分を律しようとしてはいるけど実際思っていることは別だったりする我慢強いとこですかね」
「廻はそうだとして、私は違いやすよ」
そう否定したのに、彼女は「どうだか」と慈愛に満ちた瞳で見つめてくるから、どうにも勝てない。
見ていないはずなのに、よく見ている。