恋を教えてくれたあなたへ
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四限目終了と同時にお財布を持って席を立つと、クラスメイトの女の子が「昨日の男子待たなくていいの?」と聞いてきたので「誰でしたっけ?」と返せば、絶句した表情をされた。
いや、昨日の帰りにお昼ご飯に誘われたのは覚えているけれど、正直顔が思い出せないし、そもそも人を待って仲良く食堂に行くとかノーサンキューなので私の人格を犠牲にして忘れたふりをしているだけなのだ。
睡ちゃんとお昼、とも思ったけれど高校まで彼女におんぶに抱っこはよくないし、彼女には彼女の交友関係がある事くらいは私にもわかる。大丈夫、一人飯は好きだから。
人の流れに沿う様に食券の購入列に並び、昨日手に入れたメニュー表を見ながら「B定のデザート美味しそう」と独り言が漏れてしまう。
まあ、誰かが聞いてるわけでも返事をするわけでもいいんだけど。
「オッケー、B定ね」
「ひぇっ」
意図せぬ返事に小さく悲鳴をあげ顔を上げると、仏頂面の金髪男子が側に立っていた。
「あ、えっと、たしか、えっと……」
見た事がある気がするが、名前が出てこない。昨日、お昼ご飯に誘って来た男子。名前、名前は……。
「山川太陽!」
「色々惜しいけど、違うから!ひざし!山田ひざし!リピートアフタミー!」
「ヤマダヒザシ」
復唱した私に脱力しながら「香山先輩の言う通りだわ」と呆れ気味に親友の名を口にする。
「睡ちゃん……香山先輩とお知り合いだったんですか?」
私の問いかけに「全然知らない」と返す山田さん。
なら、何故彼女が彼に接触したのかと考えを巡らせれば、山……なにがしさんが「今朝、わざわざ俺の教室まで来て忠告してくれたんだよ。『あの子、たぶん教室で待ってないから食堂で待ち伏せしてた方がいいわよ』ってさ」と彼女の声真似をしながら教えてくれた。
完全に思考を読まれている。さすがは子供の頃からの付き合いだけあるな。
睡ちゃんの事だから、待たない何て言ったら面白がって……なにがしさんに助言をするだろうと思っていたから、その部分は省いたのだけれど。
「本当に待ってないから、ちょっとショック」
唇を尖らせて拗ねて見せる山田なにがしさんに「待っている、とは私言っていませんから」ととっつきにくい女の発言をするも、なにがしさんは「それもそうだけどさー」と案外気にした様子もなく、前に進んだ列の間を詰めて行く。
入試試験をこの髪型で受けるメンタルの強さを持ち合わせているのだから、この程度ではフラグも心も折れないか……。
食券機の前に立ち、お財布から小銭を取り出そうとする前になにがしさんがさっと千円札を投入する。
「奢るって言っただろ?」
「……」
どうも、言っても引きそうにないので静かに溜息を吐いてから「ご馳走になります」とお礼を言い、食券を持ってB定の列に並ぶとその後ろになにがしさんも並ぶ。
「席とかどうするー?結構、混んでるけど座れるかな?」
「どうして一緒に食べる事を前提に話しているのか甚だ疑問ですね。私は一人で食べますから、なにがしさんはお好きにお友達と食べてください」
「なんでー!?ここまで来たら一緒に食べようよ!てか、なにがしさんってなに?!もう名前忘れたの?!」
「YES.」
「山田ひざし!覚えて帰ってね!?一緒に食べようよ!」
ぎゃんぎゃんと騒ぐ山田さんに「全力でお断りします」と断る。
「薄々感じてたけど、俺なんか嫌われてない?!」
「嫌いと言いますか、関わり合いたくないんですよね」
深く、深く溜息を吐いて嫌々感を押し出せば、さしものメンタル強男もしょんぼりとした表情で黙りこくった。
そう、そう。そうやって、私から離れて行けばいい。
「……今後の為に、理由って聞いていい?」
小さい声のはずなのに、しっかりと私の耳に届いた彼の声に“前向きだな……”と感心しながら「あなたの事が好きな人が多いという印象だからです」と静かに答えれば、山田さんが「多いと何がダメなんだよ」とまあ、至極当然な疑問を口にする。
「あなたを好きな人が多いという事は、必然的に謂れない罵倒をうけ、暴力をふるわれ、恨みを買うからです」
「えっと……?」
「……そういう、個性なんですよ」
だから、もう私に関わるのはやめてもらえますか?
可能な限り冷たく突き放す声色で言えば、後ろから「わかった……」と消え入りそうな声が返って来る。
これでいい。彼の時間を無駄に使わせてはいけない。私が傷ついてもいけない。
これが、正解。
いや、昨日の帰りにお昼ご飯に誘われたのは覚えているけれど、正直顔が思い出せないし、そもそも人を待って仲良く食堂に行くとかノーサンキューなので私の人格を犠牲にして忘れたふりをしているだけなのだ。
睡ちゃんとお昼、とも思ったけれど高校まで彼女におんぶに抱っこはよくないし、彼女には彼女の交友関係がある事くらいは私にもわかる。大丈夫、一人飯は好きだから。
人の流れに沿う様に食券の購入列に並び、昨日手に入れたメニュー表を見ながら「B定のデザート美味しそう」と独り言が漏れてしまう。
まあ、誰かが聞いてるわけでも返事をするわけでもいいんだけど。
「オッケー、B定ね」
「ひぇっ」
意図せぬ返事に小さく悲鳴をあげ顔を上げると、仏頂面の金髪男子が側に立っていた。
「あ、えっと、たしか、えっと……」
見た事がある気がするが、名前が出てこない。昨日、お昼ご飯に誘って来た男子。名前、名前は……。
「山川太陽!」
「色々惜しいけど、違うから!ひざし!山田ひざし!リピートアフタミー!」
「ヤマダヒザシ」
復唱した私に脱力しながら「香山先輩の言う通りだわ」と呆れ気味に親友の名を口にする。
「睡ちゃん……香山先輩とお知り合いだったんですか?」
私の問いかけに「全然知らない」と返す山田さん。
なら、何故彼女が彼に接触したのかと考えを巡らせれば、山……なにがしさんが「今朝、わざわざ俺の教室まで来て忠告してくれたんだよ。『あの子、たぶん教室で待ってないから食堂で待ち伏せしてた方がいいわよ』ってさ」と彼女の声真似をしながら教えてくれた。
完全に思考を読まれている。さすがは子供の頃からの付き合いだけあるな。
睡ちゃんの事だから、待たない何て言ったら面白がって……なにがしさんに助言をするだろうと思っていたから、その部分は省いたのだけれど。
「本当に待ってないから、ちょっとショック」
唇を尖らせて拗ねて見せる山田なにがしさんに「待っている、とは私言っていませんから」ととっつきにくい女の発言をするも、なにがしさんは「それもそうだけどさー」と案外気にした様子もなく、前に進んだ列の間を詰めて行く。
入試試験をこの髪型で受けるメンタルの強さを持ち合わせているのだから、この程度ではフラグも心も折れないか……。
食券機の前に立ち、お財布から小銭を取り出そうとする前になにがしさんがさっと千円札を投入する。
「奢るって言っただろ?」
「……」
どうも、言っても引きそうにないので静かに溜息を吐いてから「ご馳走になります」とお礼を言い、食券を持ってB定の列に並ぶとその後ろになにがしさんも並ぶ。
「席とかどうするー?結構、混んでるけど座れるかな?」
「どうして一緒に食べる事を前提に話しているのか甚だ疑問ですね。私は一人で食べますから、なにがしさんはお好きにお友達と食べてください」
「なんでー!?ここまで来たら一緒に食べようよ!てか、なにがしさんってなに?!もう名前忘れたの?!」
「YES.」
「山田ひざし!覚えて帰ってね!?一緒に食べようよ!」
ぎゃんぎゃんと騒ぐ山田さんに「全力でお断りします」と断る。
「薄々感じてたけど、俺なんか嫌われてない?!」
「嫌いと言いますか、関わり合いたくないんですよね」
深く、深く溜息を吐いて嫌々感を押し出せば、さしものメンタル強男もしょんぼりとした表情で黙りこくった。
そう、そう。そうやって、私から離れて行けばいい。
「……今後の為に、理由って聞いていい?」
小さい声のはずなのに、しっかりと私の耳に届いた彼の声に“前向きだな……”と感心しながら「あなたの事が好きな人が多いという印象だからです」と静かに答えれば、山田さんが「多いと何がダメなんだよ」とまあ、至極当然な疑問を口にする。
「あなたを好きな人が多いという事は、必然的に謂れない罵倒をうけ、暴力をふるわれ、恨みを買うからです」
「えっと……?」
「……そういう、個性なんですよ」
だから、もう私に関わるのはやめてもらえますか?
可能な限り冷たく突き放す声色で言えば、後ろから「わかった……」と消え入りそうな声が返って来る。
これでいい。彼の時間を無駄に使わせてはいけない。私が傷ついてもいけない。
これが、正解。