ティターニアとは呼ばないで
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生まれた理由がわからない。
なんのために、私は生まれた。
記憶がない、記憶がない、記憶がない。
私が何者なのかを証明するなにかがない。
なにもない。
なにもないなら、作るしかない。
私を私とするために、存在を確定するためのなにか。
「妖精……」
それは幻想の存在。
いるかどうかもわからない、神秘の存在。
無邪気で残酷なそれは、不確かな自分に重なった気がした。
「そうだ、私は妖精女王ティターニア」
◆
いや~、忘れたいわ~。なのに、ふとした瞬間に思い出しちゃう~。
なーにが、妖精女王ティターニアだ。
ちょっと幻術使えるからって、調子こきすぎだろ。
自分の過去があまりに恥ずかしすぎて意識がとんでいると、スティーブンさんが「ティティ、ちょっといいか?」と声をかけてきた。
「仕事ですか?」
「仕事じゃないと声をかけたらダメなのか……?」
そんなしょんぼりした顔をされても困るんですよね。
だが、まあ、正直声はかけてほしくはない。
スティーブンさんの仕事以外の用事って、いい予感がまったくしない。
なにかあったのかと聞かれると、概ね女、ときおり男からわけの分からぬ妬みを買い闇討ちされたりとか。
わかる、わかる。あの人のカリスマ性とか色気とかに引かれるのはわかるよ。けど、私に牙をむかないでほしい。私はか弱い女なのだ。
「それで、なんの用ですか?」
「これからランチに行こうと思うんだが、一緒にどうだい?」
「肩こるんで嫌です」
即答すると、肩を落としクラウスさんとギルベルトさんのところに行き、「最近、反抗期が酷い」と愚痴りだす。
反抗期というより、連れていかれる店が高すぎてゆっくり食事できなくて嫌なのだ。
「つか、昼なんていつも勝手にとってたじゃないですか。なんで、いきなり」
「最近、僕に対して冷たいじゃないか。だから、食事でもしてまた昔みたいになれないかなって」
冷たいというか、公私混同してなかったり、さっさと帰って寝たいだけなんだよな。
「ていうか、二十歳にもなって十代のガキみたいに振る舞えるわけないですよ」
「僕のなかではまだ、尻に殻をつけてる小さな命なんだけどな」
「いま、さらっと私のことバカにしませんでした?」
「守りたい命ってことだよ」
物は言いようである。
しかし、どのみち私は守られる側の人間ではない。
幻術で戦えるし、スティーブンさんほどではないがエスメラルダ式血凍道を叩き込まれた。
超役に立つというわけではないが、そこそこは役に立つ……つもり。
背中を預けて、なんて大それたことは言えないが、信頼してくれとは思う。
そんなに、弱いかな。私……。
「……お腹空いたんで、ランチ行ってきまーす」
ちょっと悲しくなったので、さっさと一人でランチに行こうとしたら、スティーブンさんまで着いてきた。
「どこの店に行くんだ?」
「ミーグル通りのカレー屋です。スティーブンさんはどちらに?」
「いやいやいや!この流れは一緒に行くだろ?!」
「私、誘ってませんし」
「ティティ……」
「……」
あまりにも情けない声をだすので、さすがに申し訳なくなってきて、スティーブンさんの手をとり「ほら、これでいいんですか?」と聞くと、嬉しそうに笑い「あぁ」と握り返してきた。
ああ、たしかに、最近はスティーブンさんと手なんか繋いでなかったな。
「スティーブンさんの手、おっきいですね」
「キミの手は変わらず小さいね」
「……頼りないですか?」
「そんなことないさ。頼りにしてるよ」
はあ、どうだかね。
口先だけで褒めるのは、お手の物だからなこの人。
「ティティ、明日も一緒にランチしよう。なんならディナーも一緒にして、そのまま泊まって朝も食べていけばいい!」
「刺されるコースなんで嫌です!」
なんのために、私は生まれた。
記憶がない、記憶がない、記憶がない。
私が何者なのかを証明するなにかがない。
なにもない。
なにもないなら、作るしかない。
私を私とするために、存在を確定するためのなにか。
「妖精……」
それは幻想の存在。
いるかどうかもわからない、神秘の存在。
無邪気で残酷なそれは、不確かな自分に重なった気がした。
「そうだ、私は妖精女王ティターニア」
◆
いや~、忘れたいわ~。なのに、ふとした瞬間に思い出しちゃう~。
なーにが、妖精女王ティターニアだ。
ちょっと幻術使えるからって、調子こきすぎだろ。
自分の過去があまりに恥ずかしすぎて意識がとんでいると、スティーブンさんが「ティティ、ちょっといいか?」と声をかけてきた。
「仕事ですか?」
「仕事じゃないと声をかけたらダメなのか……?」
そんなしょんぼりした顔をされても困るんですよね。
だが、まあ、正直声はかけてほしくはない。
スティーブンさんの仕事以外の用事って、いい予感がまったくしない。
なにかあったのかと聞かれると、概ね女、ときおり男からわけの分からぬ妬みを買い闇討ちされたりとか。
わかる、わかる。あの人のカリスマ性とか色気とかに引かれるのはわかるよ。けど、私に牙をむかないでほしい。私はか弱い女なのだ。
「それで、なんの用ですか?」
「これからランチに行こうと思うんだが、一緒にどうだい?」
「肩こるんで嫌です」
即答すると、肩を落としクラウスさんとギルベルトさんのところに行き、「最近、反抗期が酷い」と愚痴りだす。
反抗期というより、連れていかれる店が高すぎてゆっくり食事できなくて嫌なのだ。
「つか、昼なんていつも勝手にとってたじゃないですか。なんで、いきなり」
「最近、僕に対して冷たいじゃないか。だから、食事でもしてまた昔みたいになれないかなって」
冷たいというか、公私混同してなかったり、さっさと帰って寝たいだけなんだよな。
「ていうか、二十歳にもなって十代のガキみたいに振る舞えるわけないですよ」
「僕のなかではまだ、尻に殻をつけてる小さな命なんだけどな」
「いま、さらっと私のことバカにしませんでした?」
「守りたい命ってことだよ」
物は言いようである。
しかし、どのみち私は守られる側の人間ではない。
幻術で戦えるし、スティーブンさんほどではないがエスメラルダ式血凍道を叩き込まれた。
超役に立つというわけではないが、そこそこは役に立つ……つもり。
背中を預けて、なんて大それたことは言えないが、信頼してくれとは思う。
そんなに、弱いかな。私……。
「……お腹空いたんで、ランチ行ってきまーす」
ちょっと悲しくなったので、さっさと一人でランチに行こうとしたら、スティーブンさんまで着いてきた。
「どこの店に行くんだ?」
「ミーグル通りのカレー屋です。スティーブンさんはどちらに?」
「いやいやいや!この流れは一緒に行くだろ?!」
「私、誘ってませんし」
「ティティ……」
「……」
あまりにも情けない声をだすので、さすがに申し訳なくなってきて、スティーブンさんの手をとり「ほら、これでいいんですか?」と聞くと、嬉しそうに笑い「あぁ」と握り返してきた。
ああ、たしかに、最近はスティーブンさんと手なんか繋いでなかったな。
「スティーブンさんの手、おっきいですね」
「キミの手は変わらず小さいね」
「……頼りないですか?」
「そんなことないさ。頼りにしてるよ」
はあ、どうだかね。
口先だけで褒めるのは、お手の物だからなこの人。
「ティティ、明日も一緒にランチしよう。なんならディナーも一緒にして、そのまま泊まって朝も食べていけばいい!」
「刺されるコースなんで嫌です!」
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