蘭の嫁
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「はっ!パスタが食べたい……!」
それも、辞めた会社の近くにあった、そこそこ値段はするがハチャメチャ美味しいパスタ屋さんの和風たらこパスタが……!
思い立ったら吉日、と着替えて久しぶりに電車に乗る。
ああ、そういえばジャイアンから、出かけるときはどこに行くか連絡しろ、て言われていたな。
電車に揺られながら、ジャイアンに店の場所と名前を送ると、すぐに「わかった、たくさん食べてこいよ」と返ってきた。
いや、食べ放題の店ではないんだな。
しかし、たくさん食べるぞ。
席に通され、たらこパスタにくわえスープやパン、飲み物やサラダを選んでいると、「やっぱり、赤坂だ!」と声をかけられた。
「久しぶりだな!」
「え、あ、はい……」
ここでおさらいだが、私は人の顔と名前を覚えるのが大変苦手である。更に新情報としては、この先、付き合いがなくなるであろうと判断した相手の顔と名前を、すぐ忘れる。
つまり、この人が誰か思い出せない。
これだけフレンドリーに話しかけてきたことと、会社近くということは、元同僚なのだろうが、誰だ本当に。
元同僚は私に許可を取ることなく相席をし、その時点で「絶対に相容れない」と思ってしまった。
ジャイアンですら、「相席いいかー?」くらいは聞く。聞くだけで勝手に座るが、聞くだけまだましだし、そこには私とジャイアンの関係性があるから許されるのであって、よくも知らない他人がやっていいことではない。
席移動をしたいが、さすがに失礼だよなぁ……。
しかし、食事は一人でゆっくりとりたいし、この人が帰ったら頼もう。
「俺、ポモドーロにするけど、赤坂はなににする?」
「あー……。サラダと白ワインを……」
「ちゃんと食べないとダメだぞ?すみません、ポモドーロ二つとサラダと白ワインください」
こいつ……。と思いながら、別の日にまた来ようと決めた。
運ばれてきた食事とワインに手を付ける。
「再会に乾杯、なんてな」
やかましいわ。
特に私から話すこともなく、相手からのマシンガントークを適当に相槌打っておく。
はあ、ジャイアンならこんなに喋らないんだけどな。
適度に会話は挟むけど、こんなに煩くない。
そして、早食いなんて絶対にしない。
食事は味わえ。
「はは、赤坂食べるの遅いな」
「そうですか」
「なんか暗いな?嫌なことあったか?」
オマエの所為だ、気がつけ。
「いえ、なにもないですよ」
「無理しなくていい。俺は、いまも昔もオマエの味方だ」
だから、誰なんだよオマエは〜。
段々とイライラする私に気がつかない元同僚は、「もしかして、結婚生活上手くいってないとか?」と、本当に仲が良くないと踏み入れない質問をしてきた。
上手くいってなくても、オマエには相談せんわ〜。
「このあと、飲みに行かないか?そこで、いっぱい愚痴聞いてやるからさ」
「いえ、食べたら帰るので」
「口にした方が楽になるぞ?……俺さ、赤坂の力になりたいんだ。その……まだ、オマエのこと好きだからさ……」
予想外の方向から来たぶっ飛ばすぞ案件な言葉に、ジャイアンと竜胆くん仕込のガン飛ばしがでそうになったが、必死で耐えた。
なんだ?それを言ってどうするってんだ?私ならなびくとでも思ったか?
「赤坂、もしいまの生活が辛いなら、俺と……」
そこまで聞いてから、プチリ、と堪忍袋の緒が切れて気がついたら水をかけていた。
「なめんなよ。こちとら、そんな尻軽じゃねえぞ。オマエじゃ、うちの旦那にはなに一つ勝てねえよ。金も愛も一緒にいた時間も。オマエと浮気する程度の愛情しかなかったら、いくら金積まれても結婚なんかせんわ。そりゃ、金があったから結婚はしたけど、一生一緒にいようって思える程度の覚悟と愛は持ち合わせてるんだよ。あと、勝手に相席すんな、食事を頼むな、食事中に喋るな、食事は味わえ。わかったら、私の前から消え失せろクズが」
あ〜、もうこの店来られないな〜。と考えていたら、顔を真っ赤にした男が、ワイングラスを構えた。
お、オマエ〜!こっちは水で我慢したのに、オマエはワインかけるんか〜い!と悠長に構えていたら、男の手を誰かが掴んだ。
「俺の嫁さんにワインかけようとするなんて、いい度胸じゃん」
「蘭ちゃん、なんでいるの?」
「美夜子とご飯食べるため。美夜子が失せろ、つったときに帰っとくべきだったな。明日から、オマエに居場所はねえ」
なにをするつもりなのか、とは思うが、あまり深くは聞かずにおこう。怖いし。
ジャイアンは無理矢理ワイングラスを置かせると、男を引きずって店から投げ出した。
なにを言ったのか知らないが、窓の向こうを通った男の顔が酷く青かった気がする。
「腹減ったな、美夜子。ほとんど手つけてねえみたいだし、頼みなおすか?」
「いや、残せないし」
「大丈夫、大丈夫。竜胆が食べてくれるから。な、竜胆?」
「兄ちゃん、なんで言うんだよ!気つかって出ていかなかったのに!」
少し離れたボックス席に、たしかに見慣れた紫頭がいた。
なにやってるんだ、この二人……。
「どこら辺からいたの」
「美夜子がさっきの野郎に捕まったところから♡」
「助けてくれない?!」
「俺は助けようとしたぞ!でも、兄ちゃんが美夜子の表情死んだ顔が見たいって言うから!」
「蘭ちゃん!」
「ごめーん」
思ってないでしょ!
しかし、ジャイアンに反省を促すのは難しい。
毎回、私が許すことになる。
二人が席移動をしてきて、隣りに座った竜胆くんが私の食べかけの食事を自分の前に移動させた。
「俺、カルボナーラとサラダとミネストローネにする。美夜子は?」
「和風たらこパスタとコーンポタージュを」
注文を終え、見知った顔があるということに安心する。
安心した私の視界に、ニヤけた笑みを浮かべるジャイアンが入ってきた。
なんだろう、と思っていたら「美夜子ー。俺も美夜子のこと愛してんぞ♡」と甘ったるい声で言ってきた。
聞かれていたんだった、とさっきのセリフを思い出して顔が赤くなる。
「いや、あれは、その場の勢いで……。蘭ちゃんに愛されているとは思うけど、そういう恋愛的な意味合いではなく、ペット的な意味合いで愛してくれてるのは理解してるから……」
あわあわと弁解する私に、ジャイアンは「はぁー?」と機嫌の悪いときにだす声をするから、久しぶりに震えた。
思わず、「ごめん!」と反射的に謝ろうとしたら、身を乗り出してきたジャイアンに胸ぐらを掴まれ、引き寄せられた。
唇と唇が触れるなんて可愛いものではない。
食べられるんじゃないかと思うようなキスに、頭が真っ白になった。
リップ音と共に解放され、真っ白になりながら席に座らせられた私の頬を、竜胆くんが軽く叩く。
「いや、兄ちゃん。あんな本気のキスするなよ」
「本気で愛してるから、仕方がないだろ」
「美夜子、戻ってこい」
ぺしぺし、と叩かれながら「ナニガアッタ……?」と聞くと、竜胆くんは「うーん、つまりな」と説明をしてくれる。
「兄ちゃんは、どうでもいい相手に好きも愛してるもキスもしねえってこと」
「ツマリ……?」
「……兄ちゃん!そこはちゃんと自分で言えって!」
「ふーんだ。それより、竜胆。いまなら、美夜子の意識飛んでるから、キスしても怒らないんじゃね?」
「はあ?!」
「俺、竜胆なら許すから」
「そ……!そういう問題じゃねえだろうが!」
「いいのかー?こんなチャンスねえぞー?」
隣を見ると、竜胆くんが申し訳なさそうな顔をしている。
「ごめん、美夜子」
そう言うと、軽く触れる程度のキスをしてきた。
蘭ちゃんのキスで十分キャパシティオーバーだったのに、竜胆くんにまでされて意識どころか記憶まで持っていかれた私は、その日の夜の記憶がすっぽ抜けた状態になってしまった。
昨日、なにかあった?よく、覚えてないなあ……。
それも、辞めた会社の近くにあった、そこそこ値段はするがハチャメチャ美味しいパスタ屋さんの和風たらこパスタが……!
思い立ったら吉日、と着替えて久しぶりに電車に乗る。
ああ、そういえばジャイアンから、出かけるときはどこに行くか連絡しろ、て言われていたな。
電車に揺られながら、ジャイアンに店の場所と名前を送ると、すぐに「わかった、たくさん食べてこいよ」と返ってきた。
いや、食べ放題の店ではないんだな。
しかし、たくさん食べるぞ。
席に通され、たらこパスタにくわえスープやパン、飲み物やサラダを選んでいると、「やっぱり、赤坂だ!」と声をかけられた。
「久しぶりだな!」
「え、あ、はい……」
ここでおさらいだが、私は人の顔と名前を覚えるのが大変苦手である。更に新情報としては、この先、付き合いがなくなるであろうと判断した相手の顔と名前を、すぐ忘れる。
つまり、この人が誰か思い出せない。
これだけフレンドリーに話しかけてきたことと、会社近くということは、元同僚なのだろうが、誰だ本当に。
元同僚は私に許可を取ることなく相席をし、その時点で「絶対に相容れない」と思ってしまった。
ジャイアンですら、「相席いいかー?」くらいは聞く。聞くだけで勝手に座るが、聞くだけまだましだし、そこには私とジャイアンの関係性があるから許されるのであって、よくも知らない他人がやっていいことではない。
席移動をしたいが、さすがに失礼だよなぁ……。
しかし、食事は一人でゆっくりとりたいし、この人が帰ったら頼もう。
「俺、ポモドーロにするけど、赤坂はなににする?」
「あー……。サラダと白ワインを……」
「ちゃんと食べないとダメだぞ?すみません、ポモドーロ二つとサラダと白ワインください」
こいつ……。と思いながら、別の日にまた来ようと決めた。
運ばれてきた食事とワインに手を付ける。
「再会に乾杯、なんてな」
やかましいわ。
特に私から話すこともなく、相手からのマシンガントークを適当に相槌打っておく。
はあ、ジャイアンならこんなに喋らないんだけどな。
適度に会話は挟むけど、こんなに煩くない。
そして、早食いなんて絶対にしない。
食事は味わえ。
「はは、赤坂食べるの遅いな」
「そうですか」
「なんか暗いな?嫌なことあったか?」
オマエの所為だ、気がつけ。
「いえ、なにもないですよ」
「無理しなくていい。俺は、いまも昔もオマエの味方だ」
だから、誰なんだよオマエは〜。
段々とイライラする私に気がつかない元同僚は、「もしかして、結婚生活上手くいってないとか?」と、本当に仲が良くないと踏み入れない質問をしてきた。
上手くいってなくても、オマエには相談せんわ〜。
「このあと、飲みに行かないか?そこで、いっぱい愚痴聞いてやるからさ」
「いえ、食べたら帰るので」
「口にした方が楽になるぞ?……俺さ、赤坂の力になりたいんだ。その……まだ、オマエのこと好きだからさ……」
予想外の方向から来たぶっ飛ばすぞ案件な言葉に、ジャイアンと竜胆くん仕込のガン飛ばしがでそうになったが、必死で耐えた。
なんだ?それを言ってどうするってんだ?私ならなびくとでも思ったか?
「赤坂、もしいまの生活が辛いなら、俺と……」
そこまで聞いてから、プチリ、と堪忍袋の緒が切れて気がついたら水をかけていた。
「なめんなよ。こちとら、そんな尻軽じゃねえぞ。オマエじゃ、うちの旦那にはなに一つ勝てねえよ。金も愛も一緒にいた時間も。オマエと浮気する程度の愛情しかなかったら、いくら金積まれても結婚なんかせんわ。そりゃ、金があったから結婚はしたけど、一生一緒にいようって思える程度の覚悟と愛は持ち合わせてるんだよ。あと、勝手に相席すんな、食事を頼むな、食事中に喋るな、食事は味わえ。わかったら、私の前から消え失せろクズが」
あ〜、もうこの店来られないな〜。と考えていたら、顔を真っ赤にした男が、ワイングラスを構えた。
お、オマエ〜!こっちは水で我慢したのに、オマエはワインかけるんか〜い!と悠長に構えていたら、男の手を誰かが掴んだ。
「俺の嫁さんにワインかけようとするなんて、いい度胸じゃん」
「蘭ちゃん、なんでいるの?」
「美夜子とご飯食べるため。美夜子が失せろ、つったときに帰っとくべきだったな。明日から、オマエに居場所はねえ」
なにをするつもりなのか、とは思うが、あまり深くは聞かずにおこう。怖いし。
ジャイアンは無理矢理ワイングラスを置かせると、男を引きずって店から投げ出した。
なにを言ったのか知らないが、窓の向こうを通った男の顔が酷く青かった気がする。
「腹減ったな、美夜子。ほとんど手つけてねえみたいだし、頼みなおすか?」
「いや、残せないし」
「大丈夫、大丈夫。竜胆が食べてくれるから。な、竜胆?」
「兄ちゃん、なんで言うんだよ!気つかって出ていかなかったのに!」
少し離れたボックス席に、たしかに見慣れた紫頭がいた。
なにやってるんだ、この二人……。
「どこら辺からいたの」
「美夜子がさっきの野郎に捕まったところから♡」
「助けてくれない?!」
「俺は助けようとしたぞ!でも、兄ちゃんが美夜子の表情死んだ顔が見たいって言うから!」
「蘭ちゃん!」
「ごめーん」
思ってないでしょ!
しかし、ジャイアンに反省を促すのは難しい。
毎回、私が許すことになる。
二人が席移動をしてきて、隣りに座った竜胆くんが私の食べかけの食事を自分の前に移動させた。
「俺、カルボナーラとサラダとミネストローネにする。美夜子は?」
「和風たらこパスタとコーンポタージュを」
注文を終え、見知った顔があるということに安心する。
安心した私の視界に、ニヤけた笑みを浮かべるジャイアンが入ってきた。
なんだろう、と思っていたら「美夜子ー。俺も美夜子のこと愛してんぞ♡」と甘ったるい声で言ってきた。
聞かれていたんだった、とさっきのセリフを思い出して顔が赤くなる。
「いや、あれは、その場の勢いで……。蘭ちゃんに愛されているとは思うけど、そういう恋愛的な意味合いではなく、ペット的な意味合いで愛してくれてるのは理解してるから……」
あわあわと弁解する私に、ジャイアンは「はぁー?」と機嫌の悪いときにだす声をするから、久しぶりに震えた。
思わず、「ごめん!」と反射的に謝ろうとしたら、身を乗り出してきたジャイアンに胸ぐらを掴まれ、引き寄せられた。
唇と唇が触れるなんて可愛いものではない。
食べられるんじゃないかと思うようなキスに、頭が真っ白になった。
リップ音と共に解放され、真っ白になりながら席に座らせられた私の頬を、竜胆くんが軽く叩く。
「いや、兄ちゃん。あんな本気のキスするなよ」
「本気で愛してるから、仕方がないだろ」
「美夜子、戻ってこい」
ぺしぺし、と叩かれながら「ナニガアッタ……?」と聞くと、竜胆くんは「うーん、つまりな」と説明をしてくれる。
「兄ちゃんは、どうでもいい相手に好きも愛してるもキスもしねえってこと」
「ツマリ……?」
「……兄ちゃん!そこはちゃんと自分で言えって!」
「ふーんだ。それより、竜胆。いまなら、美夜子の意識飛んでるから、キスしても怒らないんじゃね?」
「はあ?!」
「俺、竜胆なら許すから」
「そ……!そういう問題じゃねえだろうが!」
「いいのかー?こんなチャンスねえぞー?」
隣を見ると、竜胆くんが申し訳なさそうな顔をしている。
「ごめん、美夜子」
そう言うと、軽く触れる程度のキスをしてきた。
蘭ちゃんのキスで十分キャパシティオーバーだったのに、竜胆くんにまでされて意識どころか記憶まで持っていかれた私は、その日の夜の記憶がすっぽ抜けた状態になってしまった。
昨日、なにかあった?よく、覚えてないなあ……。