60分一本勝負
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お題「ひとくち」
私は割と大雑把なところがある。
両親が共働きなのもあり、料理は作らず基本的に出来合いの物やレンチンが多い。お菓子に至っては、分量を量ったり、時間を計るのを横着し、失敗する。後片付けも適当にするので、チョコレートを使ったあとは大抵つまらせる。
そんな私が一番嫌いな授業が家庭科だ。
一人一品、なにかしら作るこの授業で、私はどういうわけか恭弥先輩から直々に、作って持ってくるように言われた。
その日作るのはマフィンだった。
種を作るのは簡単だった。入れて混ぜるだけ。ここからカップへ均等に入れていくわけだが、まあ、こんなもんだろで入れたら均等にならなかった。
なんとか調整し焼いたはいいが、これ本当に火、通ってる……?わからない、なにもわからない。一応、何個かは再加熱したが、それは焦げた。もうダメだ。
諦めて恭弥先輩のところに持っていくと、嬉しそうにしながら「いらっしゃい、待ってたよ」と迎え入れてくれた。
「待ってて、お茶淹れるから」
「わ、私が淹れる!」
「僕がやるよ。キミ、こぼしそうだし」
うっ、確かに……。と言われるままソファーに座って待っていると、紅茶が出てきた。
「恭弥先輩のことだから、緑茶が出てくると思った」
「緑茶の方が好きだけど、マフィンだって聞いてたからね。紅茶の方が合うと思ったから用意しておいた」
そんなに楽しみにしていてもらったのに、こんな出来栄えで申し訳ない。
おずおずと、残念な見栄えなマフィンを差し出すと、「見事に焦げさせたね」と愉快そうに言った。
「あ、あの食べなくてもいいからね?」
「食べるよ。僕の可愛いカルガモの赤ちゃんががんばって作ったんだから」
いただきます、と焦げていない物を一口食べると、少し笑いながら「ちょっと生焼けだったね」と言われた。
やはり、生焼けだったか。
「いいよ、食べなくて」
「全部食べるよ」
そう言って、恭弥先輩は本当にすべて食べてくれた。優しい……。
「お腹壊したら言ってね。責任持って、看病しに行くから」
「そう言われると、なにもなくても具合が悪いって言いたくなるね」
「心配になるから、具合が悪いときだけにして!」
少し怒ると、恭弥先輩は「わかったよ」と小さく笑いながら了承した。
「それにしても、相変わらず料理が苦手だね。キミは」
「わかってて、持ってこさせたの?」
「キミががんばって作った物が食べたかったから」
がんばって作っても、あのレベルです。としょぼくれる私に、恭弥先輩は「料理教えてあげようか?」と驚愕の提案をしてきた。
「きょ、恭弥先輩。料理できるんですか……?!」
「できるよ。自分が食べたい料理を自分好みに作りたいなら、当たり前でしょ?」
さも当然といった言い方だが、私の舌はジャンクフードで慣れきってしまっているので、好みの味は大体ジャンクフードだ。
などとは恥ずかしくて言えず、苦笑いをしながら「そうだね」と曖昧に答えた。
「キミさえよければ、うちに料理習いに来てそのまま食べて帰れば」
「いいの?」
「いいよ。また昔みたいに、一緒に食事をしよう」
その誘いに嬉しくなり、表情が緩んだ。
一人で食事するのには慣れているが、恭弥先輩と食べる食事が一番好きだ。
「じゃあ、習いに行きます」
「いいよ、おいで。ああ、でも味見は一口までだからね。キミ、味見って言って家政婦が作った料理食べすぎて怒られてたでしょ」
一体いつの話をしているのだと、怒っても、恭弥先輩は懐かしみ楽しそうに笑うだけだった。
「第一回はなににしようか」
「はい、はい!私、肉じゃが作れるようになりたいです!」
「いいよ。肉じゃがなら、つまみ食いもし難いしね」
「しないってば!」
私は割と大雑把なところがある。
両親が共働きなのもあり、料理は作らず基本的に出来合いの物やレンチンが多い。お菓子に至っては、分量を量ったり、時間を計るのを横着し、失敗する。後片付けも適当にするので、チョコレートを使ったあとは大抵つまらせる。
そんな私が一番嫌いな授業が家庭科だ。
一人一品、なにかしら作るこの授業で、私はどういうわけか恭弥先輩から直々に、作って持ってくるように言われた。
その日作るのはマフィンだった。
種を作るのは簡単だった。入れて混ぜるだけ。ここからカップへ均等に入れていくわけだが、まあ、こんなもんだろで入れたら均等にならなかった。
なんとか調整し焼いたはいいが、これ本当に火、通ってる……?わからない、なにもわからない。一応、何個かは再加熱したが、それは焦げた。もうダメだ。
諦めて恭弥先輩のところに持っていくと、嬉しそうにしながら「いらっしゃい、待ってたよ」と迎え入れてくれた。
「待ってて、お茶淹れるから」
「わ、私が淹れる!」
「僕がやるよ。キミ、こぼしそうだし」
うっ、確かに……。と言われるままソファーに座って待っていると、紅茶が出てきた。
「恭弥先輩のことだから、緑茶が出てくると思った」
「緑茶の方が好きだけど、マフィンだって聞いてたからね。紅茶の方が合うと思ったから用意しておいた」
そんなに楽しみにしていてもらったのに、こんな出来栄えで申し訳ない。
おずおずと、残念な見栄えなマフィンを差し出すと、「見事に焦げさせたね」と愉快そうに言った。
「あ、あの食べなくてもいいからね?」
「食べるよ。僕の可愛いカルガモの赤ちゃんががんばって作ったんだから」
いただきます、と焦げていない物を一口食べると、少し笑いながら「ちょっと生焼けだったね」と言われた。
やはり、生焼けだったか。
「いいよ、食べなくて」
「全部食べるよ」
そう言って、恭弥先輩は本当にすべて食べてくれた。優しい……。
「お腹壊したら言ってね。責任持って、看病しに行くから」
「そう言われると、なにもなくても具合が悪いって言いたくなるね」
「心配になるから、具合が悪いときだけにして!」
少し怒ると、恭弥先輩は「わかったよ」と小さく笑いながら了承した。
「それにしても、相変わらず料理が苦手だね。キミは」
「わかってて、持ってこさせたの?」
「キミががんばって作った物が食べたかったから」
がんばって作っても、あのレベルです。としょぼくれる私に、恭弥先輩は「料理教えてあげようか?」と驚愕の提案をしてきた。
「きょ、恭弥先輩。料理できるんですか……?!」
「できるよ。自分が食べたい料理を自分好みに作りたいなら、当たり前でしょ?」
さも当然といった言い方だが、私の舌はジャンクフードで慣れきってしまっているので、好みの味は大体ジャンクフードだ。
などとは恥ずかしくて言えず、苦笑いをしながら「そうだね」と曖昧に答えた。
「キミさえよければ、うちに料理習いに来てそのまま食べて帰れば」
「いいの?」
「いいよ。また昔みたいに、一緒に食事をしよう」
その誘いに嬉しくなり、表情が緩んだ。
一人で食事するのには慣れているが、恭弥先輩と食べる食事が一番好きだ。
「じゃあ、習いに行きます」
「いいよ、おいで。ああ、でも味見は一口までだからね。キミ、味見って言って家政婦が作った料理食べすぎて怒られてたでしょ」
一体いつの話をしているのだと、怒っても、恭弥先輩は懐かしみ楽しそうに笑うだけだった。
「第一回はなににしようか」
「はい、はい!私、肉じゃが作れるようになりたいです!」
「いいよ。肉じゃがなら、つまみ食いもし難いしね」
「しないってば!」