呼ばれまして忍者ちゃん!
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十年後
「部屋、とれてないんですか?」
「大変、申し訳ありません……」
すまなそうに謝るホテルスタッフ。
予約していたはずの部屋がとれていないという事態に、困ってしまった。
私はどうせ立ったまま仮眠をとれるからいいのだが、恭弥は横になって寝てもらわないと。
「シングルでなくてもいいんです。ダブルルームでも」
「ダブルルームでしたら、一室空いております」
寝られるなら、どの部屋でもいい。
一応、恭弥にダブルルームでもいいか聞いたら、「別に構わないよ」と言われたので、スタッフに一室用意してもらった。
部屋について早々に恭弥があくびをしたので、荷解きをしながら「シャワー浴びて寝ちゃいな」と声をかけたのに、背後をとられた。
「なに」
「……」
私の腹に腕を回しもたれかかってくる恭弥は返事をしない。
「眠いの?」
「うん……」
なら、なおさらさっさとシャワー浴びて寝ちゃいな、と言うも離れようとしない。
「なにかあった?」
そう尋ねると、眠そうな声で「今日、キミと全然話せなかった」と言う。
ああ、今日は情報交換の会食で、会話らしい会話はしなかったな。
「寝るまで話しててあげるから、お風呂」
「んー……」
ダメだ、もうこれは完全に駄々をこねはじめる前兆だ。
なら、もうお風呂は明日でいいから着替えて寝な、と言うと、私を引きずりながらベッドに向かおうとしたので、恭弥の腕から抜け出し距離をとる。
「いま、なにしようとした」
「ベッドに引きずり込もうとした」
正直に答えるな、怒るぞ。
眠いという割には、しゃっきりとした立ち姿でもう一度私を捕まえようとするが、さっき捕まったのはサービスで、こっちが本気で逃げれば絶対に捕まらないのだからな。
逃げ特化の忍を嘗めるなよ。
「恭弥、あのね。草の者としても、今日、警護として来た身としても、一緒に寝るわけにはいかないの」
ただでさえ、ご当主が強引にでも私と恭弥の婚姻を進めようとスキを狙っているのに、同衾したと知られれば、なにもないのに既成事実としてでっち上げられかねない。
そもそも、警護で来ているのに一緒に寝られるか。今日は哲矢もいないんだから。
もっと、自分がそこそこ命を狙われている自覚を持て。
「どうせ奇襲をかけられたところで、僕とキミなら問題ないでしょ」
「そういう問題じゃなくて」
「それに、僕は草の満月と寝たいんじゃなくて、女の満月と寝たいんだよ」
「もっとダメ!」
あ~!そういう情操教育ちゃんとしてこなかったから、好きという感情だけで同衾するのはよくないと理解してないんだよ!
ご当主、息子たちにゲロ甘だったから、も~!
本来なら、房術を習ったくノ一にそういう教育をされて育つはずなのに、「僕は満月以外としない。満月も、僕以外とさせない」と宣言したが故に、私のふわっとした教育の結果がこれか!失敗した!
眠り薬で寝かそうにも、恭弥は基本的に毒を自力でなんとかしてしまう。
恭弥に効く眠り薬は、私にも効く。
明日も早いから、眠いならさっさと寝てほしいのだけれども、どうも私が一緒に寝ると言わない限り、寝る気がなさそうだ。
「……なら、クイズだ。恭弥」
「クイズ?」
「そう、どちらが満月か当てるクイズ」
そう言い、匣兵器から霧の大手裏剣を取り出す。
藍色の靄が部屋を満たし、それが晴れたとき、そこには私が二人いた。
もちろん片方は有幻覚だ。
「こんなの、いつも私を見てる恭弥には簡単だったかなー?」
煽るように言うと、恭弥は注意深く私たちを見てから、右側の私に攻撃をした。
「キミが本物だよ」
本物だと思うなら、攻撃をするな。
「……ざーんねん。こっちはハズレ」
霧散した私に、恭弥が不満そうな顔をしたが、勝負事には素直な恭弥だ。
今回は引いてくれ、大人しくシャワーを浴びに行った。
いやぁ……危なかったな……。本当に当てるとは。
瞬時に、偽物とすり替わったから事なきを得ていたが、間に合わなかったら同衾コースだった。
騙したことは悪いとは思うが、本家と草が婚姻を結ぶことになりました、となったら草一同に命を狙われかねない。
一度、それで父上から切腹を迫られたことがあるのだから。命は惜しい。
恭弥がシャワーから出てくるのと入れ違いでシャワーを軽く浴びて出てきたら、完全に不貞腐れた恭弥が、椅子に座っていた。
「眠いんじゃなかったの」
「キミが出てくるまで待ってあげたんでしょ」
「それはどうも。警護がしやすいよ」
ぶすっ、とした表情でこちらを見る恭弥に、「なに」と聞けば「そんなに僕のことが嫌い?」と聞いてきた。
は?なんで?
「キミはいつだって、本家と草でしか僕らの関係を言ってくれない」
「じゃあ、上司と部下」
そう言うと、一層不機嫌さに磨きがかかった。
「じゃあ、僕が本家でも上司でもなかったら、キミはそこにいなかったの」
「それは恭弥もじゃないの」
私は本家だから恭弥に付き従っているし、恭弥が私に興味を持ったのは私が忍だから。
恭弥が不満を抱いている関係だからこそ、私たちは出会えて、お互いに興味を持てた。
「じゃあ、恭弥は私がどこにでもいる女の子でも、興味を持った?」
「……」
返事がないということは、興味を持たなかったのだろう。
それもそうだ。恭弥は強い生き物が好き。それがただの人間に興味を抱くはずもない。
「これが最善だったんだよ」
私の言葉に、恭弥は俯いた。
「恭弥、これだけは覚えていてほしい。私は道具だけど、恭弥の為の道具だ。恭弥の為に生きて、恭弥の為に死ぬ」
「聞きたくないよ」
「最後まで聞いてよ。……だから、感情なんて持つべきじゃないけど、恭弥のことは好きだよ。恭弥が私を肯定してくれたから、私は恭弥の道具になろうと思ったし、恭弥が好きだって思えた。だから、嫌われてるだなんて思わないでほしい」
貴方の為の私だから、と椅子に置かれた恭弥の手に触れる。
私は忍として育ってしまったから、立場というものを強く考えてしまう。そこから抜け出すには、私は恭弥の道具になる決意を固め過ぎた。
返事のない恭弥の手から離れようとしたら、ゆっくりとした動作で掴まれた。
「もう少し、そこにいて」
「……はい、恭弥」
「部屋、とれてないんですか?」
「大変、申し訳ありません……」
すまなそうに謝るホテルスタッフ。
予約していたはずの部屋がとれていないという事態に、困ってしまった。
私はどうせ立ったまま仮眠をとれるからいいのだが、恭弥は横になって寝てもらわないと。
「シングルでなくてもいいんです。ダブルルームでも」
「ダブルルームでしたら、一室空いております」
寝られるなら、どの部屋でもいい。
一応、恭弥にダブルルームでもいいか聞いたら、「別に構わないよ」と言われたので、スタッフに一室用意してもらった。
部屋について早々に恭弥があくびをしたので、荷解きをしながら「シャワー浴びて寝ちゃいな」と声をかけたのに、背後をとられた。
「なに」
「……」
私の腹に腕を回しもたれかかってくる恭弥は返事をしない。
「眠いの?」
「うん……」
なら、なおさらさっさとシャワー浴びて寝ちゃいな、と言うも離れようとしない。
「なにかあった?」
そう尋ねると、眠そうな声で「今日、キミと全然話せなかった」と言う。
ああ、今日は情報交換の会食で、会話らしい会話はしなかったな。
「寝るまで話しててあげるから、お風呂」
「んー……」
ダメだ、もうこれは完全に駄々をこねはじめる前兆だ。
なら、もうお風呂は明日でいいから着替えて寝な、と言うと、私を引きずりながらベッドに向かおうとしたので、恭弥の腕から抜け出し距離をとる。
「いま、なにしようとした」
「ベッドに引きずり込もうとした」
正直に答えるな、怒るぞ。
眠いという割には、しゃっきりとした立ち姿でもう一度私を捕まえようとするが、さっき捕まったのはサービスで、こっちが本気で逃げれば絶対に捕まらないのだからな。
逃げ特化の忍を嘗めるなよ。
「恭弥、あのね。草の者としても、今日、警護として来た身としても、一緒に寝るわけにはいかないの」
ただでさえ、ご当主が強引にでも私と恭弥の婚姻を進めようとスキを狙っているのに、同衾したと知られれば、なにもないのに既成事実としてでっち上げられかねない。
そもそも、警護で来ているのに一緒に寝られるか。今日は哲矢もいないんだから。
もっと、自分がそこそこ命を狙われている自覚を持て。
「どうせ奇襲をかけられたところで、僕とキミなら問題ないでしょ」
「そういう問題じゃなくて」
「それに、僕は草の満月と寝たいんじゃなくて、女の満月と寝たいんだよ」
「もっとダメ!」
あ~!そういう情操教育ちゃんとしてこなかったから、好きという感情だけで同衾するのはよくないと理解してないんだよ!
ご当主、息子たちにゲロ甘だったから、も~!
本来なら、房術を習ったくノ一にそういう教育をされて育つはずなのに、「僕は満月以外としない。満月も、僕以外とさせない」と宣言したが故に、私のふわっとした教育の結果がこれか!失敗した!
眠り薬で寝かそうにも、恭弥は基本的に毒を自力でなんとかしてしまう。
恭弥に効く眠り薬は、私にも効く。
明日も早いから、眠いならさっさと寝てほしいのだけれども、どうも私が一緒に寝ると言わない限り、寝る気がなさそうだ。
「……なら、クイズだ。恭弥」
「クイズ?」
「そう、どちらが満月か当てるクイズ」
そう言い、匣兵器から霧の大手裏剣を取り出す。
藍色の靄が部屋を満たし、それが晴れたとき、そこには私が二人いた。
もちろん片方は有幻覚だ。
「こんなの、いつも私を見てる恭弥には簡単だったかなー?」
煽るように言うと、恭弥は注意深く私たちを見てから、右側の私に攻撃をした。
「キミが本物だよ」
本物だと思うなら、攻撃をするな。
「……ざーんねん。こっちはハズレ」
霧散した私に、恭弥が不満そうな顔をしたが、勝負事には素直な恭弥だ。
今回は引いてくれ、大人しくシャワーを浴びに行った。
いやぁ……危なかったな……。本当に当てるとは。
瞬時に、偽物とすり替わったから事なきを得ていたが、間に合わなかったら同衾コースだった。
騙したことは悪いとは思うが、本家と草が婚姻を結ぶことになりました、となったら草一同に命を狙われかねない。
一度、それで父上から切腹を迫られたことがあるのだから。命は惜しい。
恭弥がシャワーから出てくるのと入れ違いでシャワーを軽く浴びて出てきたら、完全に不貞腐れた恭弥が、椅子に座っていた。
「眠いんじゃなかったの」
「キミが出てくるまで待ってあげたんでしょ」
「それはどうも。警護がしやすいよ」
ぶすっ、とした表情でこちらを見る恭弥に、「なに」と聞けば「そんなに僕のことが嫌い?」と聞いてきた。
は?なんで?
「キミはいつだって、本家と草でしか僕らの関係を言ってくれない」
「じゃあ、上司と部下」
そう言うと、一層不機嫌さに磨きがかかった。
「じゃあ、僕が本家でも上司でもなかったら、キミはそこにいなかったの」
「それは恭弥もじゃないの」
私は本家だから恭弥に付き従っているし、恭弥が私に興味を持ったのは私が忍だから。
恭弥が不満を抱いている関係だからこそ、私たちは出会えて、お互いに興味を持てた。
「じゃあ、恭弥は私がどこにでもいる女の子でも、興味を持った?」
「……」
返事がないということは、興味を持たなかったのだろう。
それもそうだ。恭弥は強い生き物が好き。それがただの人間に興味を抱くはずもない。
「これが最善だったんだよ」
私の言葉に、恭弥は俯いた。
「恭弥、これだけは覚えていてほしい。私は道具だけど、恭弥の為の道具だ。恭弥の為に生きて、恭弥の為に死ぬ」
「聞きたくないよ」
「最後まで聞いてよ。……だから、感情なんて持つべきじゃないけど、恭弥のことは好きだよ。恭弥が私を肯定してくれたから、私は恭弥の道具になろうと思ったし、恭弥が好きだって思えた。だから、嫌われてるだなんて思わないでほしい」
貴方の為の私だから、と椅子に置かれた恭弥の手に触れる。
私は忍として育ってしまったから、立場というものを強く考えてしまう。そこから抜け出すには、私は恭弥の道具になる決意を固め過ぎた。
返事のない恭弥の手から離れようとしたら、ゆっくりとした動作で掴まれた。
「もう少し、そこにいて」
「……はい、恭弥」