60分一本勝負
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お題「薬指」
「そろそろ作ってもいいんじゃないかな」
「なにが?」
恭弥くんは度々、主語が抜ける時がある。
こちらが理解しようとする前に話を進めてしまうので、わからないと思ったらすぐに聞かねばならない。
恭弥くんとしては成立するはずの会話だと思っているので、小首を傾げて「婚約指輪をだけど?」とさも当然とばかりに言う。
んん〜?
「婚約してすらいないけど……」
「したよ」
「いつ」
「キミから小学校四年生の誕生日に、誕生日プレゼントは僕との婚約がいいって言ったんでしょ」
忘れたの?と呆れられたが、忘れたに決まっているし、そんな子供の戯言を本気にするとは思わないじゃないですか。
恭弥くんは、「なら、誓約書持ってきてあげる」と言って席を立ち、どこかに行ってしまった。
誓約書……?小四に誓約書を書かせたの?しかし、あの雲雀恭弥だ。やることは突き抜けている。
ドキドキと冷や汗をかきながら待っていると、恭弥くんは数枚の紙を持ってきて、私にわたしてきた。
そこには細かいことが小難しく書かれていた。なんとか読んでわかったのは、「婚約破棄した場合は、雲雀恭弥に一生絶対服従、雲雀恭弥の許可なく結婚はしない、慰謝料五億」だった。
「いや、金額が馬鹿!」
「キミはそれに納得してサインしたよ」
僕が懇切丁寧噛み砕いて説明した内容を聞いた上なんだから、文句は言わせないよ。と言うが、小四の子供が説明受けて理解できる内容じゃなかろうて。
し、しかし、未成年がこういう書類を書くには良心のサインも必要なのでは……。と言う私に、恭弥くんは私のサインの下を指した。
そこには、たしかに父と母のサインがあった。
両親!
「彼らは読まずに、迷わずサインしたけどね」
「権力に屈した!」
たしかに、恭弥くんは並盛最恐の不良で権力の幅も利かせているけれど、こんな簡単に娘を売り渡す親がいるか!
「恭弥くん、なにを思ってこんなものを書かせたの……」
「僕はね、キミがとても可愛いんだ」
なんの話だろう、と思ったが恭弥くんが関係ない話をするとは思えず、とりあえず大人しく聞くことにした。
「ずっと、手元に置いておきたい。けど、キミもいつかは恋をして僕の元から離れていくだろ。それがね……許せなかったんだ」
「あ、ダメだ。怖い話だ、これ」
「そんなときに、キミから婚約してほしいだなんて言われて、その手があったかと思ったよ」
僕が結婚相手になれば、日向子はずっと僕の側にいる。
なにか、聞いてはいけない系の怪談話を聞いているような気持ちになる。
「そ……そういう理由で結婚はどうかと……」
「どうして?結婚って、一緒にいたいからするんでしょ?たしかに、僕の愛情は庇護欲からくるものだけど、愛情に変わりはないよ。結婚する理由には十分でしょ?」
理に適っているような気がするが、なんだろう。この、人の心を上辺だけ理解している人外と会話しているような気持ちは。
「それに、キミが言ったんじゃないか。僕が他の女を好きになるのは嫌だって。ずっと僕といたい、て」
ここで「覚えていない」と言ったところで、恭弥くんは「言った」と押し通すだろうし、なんならなにかしらの証拠を持ってくる気がする。
「わかったら、明日、婚約指輪買いに行こうね」
諭すような声色が、より一層恐怖を煽った。
一体、私はなにに庇護されているのだろうか。
私の右手薬指の付け根を触る恭弥くんに、「でもアクセサリーは校則違反だよ」と言うと、「なら、小袋を作ってあげるから、それに入れて首から下げな。それなら、お守りだから」と言った。
どう足掻いても、恭弥くんは私を離すつもりはないらしい。
「私はさ、恭弥くんに憧れてる。敬愛してるけど、これは恋愛対象としてではないんだよね」
「別にいいよ。僕のだって、恋愛対象としての感情じゃない。日向子が側にいればいい。誰の物にしない為の手段だ。はっきり言って、僕は情欲とか恋愛ってよくわからないからね。必要じゃないから」
「……恭弥くんってさ、人間?」
私の質問に恭弥くんは目を丸くしたが、すぐにいたずらっぽく目を細めて「違うって言ったらどうするんだい」と聞いてきた。
「僕に怯えるの?けど、僕はもうキミを手放さないよ」
「いや、納得するだけで、特にこれまでと変わらないかな」
この人が人間であろうと、人間でなかろうと、雲雀恭弥であることにかわりはないのだ。
そして、私がこの人から離れることは不可能なのだろう。
しかし、まあ、婚約と言っても形だけで、虫除けのような物だろうと高を括っていた私は、結婚可能になった年の誕生日に、誕生日プレゼントとして婚姻届を渡され、恭弥くんの本気を知ることになるとは、まだ知らない。
「そろそろ作ってもいいんじゃないかな」
「なにが?」
恭弥くんは度々、主語が抜ける時がある。
こちらが理解しようとする前に話を進めてしまうので、わからないと思ったらすぐに聞かねばならない。
恭弥くんとしては成立するはずの会話だと思っているので、小首を傾げて「婚約指輪をだけど?」とさも当然とばかりに言う。
んん〜?
「婚約してすらいないけど……」
「したよ」
「いつ」
「キミから小学校四年生の誕生日に、誕生日プレゼントは僕との婚約がいいって言ったんでしょ」
忘れたの?と呆れられたが、忘れたに決まっているし、そんな子供の戯言を本気にするとは思わないじゃないですか。
恭弥くんは、「なら、誓約書持ってきてあげる」と言って席を立ち、どこかに行ってしまった。
誓約書……?小四に誓約書を書かせたの?しかし、あの雲雀恭弥だ。やることは突き抜けている。
ドキドキと冷や汗をかきながら待っていると、恭弥くんは数枚の紙を持ってきて、私にわたしてきた。
そこには細かいことが小難しく書かれていた。なんとか読んでわかったのは、「婚約破棄した場合は、雲雀恭弥に一生絶対服従、雲雀恭弥の許可なく結婚はしない、慰謝料五億」だった。
「いや、金額が馬鹿!」
「キミはそれに納得してサインしたよ」
僕が懇切丁寧噛み砕いて説明した内容を聞いた上なんだから、文句は言わせないよ。と言うが、小四の子供が説明受けて理解できる内容じゃなかろうて。
し、しかし、未成年がこういう書類を書くには良心のサインも必要なのでは……。と言う私に、恭弥くんは私のサインの下を指した。
そこには、たしかに父と母のサインがあった。
両親!
「彼らは読まずに、迷わずサインしたけどね」
「権力に屈した!」
たしかに、恭弥くんは並盛最恐の不良で権力の幅も利かせているけれど、こんな簡単に娘を売り渡す親がいるか!
「恭弥くん、なにを思ってこんなものを書かせたの……」
「僕はね、キミがとても可愛いんだ」
なんの話だろう、と思ったが恭弥くんが関係ない話をするとは思えず、とりあえず大人しく聞くことにした。
「ずっと、手元に置いておきたい。けど、キミもいつかは恋をして僕の元から離れていくだろ。それがね……許せなかったんだ」
「あ、ダメだ。怖い話だ、これ」
「そんなときに、キミから婚約してほしいだなんて言われて、その手があったかと思ったよ」
僕が結婚相手になれば、日向子はずっと僕の側にいる。
なにか、聞いてはいけない系の怪談話を聞いているような気持ちになる。
「そ……そういう理由で結婚はどうかと……」
「どうして?結婚って、一緒にいたいからするんでしょ?たしかに、僕の愛情は庇護欲からくるものだけど、愛情に変わりはないよ。結婚する理由には十分でしょ?」
理に適っているような気がするが、なんだろう。この、人の心を上辺だけ理解している人外と会話しているような気持ちは。
「それに、キミが言ったんじゃないか。僕が他の女を好きになるのは嫌だって。ずっと僕といたい、て」
ここで「覚えていない」と言ったところで、恭弥くんは「言った」と押し通すだろうし、なんならなにかしらの証拠を持ってくる気がする。
「わかったら、明日、婚約指輪買いに行こうね」
諭すような声色が、より一層恐怖を煽った。
一体、私はなにに庇護されているのだろうか。
私の右手薬指の付け根を触る恭弥くんに、「でもアクセサリーは校則違反だよ」と言うと、「なら、小袋を作ってあげるから、それに入れて首から下げな。それなら、お守りだから」と言った。
どう足掻いても、恭弥くんは私を離すつもりはないらしい。
「私はさ、恭弥くんに憧れてる。敬愛してるけど、これは恋愛対象としてではないんだよね」
「別にいいよ。僕のだって、恋愛対象としての感情じゃない。日向子が側にいればいい。誰の物にしない為の手段だ。はっきり言って、僕は情欲とか恋愛ってよくわからないからね。必要じゃないから」
「……恭弥くんってさ、人間?」
私の質問に恭弥くんは目を丸くしたが、すぐにいたずらっぽく目を細めて「違うって言ったらどうするんだい」と聞いてきた。
「僕に怯えるの?けど、僕はもうキミを手放さないよ」
「いや、納得するだけで、特にこれまでと変わらないかな」
この人が人間であろうと、人間でなかろうと、雲雀恭弥であることにかわりはないのだ。
そして、私がこの人から離れることは不可能なのだろう。
しかし、まあ、婚約と言っても形だけで、虫除けのような物だろうと高を括っていた私は、結婚可能になった年の誕生日に、誕生日プレゼントとして婚姻届を渡され、恭弥くんの本気を知ることになるとは、まだ知らない。