並盛の盾 日常小話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨日の晩は深酒をしてしまった気がする。
記憶の途中までディーノくんに絡み酒をしていたから、まあ、部屋には送り届けてくれているだろう、と安心して体を起こすと、「おはよう」と気だるげな声に挨拶をされた。
錆びついた機械人形のようにぎこちなく声の方を向けば、恭弥が眠そうに隣で目を擦っていた。
「なんで恭弥が……?」
そう聞く私の顎を人差し指ですくい上げ、「なんでだと思う?」と聞いてきた。
なんで、はこちらの台詞なのだが。
「ちょっと、ディーノくんに確認取っていいですか……?」
私のお願いに、恭弥は「どうぞ」と許してくれたので慌ててディーノくんに電話をすると、のんびりとした口調で「よお、二日酔いにはならなかったか?」と心配してくれたが、それどころではない。
「昨日、なにがあった?!」
『なにって。お前がベロベロになるまで酒呑んで……』
「そのあと!」
『恭弥のところに送った』
「なんで?!」
どうしてそんなことをした?!と憤る私に、ディーノくんは「恭弥がお前に用があるって連絡してきたから」となんでもないことのように言うが、ベロベロの酔っぱらいが仕事をできるはずもないだろ。
「そのあとのことは、なにかご存じないでしょうか……?」
『恭弥に引き渡してからは、ご存じないな』
なにかあったのか?と聞いてくれたディーノくんに、朝起きたら隣で恭弥が寝ていた話をしたら「絡み酒して、離れなくなったから一緒に寝たんじゃないか?」となくはないことを言われ、安心した。
そりゃそうだ。恭弥が私相手に事案を起こすとは考えにくい。
なんだかんだで、誠実な男だからな。恭弥は。
納得して電話を切ってから恭弥に向き直り、「いやぁ、迷惑をかけました」と言うと、恭弥は「なにがあったか、思い出したの?」と聞いてきた。
「思い出さないけど、絡み酒をしたことはわかる」
「他は?」
「他……?」
引っかかる言い方をする恭弥の言葉にオウム返しをすると、恭弥は「ふーん、覚えてないんだ。そう」と意味深な言葉を残して部屋を出て行った。
覚えていない、とは?
「待って、恭弥ー!事案?!事案なの?!」
「知らないよ、思い出せるといいね」
不機嫌とも上機嫌とも取れそうな態度をとる恭弥に数時間頭を抱えたが、よくよく考えれば、私も恭弥も服を着ていた。
つまり、なにもなかったのだ。
「こういう冗談はやめてくれませんかねえ?!」
恭弥に頼まれた匣の調査についての手書き資料をWordに起こしながら憤るも、「慌てふためくキミを見るのが面白かったから」と反省の色をまったく見せない態度。
「私がなにをしたって言うんだ!」
「酔っぱらって僕に絡んできた」
「大変申し訳ありませんでした」
手の平を翻して謝罪する私に、恭弥は呆れたように「謝罪だけは素直だよね、本当に」と言った。
「じゃあ、覚えてないようだからこれも言うけど、キミ。昨日、僕が気に入って呑んでたお酒を品のない呑み方で空にしたよ」
「ウソ……」
恭弥のお気に入りのお酒って、あのお高い大吟醸でしょ……?
私に一滴たりともわけてくれなかった、あのお高い大吟醸……。
「味覚えてないな〜!もったいないことをした!」
「他に言うことないの?」
「ごめーん」
大吟醸については、まったく悪いと思っていないのでおざなりな謝罪をした。
恭弥の財力なら、あれくらいのお酒の一瓶、二瓶、誤差の範囲ではないか。
「キミ、しばらく飲酒は控えなよ」
「お酒が美味しいお年頃なんだわ」
「ならせめて、僕の目が届くところで呑んでよね」
「心配してくれるのー?うれしー」
冗談めかして言ったら、苛ついた声色で「キミの不祥事は風紀財団の、ひいては並盛の品位を損なうんだよ」と言われてしまった。
一人の評価は皆の評価ですね、はい。
「まあ……心配もしてなくはないけど……」
「おぅ……恭弥が珍しくデレた……」
驚きのあまり本音がぽろりしてしまい、アイアンクローをされた。
キミのその馬鹿力でアイアンクローはシャレにならないので勘弁してほしい。
解放されても、ズキズキと痛む頭を押さえて呻く私に、恭弥は「キミのその心のおもらし癖は治らないね」とため息をついた。
「滅多に心配したなんて言ってくれないから、つい」
「僕はいつだってキミのことを心配してるんだけど」
「うーん、まあ、知ってるけど、たまには言ってほしいじゃん」
「なに、その彼女みたいな言い方」
「おっ!なんなら、今日一日彼女になろうか?そしたら、少しは私に優しくなるだろ!」
冗談で言ったつもりだったのだが、恭弥は身を屈め、下から覗き込むようにして「本当に?」と聞いてきた。
「本当に、僕の彼女になってくれる?」
スルリと、私の手に恭弥の大きい手が重なった。
「どうした、恭弥。酔ってる?」
「キミはどうして、そう……」
額を押さえながら項垂れる恭弥に、「水いる?」と聞けば、「キミにかける水ならほしいかな」と言われた。絶対に持ってこないからな。
その日一日、恭弥はぶすくれており、「今日はキミの顔見たくない。さっさと帰って」と、ロールとヒバードを使って追いやられてしまった。
暇だし、ディーノくんに相手してもらおう、とキャバッローネファミリーに遊びに行ったら、ディーノくんに「暇なのか?」と聞かれた。
まあ、暇っちゃ暇だね。
「いやぁ、自ら仕掛けておいて返り討ちにあっちゃったよ」
「最初から言わなきゃいいのに。あんまり、純粋な恭弥を弄ぶなよ」
「年下からかうのが楽しくて」
「悪い女」
「お嫌い?」
「超好き」
「私もノッてくれるディーノくん、超好き」
お酒が入っていないのに酔っぱらいみたいな笑い方をしていたら、耳元に某かのケータイが添えられ、受話から「いますぐ帰ってきて……」と恭弥の声がした。
振り向くと、哲さんが困り顔で立っていた。
「純ちゃんの営業時間は終了しましたー」
『いいから、帰ってこい……』
なにをそんなに怒っているのかと頭を掻きながら、ディーノくんに「戻るね」と断って哲さんを連れて風紀財団に帰ってくると、頬を膨らませている(ように見える)恭弥がお出迎え。
「僕の仕事が終わるまで、ここに立ってて。それまで帰ることは許さないから」
帰れと言ったり、帰ってこいと言ったり、帰るなと言ったり、忙しないやっちゃなぁ。
渋々、恭弥の側に立ち手遊びをしながら暇をつぶしていると、おもむろに「僕といるのは、そんなにつまらない?」と聞いてきた。
「なんで?」
「聞いてるのはこっちなんだけど。……あの人とは、よく遊ぶでしょ。けど……」
先を言いたがらないが、言いたいことはわかった。
「ディーノくんと遊ぶのは友だちだからだよ」
「キミ、軽く言ってるけど、あの人一応偉い立場の人間だからね?」
「恭弥だって、偉い立場の人間だよ。それに恭弥の場合、逆に私といてなにが楽しいんだろうって思ってる」
いっつも怒ってるし、と言ったら、「キミが怒らせるようなことをするからでしょ」と脇腹を軽く殴られた。
だって、恭弥からかうと面白いんだもん。
「そもそも、恭弥はどうしてまだ私を風紀財団に置いてるの?私なんて戦えない事務員だし、その辺の草食動物と変わりないのに」
取り柄の頑丈さも、いまの恭弥からして見れば砂糖菓子も同然となってしまった。
そんな私に恭弥が興味を持ち続ける理由がわからない。正直、いつ、飽きたからクビ、と言われるのかとヒヤヒヤしている。
「私はいまや、どこにでもいる一般人だよ」
「匣兵器を使える人間のどこが一般人なのか説明してほしいね。そもそも、死ぬ気の炎は指輪と匣がないと意味を成さないのに、その二つなしで自分の身にまとうこと自体が常識外れなんだよ」
「なせばなる!」
「それでなせたら、今頃僕はなせてるはずなんだけど」
叶うなら、色々実験させてほしいくらいだよ。と言う恭弥を「きゃー!私の体になにする気ー!」とからかったら、「なにしてほしい?」と妖艶に笑って聞き返してきた。
うーん、昔だったら「馬鹿じゃないの」と言われて終わりだったのに、ノッてくれるようになったか。恭弥も大人になったなぁ。
「一般人は僕相手に、普通ならそういう態度なんてとらないよ」
「だって、恭弥。私が本当に怖がることとか、泣くこととか、嫌なことは絶対にしないじゃん」
「図々しい……」
まあ、私も思ったけど。
だが事実、恭弥は私が泣くと意外と戸惑った顔もするし、機嫌が悪いときは話し相手にもなってくれるし、炎圧差で殴るようなこともしない。
「愛されてるなぁ」
「なに、突然」
「振り返ると、大切にされているなと思って」
そう言う私に、恭弥は呆れながら「大切にしてなかったら、キミは何回僕に咬み殺されて病院送りになっていただろうね」と言った。
「ちゃんと、大切だよ」
「どうして?」
「キミが僕を大切にしてくれるから」
「本当にそれだけ?」
「どうだろうね」
ぷい、とそっぽを向いてしまった恭弥に、素直じゃないな、と思った。
後日、ディーノくんにその話をしたら、「恭弥の気持ちを知ってて、恭弥に言わせようとするお前も大概だけどな」と言われてしまった。
「言ってくれればフりやすいじゃん」
「フるのかよ」
「私、恭弥には一生誰かに縛られずに、自由に生きてほしいから」
「悪い女」
「お嫌い?」
「そういうところも、超好き」
記憶の途中までディーノくんに絡み酒をしていたから、まあ、部屋には送り届けてくれているだろう、と安心して体を起こすと、「おはよう」と気だるげな声に挨拶をされた。
錆びついた機械人形のようにぎこちなく声の方を向けば、恭弥が眠そうに隣で目を擦っていた。
「なんで恭弥が……?」
そう聞く私の顎を人差し指ですくい上げ、「なんでだと思う?」と聞いてきた。
なんで、はこちらの台詞なのだが。
「ちょっと、ディーノくんに確認取っていいですか……?」
私のお願いに、恭弥は「どうぞ」と許してくれたので慌ててディーノくんに電話をすると、のんびりとした口調で「よお、二日酔いにはならなかったか?」と心配してくれたが、それどころではない。
「昨日、なにがあった?!」
『なにって。お前がベロベロになるまで酒呑んで……』
「そのあと!」
『恭弥のところに送った』
「なんで?!」
どうしてそんなことをした?!と憤る私に、ディーノくんは「恭弥がお前に用があるって連絡してきたから」となんでもないことのように言うが、ベロベロの酔っぱらいが仕事をできるはずもないだろ。
「そのあとのことは、なにかご存じないでしょうか……?」
『恭弥に引き渡してからは、ご存じないな』
なにかあったのか?と聞いてくれたディーノくんに、朝起きたら隣で恭弥が寝ていた話をしたら「絡み酒して、離れなくなったから一緒に寝たんじゃないか?」となくはないことを言われ、安心した。
そりゃそうだ。恭弥が私相手に事案を起こすとは考えにくい。
なんだかんだで、誠実な男だからな。恭弥は。
納得して電話を切ってから恭弥に向き直り、「いやぁ、迷惑をかけました」と言うと、恭弥は「なにがあったか、思い出したの?」と聞いてきた。
「思い出さないけど、絡み酒をしたことはわかる」
「他は?」
「他……?」
引っかかる言い方をする恭弥の言葉にオウム返しをすると、恭弥は「ふーん、覚えてないんだ。そう」と意味深な言葉を残して部屋を出て行った。
覚えていない、とは?
「待って、恭弥ー!事案?!事案なの?!」
「知らないよ、思い出せるといいね」
不機嫌とも上機嫌とも取れそうな態度をとる恭弥に数時間頭を抱えたが、よくよく考えれば、私も恭弥も服を着ていた。
つまり、なにもなかったのだ。
「こういう冗談はやめてくれませんかねえ?!」
恭弥に頼まれた匣の調査についての手書き資料をWordに起こしながら憤るも、「慌てふためくキミを見るのが面白かったから」と反省の色をまったく見せない態度。
「私がなにをしたって言うんだ!」
「酔っぱらって僕に絡んできた」
「大変申し訳ありませんでした」
手の平を翻して謝罪する私に、恭弥は呆れたように「謝罪だけは素直だよね、本当に」と言った。
「じゃあ、覚えてないようだからこれも言うけど、キミ。昨日、僕が気に入って呑んでたお酒を品のない呑み方で空にしたよ」
「ウソ……」
恭弥のお気に入りのお酒って、あのお高い大吟醸でしょ……?
私に一滴たりともわけてくれなかった、あのお高い大吟醸……。
「味覚えてないな〜!もったいないことをした!」
「他に言うことないの?」
「ごめーん」
大吟醸については、まったく悪いと思っていないのでおざなりな謝罪をした。
恭弥の財力なら、あれくらいのお酒の一瓶、二瓶、誤差の範囲ではないか。
「キミ、しばらく飲酒は控えなよ」
「お酒が美味しいお年頃なんだわ」
「ならせめて、僕の目が届くところで呑んでよね」
「心配してくれるのー?うれしー」
冗談めかして言ったら、苛ついた声色で「キミの不祥事は風紀財団の、ひいては並盛の品位を損なうんだよ」と言われてしまった。
一人の評価は皆の評価ですね、はい。
「まあ……心配もしてなくはないけど……」
「おぅ……恭弥が珍しくデレた……」
驚きのあまり本音がぽろりしてしまい、アイアンクローをされた。
キミのその馬鹿力でアイアンクローはシャレにならないので勘弁してほしい。
解放されても、ズキズキと痛む頭を押さえて呻く私に、恭弥は「キミのその心のおもらし癖は治らないね」とため息をついた。
「滅多に心配したなんて言ってくれないから、つい」
「僕はいつだってキミのことを心配してるんだけど」
「うーん、まあ、知ってるけど、たまには言ってほしいじゃん」
「なに、その彼女みたいな言い方」
「おっ!なんなら、今日一日彼女になろうか?そしたら、少しは私に優しくなるだろ!」
冗談で言ったつもりだったのだが、恭弥は身を屈め、下から覗き込むようにして「本当に?」と聞いてきた。
「本当に、僕の彼女になってくれる?」
スルリと、私の手に恭弥の大きい手が重なった。
「どうした、恭弥。酔ってる?」
「キミはどうして、そう……」
額を押さえながら項垂れる恭弥に、「水いる?」と聞けば、「キミにかける水ならほしいかな」と言われた。絶対に持ってこないからな。
その日一日、恭弥はぶすくれており、「今日はキミの顔見たくない。さっさと帰って」と、ロールとヒバードを使って追いやられてしまった。
暇だし、ディーノくんに相手してもらおう、とキャバッローネファミリーに遊びに行ったら、ディーノくんに「暇なのか?」と聞かれた。
まあ、暇っちゃ暇だね。
「いやぁ、自ら仕掛けておいて返り討ちにあっちゃったよ」
「最初から言わなきゃいいのに。あんまり、純粋な恭弥を弄ぶなよ」
「年下からかうのが楽しくて」
「悪い女」
「お嫌い?」
「超好き」
「私もノッてくれるディーノくん、超好き」
お酒が入っていないのに酔っぱらいみたいな笑い方をしていたら、耳元に某かのケータイが添えられ、受話から「いますぐ帰ってきて……」と恭弥の声がした。
振り向くと、哲さんが困り顔で立っていた。
「純ちゃんの営業時間は終了しましたー」
『いいから、帰ってこい……』
なにをそんなに怒っているのかと頭を掻きながら、ディーノくんに「戻るね」と断って哲さんを連れて風紀財団に帰ってくると、頬を膨らませている(ように見える)恭弥がお出迎え。
「僕の仕事が終わるまで、ここに立ってて。それまで帰ることは許さないから」
帰れと言ったり、帰ってこいと言ったり、帰るなと言ったり、忙しないやっちゃなぁ。
渋々、恭弥の側に立ち手遊びをしながら暇をつぶしていると、おもむろに「僕といるのは、そんなにつまらない?」と聞いてきた。
「なんで?」
「聞いてるのはこっちなんだけど。……あの人とは、よく遊ぶでしょ。けど……」
先を言いたがらないが、言いたいことはわかった。
「ディーノくんと遊ぶのは友だちだからだよ」
「キミ、軽く言ってるけど、あの人一応偉い立場の人間だからね?」
「恭弥だって、偉い立場の人間だよ。それに恭弥の場合、逆に私といてなにが楽しいんだろうって思ってる」
いっつも怒ってるし、と言ったら、「キミが怒らせるようなことをするからでしょ」と脇腹を軽く殴られた。
だって、恭弥からかうと面白いんだもん。
「そもそも、恭弥はどうしてまだ私を風紀財団に置いてるの?私なんて戦えない事務員だし、その辺の草食動物と変わりないのに」
取り柄の頑丈さも、いまの恭弥からして見れば砂糖菓子も同然となってしまった。
そんな私に恭弥が興味を持ち続ける理由がわからない。正直、いつ、飽きたからクビ、と言われるのかとヒヤヒヤしている。
「私はいまや、どこにでもいる一般人だよ」
「匣兵器を使える人間のどこが一般人なのか説明してほしいね。そもそも、死ぬ気の炎は指輪と匣がないと意味を成さないのに、その二つなしで自分の身にまとうこと自体が常識外れなんだよ」
「なせばなる!」
「それでなせたら、今頃僕はなせてるはずなんだけど」
叶うなら、色々実験させてほしいくらいだよ。と言う恭弥を「きゃー!私の体になにする気ー!」とからかったら、「なにしてほしい?」と妖艶に笑って聞き返してきた。
うーん、昔だったら「馬鹿じゃないの」と言われて終わりだったのに、ノッてくれるようになったか。恭弥も大人になったなぁ。
「一般人は僕相手に、普通ならそういう態度なんてとらないよ」
「だって、恭弥。私が本当に怖がることとか、泣くこととか、嫌なことは絶対にしないじゃん」
「図々しい……」
まあ、私も思ったけど。
だが事実、恭弥は私が泣くと意外と戸惑った顔もするし、機嫌が悪いときは話し相手にもなってくれるし、炎圧差で殴るようなこともしない。
「愛されてるなぁ」
「なに、突然」
「振り返ると、大切にされているなと思って」
そう言う私に、恭弥は呆れながら「大切にしてなかったら、キミは何回僕に咬み殺されて病院送りになっていただろうね」と言った。
「ちゃんと、大切だよ」
「どうして?」
「キミが僕を大切にしてくれるから」
「本当にそれだけ?」
「どうだろうね」
ぷい、とそっぽを向いてしまった恭弥に、素直じゃないな、と思った。
後日、ディーノくんにその話をしたら、「恭弥の気持ちを知ってて、恭弥に言わせようとするお前も大概だけどな」と言われてしまった。
「言ってくれればフりやすいじゃん」
「フるのかよ」
「私、恭弥には一生誰かに縛られずに、自由に生きてほしいから」
「悪い女」
「お嫌い?」
「そういうところも、超好き」