蘭の嫁
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「しゃっー!私の勝ちだー!」
マッチング対戦で勝利した瞬間に叫ぶ。
前の部屋ではできなかった、クソデカ勝利宣言は気持ちがいい。
壁も厚くて、そもそもワンフロア全てジャイアンの所有物で人は住んでおらず、最上階なので上の住人に気を遣う必要はない。
ジャイアン様々である。
実況も一区切りつき、ふと時計を見れば夕飯の時間。
なんか作ろうかと悩み、ふと強烈に麻婆豆腐が食べたくなった。
「よし、麻婆豆腐作ろう」
思い立ったら吉日。
米をセットし、ジャイアンから与えられた黒いカードを持ち、スキップしながらスーパーへ向かっていると、向かいから美女を連れたジャイアンと目があった。
また、セフレをどっかの部屋に連れ込むんだろうが、私には関係ないことなので、振られた手に手を振り返して横を素通りする。つもりだった。
「美夜子、今日の夕飯なに?」
「ほ?」
え、このタイミングで話しかけてきますか?セフレも目が点になっていますが?
混乱しながらも、「麻婆豆腐の予定です」と答えれば、「あ、俺も食いてえ」と言って腕に引っ付いているセフレを振りほどき、私の腰を抱いて「買い物行こうぜ」と言って歩き出そうとする。
「ちょ、ちょっと蘭!誰よ、その女!」
ジャイアンの腕を掴み引き止める女に、ジャイアンは鬱陶しそうな視線をやり「あぁ?誰もなにも、嫁だよ」と言い捨てる。
なぜ、修羅場を作ろうとするの、ジャイアン……。
女は唖然とし、「ウソよ……」と口にする。
「だ、だって、蘭は特定の女は作らないって……!」
「オマエには関係ねえだろうが。わかったら、離せよ」
そう凄まれても離さない女に、他人事なので「凄い胆力」と考えながら見ていた。
私なら、震えて尻尾巻いて逃げるわ。
「嫌よ、蘭!今日は私といるって言ってくれたじゃない!」
「……」
「は、はわわ……」
ジャイアンの目が見る間に冷え込んでいき、まずい!と思った瞬間には、ジャイアンが女の前髪を掴み「勘違いすんじゃねえぞ、阿婆擦れ」とすごむ。
「テメエとは遊びなんだよ。俺がすることに口出しすんじゃねえ」
そう言い、私の腰に回していた手を振り上げる。
あー!いけません!いけません!オマエのステゴロは洒落になりません!私、身を持って知っています!
「蘭ちゃん!私、お腹空いたので!早めに買い物に行きたいです!」
ジャイアンの気をそらす為に叫ぶと、ジャイアンはピタリと止まり、私の方を見て笑って「そっかー。んじゃ、コイツ相手にしてる場合じゃねえな」と言って、女の前髪を離した。
私の腰を抱き直し、「行こうぜー」と言うジャイアンに小刻みに頷いて見せる。
一人の女を救えて安心したが、その女が私をガン睨みしていることに気が付き、泣きそうになった。
うっ、ジャイアンの女たちに恨まれるのは慣れてるよ、私。
学生時代も、「なんであの地味女が」と言われ続けてたっけな。
イジメは、ジャイアンにバレると場合によってはジャイアンがブチギレるのでしてはこなかったが、陰湿な陰口はしょっちゅう叩かれてたっけな。
「激辛にしようぜ」
「私、辛すぎるのはダメなので中辛を……」
そう言い、中辛の麻婆豆腐の素をとろうとしたら、「美夜子も激辛にしような」と圧をかけてきた。
怖すぎて、そっと中辛を戻してしまった。
だ、大丈夫……。私も大人になったのだから、激辛のひとつや、ふたつ……。
「あっ!かっら!!!!」
「あっはっはっはっはっ!!!」
全然ダメだった。
普通に辛い。無理。舌が痛い。
それを見て爆笑するジャイアン、本当に嫌い。
「やっぱ、美夜子いたぶるのは楽しいな」
「あ、やっぱりこれ、いたぶられてたんですね……」
「当たり前だろ?」
こんなネジのとんだ当たり前があってたまるか。
しかし、自分でよそった物は自分で食べなければ無作法というもの。
めしょめしょ泣きながら食べる私を見ながら、ジャイアンは「オマエの泣き顔見てると飯が進むな」と、もりもり激辛麻婆豆腐を食べていく。
ゲスかよ、ゲスだったな。
結局、私はお代わりせずに終わり、ジャイアンが残り全部を完食した。あの細い体のどこに入ったんだろう。
「ごちそうさまー」
「お粗末様です」
まあ、腹八分目でことたりたので、健康状態としてはよかったのだと、自分に言い聞かせお皿を洗っていると、突然、背後から抱きつかれた。
「ぎゃっ!」
「んふふ……」
楽しそうに笑うジャイアンに対し、私はこの後なにをされるのかとガクガクブルブルである。
チョークスリーパーでもされるの……?
「美夜子は、すーぐ怯えるよな」
「し、しーましぇん……」
「んー?いいんだって。女って、ちょっと抱きしめただけで勘違いすんのに、オマエは何年経っても変わらずビクビクして、可愛いよなぁ。いっぱいイジメたくなる」
なんだ、オマエ?かぐや姫の帝か?と言いたいが、そんなこと言った日には本当にチョークスリーパーされてしまう。
動きにくいし、心臓が痛いくらい鳴っているが、それでも皿洗いはしていく。
「皿洗い終わった?」
「はい……」
「じゃあ、ゲームやろうぜ、ゲーム。実況しながら」
「え、えぇ?!まさか、私のアカウントでやる気ですかぁ?!」
「は?なに?文句あんのか?夫婦仲良く、実況しようぜ♡」
ギチギチと軽く締め上げられながら、アカウント炎上と死を天秤にかける。
アカウント炎上は嫌だアカウント炎上は嫌だアカウント炎上は嫌だ……死ぬのも嫌だ……!
「新しいアカウントすぐ作るんで、勘弁してもらえないでしょうか……!」
「えー?しょうがねえな。十分で作れよ」
「はい!」
手を拭き、実況部屋にあるパソコンを立ち上げ速攻アカウントを作り、準備を整える。
「できましたぁ!」
「んじゃ、始めるか」
「名前どうしますか?」
「そうだなー。じゃあ、ジャイアンとか?」
「……」
「おら、俺の目見ろ。知ってんだからな、オマエが俺のことジャイアンって呼んでんの」
「あの……すみません……」
小さい声で謝ると、「聞こえねえなぁ……?」と地を這うような低い声で言われた。
あっ……あっ……死……。
半泣きになり始める私を、ジャイアンはジッと見つめていたと思ったら、「なーんてな!俺はそんなことで怒らないって」と言うが、そんなことで絶対にコイツは怒る。
些細なことで、私が何度、理不尽なグーパン受けたと思っているんだ。
絶対に、絶対になにかしらの報復があると覚悟する私を置いて、ジャイアンは私のゲーミングチェアに座り、「ほら、膝乗れ」と言ってきた。
「え、やだ……」
「あ?」
「すみません!」
切れよく直角に腰を折り謝罪し、できるだけ体重をかけないように膝の方に座ったのに、抱え直されジャイアンのお腹に背中をくっつけられた。
空腹じゃねーんだぞ。
「えーっと、配信開始しますね……」
「んー。……なに?これもう始まってんのか?」
「始まってます」
「いえーい。夫婦で実況動画始めんぞ。ジャイアン@蘭ちゃんだ。よろしくなー」
「そういう荒くれ者みたいなことします?!あ、つか、私名前考えてません!」
「じゃあ、オマエはのび太@美夜子な」
「しずかちゃんではなく?!」
「しずかちゃんってキャラだと思ってんのか?」
思ってません、のび太でいいです。
「それで、初回はなにやるんですか?」
「はーい。死印です」
「解散!」
「させるわけねえだろ」
逃げ出そうとする私を脚で器用に拘束し、PS4にディスクをセットする。
私は!ホラーゲームは!ダメなんだ!
「離せ!!!」
「ぜってぇ離さねえからな。目つぶったら、罰金十万な」
「額がでけぇ!!!怒ってるじゃん!!やっぱり、ジャイアンって言ってたこと、怒ってるじゃん!!」
「怒ってねえよー。怒ってたら、問答無用でぶん殴ってるから」
「そりゃそうだ!!」
じゃあ、なんでわざわざホラーゲーム選択したんですか!と喚く私に、「普通にいたぶりたいから」と言われた。
ナチュラルサディストクソ野郎!
「ほーら、始まったぞ」
「やだやだやだー!助けて、ドラえもん!」
「そんな都合のいいタヌキ、いるわけねえだろ」
「うえーん!弟、引き取りに来てコイツ!」
「ああ、無駄だぞ。あいつ、学生のとき、オマエにジャイ子って呼ばれてるって知ってから、オマエの味方は一生しねえって言ってたから」
「ジャイ子ー!」
「いい悲鳴あげろよ」