怪怪
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ふむ、朝食のセッティングは完璧。
あとはそろそろ起きてくるみなさんが席につけば、朝食が始まる。
オヤジさんは治崎さんと玄野さんにも声をかけると言ってはいたが、いやぁ、絶対に不機嫌だろうなぁ。
玄野さんは、警戒はしているにしろあたりは優しいのでまぁ、いいのだが、問題は治崎さんだよね。
もう、絶対に視線でお前を殺す、みたいな目で見てきそう。
出くわす前に、私の朝食ポジションである台所に戻ろうとしたが、タイミングよくオヤジさんと治崎さんと玄野さんが客間に入ってきた。
予想通り、オヤジさんの後ろから殺気だった視線を向けてくる治崎さん。
極力視線をあわせない様に「台所に居ますので、お代わり必要でしたらいつでも通り声かけてくださいねー」と声をかけて下がろうとしたのだが、玄野さんが「私もそっちで食べやす」と引き止めた。
玄野さんの瞳からは、まだ警戒の色が濃く残っている。
監視目的かな、と察知し「分かりました、運びますね」とお盆の上に乗せられるだけ食事を乗せ、乗せきれないものは玄野さんに持ってもらい移動する。
台所の広い作業机に玄野さんの朝食を並べ、自分の朝食を用意し椅子を二つ、膳の前に置く。
手と手をあわせ「頂きます」と私が言うのに続き、玄野さんも「頂きます」と言い朝食に手をつける。
玄野さんがお味噌汁を飲む姿をジッと見つめていたら「食べにくいんですが」と苦い顔をされてしまった。
「すみません。口にあうかな、て心配でして」
「……美味しいですよ。私は母親の味とか知りませんが、こういうのが母親の味ってやつなんでしょうね」
わー、朝からなんだか重い話を聞いてしまった。
そういう、母親のなんちゃらを知らない子を見てしまうと老婆心が抑えきれないわ。
「玄野さん、いっぱい食べてください。お代わりいりますか?」
「まだ食べ始めたばかりなんですが。と言いやすか、あんたの方が食べた方がいいじゃないですか?」
そう言って、私の品数少ない朝食をチラリと見た。
私の朝食は、白米に味噌汁、漬け物だけ。
メインとか添え物とか諸々省かれている。
「人に、朝は食べろと言っておきながら自分が食べないのは矛盾してやせんか?」
ご指摘ごもっとも、て感じではある。
「でも、朝食いっぱい食べるとバチが当たりそうなんですよね。昔は粟とか食べてましたし、お味噌汁や漬け物だってない時もありましたし」
だからか、朝食って少な目に食べてしまうんですよね。
漬け物で白米を少しずつ消費しながら食べると玄野さんが「お魚いりやすか?」と聞いてきた。
「魚嫌いでしたか?」
「嫌いではないですが、そんな話聞かされて食べられないでしょうが」
「気にせず食べてください!働きに出るんですから、しっかり食べないと!」
と言っても納得いかない表情の玄野さん。
暫く魚の上で箸をとめていたかと思うと、おもむろに魚を半分に切り分け、頭側を私の白米の上に乗せた。
「魚の頭って苦手なんで、食べてください」
「……」
乗せられた鮎のお頭を見つめてから、玄野さんを見つめるも本人は素知らぬ顔で食事を再開している。
……どうしよう、これは困った。
「ありがとう……ございます……」
「なんでそんな戸惑ってるんですか。魚の頭、嫌いでしたか?」
「いえ……なんと言いますか……。警戒されているのに親切にされると……どうしたらいいのかわからなくて……」
しどろもどろに話し、恐る恐る食べた鮎のお頭はなんだか優しい味がしたような気がする。
「あんたの事はいくらか調べやしたが、不憫な女性ですねェ。魚半分もらっただけで、そんな嬉しそうにされるとは思いやせんでした」
「えっ!?」
そ、そんな顔に出てますか?!と尋ねれば「ゆるゆるですよ」と言いながら、玄野さんは私の口角をきゅっと指先で引き結ぶ。
恥ずかしい……。
「うっ……あ、あの……明日は朝食いりますか……?」
話題を変えようと振った話だが、今日はオヤジさんに言われたから食べてくれたのであって、明日はないのだと思っていたのだが。
「……頂きやす」
「えっ?!食べてくれるんですか?!」
不意を突かれてしまい、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
玄野さんが「なにか文句でもあるんですかい?」とじと目で見てきたので「いえ、ないです」と訂正する。
「すみません、朝はあまり食べないと聞いていたんで」
「普段は食べやせんが……これなら食べられやす……」
その言葉に嬉しくなっていたら、また口角をきゅっと指先で引き結ばれて「ゆるゆるですよ」と言われてしまった。
「ご用意はどちらに?」
「ここでいいです」
「ですよね。私の監視をしないといけないわけですし」
申し訳ねー!と笑って言ったら、寂しそうな面持ちで「それもありやすが、私がいない方が廻は嬉しいでしょうし」と言う。
治崎さんを優先させてまで殺している感情がなにかは、まだ彼らについて何も知らない私には読み解く事はできない。
だから、彼が決めた事に対して「一緒に食べるべきだ!」などと上っ面な偽善を無理強いする事はできない。
本当は、食べたい人と食べるのが一番だと思う。
でも、玄野さんがこんな表情をしてまで決めた事に私が口出しする権利はない。
一呼吸置き「じゃあ、明日も一緒に食べましょうね!」と言えば、変わらず寂しそうな表情をするので今度は私が、玄野さんの口角をきゅっと持ち上げる。
「笑うと可愛いですね!」
「男に使う言葉じゃないですよ。……ありがとうございます、気を遣ってもらって」
「いや、そ……そんなつもりは……」
「ないんですかい?」
「……あります」
白状した私に愉快そうに控えめに笑い、もう一度「ありがとうございます」と言いながら頭を撫でた。
先も言った通り、私は頭を撫でられるという行為に滅法弱い。
それは玄野さんにもわかったのか、にやっ、と笑い「頭撫でられるの好きなんですかい?」と尋ねてきた。
「はい、実は……撫でられ慣れてなくて……つい……」
「それはいい事を聞きやした」
クスクス笑う玄野さんに、このままだと暫くからかわれそうな気がしたので違う話題する。
「お夕飯はどうします?」
「お願いしやす……と言いたいですが、今日の帰りは遅いんでいりやせん」
「何時頃お帰りですか?」
「下手すると夜中の三時とかですかね」
そこまで聞き、私は「わかりました」と返事をすると不思議そうな顔で見つめられた。
「ご馳走様でした。じゃあ、また明日よろしくお願いしやすね」
「はい。……玄野さん」
「なんですか?」
「ご飯、食べてくれてありがとうございました」
「……どういたしまして」
あとはそろそろ起きてくるみなさんが席につけば、朝食が始まる。
オヤジさんは治崎さんと玄野さんにも声をかけると言ってはいたが、いやぁ、絶対に不機嫌だろうなぁ。
玄野さんは、警戒はしているにしろあたりは優しいのでまぁ、いいのだが、問題は治崎さんだよね。
もう、絶対に視線でお前を殺す、みたいな目で見てきそう。
出くわす前に、私の朝食ポジションである台所に戻ろうとしたが、タイミングよくオヤジさんと治崎さんと玄野さんが客間に入ってきた。
予想通り、オヤジさんの後ろから殺気だった視線を向けてくる治崎さん。
極力視線をあわせない様に「台所に居ますので、お代わり必要でしたらいつでも通り声かけてくださいねー」と声をかけて下がろうとしたのだが、玄野さんが「私もそっちで食べやす」と引き止めた。
玄野さんの瞳からは、まだ警戒の色が濃く残っている。
監視目的かな、と察知し「分かりました、運びますね」とお盆の上に乗せられるだけ食事を乗せ、乗せきれないものは玄野さんに持ってもらい移動する。
台所の広い作業机に玄野さんの朝食を並べ、自分の朝食を用意し椅子を二つ、膳の前に置く。
手と手をあわせ「頂きます」と私が言うのに続き、玄野さんも「頂きます」と言い朝食に手をつける。
玄野さんがお味噌汁を飲む姿をジッと見つめていたら「食べにくいんですが」と苦い顔をされてしまった。
「すみません。口にあうかな、て心配でして」
「……美味しいですよ。私は母親の味とか知りませんが、こういうのが母親の味ってやつなんでしょうね」
わー、朝からなんだか重い話を聞いてしまった。
そういう、母親のなんちゃらを知らない子を見てしまうと老婆心が抑えきれないわ。
「玄野さん、いっぱい食べてください。お代わりいりますか?」
「まだ食べ始めたばかりなんですが。と言いやすか、あんたの方が食べた方がいいじゃないですか?」
そう言って、私の品数少ない朝食をチラリと見た。
私の朝食は、白米に味噌汁、漬け物だけ。
メインとか添え物とか諸々省かれている。
「人に、朝は食べろと言っておきながら自分が食べないのは矛盾してやせんか?」
ご指摘ごもっとも、て感じではある。
「でも、朝食いっぱい食べるとバチが当たりそうなんですよね。昔は粟とか食べてましたし、お味噌汁や漬け物だってない時もありましたし」
だからか、朝食って少な目に食べてしまうんですよね。
漬け物で白米を少しずつ消費しながら食べると玄野さんが「お魚いりやすか?」と聞いてきた。
「魚嫌いでしたか?」
「嫌いではないですが、そんな話聞かされて食べられないでしょうが」
「気にせず食べてください!働きに出るんですから、しっかり食べないと!」
と言っても納得いかない表情の玄野さん。
暫く魚の上で箸をとめていたかと思うと、おもむろに魚を半分に切り分け、頭側を私の白米の上に乗せた。
「魚の頭って苦手なんで、食べてください」
「……」
乗せられた鮎のお頭を見つめてから、玄野さんを見つめるも本人は素知らぬ顔で食事を再開している。
……どうしよう、これは困った。
「ありがとう……ございます……」
「なんでそんな戸惑ってるんですか。魚の頭、嫌いでしたか?」
「いえ……なんと言いますか……。警戒されているのに親切にされると……どうしたらいいのかわからなくて……」
しどろもどろに話し、恐る恐る食べた鮎のお頭はなんだか優しい味がしたような気がする。
「あんたの事はいくらか調べやしたが、不憫な女性ですねェ。魚半分もらっただけで、そんな嬉しそうにされるとは思いやせんでした」
「えっ!?」
そ、そんな顔に出てますか?!と尋ねれば「ゆるゆるですよ」と言いながら、玄野さんは私の口角をきゅっと指先で引き結ぶ。
恥ずかしい……。
「うっ……あ、あの……明日は朝食いりますか……?」
話題を変えようと振った話だが、今日はオヤジさんに言われたから食べてくれたのであって、明日はないのだと思っていたのだが。
「……頂きやす」
「えっ?!食べてくれるんですか?!」
不意を突かれてしまい、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
玄野さんが「なにか文句でもあるんですかい?」とじと目で見てきたので「いえ、ないです」と訂正する。
「すみません、朝はあまり食べないと聞いていたんで」
「普段は食べやせんが……これなら食べられやす……」
その言葉に嬉しくなっていたら、また口角をきゅっと指先で引き結ばれて「ゆるゆるですよ」と言われてしまった。
「ご用意はどちらに?」
「ここでいいです」
「ですよね。私の監視をしないといけないわけですし」
申し訳ねー!と笑って言ったら、寂しそうな面持ちで「それもありやすが、私がいない方が廻は嬉しいでしょうし」と言う。
治崎さんを優先させてまで殺している感情がなにかは、まだ彼らについて何も知らない私には読み解く事はできない。
だから、彼が決めた事に対して「一緒に食べるべきだ!」などと上っ面な偽善を無理強いする事はできない。
本当は、食べたい人と食べるのが一番だと思う。
でも、玄野さんがこんな表情をしてまで決めた事に私が口出しする権利はない。
一呼吸置き「じゃあ、明日も一緒に食べましょうね!」と言えば、変わらず寂しそうな表情をするので今度は私が、玄野さんの口角をきゅっと持ち上げる。
「笑うと可愛いですね!」
「男に使う言葉じゃないですよ。……ありがとうございます、気を遣ってもらって」
「いや、そ……そんなつもりは……」
「ないんですかい?」
「……あります」
白状した私に愉快そうに控えめに笑い、もう一度「ありがとうございます」と言いながら頭を撫でた。
先も言った通り、私は頭を撫でられるという行為に滅法弱い。
それは玄野さんにもわかったのか、にやっ、と笑い「頭撫でられるの好きなんですかい?」と尋ねてきた。
「はい、実は……撫でられ慣れてなくて……つい……」
「それはいい事を聞きやした」
クスクス笑う玄野さんに、このままだと暫くからかわれそうな気がしたので違う話題する。
「お夕飯はどうします?」
「お願いしやす……と言いたいですが、今日の帰りは遅いんでいりやせん」
「何時頃お帰りですか?」
「下手すると夜中の三時とかですかね」
そこまで聞き、私は「わかりました」と返事をすると不思議そうな顔で見つめられた。
「ご馳走様でした。じゃあ、また明日よろしくお願いしやすね」
「はい。……玄野さん」
「なんですか?」
「ご飯、食べてくれてありがとうございました」
「……どういたしまして」