並盛の盾 日常小話
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リング争奪戦とか、未来に飛ばされたり、色々あったがようやく落ち着き、非日常的日常が帰ってきたと思った矢先であった。
「純ー!海に行こうぜー!」
「ダメ」
「いや、私まだなにも言ってない……」
私が行くか行かないか答える前に、ヒバリさんからNGを出されてしまい、ディーノくんに「ということで」と答えると、ディーノくんは唇を尖らせ「いいじゃんかよー」と文句を言い出す。
「別に恭弥は誘ってねえし」
「この子には仕事があるんだよ。それを邪魔するようなことはしないで」
「学校休みの日ならいいだろ?そこまで束縛する権限は、恭弥にはないはずだ」
「あるよ。僕はこの子の主人なんだから」
繰り広げられる応酬に、緊張で胃が痛くなってくる。
私の為に争わないでシーンって、こんなにも心臓バクバクするのか。
世のヒロインはどんなメンタルして止めに入っているんだ。私なんて気配を殺すので精一杯だぞ。
ロマーリオさんにSOSをだすが、お手上げみたいなジェスチャーをされてしまい、私もお手上げだ。
「じゃあ、恭弥は純の水着見たくないのか!」
「見たい、見たくないは別の話だよ」
「ちょっと、男子ー!本人の目の前!」
もう少し、デリカシーってものをだな!と、さっきまで震えていたのが嘘のように怒鳴っていた。
しかし、風紀委員長とイタリア男は普通に「どんな水着がいいか」の話に移行した。
「俺はやっぱり、モノキニ」
「冗談がきつい……嫌だよ……」
「ダメだよ、風紀が乱れる」
「なら、恭弥はどんなのがいいんだよ」
「スクール水着に決まってるでしょ」
「冗談がきっついわ!絶対に嫌だ!」
いや、双方本気なのはわかっているが、冗談がきつい!
モノキニって、あのセレブがよく着ているセクシー水着でしょ?!着こなせるか!
スクール水着は、年齢的にアウトです!犯罪の匂いがします!AVじゃあるまいし!
「はい!この話を持って、海への話はお開きです!」
「なんだよ、純。海行こうぜ、海」
「私、あの太陽光に晒された砂浜苦手なんだよね……」
「じゃあ、ホテルのプール貸し切るから、そこならどうだ?」
あー、それなら……。という言葉に被せるように、「ダメって言ってるでしょ」とヒバリさんにNGをくらった。
と、いうことです。
けど、誰もいないプールは魅力的だったなぁ。
まあ、これだけダメだと言われたのだから、ディーノくんも諦めてくれるだろうと思っていたのに、その週の土曜日にディーノくんが家に来て、「プール行こうぜ」と誘った。
しかし、並盛のホテルというホテルはヒバリさんの管理下にあるので、プールの貸し切りなんてだいそれたことをすれば、すぐにヒバリさんの耳にはいる。
つまり……。
「やあ、おはよう」
既に、我が家で待機しています。ヒバリさんが。
「おっ!恭弥もいたのか!じゃあ、一緒に来るか?」
またもや、ギスギスとした応酬がされるのかと冷や冷やしていたが、今回それはなく、ヒバリさんは「仕方がないから、付き合ってあげるよ」と一緒に行くと言うではないか。
ディーノくんはそれに気を良くして、「じゃあ、早速行こうぜ!」と言うので、「水着持ってくるから、待って」と言ったら、不思議そうな顔で「こっちで用意してあるぜ」と言う。
モノキニをか?!嫌だって言っただろ!
ディーノくんの言葉に、ヒバリさんはムッ、とした表情で「その子が着るのは僕が用意したスクール水着だよ」と言う。
スクール水着も嫌だって言ったでしょうが!
「自前のがあるんで、結構です!」
そう告げ、水着とアルマ・一郎と命名した雷アルマジロと、武器の入った匣兵器をカバンに入れる。
まあ、なにもなければそれが一番なんだけど、一応ね。
玄関まで行くと、既にヒバリさんとディーノくん、草壁さんとロマーリオさんが待っていた。
ロマーリオさんの運転で連れてこられた高そうなホテルのプールの更衣室で自前のフィットネス水着に着替え、プールの方まで来るとすでに私以外が揃っていた。
筋肉が眩しいぜ。
こちらに気がついた四人中三人が残念そうな顔をする。よし、草壁さん以外はプールに落とそう。
「フィットネス水着か……」
「なにか言いたいことがあるのかな、ディーノくん?」
「……色気がない」
「正直だなぁ!」
「それ着るくらいなら、スクール水着でもいいんじゃない?」
「スクール水着って時点でアウトなんですよ」
不評を買おうが、私は泳ぎに来ているので、この機能性を重視した水着以外は着ません。
それよりも、泳ぐぞー!と張り切った瞬間に、黒服で銃を構えた男たちが、口々に「ヒバリ!往生せえや!」「キャバッローネのボス!死んでもらう!」と乱入してきた。
「そうだ、恭弥。勝負しないか?」
「勝負?」
「多くあいつら倒した方が勝ち。勝った方の水着を純に着替えさせられる」
「ふーん、いいよ」
「本人に了承を得ろ!」
「じゃあ、純も参加な!」
「なんでそうなる!」
しかし、もう乱闘は始まっている。
私はアルマ・一郎をカウント係の草壁さんに預けて、匣兵器から雷の斧をとりだす。
炎で刃部分は丸くしてあるから、死ぬことは無い……はず!
「ずぇえりぁ!」
一振りで何人かは気絶させたが、ヒバリさんとディーノくんの方が手数が多くスピードも速い。
銃弾が当たっても平気というアドバンテージがあっても、到底私に勝ち目はない。
死屍累々と化したプールサイドとプール。
草壁さんとロマーリオさんが、風紀委員とキャバッローネの人たちに連絡して片付けてくれたが、もう泳ぐ気分ではない。
それに引き換え、ピンピンしているヒバリさんとディーノくんは草壁さんとロマーリオさんに数を聞いていた。
「同じ人数か〜」
「ちゃんと数えた、草壁?」
「はい、勿論」
「ただ、嬢ちゃんの方は数人、少なかったな」
要らぬ情報がもたらされ、帰ります、と更衣室に逃げ出そうとしたが、それを許すヒバリさんとディーノくんではなかった。
「恭弥、午前と午後ならどっちがいい?」
「午後かな」
「じゃあ、先に俺の水着な!」
押し付けられた水着に、嫌だ、と首を振るも、耳元で「一夏の思い出作ろうぜ」と囁かれ、顔と声のいい男に対してチョロい私は簡単に着替えていた。
更衣室から戻ってくると、何故かヒバリさんとディーノくんが水上戦をしていた。
元気なやっちゃ、と呆れながら、貝殻の浮き輪に乗って観戦していると、うしろ飛びでディーノくんが乗り移ってきた。
「うわっ!純!邪魔!踏む!」
「そっちから乗ってきて邪魔ってどういうことだよ!」
「蹴るなって、おわっ!」
バランスを崩したディーノくんが倒れ込んできて、身動きが取れずにいると、鬼の形相のヒバリさんが「絶対にブッ殺す」と言わんばかりの殺気を乗せた一撃をディーノくんの頭目がけて振り落とす。
「さすがに、それはダメー!」
ディーノくんの頭を抱えてガードをしたが、様々な修羅場をこなして来たヒバリさんの一撃は普通に痛かった。
折れてはいないと思うが、とても痛い。
浮き輪に三人も乗れないと察し、近場の足場に飛び移るヒバリさんの不機嫌は、私が庇ったことで加速する。
「ディーノくん!早く戦線復帰して!」
「もうちょっと抱きしめてくれないか?」
「馬鹿言ってんじゃないぞ?!」
「咬み殺す……」
ディーノくんの冗談に、完全にキレてしまったヒバリさんのトンファーから棘が出た。
あれはさすがに助けられない。
キレたヒバリさんと死闘を繰り広げ、お互いにボロボロになり、さすがに止めないとまずい、と判断して、水着チェンジを出汁にバトルをやめさせた。
スクール水着に着替えた私に、ディーノくんは「際どいものを見てる気になるな」と恥ずかしそうに言ったが、際どいものを見ているんだよ。
ディーノくんたちとはホテルで別れ、草壁さんもヒバリさんに帰され、ヒバリさんはタクシーを捕まえて私を連れ乗り込んだ。
移動中、殆ど見ていただけの私に対して動き回っていたヒバリさんは眠そうに船を漕いでいる。
「家についたら起こしますから、寝てていいですよ」
「うん……」
そう言うと、私の膝を枕にして安らかに眠るヒバリさん。
運転手さんもヒバリさんを乗せているということもあり、お喋りもせず、ラジオも切ってはいるが車の駆動音は響く。
それでも、あの眠りの浅いヒバリさんは目を覚ますことなく眠り続ける。
車はゆっくりとヒバリさんちの門前に停車した。
「ヒバリさん、着きましたよ。ヒバリさん。ヒバリさーん?」
「……」
いくら声をかけても、ヒバリさんは目を覚ましそうにない。余程、お疲れのようで。
運転手さんが怯えきった様子でこちらを伺っているので、ヒバリさんの鞄から勝手に財布を拝借し、支払いを済ませる。
「よい……しょっと!」
荷物を二人分持ちヒバリさんを抱っこすると、ぐずりながら抱きついてきた。
うん、うん。こういう所は、とても可愛いと思うぞ。
なんとか中へ入り、居間にへたり込む。
「ヒバリさーん、もう起きてますよね?」
だって、両手離しても落ちないんだから。
これで眠ってたらびっくりだよ。
のっそりと離れると、ヒバリさんは表情ひとつ変えずに「いま起きたんだよ」と言ってのけるから、ヒバリさんのメンタルはさすがと言えよう。
深く追求すると、殴ってでも納得させようとしてくるから、黙って「そうですか」と納得したフリをしておく。
「ふぁ……。私も疲れたんで、もう帰りますね」
「もう遅いよ。泊まっていったら」
「遅い……」
時計を見れば、時刻は十八時を過ぎようとする頃。
夏なので、当たり前だが日はまだ高い。
物言いたげな私に、ヒバリさんは「十七時以降は全部遅いよ」と、どこの心配性のパパだ、みたいなことを言う。
泊まっていってほしいんだろうな。
「泊まるなら、お寿司とるけど」
「泊まります」
寿司には勝てない。
カンパチを頬張る私に、「幸せそうに食べるよね」と言いながらエンガワを食べるヒバリさんも、幸せそうな顔をしている。
「今日、なにかありましたっけ」
「なんで」
「いやに機嫌がいいので、なにかあったのかなって」
「別に。ただ……」
「ただ?」
「久しぶりに、君と穏やかに二人の時間を過ごせるのは、嬉しいかな」
控えめに微笑むヒバリさんに、この人、たまにこういう可愛いこと言うよな。と、思ってしまった。
「純ー!海に行こうぜー!」
「ダメ」
「いや、私まだなにも言ってない……」
私が行くか行かないか答える前に、ヒバリさんからNGを出されてしまい、ディーノくんに「ということで」と答えると、ディーノくんは唇を尖らせ「いいじゃんかよー」と文句を言い出す。
「別に恭弥は誘ってねえし」
「この子には仕事があるんだよ。それを邪魔するようなことはしないで」
「学校休みの日ならいいだろ?そこまで束縛する権限は、恭弥にはないはずだ」
「あるよ。僕はこの子の主人なんだから」
繰り広げられる応酬に、緊張で胃が痛くなってくる。
私の為に争わないでシーンって、こんなにも心臓バクバクするのか。
世のヒロインはどんなメンタルして止めに入っているんだ。私なんて気配を殺すので精一杯だぞ。
ロマーリオさんにSOSをだすが、お手上げみたいなジェスチャーをされてしまい、私もお手上げだ。
「じゃあ、恭弥は純の水着見たくないのか!」
「見たい、見たくないは別の話だよ」
「ちょっと、男子ー!本人の目の前!」
もう少し、デリカシーってものをだな!と、さっきまで震えていたのが嘘のように怒鳴っていた。
しかし、風紀委員長とイタリア男は普通に「どんな水着がいいか」の話に移行した。
「俺はやっぱり、モノキニ」
「冗談がきつい……嫌だよ……」
「ダメだよ、風紀が乱れる」
「なら、恭弥はどんなのがいいんだよ」
「スクール水着に決まってるでしょ」
「冗談がきっついわ!絶対に嫌だ!」
いや、双方本気なのはわかっているが、冗談がきつい!
モノキニって、あのセレブがよく着ているセクシー水着でしょ?!着こなせるか!
スクール水着は、年齢的にアウトです!犯罪の匂いがします!AVじゃあるまいし!
「はい!この話を持って、海への話はお開きです!」
「なんだよ、純。海行こうぜ、海」
「私、あの太陽光に晒された砂浜苦手なんだよね……」
「じゃあ、ホテルのプール貸し切るから、そこならどうだ?」
あー、それなら……。という言葉に被せるように、「ダメって言ってるでしょ」とヒバリさんにNGをくらった。
と、いうことです。
けど、誰もいないプールは魅力的だったなぁ。
まあ、これだけダメだと言われたのだから、ディーノくんも諦めてくれるだろうと思っていたのに、その週の土曜日にディーノくんが家に来て、「プール行こうぜ」と誘った。
しかし、並盛のホテルというホテルはヒバリさんの管理下にあるので、プールの貸し切りなんてだいそれたことをすれば、すぐにヒバリさんの耳にはいる。
つまり……。
「やあ、おはよう」
既に、我が家で待機しています。ヒバリさんが。
「おっ!恭弥もいたのか!じゃあ、一緒に来るか?」
またもや、ギスギスとした応酬がされるのかと冷や冷やしていたが、今回それはなく、ヒバリさんは「仕方がないから、付き合ってあげるよ」と一緒に行くと言うではないか。
ディーノくんはそれに気を良くして、「じゃあ、早速行こうぜ!」と言うので、「水着持ってくるから、待って」と言ったら、不思議そうな顔で「こっちで用意してあるぜ」と言う。
モノキニをか?!嫌だって言っただろ!
ディーノくんの言葉に、ヒバリさんはムッ、とした表情で「その子が着るのは僕が用意したスクール水着だよ」と言う。
スクール水着も嫌だって言ったでしょうが!
「自前のがあるんで、結構です!」
そう告げ、水着とアルマ・一郎と命名した雷アルマジロと、武器の入った匣兵器をカバンに入れる。
まあ、なにもなければそれが一番なんだけど、一応ね。
玄関まで行くと、既にヒバリさんとディーノくん、草壁さんとロマーリオさんが待っていた。
ロマーリオさんの運転で連れてこられた高そうなホテルのプールの更衣室で自前のフィットネス水着に着替え、プールの方まで来るとすでに私以外が揃っていた。
筋肉が眩しいぜ。
こちらに気がついた四人中三人が残念そうな顔をする。よし、草壁さん以外はプールに落とそう。
「フィットネス水着か……」
「なにか言いたいことがあるのかな、ディーノくん?」
「……色気がない」
「正直だなぁ!」
「それ着るくらいなら、スクール水着でもいいんじゃない?」
「スクール水着って時点でアウトなんですよ」
不評を買おうが、私は泳ぎに来ているので、この機能性を重視した水着以外は着ません。
それよりも、泳ぐぞー!と張り切った瞬間に、黒服で銃を構えた男たちが、口々に「ヒバリ!往生せえや!」「キャバッローネのボス!死んでもらう!」と乱入してきた。
「そうだ、恭弥。勝負しないか?」
「勝負?」
「多くあいつら倒した方が勝ち。勝った方の水着を純に着替えさせられる」
「ふーん、いいよ」
「本人に了承を得ろ!」
「じゃあ、純も参加な!」
「なんでそうなる!」
しかし、もう乱闘は始まっている。
私はアルマ・一郎をカウント係の草壁さんに預けて、匣兵器から雷の斧をとりだす。
炎で刃部分は丸くしてあるから、死ぬことは無い……はず!
「ずぇえりぁ!」
一振りで何人かは気絶させたが、ヒバリさんとディーノくんの方が手数が多くスピードも速い。
銃弾が当たっても平気というアドバンテージがあっても、到底私に勝ち目はない。
死屍累々と化したプールサイドとプール。
草壁さんとロマーリオさんが、風紀委員とキャバッローネの人たちに連絡して片付けてくれたが、もう泳ぐ気分ではない。
それに引き換え、ピンピンしているヒバリさんとディーノくんは草壁さんとロマーリオさんに数を聞いていた。
「同じ人数か〜」
「ちゃんと数えた、草壁?」
「はい、勿論」
「ただ、嬢ちゃんの方は数人、少なかったな」
要らぬ情報がもたらされ、帰ります、と更衣室に逃げ出そうとしたが、それを許すヒバリさんとディーノくんではなかった。
「恭弥、午前と午後ならどっちがいい?」
「午後かな」
「じゃあ、先に俺の水着な!」
押し付けられた水着に、嫌だ、と首を振るも、耳元で「一夏の思い出作ろうぜ」と囁かれ、顔と声のいい男に対してチョロい私は簡単に着替えていた。
更衣室から戻ってくると、何故かヒバリさんとディーノくんが水上戦をしていた。
元気なやっちゃ、と呆れながら、貝殻の浮き輪に乗って観戦していると、うしろ飛びでディーノくんが乗り移ってきた。
「うわっ!純!邪魔!踏む!」
「そっちから乗ってきて邪魔ってどういうことだよ!」
「蹴るなって、おわっ!」
バランスを崩したディーノくんが倒れ込んできて、身動きが取れずにいると、鬼の形相のヒバリさんが「絶対にブッ殺す」と言わんばかりの殺気を乗せた一撃をディーノくんの頭目がけて振り落とす。
「さすがに、それはダメー!」
ディーノくんの頭を抱えてガードをしたが、様々な修羅場をこなして来たヒバリさんの一撃は普通に痛かった。
折れてはいないと思うが、とても痛い。
浮き輪に三人も乗れないと察し、近場の足場に飛び移るヒバリさんの不機嫌は、私が庇ったことで加速する。
「ディーノくん!早く戦線復帰して!」
「もうちょっと抱きしめてくれないか?」
「馬鹿言ってんじゃないぞ?!」
「咬み殺す……」
ディーノくんの冗談に、完全にキレてしまったヒバリさんのトンファーから棘が出た。
あれはさすがに助けられない。
キレたヒバリさんと死闘を繰り広げ、お互いにボロボロになり、さすがに止めないとまずい、と判断して、水着チェンジを出汁にバトルをやめさせた。
スクール水着に着替えた私に、ディーノくんは「際どいものを見てる気になるな」と恥ずかしそうに言ったが、際どいものを見ているんだよ。
ディーノくんたちとはホテルで別れ、草壁さんもヒバリさんに帰され、ヒバリさんはタクシーを捕まえて私を連れ乗り込んだ。
移動中、殆ど見ていただけの私に対して動き回っていたヒバリさんは眠そうに船を漕いでいる。
「家についたら起こしますから、寝てていいですよ」
「うん……」
そう言うと、私の膝を枕にして安らかに眠るヒバリさん。
運転手さんもヒバリさんを乗せているということもあり、お喋りもせず、ラジオも切ってはいるが車の駆動音は響く。
それでも、あの眠りの浅いヒバリさんは目を覚ますことなく眠り続ける。
車はゆっくりとヒバリさんちの門前に停車した。
「ヒバリさん、着きましたよ。ヒバリさん。ヒバリさーん?」
「……」
いくら声をかけても、ヒバリさんは目を覚ましそうにない。余程、お疲れのようで。
運転手さんが怯えきった様子でこちらを伺っているので、ヒバリさんの鞄から勝手に財布を拝借し、支払いを済ませる。
「よい……しょっと!」
荷物を二人分持ちヒバリさんを抱っこすると、ぐずりながら抱きついてきた。
うん、うん。こういう所は、とても可愛いと思うぞ。
なんとか中へ入り、居間にへたり込む。
「ヒバリさーん、もう起きてますよね?」
だって、両手離しても落ちないんだから。
これで眠ってたらびっくりだよ。
のっそりと離れると、ヒバリさんは表情ひとつ変えずに「いま起きたんだよ」と言ってのけるから、ヒバリさんのメンタルはさすがと言えよう。
深く追求すると、殴ってでも納得させようとしてくるから、黙って「そうですか」と納得したフリをしておく。
「ふぁ……。私も疲れたんで、もう帰りますね」
「もう遅いよ。泊まっていったら」
「遅い……」
時計を見れば、時刻は十八時を過ぎようとする頃。
夏なので、当たり前だが日はまだ高い。
物言いたげな私に、ヒバリさんは「十七時以降は全部遅いよ」と、どこの心配性のパパだ、みたいなことを言う。
泊まっていってほしいんだろうな。
「泊まるなら、お寿司とるけど」
「泊まります」
寿司には勝てない。
カンパチを頬張る私に、「幸せそうに食べるよね」と言いながらエンガワを食べるヒバリさんも、幸せそうな顔をしている。
「今日、なにかありましたっけ」
「なんで」
「いやに機嫌がいいので、なにかあったのかなって」
「別に。ただ……」
「ただ?」
「久しぶりに、君と穏やかに二人の時間を過ごせるのは、嬉しいかな」
控えめに微笑むヒバリさんに、この人、たまにこういう可愛いこと言うよな。と、思ってしまった。