蘭の嫁
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「兄貴、明日休んだら?」
「……」
竜胆にそう言われ、思わず下唇がでた。
俺だって休みたい。
なんせ、明日はクリスマスだ。
美夜子とデートして、食事して、いい雰囲気になったらプレゼントわたしたい。
「けど、あいつイベントとか嫌いじゃん」
昔から、イベントごとを避けて通っているところがあった。
ガキの頃なら、引きずって連れ回していたが、いまそれをやったら……。
「嫌われたらヤダ」
「今以上に嫌われると思ってんの、兄貴」
余計なことを言う竜胆を蹴り飛ばすが、たしかにそれはそう。
「けど、美夜子。イベントが嫌いなんじゃなくて、人混みが嫌いなだけだから、人混み避ければいいんじゃね?」
「なんで竜胆が知ってんだよ」
「前にそういう話したから」
「……」
最愛の嫁と最愛の弟が、俺をのけ者にして情報の共有をしているのが気に食わない。
俺が知っていることを二人が共有していないのはいいが、俺だけが知らないのは許さない。
竜胆をもう一度、軽く蹴る。
「それに、イベントだから一緒にいたいとか、俺が美夜子のことすげえ好きみたいで、なんかヤダ」
「……すげえ好きなんじゃねえの?」
「別に、そんなんじゃ……」
口ごもると、竜胆が珍しく真剣に怒った顔をして「俺はすげえ好き」と口にした。
「正直、兄貴と結婚したのが悔しい」
「おーおー!男の嫉妬は醜いぜー!」
「うっせぇ、三途!だから、美夜子のことそんなに好きじゃねえなら、別れろよ」
「は?」
「で、俺が結婚するから。兄貴のものは俺のもので、俺のものは兄貴のものなら、俺がしてもいいだろ」
竜胆の言うことはもっともで、俺のものは竜胆のもので、竜胆のものは俺のもの。
なら、俺より美夜子のことが好きな竜胆に譲るべき。
それは、わかっている……。
「い、やだ……」
震えそうになる声で拒否をしていた。
嫌がらせとかではなく、心から嫌だと思った。
わたしたくない、と。
「なんで」
ずい、と近づいてくる竜胆から、半歩下がってしまった。
なんで……、なんで……?
「兄貴は、すぐそうやって自分の感情から目そらす。ちゃんと向き合えよ!俺から奪っていったんだからさ!」
俺の胸を強く押すと、イライラした足取りで竜胆は行ってしまった。
呆然とする俺に、三途が「全面的にオマエが悪いな」と言った。
「オマエだって、竜胆が自分が一番好きなやつと結婚したのに、「別にそこまで好きじゃねえ」とか言ったらムカつくだろ」
「……」
「で〜?蘭ちゃんは、美夜子ちゃんのことが大好きなのかな〜?」
「うるせえよ、三途」
大好きかどうかなんて、柄にもなくプレゼント選び難航した時点でわかりきってんだよ。
すげえ好き、どうしようもなく好き。
共有はできても、このポジションを竜胆にわたしたくないくらい好き。
こんな、ガキみたいに好きって感情に支配されている自分がダサすぎて嫌になる。
クリスマス当日。
事務所のソファーでゴロついていると、竜胆が覗きこんできた。
「帰んねえの」
「帰りたい」
「帰りゃいいじゃん」
「まだ心の準備ができてない」
「じゃあ、俺が美夜子とデートしちゃおうかなー」
嘘だとはわかってはいるが、竜胆の腕を掴んでしまった。
してやったり、という顔をする竜胆に腹を立てながら「しょうがねえじゃんかよ」と言い訳をする口。
「好きだとかちゃんと受け入れたら、嫌われたくねし、むしろ好きって言ってほしいて思っちまったんだよ。そうしたら、どの面下げて会いに行けばいいかわかんなくなったの!」
「ガキ大将の初恋かよ」
「うるせえ」
「んで?いつまでウダウダすんの?年末まで?年始まで?」
「さ……三が日過ぎるまで……」
「美夜子とクリスマスデートして、年越し一緒にして、初詣行こー」
「りーんーどーうー!」
美夜子に連絡しようとする竜胆の邪魔をすると、呆れたように「そんなんじゃ、一生会えねえよ?」と言った。
「あの一件から、後悔しないように美夜子と付き合うって、決めたんじゃねえの?」
あの一件。
俺が死にかけた、あの一件から美夜子は少しずつ俺たちとの思い出が残るように、写真やら物を増やし始めた。
だから、俺も思い出残そうと、いつ死んでも後悔しないように付き合おうと決めたのだ。
だというのに、このざまだ。
「おう、蘭。マイキーからのお言葉だ」
「こんなかに、嫁と過ごすのに日和ってるやついる!いねえよな!」
「ほら!発破かけられてんぞ、兄貴!」
「オマエら、なんでそんな応援体勢なわけ?」
「兄貴応援するのは、弟の役目だから」
「面白そうだから」
「幸せになってほしいから」
竜胆とマイキーに微笑ましいものを見る目で見られてしまっては、腹をくくるしかない。
「けどよ、美夜子。俺が帰ったら嫌な顔しねえかな」
「十中八九する」
「わかってるから、帰りにくいんだよな……」
いつも、ドアを開けたとき一番に見るのが、緊張した美夜子の顔。
自業自得、身から出た錆なのだが、あれは少しヘコむ。
「イベントごとさ、逆に俺がいない方が美夜子は幸せなんじゃねえかな」
「だろうな」
「どんな夫婦なんだよ、オマエら」
やっぱ、三が日過ぎるまで帰んねえ。と言うと、竜胆がケータイを取り出したので「日和ってるわけじゃねえって」と訂正を入れる。
「俺は、美夜子が幸せな方がいいの」
「なんかそれっぽい言い訳はじめたぞ」
「うるせえっての、三途」
とにかく、三が日。
三が日までに腹をくくる、と決めていたのに気がつけば三日の夜。
はやくね?歳のせい?
何一つ腹はくくれず、翌朝何食わぬ顔で事務所に来たら竜胆が物凄い顔で睨んできた。
「なんでここにいんの、兄貴」
「いや……ほら、仕事……」
「今日はねえぞ。竜胆がオマエの為に、全部引き受けたからな」
「そ、そっか……」
「兄貴……」
睨みつけてくる竜胆に根負けして、家に帰ることにした。
あー、やだなー。美夜子、怯えさせなきゃなんねえのか。
せめて、美夜子が心の準備をできるようにと前もって連絡をすることにする。
『雑煮作って待ってろ』
送信してから、「なんでそこ、いつもどおりにしてんだ?」と自分を引っ叩きたくなった。
……ケーキと寿司で機嫌とれっかな。
美夜子が好きなケーキを買い、寿司の出前もとった。よし、大丈夫。
緊張しながら帰ると、奥から「おかえりなさいー」と言いながら美夜子がでてきた。
大丈夫、いつもどおり。と身構えたのがよくなかったのか、美夜子の表情が固くなる。
あ、いま俺絶対怖い感じだ。
なんとか安心させなくては、と焦れば焦るほど美夜子の顔色が悪くなっていく。
「あー……。あけましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」
場の空気を変えようとして言われた新年の挨拶。
社交辞令かも知れないが、それでも今年も一緒にいてくれるかもということに、思わず頬が緩んだ。
「ん。よろしくな」
ケーキを美夜子にわたし、鍋を覗きこめば本当に雑煮を作っていてくれた。
まあ、俺の言うことに逆らったらどうなるか、わかっているからだろうが。
お玉から直接飲もうとしたら、美夜子が慌てて止めてきた。
その顔が必死過ぎて、やっぱコイツの表情コロコロ変わるとこ好きだな。
寿司と雑煮を食べながら、ちゃんと美夜子と夫婦として年を越せたことを噛み締める。
最初こそ、懐かしいオモチャがほしくなった程度だった。
たぶん、竜胆に言ったら両手脚の骨を折られると思う。
色々言ってこねえし、マジ楽ー。とか思ってた。
けど、帰ったら誰かがいて、おかえりって言ってくれて、話ができて、朝起きたら幸せそうに寝てる美夜子がいて、安心した。
落ち着く、帰りたい、側にいたい。
けど、美夜子が俺といるのは約束を守っているから。
じゃあ、守らなかったら?
毎日帰ってきて、一緒にいたいとか。俺のこともっと構えとか。嫉妬くらいしろとか言ったら?
「えー、めんどくさ……」
……まあ、わかりきった返事ではあった。それでも、ヘコむことはヘコむ。
俺たちは条件付きの関係。
それがなかったら、美夜子は俺のところにいない。
側にいたいなんて、虫がよすぎる話だったんだ。
「無理矢理嫉妬するのは、ちょっと……」
「……そこ?」
予想外なところで嫌がられ目を丸くする俺と、同じく目を丸くする美夜子。
「毎日帰ってきてほしくないとか、構えとか怠いとか」
「毎日帰ってきても、私の時間邪魔されなければいいですし、構えって言ってもずっとてわけじゃないでしょう?学生のときと違って、距離感取れるようになってますし」
「まあ……」
「それより、嫉妬してないのに嫉妬してるふりをするのは……怠い」
「それは、俺がどこの誰とナニしてても、どうでもいいってこと?」
「別になにしててもいいですよ。だって、蘭ちゃんはそういう関係性割り切ってますし。本気になることもないでしょ?」
俺のことを竜胆のように理解してくれている存在がいることに、くすぐったく感じた。
なんていうか、俺が女とどうこうなっても、最終的には自分のところに戻ってくる自信があんじゃねえか?と勘ぐってしまう。
「信頼、て思っていいわけ?」
その質問に、美夜子は首を傾げたが否定はしなかった。
「信頼って思っとくわ。じゃあ、毎日帰ってきてやろ」
「ご飯必要なときは、前もって連絡してくださいね」
「ん、わかった」
帰ってきていいと言われたことが、受け入れられたことが酷くうれしかった。
ああ、俺、美夜子がすげえ好き。
「……」
竜胆にそう言われ、思わず下唇がでた。
俺だって休みたい。
なんせ、明日はクリスマスだ。
美夜子とデートして、食事して、いい雰囲気になったらプレゼントわたしたい。
「けど、あいつイベントとか嫌いじゃん」
昔から、イベントごとを避けて通っているところがあった。
ガキの頃なら、引きずって連れ回していたが、いまそれをやったら……。
「嫌われたらヤダ」
「今以上に嫌われると思ってんの、兄貴」
余計なことを言う竜胆を蹴り飛ばすが、たしかにそれはそう。
「けど、美夜子。イベントが嫌いなんじゃなくて、人混みが嫌いなだけだから、人混み避ければいいんじゃね?」
「なんで竜胆が知ってんだよ」
「前にそういう話したから」
「……」
最愛の嫁と最愛の弟が、俺をのけ者にして情報の共有をしているのが気に食わない。
俺が知っていることを二人が共有していないのはいいが、俺だけが知らないのは許さない。
竜胆をもう一度、軽く蹴る。
「それに、イベントだから一緒にいたいとか、俺が美夜子のことすげえ好きみたいで、なんかヤダ」
「……すげえ好きなんじゃねえの?」
「別に、そんなんじゃ……」
口ごもると、竜胆が珍しく真剣に怒った顔をして「俺はすげえ好き」と口にした。
「正直、兄貴と結婚したのが悔しい」
「おーおー!男の嫉妬は醜いぜー!」
「うっせぇ、三途!だから、美夜子のことそんなに好きじゃねえなら、別れろよ」
「は?」
「で、俺が結婚するから。兄貴のものは俺のもので、俺のものは兄貴のものなら、俺がしてもいいだろ」
竜胆の言うことはもっともで、俺のものは竜胆のもので、竜胆のものは俺のもの。
なら、俺より美夜子のことが好きな竜胆に譲るべき。
それは、わかっている……。
「い、やだ……」
震えそうになる声で拒否をしていた。
嫌がらせとかではなく、心から嫌だと思った。
わたしたくない、と。
「なんで」
ずい、と近づいてくる竜胆から、半歩下がってしまった。
なんで……、なんで……?
「兄貴は、すぐそうやって自分の感情から目そらす。ちゃんと向き合えよ!俺から奪っていったんだからさ!」
俺の胸を強く押すと、イライラした足取りで竜胆は行ってしまった。
呆然とする俺に、三途が「全面的にオマエが悪いな」と言った。
「オマエだって、竜胆が自分が一番好きなやつと結婚したのに、「別にそこまで好きじゃねえ」とか言ったらムカつくだろ」
「……」
「で〜?蘭ちゃんは、美夜子ちゃんのことが大好きなのかな〜?」
「うるせえよ、三途」
大好きかどうかなんて、柄にもなくプレゼント選び難航した時点でわかりきってんだよ。
すげえ好き、どうしようもなく好き。
共有はできても、このポジションを竜胆にわたしたくないくらい好き。
こんな、ガキみたいに好きって感情に支配されている自分がダサすぎて嫌になる。
クリスマス当日。
事務所のソファーでゴロついていると、竜胆が覗きこんできた。
「帰んねえの」
「帰りたい」
「帰りゃいいじゃん」
「まだ心の準備ができてない」
「じゃあ、俺が美夜子とデートしちゃおうかなー」
嘘だとはわかってはいるが、竜胆の腕を掴んでしまった。
してやったり、という顔をする竜胆に腹を立てながら「しょうがねえじゃんかよ」と言い訳をする口。
「好きだとかちゃんと受け入れたら、嫌われたくねし、むしろ好きって言ってほしいて思っちまったんだよ。そうしたら、どの面下げて会いに行けばいいかわかんなくなったの!」
「ガキ大将の初恋かよ」
「うるせえ」
「んで?いつまでウダウダすんの?年末まで?年始まで?」
「さ……三が日過ぎるまで……」
「美夜子とクリスマスデートして、年越し一緒にして、初詣行こー」
「りーんーどーうー!」
美夜子に連絡しようとする竜胆の邪魔をすると、呆れたように「そんなんじゃ、一生会えねえよ?」と言った。
「あの一件から、後悔しないように美夜子と付き合うって、決めたんじゃねえの?」
あの一件。
俺が死にかけた、あの一件から美夜子は少しずつ俺たちとの思い出が残るように、写真やら物を増やし始めた。
だから、俺も思い出残そうと、いつ死んでも後悔しないように付き合おうと決めたのだ。
だというのに、このざまだ。
「おう、蘭。マイキーからのお言葉だ」
「こんなかに、嫁と過ごすのに日和ってるやついる!いねえよな!」
「ほら!発破かけられてんぞ、兄貴!」
「オマエら、なんでそんな応援体勢なわけ?」
「兄貴応援するのは、弟の役目だから」
「面白そうだから」
「幸せになってほしいから」
竜胆とマイキーに微笑ましいものを見る目で見られてしまっては、腹をくくるしかない。
「けどよ、美夜子。俺が帰ったら嫌な顔しねえかな」
「十中八九する」
「わかってるから、帰りにくいんだよな……」
いつも、ドアを開けたとき一番に見るのが、緊張した美夜子の顔。
自業自得、身から出た錆なのだが、あれは少しヘコむ。
「イベントごとさ、逆に俺がいない方が美夜子は幸せなんじゃねえかな」
「だろうな」
「どんな夫婦なんだよ、オマエら」
やっぱ、三が日過ぎるまで帰んねえ。と言うと、竜胆がケータイを取り出したので「日和ってるわけじゃねえって」と訂正を入れる。
「俺は、美夜子が幸せな方がいいの」
「なんかそれっぽい言い訳はじめたぞ」
「うるせえっての、三途」
とにかく、三が日。
三が日までに腹をくくる、と決めていたのに気がつけば三日の夜。
はやくね?歳のせい?
何一つ腹はくくれず、翌朝何食わぬ顔で事務所に来たら竜胆が物凄い顔で睨んできた。
「なんでここにいんの、兄貴」
「いや……ほら、仕事……」
「今日はねえぞ。竜胆がオマエの為に、全部引き受けたからな」
「そ、そっか……」
「兄貴……」
睨みつけてくる竜胆に根負けして、家に帰ることにした。
あー、やだなー。美夜子、怯えさせなきゃなんねえのか。
せめて、美夜子が心の準備をできるようにと前もって連絡をすることにする。
『雑煮作って待ってろ』
送信してから、「なんでそこ、いつもどおりにしてんだ?」と自分を引っ叩きたくなった。
……ケーキと寿司で機嫌とれっかな。
美夜子が好きなケーキを買い、寿司の出前もとった。よし、大丈夫。
緊張しながら帰ると、奥から「おかえりなさいー」と言いながら美夜子がでてきた。
大丈夫、いつもどおり。と身構えたのがよくなかったのか、美夜子の表情が固くなる。
あ、いま俺絶対怖い感じだ。
なんとか安心させなくては、と焦れば焦るほど美夜子の顔色が悪くなっていく。
「あー……。あけましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」
場の空気を変えようとして言われた新年の挨拶。
社交辞令かも知れないが、それでも今年も一緒にいてくれるかもということに、思わず頬が緩んだ。
「ん。よろしくな」
ケーキを美夜子にわたし、鍋を覗きこめば本当に雑煮を作っていてくれた。
まあ、俺の言うことに逆らったらどうなるか、わかっているからだろうが。
お玉から直接飲もうとしたら、美夜子が慌てて止めてきた。
その顔が必死過ぎて、やっぱコイツの表情コロコロ変わるとこ好きだな。
寿司と雑煮を食べながら、ちゃんと美夜子と夫婦として年を越せたことを噛み締める。
最初こそ、懐かしいオモチャがほしくなった程度だった。
たぶん、竜胆に言ったら両手脚の骨を折られると思う。
色々言ってこねえし、マジ楽ー。とか思ってた。
けど、帰ったら誰かがいて、おかえりって言ってくれて、話ができて、朝起きたら幸せそうに寝てる美夜子がいて、安心した。
落ち着く、帰りたい、側にいたい。
けど、美夜子が俺といるのは約束を守っているから。
じゃあ、守らなかったら?
毎日帰ってきて、一緒にいたいとか。俺のこともっと構えとか。嫉妬くらいしろとか言ったら?
「えー、めんどくさ……」
……まあ、わかりきった返事ではあった。それでも、ヘコむことはヘコむ。
俺たちは条件付きの関係。
それがなかったら、美夜子は俺のところにいない。
側にいたいなんて、虫がよすぎる話だったんだ。
「無理矢理嫉妬するのは、ちょっと……」
「……そこ?」
予想外なところで嫌がられ目を丸くする俺と、同じく目を丸くする美夜子。
「毎日帰ってきてほしくないとか、構えとか怠いとか」
「毎日帰ってきても、私の時間邪魔されなければいいですし、構えって言ってもずっとてわけじゃないでしょう?学生のときと違って、距離感取れるようになってますし」
「まあ……」
「それより、嫉妬してないのに嫉妬してるふりをするのは……怠い」
「それは、俺がどこの誰とナニしてても、どうでもいいってこと?」
「別になにしててもいいですよ。だって、蘭ちゃんはそういう関係性割り切ってますし。本気になることもないでしょ?」
俺のことを竜胆のように理解してくれている存在がいることに、くすぐったく感じた。
なんていうか、俺が女とどうこうなっても、最終的には自分のところに戻ってくる自信があんじゃねえか?と勘ぐってしまう。
「信頼、て思っていいわけ?」
その質問に、美夜子は首を傾げたが否定はしなかった。
「信頼って思っとくわ。じゃあ、毎日帰ってきてやろ」
「ご飯必要なときは、前もって連絡してくださいね」
「ん、わかった」
帰ってきていいと言われたことが、受け入れられたことが酷くうれしかった。
ああ、俺、美夜子がすげえ好き。