じゃじゃ馬淑女
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「今年は行っていいの!」
喜ぶ私に、父さんが「テストの点数もよかったしね」と言うから、くるくると回ってしまう。
去年は受験があるからと、母さんと日本に居残りだったが、今年はお許しが出た!
なんのお許しって、お祖父様のいるイタリアへ!
まあ、目当てはお祖父様ではないのだけれども。これを言うと、お祖父様が泣いてしまうから言わないけれど。
去年は地獄だった……。
名門のお嬢様学校に入る為に、母さんのスパルタ授業を受けたのだから……。
苦難を乗り越え、私はついに夏休みイタリア旅行を手にしたのだ!
「待っていて、私の王子様!」
意気揚々と別に見せるわけでもないのに、可愛い上下セットの下着を選んでしまうのは、乙女だからだろう。
いや〜、そういうことにならないとは、なきにしもあらずじゃ〜ん?
浮足立つ私に、「絶対に相手にされませんよ」と兄さんが言うから、思わず威嚇してしまった。
イタリアに着くと、真っ先に目的の人物を探す。
いた!
「ディーノくん!」
「よう、蛍!また綺麗になったな!」
キャリーを置いてディーノくんに抱きつく私を、ディーノくんは軽く受け止めてくれる。
後ろで母さんが「はしたないわよ!」と怒っているが、そんなことは知ったことじゃないんだな〜!恋する乙女は暴走機関車!
「会えなくて寂しかったです!」
「毎晩、連絡してるだろ?」
「ちゃんと会って話したいんです!他の女にうつつを抜かしていませんか!」
私の質問に答えたのは、ディーノくんではなく兄さんで、「彼女でもないでしょ、お前は」と言うから威嚇したら「盛るんじゃありませんよ、雌猫」と言われた。
この野郎……。
「すみません、ディーノ。うちの雌猫が不躾で」
「そう言うなって、晃。俺は蛍のこと、結構好きだしな」
「私もディーノくん好き〜!」
「じゃあ、五年後結婚しような」
する〜!と言う私と、「あまり軽率な約束をしないでください」と兄さんが苦言を呈するが、もっと軽率に約束して〜!
じゃれ合う私たちに、父さんが「今日はお祖父様から大切な話があるから、もう行くよ」と声をかけ、ディーノくんと一緒にお祖父様の家へと向かった。
お祖父様の家はお屋敷と言ってもおかしくないくらい大きく、いつもスーツ姿の警備員さんがいる。
私の荷物を持ってくれているディーノくんについている、ロマーリオさんというおじ様と同じ雰囲気がある。
荷物を部屋に置いて、お祖父様とお祖母様にご挨拶。
「今日は二人に大切な話があってね」
その言葉に「はい、お祖父様」と声が揃う私と兄さん。
「まず、晃。お前には、正式に私の後を継いでもらうことにした」
「承諾いただき、ありがとうございます」
お祖父様の後ってなんだろう、と内心首を傾げる私を見て、兄さんが「蛍にも話してはどうでしょうか」と言う。
「そのつもりだ。蛍、いいかい。うちはね、マフィアなんだよ」
「……マフィン?」
すっとぼけると、兄さんが「マフィア、ヤクザですよ」と説明してくれるが、わかってるわい。
しかし、突然、うちはマフィアと言われて理解できるか。
しかも、兄がその後継者だなんて理解が追いつくか。
「え、いいの、兄さん?ヤクザだよ?」
混乱する私に、兄さんは満面の笑みで「非現実的なことは大好きですよ」と言ってのける。
そうだった、こういう人だ。好奇心の赴くまま、楽しいと思うことを責任持ってやるのが、我が兄である。
「蛍にも大切な話があるんだ」
「え、これ以上の情報を処理しろと」
身内がマフィアだと知って大混乱な私に、お祖父様は「とあるファミリーのボスと婚約してほしい」と言われ、白目をむくかと思った。
婚約?私が?まだ今年で十六ですが?
私の混乱など無視し、お祖父様は「入ってきなさい」と言う。
どんな男だ、ディーノくんよりも劣ると難癖つけてやる、と身構えていたら入ってきたのはそのディーノくん本人だった。
「ディーノくん……?」
情報処理が追いつかず首を傾げる私に代わり、兄さんが「ディーノと蛍が婚約するんですか?」とお祖父様に聞いた。
「どうしてまた」
「我がイルミナーレファミリーとキャバッローネファミリーの結束を強める為だ」
「政略結婚ですか?」
「蛍もディーノには惚れていると聞いたが?」
兄さんはお祖父様を睨んだ後、ディーノくんに視線を移し「あなたは、それで蛍のことをどう思っているんですか?」と睨みながら聞いた。
ディーノくんはそんな視線を物ともせず、「ちゃんと好きだから、受けたんだろ」とさらっと言う。
「なら、僕はなにも文句はありませんが、蛍はどうですか?」
「へ?」
完全に情報を整理していて意識が持っていかれていた為に、間の抜けた返事をしてしまった。
どう、とは私がディーノくんと婚約することについてでしょうか。
「あの……その……考えさせてください……」
部屋に戻り、与えられた情報をまとめる。
お祖父様がマフィアのボスで、後継者は兄さんで、ディーノくんもマフィアのボスで、そのディーノくんと婚約する?
話に追いつけず頭を抱えていると、部屋の扉をノックする音がした。
「蛍。いま話せるか?」
「ディーノくん?」
扉を開けると、やはりディーノくんがいた。
部屋に入れると、備え付けの椅子に座ったので、私も向かいに座る。
「悪いな、突然色々と」
「ううん、私こそすぐに理解できなくてごめん」
「はは、いきなりマフィアとか婚約とか言われても、わからないよな」
「わからない……」
兄さんがあんなノリノリなのもわからない。
「マフィアな俺は嫌いか?」
「え?」
「いや、蛍なら婚約の話、すぐ受けてくれると思ったからさ」
困ったように笑うディーノくんに、私はそんなことはない、と言うことができなかった。
偏見かも知れないが、やはりマフィアと言われて怖くないかと聞かれると、やはり怖い。
「いいイメージないもんな、マフィアって」
「ご、ごめん……」
見透かされたように言われ、思わず謝る私にディーノくんはいつものように笑い、「しかたないさ」と言ってくれた。
「俺もなかったからさ、マフィアってやつに。だけど、俺は誰かを無意味に傷つけたりしない。仲間を、地元の連中を、蛍のことを守る為に戦う。愛した連中を、全部守るのが俺のやり方だ」
だから考えてくれないか、と私の手を握るディーノくんの表情は、変わらない優しさがあった。
マフィアだなんだと混乱して意識の外だったが、そうだ。私はディーノくんのこの優しさと真摯さが好きなんだ。
マフィアであろうと、この人は変わりなく優しく真摯な人なのだろう。
「うん……、私、ディーノくんが好きだ」
「なら」
「いやでも婚約とかは話が飛び過ぎだって!もっといい女と出会ったらどうするのディーノくん!?私まだ十六の小娘だよ?!後悔するよ?!」
早口で考え直させようとする私に、ディーノくんは驚いた顔をしたが、すぐになんだか色っぽい表情で私の頬に手を添える。
「俺はお前のことを小娘だとは思ってないんだけどな」
「ディーノくん?」
ゆっくりと近づいてくるディーノくんの綺麗な目から視線がそらせない。
荷造りしているときに、そういうことにならないとは、なきにしもあらずじゃ〜ん?とか言っていた馬鹿はどこの誰だ、私だ。
唇が触れる寸前でディーノくんは止まり、「嫌ならちゃんと拒否しないと、簡単に奪っちまうからな」と言って、頬にキスをした。
「まあ、お前がそこまで言うなら二十歳まで待つけど、俺は他の女になびくつもりもないし、お前を他の男にわたす気もな……どうした?」
背中を丸める私の顔をディーノくんは覗き込み、驚いた声をあげた。
「血?!」
「ディーノくん、ティッシュとって。鼻血が止まらない」
小娘には刺激が強すぎます。
喜ぶ私に、父さんが「テストの点数もよかったしね」と言うから、くるくると回ってしまう。
去年は受験があるからと、母さんと日本に居残りだったが、今年はお許しが出た!
なんのお許しって、お祖父様のいるイタリアへ!
まあ、目当てはお祖父様ではないのだけれども。これを言うと、お祖父様が泣いてしまうから言わないけれど。
去年は地獄だった……。
名門のお嬢様学校に入る為に、母さんのスパルタ授業を受けたのだから……。
苦難を乗り越え、私はついに夏休みイタリア旅行を手にしたのだ!
「待っていて、私の王子様!」
意気揚々と別に見せるわけでもないのに、可愛い上下セットの下着を選んでしまうのは、乙女だからだろう。
いや〜、そういうことにならないとは、なきにしもあらずじゃ〜ん?
浮足立つ私に、「絶対に相手にされませんよ」と兄さんが言うから、思わず威嚇してしまった。
イタリアに着くと、真っ先に目的の人物を探す。
いた!
「ディーノくん!」
「よう、蛍!また綺麗になったな!」
キャリーを置いてディーノくんに抱きつく私を、ディーノくんは軽く受け止めてくれる。
後ろで母さんが「はしたないわよ!」と怒っているが、そんなことは知ったことじゃないんだな〜!恋する乙女は暴走機関車!
「会えなくて寂しかったです!」
「毎晩、連絡してるだろ?」
「ちゃんと会って話したいんです!他の女にうつつを抜かしていませんか!」
私の質問に答えたのは、ディーノくんではなく兄さんで、「彼女でもないでしょ、お前は」と言うから威嚇したら「盛るんじゃありませんよ、雌猫」と言われた。
この野郎……。
「すみません、ディーノ。うちの雌猫が不躾で」
「そう言うなって、晃。俺は蛍のこと、結構好きだしな」
「私もディーノくん好き〜!」
「じゃあ、五年後結婚しような」
する〜!と言う私と、「あまり軽率な約束をしないでください」と兄さんが苦言を呈するが、もっと軽率に約束して〜!
じゃれ合う私たちに、父さんが「今日はお祖父様から大切な話があるから、もう行くよ」と声をかけ、ディーノくんと一緒にお祖父様の家へと向かった。
お祖父様の家はお屋敷と言ってもおかしくないくらい大きく、いつもスーツ姿の警備員さんがいる。
私の荷物を持ってくれているディーノくんについている、ロマーリオさんというおじ様と同じ雰囲気がある。
荷物を部屋に置いて、お祖父様とお祖母様にご挨拶。
「今日は二人に大切な話があってね」
その言葉に「はい、お祖父様」と声が揃う私と兄さん。
「まず、晃。お前には、正式に私の後を継いでもらうことにした」
「承諾いただき、ありがとうございます」
お祖父様の後ってなんだろう、と内心首を傾げる私を見て、兄さんが「蛍にも話してはどうでしょうか」と言う。
「そのつもりだ。蛍、いいかい。うちはね、マフィアなんだよ」
「……マフィン?」
すっとぼけると、兄さんが「マフィア、ヤクザですよ」と説明してくれるが、わかってるわい。
しかし、突然、うちはマフィアと言われて理解できるか。
しかも、兄がその後継者だなんて理解が追いつくか。
「え、いいの、兄さん?ヤクザだよ?」
混乱する私に、兄さんは満面の笑みで「非現実的なことは大好きですよ」と言ってのける。
そうだった、こういう人だ。好奇心の赴くまま、楽しいと思うことを責任持ってやるのが、我が兄である。
「蛍にも大切な話があるんだ」
「え、これ以上の情報を処理しろと」
身内がマフィアだと知って大混乱な私に、お祖父様は「とあるファミリーのボスと婚約してほしい」と言われ、白目をむくかと思った。
婚約?私が?まだ今年で十六ですが?
私の混乱など無視し、お祖父様は「入ってきなさい」と言う。
どんな男だ、ディーノくんよりも劣ると難癖つけてやる、と身構えていたら入ってきたのはそのディーノくん本人だった。
「ディーノくん……?」
情報処理が追いつかず首を傾げる私に代わり、兄さんが「ディーノと蛍が婚約するんですか?」とお祖父様に聞いた。
「どうしてまた」
「我がイルミナーレファミリーとキャバッローネファミリーの結束を強める為だ」
「政略結婚ですか?」
「蛍もディーノには惚れていると聞いたが?」
兄さんはお祖父様を睨んだ後、ディーノくんに視線を移し「あなたは、それで蛍のことをどう思っているんですか?」と睨みながら聞いた。
ディーノくんはそんな視線を物ともせず、「ちゃんと好きだから、受けたんだろ」とさらっと言う。
「なら、僕はなにも文句はありませんが、蛍はどうですか?」
「へ?」
完全に情報を整理していて意識が持っていかれていた為に、間の抜けた返事をしてしまった。
どう、とは私がディーノくんと婚約することについてでしょうか。
「あの……その……考えさせてください……」
部屋に戻り、与えられた情報をまとめる。
お祖父様がマフィアのボスで、後継者は兄さんで、ディーノくんもマフィアのボスで、そのディーノくんと婚約する?
話に追いつけず頭を抱えていると、部屋の扉をノックする音がした。
「蛍。いま話せるか?」
「ディーノくん?」
扉を開けると、やはりディーノくんがいた。
部屋に入れると、備え付けの椅子に座ったので、私も向かいに座る。
「悪いな、突然色々と」
「ううん、私こそすぐに理解できなくてごめん」
「はは、いきなりマフィアとか婚約とか言われても、わからないよな」
「わからない……」
兄さんがあんなノリノリなのもわからない。
「マフィアな俺は嫌いか?」
「え?」
「いや、蛍なら婚約の話、すぐ受けてくれると思ったからさ」
困ったように笑うディーノくんに、私はそんなことはない、と言うことができなかった。
偏見かも知れないが、やはりマフィアと言われて怖くないかと聞かれると、やはり怖い。
「いいイメージないもんな、マフィアって」
「ご、ごめん……」
見透かされたように言われ、思わず謝る私にディーノくんはいつものように笑い、「しかたないさ」と言ってくれた。
「俺もなかったからさ、マフィアってやつに。だけど、俺は誰かを無意味に傷つけたりしない。仲間を、地元の連中を、蛍のことを守る為に戦う。愛した連中を、全部守るのが俺のやり方だ」
だから考えてくれないか、と私の手を握るディーノくんの表情は、変わらない優しさがあった。
マフィアだなんだと混乱して意識の外だったが、そうだ。私はディーノくんのこの優しさと真摯さが好きなんだ。
マフィアであろうと、この人は変わりなく優しく真摯な人なのだろう。
「うん……、私、ディーノくんが好きだ」
「なら」
「いやでも婚約とかは話が飛び過ぎだって!もっといい女と出会ったらどうするのディーノくん!?私まだ十六の小娘だよ?!後悔するよ?!」
早口で考え直させようとする私に、ディーノくんは驚いた顔をしたが、すぐになんだか色っぽい表情で私の頬に手を添える。
「俺はお前のことを小娘だとは思ってないんだけどな」
「ディーノくん?」
ゆっくりと近づいてくるディーノくんの綺麗な目から視線がそらせない。
荷造りしているときに、そういうことにならないとは、なきにしもあらずじゃ〜ん?とか言っていた馬鹿はどこの誰だ、私だ。
唇が触れる寸前でディーノくんは止まり、「嫌ならちゃんと拒否しないと、簡単に奪っちまうからな」と言って、頬にキスをした。
「まあ、お前がそこまで言うなら二十歳まで待つけど、俺は他の女になびくつもりもないし、お前を他の男にわたす気もな……どうした?」
背中を丸める私の顔をディーノくんは覗き込み、驚いた声をあげた。
「血?!」
「ディーノくん、ティッシュとって。鼻血が止まらない」
小娘には刺激が強すぎます。
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