呼ばれまして忍者ちゃん!
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ツナたち 一年生
主人公 二年生
「……」
なんの変哲もない生徒から、微かに血と硝煙の匂いがした。その生徒からではなく、移り香として。
生徒の名前は沢田綱吉。サボり癖のある生徒で、喧嘩などとは無関係な印象を受ける生徒だった。最近では少々奇行が目立つが、それでも極一般的な生徒と言えよう。
その生徒から、なぜ。
まだ、未確定事項だ。恭弥様の耳に入れる必要のあることかどうか見極めてからではないと。
極秘裏に沢田綱吉の近辺を探っていると、最近になって沢田綱吉が海外の殺し屋と繋がりを持つようになっていることがわかった。
あの平凡な少年が?と半信半疑ではあったが、私が留守にしている間に、応接室が襲撃されたとあっては見逃せなくなった。
恭弥様に危害をくわえるならば報告するまでもなく処分対象だが、忍が勝手に判断するなどあってはならない。
主人が殺れと命じない限り、私は手出しをできない。
「如何なさいますか、恭弥様」
「とりあえず、仕事のスイッチ切って」
「でっ」
頭を引っ叩かれ、仕事のスイッチを無理矢理に切られた。お仕事の話なんだけどな……。
「それで、どうするの。殺れって言ってくれればすぐに殺ってくるけど」
「必要ないよ。沢田とかいう草食動物も、赤ん坊も僕の標的だ。キミは手出ししないで」
「他の殺し屋は?」
「わざわざキミが手出しするような相手じゃない。それより、僕はそんな仕事を頼んだ記憶はないんだけど」
「頼まれてなくても、危険があれば調べるのが忍の性だから」
大切な主に、手出しはさせられないでしょ?と言うと、主従関係大嫌いな恭弥様は口をへの字にして不機嫌を露わにした。
ここでトンファーが出てきたら、さすがに謝らないといけないが、私が心配しての行動だと理解しているからか、トンファーは構えられなかった。
「恭弥が手出しするなって言うなら手出ししないけど、なにかあったときは……。覚えておいて」
「記憶にはとどめておくよ」
とどめておくだけで、聞く気はないな。しかし、言質はとったわけだから、私が手出ししてお叱りを受けたら絶対に言い返そう。
見回りに行ってこいと言われたので、放課後、無用に校舎を歩き回っていると、背後から「ちゃおっす」と声がした。
気配がしなかった……!
振り向くも誰もおらず、「下だぞ」と言われ下を向くと、沢田綱吉に最初に接近し、そして恭弥様が興味を持たれている赤子が銃を構えていた。
「っ!」
容赦なく撃たれた弾丸をクナイで弾き、そのまま赤子へと突き刺すが避けられる。
「やっぱりお前、ヒットマンだな。血と死臭がする」
「鼻がいいな、赤子。これでもにおい消しはしているんだけどね」
「その臭い落とそうと思って落とせる物じゃねえぞ」
「知ってるよ、そんなこと」
恭弥様からは手出しをするなと言われたが、こんな明確な攻撃をされておいて逃がすことはできない。
やはり、ここで仕留めておかねば。
赤子と言えど、恭弥様が一目置く相手。油断はできない。
どう動くかと注意深く伺っていると、赤子は銃をおろし、「いいな、お前。お前もファミリーに入れ」と言ってくる。
「ファミリー?なんの話だ」
「お前にはボンゴレファミリーに入ってもらう」
「話が見えないけど、私は恭弥様以外に仕える気はない」
「安心しろ。そのヒバリも、ファミリーに入るんだぞ」
あの群れを嫌う恭弥様が?ありえない。と鼻で嗤い、とにかく恭弥様の脅威となる存在は何者であれ、排除する。
クナイを構えなおし、赤子の息の根を止めようとした瞬間だった。
「手出しするなって言わなかった、満月」
「恭弥様……!」
驚く私を見てから、恭弥様は赤子に視線をやり「うちの子が失礼したね」と言ったが、失礼したのはそっちの赤子です。
こちとら、視線と視線が合った瞬間に撃たれたんですよ。
「勝負なら、満月じゃなくて僕に声をかけてくれないかな」
「今日は、こいつの力量をはかりに来ただけだ」
「そう、どうだった。うちの子は」
「いい腕だな」
赤子の称賛に、恭弥様は嬉しそうに表情を崩すが、こちとら弾けなかったら確実に脳天を弾丸が通過していたんだぞ。
試すなら、もっと別のところを狙え。
言いたいことは山ほどあるが、恭弥様と対等に話している赤子の方が立場は上。下の者が口出しはできない。ぐぬぬ……。
「こいつもファミリーに誘ったとこだ」
「ふーん。で、なんて?」
「お前がいないと嫌だと」
言ってね~!曲解して伝えるな、ガキ~!
ほらもう、恭弥様めちゃくちゃご機嫌になっちゃったじゃん、も~!
「恭弥、やっぱりこの赤子始末しよう」
「キミじゃ、手も足も出ないよ。赤ん坊、今日は機嫌がいいから見逃してあげる。おいで、満月。ちょっと“遊ぼう”」
遊ぼう、イコール、殺ろう。
なぜ、命を狙われた上に上機嫌な恭弥様(ヤバい)と殺りあわないといけないのか。
上機嫌なときほど、手加減しないし大怪我率が上がる。
ここ最近、遊ぼうと言われてなかったから綺麗な体でいられたが、久しぶりに青痣だらけになるな……。
屋上まで行き、恭弥様と対峙する。
「恭弥~。手加減してよ~?」
「手加減してキミが本気になるならね」
なったら、それこそ奇跡だよ。
仕事と命の瀬戸際以外で本気なんて出したくない。その命の瀬戸際を一番感じるのが、主との殺りとりなのだけれども。
二対の大手裏剣を構え、戦闘の体勢をとる。一歩でも引けば、死ぬと思え。
「行くよ」
翌日、恭弥様が傷だらけで登校する姿が見られるだろう、諸君。楽しみにしてろ。
昔は一方的な暴力に近かったが、昨今、真面目に修業しだしてからは私も恭弥様に怪我を負わせられるようになった。
いや、従者が主人に怪我を負わせるなという話だが、こちらも命がかかっているのでそうは言っていられない。
バレたら、父上と妹の桜が包丁を持って追いかけてくる事態だが、私も恭弥様も家を出ているので、バレる可能性は限りなく低い。
しかし、殺し屋放置するし、その殺し屋に興味は持つし、相変わらず私との殺し合いは楽しむしで、私の立場がない。
本人に、本家であるという意識が薄いのも原因だが、未だ持って私に対しての並々ならない殺意の理由が分からない。
好かれているはずなのに殺されそうって、どういうこと?殺したいくらいI LOVE YOUてか?
よく寝るし寝起きが最悪な癖に、いやに朝は早い恭弥様に合わせて登校すると、丁度、門からバイクが出てくるところだった。長袖のおかげで一見すると無傷のように見える。
なにせ、顔は狙わなかったからね。
送り迎えする、て言っているのに、子供じゃないんだからって言って頑なにバイク通学をする恭弥様にくっついて行く為に、年々私の脚は速くなっていっている。
恐らく、いまなら走って恭弥様から逃走することも叶うだろうが、そんなことしようものなら、翌日あった瞬間に殺される。
逃げる、ダメ絶対。命大事に。
今日も無事に登校したことを見届け、何事もなかったように、地味で気の弱い女子生徒を装い「おはようございます、委員長……」と恭弥様に声をかける。
恭弥様も、あまり私が目立ちたくないという気持ちがあるのを了承してくれているので、深くはツッコまないが、嫌そうな顔はされる。
「あの、お弁当です……」
「……ありがとう」
このように、日々の弛まぬ努力の結果、私は「何故か風紀委員にいる謎の女」という立場を確立し、教室内でもわりと普通に過ごしている。
このまま、中学生活を終わらせたい。忍とは目立ってはならないのだ。
「おい、時風満月って女いるか」
「獄寺くん!」
だというのに、周りの人間が一向に忍ばせてくれないのはどうして。
あれは、転校初日から暴れまわっていた獄寺隼人。それから山本武と沢田綱吉。あまり関わりあいたくないが、どうしたものか……。と悩んでいると、「この子が時風満月よー」と昨日聞いたばかりの高い声がした。
そこには女子の制服を着た赤子が。
獄寺隼人は険しい顔でこちらに歩み寄り、私の胸倉をつかみあげた。フロント布部分のスナップがとれたじゃないか。
「リボーンさんが認めたって実力、見せてもらおうじゃねえか」
「な、なんの話ですか……!私にはさっぱりわかりません!」
「……本当にこいつか?」
信じられない、という反応をする獄寺隼人に乗るように、山本武も沢田綱吉も「普通の子に見える」と口々に言って止めようとするが、獄寺隼人だけは「ふっ飛ばせばわかる!」と言って、爆弾を取り出した。
はあ、もう、これだから暴力で全部片づけようとするやつは……。
改造した足首丈のスカートから煙玉を落とし、教室中の視界が塞がれたところで獄寺隼人の頸動脈を狙って手刀を叩きこむ。
これで落ちない奴はいない。
気絶した獄寺隼人を受け止め、床に寝かせてから、床にしゃがみ込み怯えた生徒のフリをすれば完璧である。
「獄寺くんー?!」
「おい、獄寺!大丈夫か?!」
「な、なにがあったんですか……?」
さも、なにも知りませんという顔をする私。
気絶した獄寺隼人を担いで帰って行く山本武と沢田綱吉を見送る。赤子は気がついたらいなくなっていた。
変なのに目をつけられた、とげんなりしていたら、次の休み時間にまた来襲した獄寺隼人が「ニンジャガール!勝負だ!俺が勝ったらサインしろ!」と今度は謎にウキウキした顔で言った。
「わ、私は地味なだけで、忍者じゃありません!」
「リボーンさんが言ってたぞ!お前がニンジャガールだって!勝負しろ!」
「た、助けてくださいー!」
教室から逃げ出し、人気のない校舎裏の方へと向かって走り出す。
獄寺隼人は馬鹿正直についてくる。なんとか校舎裏まで着き、獄寺隼人に向き直る。
「もう逃げないのか?」
「はぁ~……もう、馬鹿……。忍が忍だってバレちゃいけないんだよ……!わかる?!忍!」
「そ、そうだよね……!世を忍ぶ姿ってのがあるんだよな!」
「そうだよ」
「本物だ~!」
なにか、尊敬のような眼差しを向けられているが、そんな目で見られるような存在ではない。
たしか、獄寺隼人はイタリア出身だったはずだ。日本っぽいものが好きなんだろう。
「戦うのはいいけど、じゃあ、いまから殺気出すから、それに耐えられたらね」
獄寺隼人は「余裕だ」という表情で構えたので、殺気を獄寺隼人へ一点に集中させると、獄寺隼人が体を強張らせ、一歩引いた。
「いま、引いたね。そんなスキ見せたら、私はキミの懐に入って喉掻き切ってるよ」
「なら、向かってきてみろ……」
殺し屋というだけあり、逆境をはねのける力はあるようだ。
煙草をくわえ、爆弾に火をつけようとした瞬間、懐に入り煙草の火を切り落とし、獄寺の頭を掴み、掴んだ方とは逆の脚を払い地面に押し倒す。
起き上がる前に、喉元のクナイを突き付け、「これが実力差だ」と言う。
「チャイム鳴ったぞ。授業はちゃんと受けろよ」
「次はゼッテー勝つ……!」
「やめろ、私は無駄な争いは嫌いだ。それにキミには手出しするなと言われている。来ても、まともに相手をしてやるつもりはない」
「俺が弱いってのかよ!」
「ああ、弱いよ。私よりな。見てきた死線が違い過ぎるんだよ、私とキミとじゃ」
獄寺は悔しそうに顔を歪め、「ゼッテーに勝ってやるからな!」と言った。
どうして私はこうも、変な奴にばかり好かれてしまうのか……。恭弥様しかり、赤子しかり、獄寺隼人しかり……。
私は静かに生活したいだけなのだけれども……。
それから、その変な連中たちは、指名手配犯や暗殺部隊と戦ったり、未来に行って死闘を繰り返したり、様々な修羅場を潜り抜け、立派に成長してしまった。
おかげさまで、私では手も足も出なくなった。
「おい、満月!勝負しろ!」
「絶対に負けるんで、嫌でーす」
「やってみなきゃわかんねーだろ!」
やらなくても、いままでのキミたちを見てきたからね。十分判断材料になる。
「ヒバリとは勝負したんだろ!」
「あれは勝負じゃない。命の奪い合い」
手合わせの次元を超えている。
綱吉くんが止めに入って、了平くんが治療してくれなかったら死んでるからな、本当に。
適当に隼人をまいて風紀財団に帰ってくると、早々に恭弥から「出かけるよ」と言われた。
変な奴一号だ、と思って見てると「なに?」と聞かれた。
「いや、なんでもない」
「なにか言いたいことがあるなら言って」
言ったらトンファーで滅多打ちだろうが、たぶん言わなくても滅多打ちだろうな、と目の前でトンファーを構えだした恭弥様を見て思った。
数日前に、殺りあったばっかりだからしたくないんだけどな。
「……変なのに好かれるなって思っただけ」
「僕が変だって言うの?」
「いや、変でしょ。好きだって言いながら、殺そうとするし」
「愛情表現だよ」
「愛情表現で死にたくないんだけど。もっとまろやかな愛情表現があるでしょ」
「……キスとか」
「話が飛躍しすぎだよ」
「抑えられないんだよ、キスとか抱きしめるなんて生易しい愛情表現じゃ」
だから、変な奴だって言ってるのだけど、なにも伝わってないな。
「というか、忍に愛情を抱かない!」
「知らないよ。僕が愛してるのは、忍の満月じゃないんだから。女としての満月を愛してるんだよ」
「なら、もっと別の方法あるやろー!」
一番女に向けちゃいけない愛情表現だぞ!
主人公 二年生
「……」
なんの変哲もない生徒から、微かに血と硝煙の匂いがした。その生徒からではなく、移り香として。
生徒の名前は沢田綱吉。サボり癖のある生徒で、喧嘩などとは無関係な印象を受ける生徒だった。最近では少々奇行が目立つが、それでも極一般的な生徒と言えよう。
その生徒から、なぜ。
まだ、未確定事項だ。恭弥様の耳に入れる必要のあることかどうか見極めてからではないと。
極秘裏に沢田綱吉の近辺を探っていると、最近になって沢田綱吉が海外の殺し屋と繋がりを持つようになっていることがわかった。
あの平凡な少年が?と半信半疑ではあったが、私が留守にしている間に、応接室が襲撃されたとあっては見逃せなくなった。
恭弥様に危害をくわえるならば報告するまでもなく処分対象だが、忍が勝手に判断するなどあってはならない。
主人が殺れと命じない限り、私は手出しをできない。
「如何なさいますか、恭弥様」
「とりあえず、仕事のスイッチ切って」
「でっ」
頭を引っ叩かれ、仕事のスイッチを無理矢理に切られた。お仕事の話なんだけどな……。
「それで、どうするの。殺れって言ってくれればすぐに殺ってくるけど」
「必要ないよ。沢田とかいう草食動物も、赤ん坊も僕の標的だ。キミは手出ししないで」
「他の殺し屋は?」
「わざわざキミが手出しするような相手じゃない。それより、僕はそんな仕事を頼んだ記憶はないんだけど」
「頼まれてなくても、危険があれば調べるのが忍の性だから」
大切な主に、手出しはさせられないでしょ?と言うと、主従関係大嫌いな恭弥様は口をへの字にして不機嫌を露わにした。
ここでトンファーが出てきたら、さすがに謝らないといけないが、私が心配しての行動だと理解しているからか、トンファーは構えられなかった。
「恭弥が手出しするなって言うなら手出ししないけど、なにかあったときは……。覚えておいて」
「記憶にはとどめておくよ」
とどめておくだけで、聞く気はないな。しかし、言質はとったわけだから、私が手出ししてお叱りを受けたら絶対に言い返そう。
見回りに行ってこいと言われたので、放課後、無用に校舎を歩き回っていると、背後から「ちゃおっす」と声がした。
気配がしなかった……!
振り向くも誰もおらず、「下だぞ」と言われ下を向くと、沢田綱吉に最初に接近し、そして恭弥様が興味を持たれている赤子が銃を構えていた。
「っ!」
容赦なく撃たれた弾丸をクナイで弾き、そのまま赤子へと突き刺すが避けられる。
「やっぱりお前、ヒットマンだな。血と死臭がする」
「鼻がいいな、赤子。これでもにおい消しはしているんだけどね」
「その臭い落とそうと思って落とせる物じゃねえぞ」
「知ってるよ、そんなこと」
恭弥様からは手出しをするなと言われたが、こんな明確な攻撃をされておいて逃がすことはできない。
やはり、ここで仕留めておかねば。
赤子と言えど、恭弥様が一目置く相手。油断はできない。
どう動くかと注意深く伺っていると、赤子は銃をおろし、「いいな、お前。お前もファミリーに入れ」と言ってくる。
「ファミリー?なんの話だ」
「お前にはボンゴレファミリーに入ってもらう」
「話が見えないけど、私は恭弥様以外に仕える気はない」
「安心しろ。そのヒバリも、ファミリーに入るんだぞ」
あの群れを嫌う恭弥様が?ありえない。と鼻で嗤い、とにかく恭弥様の脅威となる存在は何者であれ、排除する。
クナイを構えなおし、赤子の息の根を止めようとした瞬間だった。
「手出しするなって言わなかった、満月」
「恭弥様……!」
驚く私を見てから、恭弥様は赤子に視線をやり「うちの子が失礼したね」と言ったが、失礼したのはそっちの赤子です。
こちとら、視線と視線が合った瞬間に撃たれたんですよ。
「勝負なら、満月じゃなくて僕に声をかけてくれないかな」
「今日は、こいつの力量をはかりに来ただけだ」
「そう、どうだった。うちの子は」
「いい腕だな」
赤子の称賛に、恭弥様は嬉しそうに表情を崩すが、こちとら弾けなかったら確実に脳天を弾丸が通過していたんだぞ。
試すなら、もっと別のところを狙え。
言いたいことは山ほどあるが、恭弥様と対等に話している赤子の方が立場は上。下の者が口出しはできない。ぐぬぬ……。
「こいつもファミリーに誘ったとこだ」
「ふーん。で、なんて?」
「お前がいないと嫌だと」
言ってね~!曲解して伝えるな、ガキ~!
ほらもう、恭弥様めちゃくちゃご機嫌になっちゃったじゃん、も~!
「恭弥、やっぱりこの赤子始末しよう」
「キミじゃ、手も足も出ないよ。赤ん坊、今日は機嫌がいいから見逃してあげる。おいで、満月。ちょっと“遊ぼう”」
遊ぼう、イコール、殺ろう。
なぜ、命を狙われた上に上機嫌な恭弥様(ヤバい)と殺りあわないといけないのか。
上機嫌なときほど、手加減しないし大怪我率が上がる。
ここ最近、遊ぼうと言われてなかったから綺麗な体でいられたが、久しぶりに青痣だらけになるな……。
屋上まで行き、恭弥様と対峙する。
「恭弥~。手加減してよ~?」
「手加減してキミが本気になるならね」
なったら、それこそ奇跡だよ。
仕事と命の瀬戸際以外で本気なんて出したくない。その命の瀬戸際を一番感じるのが、主との殺りとりなのだけれども。
二対の大手裏剣を構え、戦闘の体勢をとる。一歩でも引けば、死ぬと思え。
「行くよ」
翌日、恭弥様が傷だらけで登校する姿が見られるだろう、諸君。楽しみにしてろ。
昔は一方的な暴力に近かったが、昨今、真面目に修業しだしてからは私も恭弥様に怪我を負わせられるようになった。
いや、従者が主人に怪我を負わせるなという話だが、こちらも命がかかっているのでそうは言っていられない。
バレたら、父上と妹の桜が包丁を持って追いかけてくる事態だが、私も恭弥様も家を出ているので、バレる可能性は限りなく低い。
しかし、殺し屋放置するし、その殺し屋に興味は持つし、相変わらず私との殺し合いは楽しむしで、私の立場がない。
本人に、本家であるという意識が薄いのも原因だが、未だ持って私に対しての並々ならない殺意の理由が分からない。
好かれているはずなのに殺されそうって、どういうこと?殺したいくらいI LOVE YOUてか?
よく寝るし寝起きが最悪な癖に、いやに朝は早い恭弥様に合わせて登校すると、丁度、門からバイクが出てくるところだった。長袖のおかげで一見すると無傷のように見える。
なにせ、顔は狙わなかったからね。
送り迎えする、て言っているのに、子供じゃないんだからって言って頑なにバイク通学をする恭弥様にくっついて行く為に、年々私の脚は速くなっていっている。
恐らく、いまなら走って恭弥様から逃走することも叶うだろうが、そんなことしようものなら、翌日あった瞬間に殺される。
逃げる、ダメ絶対。命大事に。
今日も無事に登校したことを見届け、何事もなかったように、地味で気の弱い女子生徒を装い「おはようございます、委員長……」と恭弥様に声をかける。
恭弥様も、あまり私が目立ちたくないという気持ちがあるのを了承してくれているので、深くはツッコまないが、嫌そうな顔はされる。
「あの、お弁当です……」
「……ありがとう」
このように、日々の弛まぬ努力の結果、私は「何故か風紀委員にいる謎の女」という立場を確立し、教室内でもわりと普通に過ごしている。
このまま、中学生活を終わらせたい。忍とは目立ってはならないのだ。
「おい、時風満月って女いるか」
「獄寺くん!」
だというのに、周りの人間が一向に忍ばせてくれないのはどうして。
あれは、転校初日から暴れまわっていた獄寺隼人。それから山本武と沢田綱吉。あまり関わりあいたくないが、どうしたものか……。と悩んでいると、「この子が時風満月よー」と昨日聞いたばかりの高い声がした。
そこには女子の制服を着た赤子が。
獄寺隼人は険しい顔でこちらに歩み寄り、私の胸倉をつかみあげた。フロント布部分のスナップがとれたじゃないか。
「リボーンさんが認めたって実力、見せてもらおうじゃねえか」
「な、なんの話ですか……!私にはさっぱりわかりません!」
「……本当にこいつか?」
信じられない、という反応をする獄寺隼人に乗るように、山本武も沢田綱吉も「普通の子に見える」と口々に言って止めようとするが、獄寺隼人だけは「ふっ飛ばせばわかる!」と言って、爆弾を取り出した。
はあ、もう、これだから暴力で全部片づけようとするやつは……。
改造した足首丈のスカートから煙玉を落とし、教室中の視界が塞がれたところで獄寺隼人の頸動脈を狙って手刀を叩きこむ。
これで落ちない奴はいない。
気絶した獄寺隼人を受け止め、床に寝かせてから、床にしゃがみ込み怯えた生徒のフリをすれば完璧である。
「獄寺くんー?!」
「おい、獄寺!大丈夫か?!」
「な、なにがあったんですか……?」
さも、なにも知りませんという顔をする私。
気絶した獄寺隼人を担いで帰って行く山本武と沢田綱吉を見送る。赤子は気がついたらいなくなっていた。
変なのに目をつけられた、とげんなりしていたら、次の休み時間にまた来襲した獄寺隼人が「ニンジャガール!勝負だ!俺が勝ったらサインしろ!」と今度は謎にウキウキした顔で言った。
「わ、私は地味なだけで、忍者じゃありません!」
「リボーンさんが言ってたぞ!お前がニンジャガールだって!勝負しろ!」
「た、助けてくださいー!」
教室から逃げ出し、人気のない校舎裏の方へと向かって走り出す。
獄寺隼人は馬鹿正直についてくる。なんとか校舎裏まで着き、獄寺隼人に向き直る。
「もう逃げないのか?」
「はぁ~……もう、馬鹿……。忍が忍だってバレちゃいけないんだよ……!わかる?!忍!」
「そ、そうだよね……!世を忍ぶ姿ってのがあるんだよな!」
「そうだよ」
「本物だ~!」
なにか、尊敬のような眼差しを向けられているが、そんな目で見られるような存在ではない。
たしか、獄寺隼人はイタリア出身だったはずだ。日本っぽいものが好きなんだろう。
「戦うのはいいけど、じゃあ、いまから殺気出すから、それに耐えられたらね」
獄寺隼人は「余裕だ」という表情で構えたので、殺気を獄寺隼人へ一点に集中させると、獄寺隼人が体を強張らせ、一歩引いた。
「いま、引いたね。そんなスキ見せたら、私はキミの懐に入って喉掻き切ってるよ」
「なら、向かってきてみろ……」
殺し屋というだけあり、逆境をはねのける力はあるようだ。
煙草をくわえ、爆弾に火をつけようとした瞬間、懐に入り煙草の火を切り落とし、獄寺の頭を掴み、掴んだ方とは逆の脚を払い地面に押し倒す。
起き上がる前に、喉元のクナイを突き付け、「これが実力差だ」と言う。
「チャイム鳴ったぞ。授業はちゃんと受けろよ」
「次はゼッテー勝つ……!」
「やめろ、私は無駄な争いは嫌いだ。それにキミには手出しするなと言われている。来ても、まともに相手をしてやるつもりはない」
「俺が弱いってのかよ!」
「ああ、弱いよ。私よりな。見てきた死線が違い過ぎるんだよ、私とキミとじゃ」
獄寺は悔しそうに顔を歪め、「ゼッテーに勝ってやるからな!」と言った。
どうして私はこうも、変な奴にばかり好かれてしまうのか……。恭弥様しかり、赤子しかり、獄寺隼人しかり……。
私は静かに生活したいだけなのだけれども……。
それから、その変な連中たちは、指名手配犯や暗殺部隊と戦ったり、未来に行って死闘を繰り返したり、様々な修羅場を潜り抜け、立派に成長してしまった。
おかげさまで、私では手も足も出なくなった。
「おい、満月!勝負しろ!」
「絶対に負けるんで、嫌でーす」
「やってみなきゃわかんねーだろ!」
やらなくても、いままでのキミたちを見てきたからね。十分判断材料になる。
「ヒバリとは勝負したんだろ!」
「あれは勝負じゃない。命の奪い合い」
手合わせの次元を超えている。
綱吉くんが止めに入って、了平くんが治療してくれなかったら死んでるからな、本当に。
適当に隼人をまいて風紀財団に帰ってくると、早々に恭弥から「出かけるよ」と言われた。
変な奴一号だ、と思って見てると「なに?」と聞かれた。
「いや、なんでもない」
「なにか言いたいことがあるなら言って」
言ったらトンファーで滅多打ちだろうが、たぶん言わなくても滅多打ちだろうな、と目の前でトンファーを構えだした恭弥様を見て思った。
数日前に、殺りあったばっかりだからしたくないんだけどな。
「……変なのに好かれるなって思っただけ」
「僕が変だって言うの?」
「いや、変でしょ。好きだって言いながら、殺そうとするし」
「愛情表現だよ」
「愛情表現で死にたくないんだけど。もっとまろやかな愛情表現があるでしょ」
「……キスとか」
「話が飛躍しすぎだよ」
「抑えられないんだよ、キスとか抱きしめるなんて生易しい愛情表現じゃ」
だから、変な奴だって言ってるのだけど、なにも伝わってないな。
「というか、忍に愛情を抱かない!」
「知らないよ。僕が愛してるのは、忍の満月じゃないんだから。女としての満月を愛してるんだよ」
「なら、もっと別の方法あるやろー!」
一番女に向けちゃいけない愛情表現だぞ!