ティターニアとは呼ばないで
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自炊もするが、基本的に外で食べるのが好きだ。
人の話し声や気配を感じる場所に身を置くことで、なんとなく自分も世界に存在しているのだという気分にひたれる。
まあ、言ってしまえば家で一人飯するのが寂しいだけなんだが。
少し遠回りして、高くも安くもないアパートに帰ってくると、玄関前に誰かがしゃがみこんでいた。
「やあ、お帰り」
「スティーブンさん。なにやってるんですか?」
「キミが帰ってくるの待ってた」
「中に入って待ってればよかったじゃないですか。合鍵、わたしてありますよね?」
わたしたというか、知らぬうちに作られていたというのが正しいが。
スティーブンさんはしゃがんだまま、「あと五分でキミが来なかったら、帰るつもりだったから」と言う。
「用があった、てわけじゃないですよね。電話なかったですし」
「うん。ちょっと、疲れたから……ティティ吸いたいなって思って」
「人を犬猫吸う感覚で吸いに来ないでくれませんか」
まあ、遭遇してしまったのだから中に入れるしかない。
部屋には入ると、「また本が増えてないか?」と少しあきれた声で言われた。
ブックカフェで働いていると無限に本は増えていくものだ。
本棚を物色するスティーブンさんに、「ホットミルクでいいですか?」と聞くと、「先にシャワーあびる」と返ってきた。
泊まっていくのか、そうか。
「これ、借りていくよ」
「お目が高いですね。私が最近オススメしたい一冊ですよ、それ」
「なら、アタリだな。先にシャワー借りる」
「どーぞ」
勝手知ったる足取りでシャワールームに向かうスティーブンさんを見届け、シャワーの音が聞こえてきたあたりで服を回収に行く。
下着は洗濯かごに入れ、シャツとスーツはハンガーにかけて吊るす。
安物のシャツなら適当に洗濯機へ投げ込めるが、スティーブンさんのシャツは要クリーニング、またはアイロンがけが必要な高いシャツ。
雑に扱うのは怖い。
替えの下着とパジャマを置いて、ぬるめのホットミルクを作る。
「先にありがとう」
「いいえ。はい、ぬるめのホットミルクです」
「ありがとう」
スティーブンさんと入れ替わりで、シャワーを浴びて出ると本を読んでいた顔を上げて「早くないか?」と怪訝な顔をされた。
「カラスじゃないんだ。ちゃんと、洗ったのか?」
「洗いすぎもよくないんですよ」
納得いかない、という顔をされても、別にヘアパックやらなんやら時間をかけるものを省いたのだから、早くて当たり前。
こちとら、疲れたスティーブンさんの心配してるんだから。
「あ、吸われる前にシャワー浴びてしまった……」
「吸わせてくれるつもりだったのか?」
「嫌かどうかと聞かれたら嫌ですが、疲れているスティーブンさんの為なら、背に腹は代えられないなとは思いました」
「そうか。ティティ、おいで」
この、おいで、に従うとどうなるかはわかっている。吸われるんだ。
それがわかっていながらも、私はスティーブンさんに忠実な人間なので、大人しく近寄る。
軽く叩かれた膝の上に向かい合うように乗れば、抱き締められ吸われた。
「落ち着く」
「なら、いいです。あまり、気を張りすぎないでくださいね。心配になりますから」
「気がつくのはキミとヴェデッドくらいだよ」
そりゃ、何年もスティーブンさんとマンツーマンで過ごしていたし、私は元来人の機嫌の機微を利用する人間だから、わかる。
わかるからこそ、気がついてもスティーブンさんからアクションしてくれないとなにもできない自分に苛立つ。
私が気を抜け、と言ったところでスティーブンさんは気なんて抜かない。
ギリギリまで溜め込んで、ふとした瞬間に「疲れた?」となる。
疲れた?じゃない、休め。いや、休む代わりに人のことを吸っているわけだが。
「キミを育ててた頃はさ、俺、なんか普通に子育てしてるな、て」
「あの仕込み時代を子育てと認識していたんですか?」
「俺にとっては子育てだよ。生意気な態度とってた子が、段々なついてくれてさ。可愛かったな」
キミと二人きりだと、俺は何者でもなくなれる。
そう、細く呟くスティーブンさんに「疲れるなら、やめればいいんじゃないですか」と思っていても、言えない。
この人の努力を、簡単に否定することは許されない。
「ぶっ倒れる前に、こまめに休んでくださいよ」
「じゃあ、同居してくれよ」
「ずっと気が緩むから別々に暮らそう、て言ったのスティーブンさんじゃないですか」
「それもそうなんだけどさー」
ぐりぐりと肩口に額を押し付け唸るスティーブンさん。
「まあ、無理強いはしませんよ。呼ばれたら行きますし、うち来たら付き合いますし」
「夜中に来て寝てるキミを押し潰しても許してくれるか?」
「それは怒ります」
人の話し声や気配を感じる場所に身を置くことで、なんとなく自分も世界に存在しているのだという気分にひたれる。
まあ、言ってしまえば家で一人飯するのが寂しいだけなんだが。
少し遠回りして、高くも安くもないアパートに帰ってくると、玄関前に誰かがしゃがみこんでいた。
「やあ、お帰り」
「スティーブンさん。なにやってるんですか?」
「キミが帰ってくるの待ってた」
「中に入って待ってればよかったじゃないですか。合鍵、わたしてありますよね?」
わたしたというか、知らぬうちに作られていたというのが正しいが。
スティーブンさんはしゃがんだまま、「あと五分でキミが来なかったら、帰るつもりだったから」と言う。
「用があった、てわけじゃないですよね。電話なかったですし」
「うん。ちょっと、疲れたから……ティティ吸いたいなって思って」
「人を犬猫吸う感覚で吸いに来ないでくれませんか」
まあ、遭遇してしまったのだから中に入れるしかない。
部屋には入ると、「また本が増えてないか?」と少しあきれた声で言われた。
ブックカフェで働いていると無限に本は増えていくものだ。
本棚を物色するスティーブンさんに、「ホットミルクでいいですか?」と聞くと、「先にシャワーあびる」と返ってきた。
泊まっていくのか、そうか。
「これ、借りていくよ」
「お目が高いですね。私が最近オススメしたい一冊ですよ、それ」
「なら、アタリだな。先にシャワー借りる」
「どーぞ」
勝手知ったる足取りでシャワールームに向かうスティーブンさんを見届け、シャワーの音が聞こえてきたあたりで服を回収に行く。
下着は洗濯かごに入れ、シャツとスーツはハンガーにかけて吊るす。
安物のシャツなら適当に洗濯機へ投げ込めるが、スティーブンさんのシャツは要クリーニング、またはアイロンがけが必要な高いシャツ。
雑に扱うのは怖い。
替えの下着とパジャマを置いて、ぬるめのホットミルクを作る。
「先にありがとう」
「いいえ。はい、ぬるめのホットミルクです」
「ありがとう」
スティーブンさんと入れ替わりで、シャワーを浴びて出ると本を読んでいた顔を上げて「早くないか?」と怪訝な顔をされた。
「カラスじゃないんだ。ちゃんと、洗ったのか?」
「洗いすぎもよくないんですよ」
納得いかない、という顔をされても、別にヘアパックやらなんやら時間をかけるものを省いたのだから、早くて当たり前。
こちとら、疲れたスティーブンさんの心配してるんだから。
「あ、吸われる前にシャワー浴びてしまった……」
「吸わせてくれるつもりだったのか?」
「嫌かどうかと聞かれたら嫌ですが、疲れているスティーブンさんの為なら、背に腹は代えられないなとは思いました」
「そうか。ティティ、おいで」
この、おいで、に従うとどうなるかはわかっている。吸われるんだ。
それがわかっていながらも、私はスティーブンさんに忠実な人間なので、大人しく近寄る。
軽く叩かれた膝の上に向かい合うように乗れば、抱き締められ吸われた。
「落ち着く」
「なら、いいです。あまり、気を張りすぎないでくださいね。心配になりますから」
「気がつくのはキミとヴェデッドくらいだよ」
そりゃ、何年もスティーブンさんとマンツーマンで過ごしていたし、私は元来人の機嫌の機微を利用する人間だから、わかる。
わかるからこそ、気がついてもスティーブンさんからアクションしてくれないとなにもできない自分に苛立つ。
私が気を抜け、と言ったところでスティーブンさんは気なんて抜かない。
ギリギリまで溜め込んで、ふとした瞬間に「疲れた?」となる。
疲れた?じゃない、休め。いや、休む代わりに人のことを吸っているわけだが。
「キミを育ててた頃はさ、俺、なんか普通に子育てしてるな、て」
「あの仕込み時代を子育てと認識していたんですか?」
「俺にとっては子育てだよ。生意気な態度とってた子が、段々なついてくれてさ。可愛かったな」
キミと二人きりだと、俺は何者でもなくなれる。
そう、細く呟くスティーブンさんに「疲れるなら、やめればいいんじゃないですか」と思っていても、言えない。
この人の努力を、簡単に否定することは許されない。
「ぶっ倒れる前に、こまめに休んでくださいよ」
「じゃあ、同居してくれよ」
「ずっと気が緩むから別々に暮らそう、て言ったのスティーブンさんじゃないですか」
「それもそうなんだけどさー」
ぐりぐりと肩口に額を押し付け唸るスティーブンさん。
「まあ、無理強いはしませんよ。呼ばれたら行きますし、うち来たら付き合いますし」
「夜中に来て寝てるキミを押し潰しても許してくれるか?」
「それは怒ります」