並盛の盾 日常小話
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不本意ながらマフィアの一員という立ち位置に居り、泣く子も黙らせる風紀財団で哲さんの次に雲雀恭弥に近い人間として知れ渡る私は、正直、婚期を逃しかけている。
結婚が全てではないとはわかっているが、やはり、こう、一緒にいて落ち着く人と生活を共にしたい。
率直に言えば、心の安寧がほしい。
風紀委員時代から、恭弥関係で胃がキリキリしていたのに、最近ではキナ臭い案件やヴァリアーやらボンゴレやらが絡んできて、気持ちが落ち着かないのだ。
ちょっと頑丈な一般人だぞ、私は……。
並盛の妖怪を除き、周りは年下ばかりで甘えようなんて気持ちすら起きない。
年下に甘えるのは、さすがにプライドが許さない。
「あ〜!甘えて〜!よしよしされて〜!」
恭弥も哲さんもいないのをいいことに、三十超えた女が心の声をだだ漏れにさせながら、畳の上で嘆く姿はあまりにも惨めなことだろう。
こんなところを恭弥に見られでもしたら、「シャキッとして」と言われながら踏まれそうだ。
「なら、俺が甘やかしてやろうか?」
「ふぁー!?」
完全に誰もいないと思って騒いでいただけに、返事が返ってきて心臓が止まるかと思った。
体を起こすと、ディーノくんが朗らかな笑顔で「よっ!」と手を上げていた。
「……聞いてた?」
「聞いてた」
羞恥で悲鳴をあげる私に、ディーノくんは暢気に「いくつになっても元気だな、お前」と言う。
落ち着きのない女で申し訳ない。
「それで、なにしにきたの。ディーノくん」
「お前に会いに来た、とか?」
「軽率に口説かないでくれます?軽率に恋しちゃうんで」
ただでさえ顔面が王子様なんだから、気をつけてくれ、ディーノくん。私は軽率なジョークすら本気にするぞ。
どうせ恭弥に用があるんでしょ、と言いながら座り直すと、目の前にしゃがみこんで「いいや。本当に、お前に会いに来た」と言って髪を一房とり口づけをする。
「だーかーらー。そうやって、軽率にときめかせてくるの、やめて。心臓が持たない」
「ははっ。好きだろ、こういうの」
「悪い男め」
「嫌いか?」
「嫌いじゃないんだなぁ、これが」
などと軽口を叩いてから、「それで、私になんの用事?」と聞こうとしたら、ディーノくんの背後に立つ殺意を目に宿した恭弥と目があった。
「ディーノくん!うしろー!」
一応、忠告はしたが、たぶんディーノくんは恭弥が部屋に入ってきた時点で気がついていたのだろう。
私は、ほら、一般人だから気配とかわからないし、ディーノくんが壁になって見えなかったから。
安々と、振り下ろされたトンファーをかわして距離を取り鞭をすでに構えていた。
お陰様で、私の鼻先三寸をトンファーが通過していって冷や汗が止まらないよ。
「僕を裏切るなんて、いい度胸だね」
「目の前で友だちが頭かち割られそうになってたら、叫ぶでしょうが!」
「まあ、いいよ。キミはあの人のあとできっちり咬み殺してあげるから」
やめてください、死んでしまいます。
そりゃ、雷の炎をまとっていて攻撃の通らなかった何年か前なら痛くないしいいかー、となっていたが、いまとなってはエグい炎圧差で私の防御など砂糖菓子同然。
冗談抜きで死んでしまう。
「恭弥、そんな目くじら立てるなって。ちょっと遊んでただけだろ?」
「僕の居住地で群れておいて、どの口が言ってるの」
「なら、ここじゃない別の場所ならよかったか?」
ディーノくんの言葉に、恭弥はより一層殺気を高めてトンファーを構え直す。
このまま、この場所にいたら二人の戦闘に巻き込まれて、私一人大怪我を負うことだろう。
逃げよう。
そっ、と静かに部屋をあとにしようとしたが、まあ、バレないわけもなく恭弥に「明日、覚えておきなよ」と不吉な言葉を投げかけられた。
結局、ディーノくんがなんの用事で来たのかわからないまま家で静かに宅飲みをして現実から目をそらした翌日。
半壊した拠点のひとつに笑顔を引きつらせながら、ディーノくんに「大丈夫だった?」とメールを打つと、「そこそこ怪我したけど、なんとか無事だったぜ」と返ってきた。
恭弥に代わり謝罪を入れ、恭弥が私のことを丸っと忘れていることを祈り、哲さんにいまどの拠点にいるか確認する為の連絡を入れようとしたら、耳元で「やぁ、おはよう」と甘く低い声が囁く。
「お、おはよう、恭弥……」
ぎこちなく振り返ると、包帯やらガーゼを貼った恭弥が不機嫌そうに立っていた。
さすが、キャバッローネファミリーのボス。恭弥をここまでボロボロにするとは……。
「大丈夫、恭弥?」
「これくらいどうってことないよ。それより……」
恭弥は言葉を切り、私を自分と向き合うように立たせてから「歯食いしばって」と言った。
このときが来てしまった、と覚悟を決め、一応、抵抗の意思はないという意味で、まとっている炎を消してから、歯を食いしばり目を強くつぶると、ひゅんっ!という音とパァンッ!という乾いた音、ひりつくような痛み。
ひ、平手……?!と驚いている間にもう片方の頬も引っ叩く。
往復ビンタ……。
何回か往復ビンタを食らってから、満足した恭弥に「咬み殺すんじゃなかったの?」と聞けば、「キミ相手に武器なんて使うわけないでしょ」と呆れられた。
「ああ、でも。咬みはするかな」
「え、どういう……」
怯える私の目の前には、口を開けた恭弥。
え、咬む(物理)?
まさか、と動揺している間に恭弥は首筋に咬み付いてきた。
がりっ、ぶつっ、という音と鋭い痛みに震える私から恭弥はゆっくり離れて行き、「キミは僕のものだってこと、忘れないでよね」と言う。
首筋を触ると、少し血が滲んでいた。怖っ。
「それより、キミ。甘やかされたいんだって?」
「誰に聞いた?!」
「あの人の側近が、迷惑かけたお詫びにって話していった」
ロマーリオさん、どうして裏切った。
恥ずかしさで顔を覆う私に、恭弥は面白そうに「へぇ、事実なんだ」と言いながら小さく笑う。
「いいよ、おいで」
「は?」
なにが?と顔を上げた私の目の前には、腕を広げた恭弥がいい笑顔で立っている。
これ、これは……。俺の胸に飛び込んでこい的なそれですか?私が恭弥の胸にだいぶとぅわーるど?えぇ……無茶言う……。
おろおろして一向に飛び込んでいかない私に、恭弥は少し苛立った顔をしながら、「なに、来ないの」と威嚇をしてくる。そういうことするから、行きたくないんだよなぁ……。
しかし、行かねば今日一日不機嫌になり哲さんに当たり散らすのは目に見えている。
私がちょっと恥ずかしい思いをするだけで、風紀財団の一日の平穏が保たれると思えば安いものではないか。
覚悟を決め腕を広げ、恭弥の薄いが意外としっかりした筋肉のついた胸の中に飛び込むと、これまた意外と筋肉のついた腕で抱きしめられる。
あ、あ〜。これ、意外と凄い安心感ある〜。こんな細い体にと恭弥に安心できるかよ、とか思っていたけど、かなり安心するこれ〜。完全に侮ってたわ〜。
久しぶりの人肌に浮足立つ私の頭を、恭弥はゆっくりと撫で、「こうしてほしいときは、いつでも言いなよ。気が向いたら甘やかしてあげるから」と言う声は、心なしか優しかった。
「ていうことがあったんだけど、つまりディーノくんならより純度の高い安心感を得られる気がするんだが、どうだろうか!」
一緒に飲んでいるときに、ディーノくんに提案したら「いや、別に構わねえけど、恭弥に言うなよ」と釘を刺されよしよししてもらったのだが、どこからか情報が漏れて二週間くらい恭弥が口を利いてくれなかった。
結婚が全てではないとはわかっているが、やはり、こう、一緒にいて落ち着く人と生活を共にしたい。
率直に言えば、心の安寧がほしい。
風紀委員時代から、恭弥関係で胃がキリキリしていたのに、最近ではキナ臭い案件やヴァリアーやらボンゴレやらが絡んできて、気持ちが落ち着かないのだ。
ちょっと頑丈な一般人だぞ、私は……。
並盛の妖怪を除き、周りは年下ばかりで甘えようなんて気持ちすら起きない。
年下に甘えるのは、さすがにプライドが許さない。
「あ〜!甘えて〜!よしよしされて〜!」
恭弥も哲さんもいないのをいいことに、三十超えた女が心の声をだだ漏れにさせながら、畳の上で嘆く姿はあまりにも惨めなことだろう。
こんなところを恭弥に見られでもしたら、「シャキッとして」と言われながら踏まれそうだ。
「なら、俺が甘やかしてやろうか?」
「ふぁー!?」
完全に誰もいないと思って騒いでいただけに、返事が返ってきて心臓が止まるかと思った。
体を起こすと、ディーノくんが朗らかな笑顔で「よっ!」と手を上げていた。
「……聞いてた?」
「聞いてた」
羞恥で悲鳴をあげる私に、ディーノくんは暢気に「いくつになっても元気だな、お前」と言う。
落ち着きのない女で申し訳ない。
「それで、なにしにきたの。ディーノくん」
「お前に会いに来た、とか?」
「軽率に口説かないでくれます?軽率に恋しちゃうんで」
ただでさえ顔面が王子様なんだから、気をつけてくれ、ディーノくん。私は軽率なジョークすら本気にするぞ。
どうせ恭弥に用があるんでしょ、と言いながら座り直すと、目の前にしゃがみこんで「いいや。本当に、お前に会いに来た」と言って髪を一房とり口づけをする。
「だーかーらー。そうやって、軽率にときめかせてくるの、やめて。心臓が持たない」
「ははっ。好きだろ、こういうの」
「悪い男め」
「嫌いか?」
「嫌いじゃないんだなぁ、これが」
などと軽口を叩いてから、「それで、私になんの用事?」と聞こうとしたら、ディーノくんの背後に立つ殺意を目に宿した恭弥と目があった。
「ディーノくん!うしろー!」
一応、忠告はしたが、たぶんディーノくんは恭弥が部屋に入ってきた時点で気がついていたのだろう。
私は、ほら、一般人だから気配とかわからないし、ディーノくんが壁になって見えなかったから。
安々と、振り下ろされたトンファーをかわして距離を取り鞭をすでに構えていた。
お陰様で、私の鼻先三寸をトンファーが通過していって冷や汗が止まらないよ。
「僕を裏切るなんて、いい度胸だね」
「目の前で友だちが頭かち割られそうになってたら、叫ぶでしょうが!」
「まあ、いいよ。キミはあの人のあとできっちり咬み殺してあげるから」
やめてください、死んでしまいます。
そりゃ、雷の炎をまとっていて攻撃の通らなかった何年か前なら痛くないしいいかー、となっていたが、いまとなってはエグい炎圧差で私の防御など砂糖菓子同然。
冗談抜きで死んでしまう。
「恭弥、そんな目くじら立てるなって。ちょっと遊んでただけだろ?」
「僕の居住地で群れておいて、どの口が言ってるの」
「なら、ここじゃない別の場所ならよかったか?」
ディーノくんの言葉に、恭弥はより一層殺気を高めてトンファーを構え直す。
このまま、この場所にいたら二人の戦闘に巻き込まれて、私一人大怪我を負うことだろう。
逃げよう。
そっ、と静かに部屋をあとにしようとしたが、まあ、バレないわけもなく恭弥に「明日、覚えておきなよ」と不吉な言葉を投げかけられた。
結局、ディーノくんがなんの用事で来たのかわからないまま家で静かに宅飲みをして現実から目をそらした翌日。
半壊した拠点のひとつに笑顔を引きつらせながら、ディーノくんに「大丈夫だった?」とメールを打つと、「そこそこ怪我したけど、なんとか無事だったぜ」と返ってきた。
恭弥に代わり謝罪を入れ、恭弥が私のことを丸っと忘れていることを祈り、哲さんにいまどの拠点にいるか確認する為の連絡を入れようとしたら、耳元で「やぁ、おはよう」と甘く低い声が囁く。
「お、おはよう、恭弥……」
ぎこちなく振り返ると、包帯やらガーゼを貼った恭弥が不機嫌そうに立っていた。
さすが、キャバッローネファミリーのボス。恭弥をここまでボロボロにするとは……。
「大丈夫、恭弥?」
「これくらいどうってことないよ。それより……」
恭弥は言葉を切り、私を自分と向き合うように立たせてから「歯食いしばって」と言った。
このときが来てしまった、と覚悟を決め、一応、抵抗の意思はないという意味で、まとっている炎を消してから、歯を食いしばり目を強くつぶると、ひゅんっ!という音とパァンッ!という乾いた音、ひりつくような痛み。
ひ、平手……?!と驚いている間にもう片方の頬も引っ叩く。
往復ビンタ……。
何回か往復ビンタを食らってから、満足した恭弥に「咬み殺すんじゃなかったの?」と聞けば、「キミ相手に武器なんて使うわけないでしょ」と呆れられた。
「ああ、でも。咬みはするかな」
「え、どういう……」
怯える私の目の前には、口を開けた恭弥。
え、咬む(物理)?
まさか、と動揺している間に恭弥は首筋に咬み付いてきた。
がりっ、ぶつっ、という音と鋭い痛みに震える私から恭弥はゆっくり離れて行き、「キミは僕のものだってこと、忘れないでよね」と言う。
首筋を触ると、少し血が滲んでいた。怖っ。
「それより、キミ。甘やかされたいんだって?」
「誰に聞いた?!」
「あの人の側近が、迷惑かけたお詫びにって話していった」
ロマーリオさん、どうして裏切った。
恥ずかしさで顔を覆う私に、恭弥は面白そうに「へぇ、事実なんだ」と言いながら小さく笑う。
「いいよ、おいで」
「は?」
なにが?と顔を上げた私の目の前には、腕を広げた恭弥がいい笑顔で立っている。
これ、これは……。俺の胸に飛び込んでこい的なそれですか?私が恭弥の胸にだいぶとぅわーるど?えぇ……無茶言う……。
おろおろして一向に飛び込んでいかない私に、恭弥は少し苛立った顔をしながら、「なに、来ないの」と威嚇をしてくる。そういうことするから、行きたくないんだよなぁ……。
しかし、行かねば今日一日不機嫌になり哲さんに当たり散らすのは目に見えている。
私がちょっと恥ずかしい思いをするだけで、風紀財団の一日の平穏が保たれると思えば安いものではないか。
覚悟を決め腕を広げ、恭弥の薄いが意外としっかりした筋肉のついた胸の中に飛び込むと、これまた意外と筋肉のついた腕で抱きしめられる。
あ、あ〜。これ、意外と凄い安心感ある〜。こんな細い体にと恭弥に安心できるかよ、とか思っていたけど、かなり安心するこれ〜。完全に侮ってたわ〜。
久しぶりの人肌に浮足立つ私の頭を、恭弥はゆっくりと撫で、「こうしてほしいときは、いつでも言いなよ。気が向いたら甘やかしてあげるから」と言う声は、心なしか優しかった。
「ていうことがあったんだけど、つまりディーノくんならより純度の高い安心感を得られる気がするんだが、どうだろうか!」
一緒に飲んでいるときに、ディーノくんに提案したら「いや、別に構わねえけど、恭弥に言うなよ」と釘を刺されよしよししてもらったのだが、どこからか情報が漏れて二週間くらい恭弥が口を利いてくれなかった。