並盛の盾 日常小話
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ヒバリさんが、ある日ディーノさんというお兄さんにより、リング争奪戦?というものの為に、更に強くなる修行に連れて行かれた。
正直、あれ以上、強さを身につけられたら傍若無人に磨きがかかりそうなので勘弁願いたい限りだ。
まあ、ヒバリさんがいない間は、私に被害が来ないだけまだマシか、と割り切っていたのに、目の前に山と積まれた書類の束に、思わず「どうして……」と口にしてしまった。
「委員長から手紙です」
そう言って草壁さんに手渡されたメモには、達筆で「書類は全部キミがやること」と書かれていた。
この量を一人でとは、無茶を言う……。
歳も考えず「やだやだ〜!」と駄々をこねたら、草壁さんに困った顔をさせてしまった。ごめん……。
「自分も、できるだけ応接室に来るようにしますので」
「大丈夫です……。草壁さんは、見回りの方に力を入れてください」
とは言ったものの、どうやら皆、私や下っ端の風紀委員ならどうにかなると踏んだのか、何度か応接室の向こうから殴り合いをする音が聞こえた。
ヒバリさんが並盛を空けてから、四日経った。
三日間、日課のヒバリさん家への訪問はしたが帰宅していない様子だった。大丈夫だろうかと心配になっていると、ノックなしで扉が開き「ちょっと、ついてこないでくれる」「いいじゃんかよ。仲良くしようぜ、恭弥」と賑やかに入ってきた聞き覚えのある声。
「お帰りなさい、ヒバリさ……ん……」
ヒバリさんの姿を視界に入れて、唖然とした。
お兄さんが怪我をしているのは想像に難くなかったが、あのヒバリさんまでもが包帯を巻いたりガーゼを貼ったりしているのだ。
「ヒバリさん!なんですか、その怪我は!」
「かすり傷」
「バカ言わないでください!あぁ、こんなに雑に手当して!ちょっとこっちに来てください!やり直します!」
「別に平気」
「いいから!」
ぶすくれるヒバリさんを無理矢理に座らせ、包帯を巻き直していく。
「尻に敷かれてるな、恭弥」
「うるさいよ」
「笑ってますけど、あなた。ディーノさんでしたっけ?」
私に睨まれたじろぐディーノさんに、「大人が未成年を三日間も連れ回すなんて、どういう神経してるんですか!」と叱責すると、顔を青くして「す、すみません……」と謝った。
「怪我の手当は、どうせヒバリさんが自分でやると言って聞かなかったんでしょうけど、大人なら未成年はちゃんと家に帰してください!三日間も家に帰ってないって聞いて、私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」
また、黒曜のときみたくなにか事件に巻き込まれたのではないかと、心配したのだ。
無事に帰って来て、よかった。とこぼす私に、ヒバリさんが珍しく「心配かけて、悪かったね」と謝罪めいたものをしてくれたし、ディーノさんも「悪い……」と謝ってくれたので、よしとしよう。
「けど、恭弥って未成年だったんだな」
「どっからどう見ても、未成年でしょ。こんなワガママチビ」
「……」
「……」
安心して気を抜いていた為に思わず本音が出てしまい、片手で首を掴まれた。
細く見えるが、これで中々馬鹿力のヒバリさんの喉輪は地味に効く。
「誰が、ワガママチビだって?」
「言葉を間違えました……。伸び代のある身長です」
「チビだって言いたいんでしょ……?」
「ぐぇぇぇすみません〜!」
制裁を受ける私を見て、「けど、あんたの言うとおりだな。今度から、気をつけるよ。にしても、あんた。子供なのにしっかりしてるな」とディーノさんが言って、場の空気が固まった。
真っ先に言葉を発したのはヒバリさんで、「子供っぽいってよ」と言われた。
「え、あんた、中学生だろ?制服も着てるし」
「うっ!!」
「違うのか?!」
驚くディーノさんに、ヒバリさんが「この子、これでも成人済みだよ」と真実を告げると、ディーノさんは更に驚き「日本人、本当に見た目が若いな?!」と声を上げた。
「そりゃ、保護者として心配にもなるか」
「保護者というわけではないですけど、心配にはなりますね」
「じゃあ、連絡先交換しようぜ。恭弥帰したら、連絡入れるからさ」
それはありがたい、と喜んで連絡先を交換しようとしたら、目の前にヒバリさんが割って入ってきた。
「さっさと帰って」
「え、あの、ヒバリさん。連絡先交換させてくださいよ」
「キミは黙ってて」
はい……。
不機嫌なヒバリさんを見て、ディーノさんは「別に、お前から取り上げようってわけじゃないんだしさ」と、おかしそうに言うから、顔は見えないが背中からも伝わるほどヒバリさんがイライラしだしている。
私に向けられているわけではないとわかっているが、気まずい気持ちになる。
「ほら、恭弥の保護者同士連携はとった方がいいだろ?」
「あなたもこの子も、僕の保護者じゃないよ」
「じゃあ、その子は恭弥のなんなんだ?」
「この子は、僕のサンドバッグだよ」
サンドバッグだろうな、とは思っていたが本当にサンドバッグだと思われていたとは。
いや、まあ、お姉さんはなんでもいいんですけどね。
「わかったら、さっさと帰って。何度も言わせないで」
「はいはい、今回は引くって。じゃあな、お嬢さん。そのうち、機会があったら」
そう言って、私にウィンクを送ってディーノさんは退散していった。
「うーん、ナチュラルなイケメン。惚れてしまう、なぶっ!」
振り向きざまに殴り倒してきたヒバリさんに「どうして……」と聞くと、「ムカついた」と理不尽極まりない返答が返ってきた。
あんまりだ……。
イライラした様子でソファーに座ったヒバリさんの手当を再開し、腕やら顔やらは終わり、お腹とかは大丈夫かと心配になったが、思春期男子に腹を見せろなどとはさすがに酷かと思い、そこの治療は控えた。
ヒバリさんの実年齢は知らんが、たぶん思春期ではあるだろうと勝手に思っている。
随分とピリピリしているし、お茶でも淹れてあげるかと給湯室に行こうとしたら、「僕は、キミのなんなの」と聞かれた。
「そんなに、心配になる存在なの」
何故そんなことを聞くのかと不思議に思ったが、この質問をミスするとまた機嫌が急降下するだろう。
しかし、どんな存在かと聞かれても困る。
「雇用主……?」
「……」
あ、この顔は機嫌が悪くなった顔だ。
いやしかし、私とヒバリさんの関係性と言えば雇用主と部下であって、それ以上でもそれ以下でもない。
「雇った記憶はないんだけど」
「え、じゃあなんで、私、風紀委員にいるんですか」
そう聞くと、至極真面目な顔で「キミが僕の側にいるのは、当たり前でしょ」と言われて、フレーメン反応をする猫みたいな顔をしてしまった。
そうなの?
なにを持って当たり前と言われたのかわからないが、ヒバリさんが言うのだから当たり前なのだろう。いや、んなわけあるか。
とは思うものの、そんなことを口にした日には喉輪が飛んでくるだろう。
「そうだよね。僕の物であるキミが僕の心配をするのは、当たり前か。主人に忠実で、いい子だね。これからは、キミにも連絡入れるようにするよ」
「っす……」
納得はいかないが、あまり根掘り葉掘り否定すると面倒くさそうだと悟った私は、それ以上なにも言わなかった。
ヒバリさんがご機嫌なら、もうそれでいいです。はい。
正直、あれ以上、強さを身につけられたら傍若無人に磨きがかかりそうなので勘弁願いたい限りだ。
まあ、ヒバリさんがいない間は、私に被害が来ないだけまだマシか、と割り切っていたのに、目の前に山と積まれた書類の束に、思わず「どうして……」と口にしてしまった。
「委員長から手紙です」
そう言って草壁さんに手渡されたメモには、達筆で「書類は全部キミがやること」と書かれていた。
この量を一人でとは、無茶を言う……。
歳も考えず「やだやだ〜!」と駄々をこねたら、草壁さんに困った顔をさせてしまった。ごめん……。
「自分も、できるだけ応接室に来るようにしますので」
「大丈夫です……。草壁さんは、見回りの方に力を入れてください」
とは言ったものの、どうやら皆、私や下っ端の風紀委員ならどうにかなると踏んだのか、何度か応接室の向こうから殴り合いをする音が聞こえた。
ヒバリさんが並盛を空けてから、四日経った。
三日間、日課のヒバリさん家への訪問はしたが帰宅していない様子だった。大丈夫だろうかと心配になっていると、ノックなしで扉が開き「ちょっと、ついてこないでくれる」「いいじゃんかよ。仲良くしようぜ、恭弥」と賑やかに入ってきた聞き覚えのある声。
「お帰りなさい、ヒバリさ……ん……」
ヒバリさんの姿を視界に入れて、唖然とした。
お兄さんが怪我をしているのは想像に難くなかったが、あのヒバリさんまでもが包帯を巻いたりガーゼを貼ったりしているのだ。
「ヒバリさん!なんですか、その怪我は!」
「かすり傷」
「バカ言わないでください!あぁ、こんなに雑に手当して!ちょっとこっちに来てください!やり直します!」
「別に平気」
「いいから!」
ぶすくれるヒバリさんを無理矢理に座らせ、包帯を巻き直していく。
「尻に敷かれてるな、恭弥」
「うるさいよ」
「笑ってますけど、あなた。ディーノさんでしたっけ?」
私に睨まれたじろぐディーノさんに、「大人が未成年を三日間も連れ回すなんて、どういう神経してるんですか!」と叱責すると、顔を青くして「す、すみません……」と謝った。
「怪我の手当は、どうせヒバリさんが自分でやると言って聞かなかったんでしょうけど、大人なら未成年はちゃんと家に帰してください!三日間も家に帰ってないって聞いて、私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」
また、黒曜のときみたくなにか事件に巻き込まれたのではないかと、心配したのだ。
無事に帰って来て、よかった。とこぼす私に、ヒバリさんが珍しく「心配かけて、悪かったね」と謝罪めいたものをしてくれたし、ディーノさんも「悪い……」と謝ってくれたので、よしとしよう。
「けど、恭弥って未成年だったんだな」
「どっからどう見ても、未成年でしょ。こんなワガママチビ」
「……」
「……」
安心して気を抜いていた為に思わず本音が出てしまい、片手で首を掴まれた。
細く見えるが、これで中々馬鹿力のヒバリさんの喉輪は地味に効く。
「誰が、ワガママチビだって?」
「言葉を間違えました……。伸び代のある身長です」
「チビだって言いたいんでしょ……?」
「ぐぇぇぇすみません〜!」
制裁を受ける私を見て、「けど、あんたの言うとおりだな。今度から、気をつけるよ。にしても、あんた。子供なのにしっかりしてるな」とディーノさんが言って、場の空気が固まった。
真っ先に言葉を発したのはヒバリさんで、「子供っぽいってよ」と言われた。
「え、あんた、中学生だろ?制服も着てるし」
「うっ!!」
「違うのか?!」
驚くディーノさんに、ヒバリさんが「この子、これでも成人済みだよ」と真実を告げると、ディーノさんは更に驚き「日本人、本当に見た目が若いな?!」と声を上げた。
「そりゃ、保護者として心配にもなるか」
「保護者というわけではないですけど、心配にはなりますね」
「じゃあ、連絡先交換しようぜ。恭弥帰したら、連絡入れるからさ」
それはありがたい、と喜んで連絡先を交換しようとしたら、目の前にヒバリさんが割って入ってきた。
「さっさと帰って」
「え、あの、ヒバリさん。連絡先交換させてくださいよ」
「キミは黙ってて」
はい……。
不機嫌なヒバリさんを見て、ディーノさんは「別に、お前から取り上げようってわけじゃないんだしさ」と、おかしそうに言うから、顔は見えないが背中からも伝わるほどヒバリさんがイライラしだしている。
私に向けられているわけではないとわかっているが、気まずい気持ちになる。
「ほら、恭弥の保護者同士連携はとった方がいいだろ?」
「あなたもこの子も、僕の保護者じゃないよ」
「じゃあ、その子は恭弥のなんなんだ?」
「この子は、僕のサンドバッグだよ」
サンドバッグだろうな、とは思っていたが本当にサンドバッグだと思われていたとは。
いや、まあ、お姉さんはなんでもいいんですけどね。
「わかったら、さっさと帰って。何度も言わせないで」
「はいはい、今回は引くって。じゃあな、お嬢さん。そのうち、機会があったら」
そう言って、私にウィンクを送ってディーノさんは退散していった。
「うーん、ナチュラルなイケメン。惚れてしまう、なぶっ!」
振り向きざまに殴り倒してきたヒバリさんに「どうして……」と聞くと、「ムカついた」と理不尽極まりない返答が返ってきた。
あんまりだ……。
イライラした様子でソファーに座ったヒバリさんの手当を再開し、腕やら顔やらは終わり、お腹とかは大丈夫かと心配になったが、思春期男子に腹を見せろなどとはさすがに酷かと思い、そこの治療は控えた。
ヒバリさんの実年齢は知らんが、たぶん思春期ではあるだろうと勝手に思っている。
随分とピリピリしているし、お茶でも淹れてあげるかと給湯室に行こうとしたら、「僕は、キミのなんなの」と聞かれた。
「そんなに、心配になる存在なの」
何故そんなことを聞くのかと不思議に思ったが、この質問をミスするとまた機嫌が急降下するだろう。
しかし、どんな存在かと聞かれても困る。
「雇用主……?」
「……」
あ、この顔は機嫌が悪くなった顔だ。
いやしかし、私とヒバリさんの関係性と言えば雇用主と部下であって、それ以上でもそれ以下でもない。
「雇った記憶はないんだけど」
「え、じゃあなんで、私、風紀委員にいるんですか」
そう聞くと、至極真面目な顔で「キミが僕の側にいるのは、当たり前でしょ」と言われて、フレーメン反応をする猫みたいな顔をしてしまった。
そうなの?
なにを持って当たり前と言われたのかわからないが、ヒバリさんが言うのだから当たり前なのだろう。いや、んなわけあるか。
とは思うものの、そんなことを口にした日には喉輪が飛んでくるだろう。
「そうだよね。僕の物であるキミが僕の心配をするのは、当たり前か。主人に忠実で、いい子だね。これからは、キミにも連絡入れるようにするよ」
「っす……」
納得はいかないが、あまり根掘り葉掘り否定すると面倒くさそうだと悟った私は、それ以上なにも言わなかった。
ヒバリさんがご機嫌なら、もうそれでいいです。はい。