恋を教えてくれたあなたへ
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世の中には、フラグというものが存在する。生存フラグや死亡フラグ、友情フラグなどなど。
死亡フラグ以外は、まあ、あっても困らないフラグかも知れないが、厄介なのが恋愛フラグである。行くところ、行くところ、馬鹿みたいに恋愛フラグが乱立するのだ。厄介以外の何物でもないし、恋愛に対して懐疑的になるわ友情は壊れるわで何も得がない。
「この泥棒猫!」
ばちんっ、と結構な勢いで引っ叩かれた人生何度目かの頬と頭を痛めながら『本当に、得がない……』と考える。
泣きながら走り去る女の子の後ろ姿を見つめながら、泣きたいのはこっちだとぶつけようのない怒りを舌打ちで誤魔化し、どうしようかと考える。
保健室に行って冷やすべきだろうとは思うが、うっかり保健室の先生がいなかったらフラグが立つ。冷やそうにも、今日はうっかりタオルを忘れて来たから、たぶんフラグが立つ。
うーん、どうしよう。こういう時に睡ちゃんがいてくれると助かるんだけれど、彼女は去年卒業してしまったから頼りようもない。
一番フラグが立ちにくい帰宅を選択するかと決め、鞄を持ちなおして帰路につく。
私の個性は『恋愛フラグ』
こちらが望む望まないに関係なく、異性との恋愛フラグが乱立する。傍目から見れば、よくモテるように見えるかも知れないけれど当の本人からしてみれば前述通りである。厄介だし、恋愛に対して懐疑的になるし、友情ともサヨナラだ。
今のところ壊れていない友情と言えば、幼馴染である睡ちゃんとくらいだろうな。
「そもそも、泥棒猫ってなんだよ……」
こちとら奪った記憶もないし、相手からの告白もフラグも全部ブチ折って来たっての。
ぶすっとしながら家に着いた頃に、睡ちゃんから電話がかかってきた。
『歌恋!高校受験どうするの?雄英?雄英よね?』
「雄英推してくるねぇ、睡ちゃん」
『だって、一緒がいいじゃない?あなた、放っておいたらどんな面倒事に巻き込まれるかわかったもんじゃないもの!』
「否めないなぁ……」
『私がしっかり守ってあげるから。ね?』
「うん、ありがとう。大学受験にも有利だし、考えておく」
『そうしなさい!そういえば、今日はなにもなかった?』
「ない日があっただろうか?」
『ないわねぇ……』
そうして、今日の災難を切々と睡ちゃんに話して夜は更けて行くのであった。
受験の日まで、血がにじむ程という訳ではないがそこそこ勉強して睡ちゃんにも勉強を見てもらったりして、当日を迎える。
体調は良好、忘れ物はない。電車も早めに乗った。オッケー、ばっちり立ちそうなフラグは折ってるから今のところ問題はない。
このまま、普通科の受験受付を済ませれば問題ないだろうと楽観視していたのがいけなかったんだろうな。私ったら、うっかりさん!などと思っていても、風に乗って舞い降りた受験票をなかった事にはできない。
誰だよ、こんな大切な物を風に奪われたのは。こんなん、最悪フラグが立ってしまうじゃないか。いや、立つ前に先生に預けて難を逃れよう。と思い立ち、受験票を持ち足早に会場へ向かおうとしたが、大音量で「そこの子、待ってー!」と叫ばれてしまっては立ち止まるしかない。
振り向けば、金髪をリーゼントにしてサングラスをかけた男の子が慌ただしく駆け寄って来た。
受験票の顔写真を見れば、確かに写真と同じ人だ。えぇ、キミ、その格好で受験するの?とメンタルの強さに若干引きながら、受験票を手渡してそそくさと去ろうとしたら「待って!」と腕を軽く引かれる。
「あとでお礼したいから、試験終わったら待っててよ!」
恐らく、なんの下心もないであろう純粋な瞳で誘ってくるけれど、いやいや、これはフラグが立つ。
「いえ、お気持ちだけで結構ですので」
「ダメだって!人に親切にされたらちゃんとお礼をしなさいって、ばあちゃんが言ってた!」
「素敵なおばあ様ですね!けど、本当に結構ですから!そもそも、私は普通科なので恐らく時間的にあわないので!」
一瞬見てしまったが、彼はヒーロー科の受験生。普通科の生徒は筆記と面接のみだけれど、ヒーロー科はそこに加えて実技試験がある。どれくらいで終わるかは知らないけれど、この寒空の中で人を待つのは嫌だし下手にフラグを立ててまた泥棒猫と言われ叩かれるのも嫌だ。
彼は一見しただけだと、とても派手そうな交友関係と思われる。そういう人間とフラグが立つと、なにかと女性から恨みを買いやすい。私、知ってる。
尚もお礼をしたいと言う男の子に「試験時間迫ってますよ!?」とケータイの時計を見せれば「わっ!本当だ!」と驚いた瞬間、手を振り払い脱兎のごとく走り出した。
アディオス、見知らぬ男子。試験受かるとイイネ!
俺の手を振り払って走り出した女の子に「名前だけでも!」と言おうとする前に物凄い距離を離されてしまった。
「脚はっや……」
追いかけるにしても、もう時間もない。
後ろ髪惹かれる気分ではあるけれども、諦めるしかなさそうだ。
普通科って言ってたし、もしお互いに合格すればまた会えるかもしれないと淡い期待を抱きながらヒーロー科の試験会場へと向かった。
入学試験終了後、家に帰って姉貴と兄貴に今日の事を話したら滅茶苦茶笑われた。
「受験票飛ばすってだけでも笑えるのに、なにそのマンガみたいな出会い方!ウケる!」
「しかも、ひざし好みの大人しい系の子だってよ!運命じゃん!」
馬鹿笑いする二人に「他人事だと思って!」と怒っても二人は一日そのネタで笑い続けていた。
くっそー!
死亡フラグ以外は、まあ、あっても困らないフラグかも知れないが、厄介なのが恋愛フラグである。行くところ、行くところ、馬鹿みたいに恋愛フラグが乱立するのだ。厄介以外の何物でもないし、恋愛に対して懐疑的になるわ友情は壊れるわで何も得がない。
「この泥棒猫!」
ばちんっ、と結構な勢いで引っ叩かれた人生何度目かの頬と頭を痛めながら『本当に、得がない……』と考える。
泣きながら走り去る女の子の後ろ姿を見つめながら、泣きたいのはこっちだとぶつけようのない怒りを舌打ちで誤魔化し、どうしようかと考える。
保健室に行って冷やすべきだろうとは思うが、うっかり保健室の先生がいなかったらフラグが立つ。冷やそうにも、今日はうっかりタオルを忘れて来たから、たぶんフラグが立つ。
うーん、どうしよう。こういう時に睡ちゃんがいてくれると助かるんだけれど、彼女は去年卒業してしまったから頼りようもない。
一番フラグが立ちにくい帰宅を選択するかと決め、鞄を持ちなおして帰路につく。
私の個性は『恋愛フラグ』
こちらが望む望まないに関係なく、異性との恋愛フラグが乱立する。傍目から見れば、よくモテるように見えるかも知れないけれど当の本人からしてみれば前述通りである。厄介だし、恋愛に対して懐疑的になるし、友情ともサヨナラだ。
今のところ壊れていない友情と言えば、幼馴染である睡ちゃんとくらいだろうな。
「そもそも、泥棒猫ってなんだよ……」
こちとら奪った記憶もないし、相手からの告白もフラグも全部ブチ折って来たっての。
ぶすっとしながら家に着いた頃に、睡ちゃんから電話がかかってきた。
『歌恋!高校受験どうするの?雄英?雄英よね?』
「雄英推してくるねぇ、睡ちゃん」
『だって、一緒がいいじゃない?あなた、放っておいたらどんな面倒事に巻き込まれるかわかったもんじゃないもの!』
「否めないなぁ……」
『私がしっかり守ってあげるから。ね?』
「うん、ありがとう。大学受験にも有利だし、考えておく」
『そうしなさい!そういえば、今日はなにもなかった?』
「ない日があっただろうか?」
『ないわねぇ……』
そうして、今日の災難を切々と睡ちゃんに話して夜は更けて行くのであった。
受験の日まで、血がにじむ程という訳ではないがそこそこ勉強して睡ちゃんにも勉強を見てもらったりして、当日を迎える。
体調は良好、忘れ物はない。電車も早めに乗った。オッケー、ばっちり立ちそうなフラグは折ってるから今のところ問題はない。
このまま、普通科の受験受付を済ませれば問題ないだろうと楽観視していたのがいけなかったんだろうな。私ったら、うっかりさん!などと思っていても、風に乗って舞い降りた受験票をなかった事にはできない。
誰だよ、こんな大切な物を風に奪われたのは。こんなん、最悪フラグが立ってしまうじゃないか。いや、立つ前に先生に預けて難を逃れよう。と思い立ち、受験票を持ち足早に会場へ向かおうとしたが、大音量で「そこの子、待ってー!」と叫ばれてしまっては立ち止まるしかない。
振り向けば、金髪をリーゼントにしてサングラスをかけた男の子が慌ただしく駆け寄って来た。
受験票の顔写真を見れば、確かに写真と同じ人だ。えぇ、キミ、その格好で受験するの?とメンタルの強さに若干引きながら、受験票を手渡してそそくさと去ろうとしたら「待って!」と腕を軽く引かれる。
「あとでお礼したいから、試験終わったら待っててよ!」
恐らく、なんの下心もないであろう純粋な瞳で誘ってくるけれど、いやいや、これはフラグが立つ。
「いえ、お気持ちだけで結構ですので」
「ダメだって!人に親切にされたらちゃんとお礼をしなさいって、ばあちゃんが言ってた!」
「素敵なおばあ様ですね!けど、本当に結構ですから!そもそも、私は普通科なので恐らく時間的にあわないので!」
一瞬見てしまったが、彼はヒーロー科の受験生。普通科の生徒は筆記と面接のみだけれど、ヒーロー科はそこに加えて実技試験がある。どれくらいで終わるかは知らないけれど、この寒空の中で人を待つのは嫌だし下手にフラグを立ててまた泥棒猫と言われ叩かれるのも嫌だ。
彼は一見しただけだと、とても派手そうな交友関係と思われる。そういう人間とフラグが立つと、なにかと女性から恨みを買いやすい。私、知ってる。
尚もお礼をしたいと言う男の子に「試験時間迫ってますよ!?」とケータイの時計を見せれば「わっ!本当だ!」と驚いた瞬間、手を振り払い脱兎のごとく走り出した。
アディオス、見知らぬ男子。試験受かるとイイネ!
俺の手を振り払って走り出した女の子に「名前だけでも!」と言おうとする前に物凄い距離を離されてしまった。
「脚はっや……」
追いかけるにしても、もう時間もない。
後ろ髪惹かれる気分ではあるけれども、諦めるしかなさそうだ。
普通科って言ってたし、もしお互いに合格すればまた会えるかもしれないと淡い期待を抱きながらヒーロー科の試験会場へと向かった。
入学試験終了後、家に帰って姉貴と兄貴に今日の事を話したら滅茶苦茶笑われた。
「受験票飛ばすってだけでも笑えるのに、なにそのマンガみたいな出会い方!ウケる!」
「しかも、ひざし好みの大人しい系の子だってよ!運命じゃん!」
馬鹿笑いする二人に「他人事だと思って!」と怒っても二人は一日そのネタで笑い続けていた。
くっそー!
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