並盛の盾 日常小話
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「はーい。いまの屋台で全部でーす」
昼間とは言え、冬の寒さが身にしみる。
防寒着ガチガチにし、お祭りに出店している屋台からショバ代をまき上げ、それの報告書用のメモを作る。
ふむふむ、やはり年末だけあって皆さん浮かれていますね。夏に比べると、取り壊された数が多い。
食べ物系、なにが残ってるかな。とペラペラめくっていると、「キミ、このあと予定は?」とヒバリさんが聞いてきた。
「家帰って、ドラマ見たりゲームしたり漫画読んだりして、ガキの使い見て年越します」
「家族と過ごさないの?」
「あいつら、私を置いて家族旅行行きやがったので」
まあ、実家で過ごしたとしても同じような感じなのだけれども。
広島焼きに、大判焼き、ベビーカステラ、と吟味していたら、「もし、一人が寂しかったらうちに来ていいよ」とヒバリさんが言うので、笑いながら「そんな繊細じゃないですよ〜!」と言ったら、「本当にね」となにやら怒らせてしまった。
解散の際に、「竪谷、明日ちゃんと寝坊せず集合場所に来るんだよ」と釘を刺された。
信用されてないな……。
家に帰って速攻部屋着に着替え、旅行に行く前に酒屋の父親からたらふく貰った各種銘柄の日本酒を、どれから飲んでいこうかと選んでいく。
これだけあれば、飲み正月できるな〜!と、ちびちび飲みながら、ガキの使いを見て、途中ジルベスターコンサートのラストを見たりしながら、一人で「ハッピーニューイヤー!」と叫んでゲラゲラ笑いながらしばらくゲームをしていると、ケータイが鳴った。
並中の校歌。ヒバリさんからだ、とわかった瞬間、酔が冷めた。
「はい、竪谷です」
『新年明けましおめでとう。今年もよろしく』
「明けましおめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
意外と律儀に挨拶をするのだな、と失礼なことを考えていると、「僕が電話したのは、キミがちゃんと寝たかの確認の為なんだけど、なんで起きてるの」と言われて、胃がギリッ、となった。
挨拶の為ちゃうんかい。
「ね、寝ますよ、いまから」
『ふーん、ほんと?』
「ホントウデスヨ」
『……信じるからね。おやすみ』
「おやすみなさい」
電話を切って一息。
「うん、飲みなおそ」
これがいけなかったのだろう。
普段は二日酔いにはならないのだが、深酒にくわえ、寝不足でグロッキー状態で翌日のショバ代回収の集合場所に現れた私を、ヒバリさんはこれでもかというほど鋭い目つきで睨んできた。
チョップの構えをとったので、先に「いま頭叩かれたら吐きます」と先制したらピタリと止まった。
「なにやったら、そうなるの」
「いや、父親が送ってくれた日本酒飲んでたら……あっ」
ぽろりしてしまい、ヒバリさんの視線がさらに鋭くなった。
これは、あれが始まる……!
「竪谷。今年から冬休み中は僕の家で生活して。生活習慣見直すから」
「うえーん!正しい生活合宿ー!」
「その送られてきたお酒もこっちで管理するから。あとで、キミの家に行くからね」
「はい……」
せっかくの酒浸り冬休みが……、としおしおしながら仕事をして報告書のメモをまとめる私を連れ、一度私の部屋を訪れ、ヒバリさんは酒瓶の山を見て顔を歪めて、草壁さんにヒバリさんの家へと運ぶよう指示した。
酒瓶を運び出し、ヒバリさんの家へ行くなり、「若桜、お蕎麦あるよね」とお手伝いの若桜さんに声をかけた。
「はい、ありますよ」
いきなり健康的なメニューがきて、物足りなさを感じるが、ほかほかのお蕎麦には、海老が二本。
「年越し蕎麦……」
「本当は、純さんと年を越しながら食べる予定だったんですけど、お越しになられなかったので」
「えっ、私頭数に入ってたんですか?!」
驚いて聞く私に、若桜さんは「恭弥坊ちゃんが、純さんなら来るだろう、と仰っていたので」と言うから、勢いよくヒバリさんを見たら、なに食わぬ顔で蕎麦をすすっていた。
「キミ、意外と寂しがり屋だから用意しただけだよ」
「うぇ〜。それならそうと言ってくださいよ。酒瓶三本くらい持ってお邪魔しましたよ〜」
「僕の家で三本も空けようだなんて、いい度胸だね」
「年末年始はチートデーなので許されます」
「僕が許さないよ」
睨まれたが、私が決めたチートデーなので私が許せばいいんですー。
バチバチと睨み合う私たちを他所に、若桜さんはのんびりとした口調で、「でも、あのお酒どうしましょうか」と言った。
「ああ、大丈夫ですよ。三日あれば飲み切りますから」
「なんの為にうちに泊まらせるか、わかってる?」
「でも、もったいないですよ?」
可愛子ぶって上目遣いをしたら、「露骨な媚は嫌い」と言われてしまった。知ってますよ。
しかし、せっかく貰ったものは消費しないともったいない。
「三日です!三日で、絶対に消費してみせます!」
「そういう問題じゃないんだけど……。消費できなかったら、若桜に処理させるからね」
「任せておいてくださいよ!」
と、大見得を切っただけある。私は見事に、日本酒十本を消費した。二日で。
いやはや、若桜さんのおせち料理とお雑煮と餅が美味しすぎて、お酒がよく進んだ。
ヒバリさんが白い目で毎日のように見てきたが、知ったことではない。
「じゃあ、生活習慣正していくけど、今回はダイエットも時間に組み込んでいくから」
「だいえっと……知らない単語ですね……」
「……」
視線をそらしながら言うも、無言で体重計を出されてしまうと乗らないわけにはいかない。
できるだけそっと乗るという無駄な抵抗をするが、体重は最後に測ったときより五キログラム増だった。
「どうして……」
「あれだけ暴飲暴食したら、太るに決まってるでしょ」
「はい……」
「じゃあ、運動着に着替えて。ランニング行くよ」
「はーい……」
いつの間にやら準備されていた運動着に着替え門の前で集合すると、ヒバリさんから「これから鬼ごっこするよ」と言われた。
「僕に捕まるたびに、キミの明日の食事が全体的に減るから」
「殺生な!」
「嫌なら、必死で逃げるんだね」
そう言うと、数を数えだすヒバリさん。
私は慌てて走り出すが、やはり体重が増えた分、体が重い。
ちらりと後ろを振り向くと、ヒバリさんが既に獲物を捉えた目で迫ってきていた。
あ、ダメだ、こりゃ。後ろなんて見ていたら、何度捕まるかわかったもんじゃない。そう判断して、私はただひたすら前だけを見て並盛町を逃げ回った。
この鬼ごっこトレーニングは毎年行われ、並盛町の名物になったとかなんとか。
お陰様で、私はボンゴレいち逃げ足が速い女と、リボーンくんから評価を受けた。
昼間とは言え、冬の寒さが身にしみる。
防寒着ガチガチにし、お祭りに出店している屋台からショバ代をまき上げ、それの報告書用のメモを作る。
ふむふむ、やはり年末だけあって皆さん浮かれていますね。夏に比べると、取り壊された数が多い。
食べ物系、なにが残ってるかな。とペラペラめくっていると、「キミ、このあと予定は?」とヒバリさんが聞いてきた。
「家帰って、ドラマ見たりゲームしたり漫画読んだりして、ガキの使い見て年越します」
「家族と過ごさないの?」
「あいつら、私を置いて家族旅行行きやがったので」
まあ、実家で過ごしたとしても同じような感じなのだけれども。
広島焼きに、大判焼き、ベビーカステラ、と吟味していたら、「もし、一人が寂しかったらうちに来ていいよ」とヒバリさんが言うので、笑いながら「そんな繊細じゃないですよ〜!」と言ったら、「本当にね」となにやら怒らせてしまった。
解散の際に、「竪谷、明日ちゃんと寝坊せず集合場所に来るんだよ」と釘を刺された。
信用されてないな……。
家に帰って速攻部屋着に着替え、旅行に行く前に酒屋の父親からたらふく貰った各種銘柄の日本酒を、どれから飲んでいこうかと選んでいく。
これだけあれば、飲み正月できるな〜!と、ちびちび飲みながら、ガキの使いを見て、途中ジルベスターコンサートのラストを見たりしながら、一人で「ハッピーニューイヤー!」と叫んでゲラゲラ笑いながらしばらくゲームをしていると、ケータイが鳴った。
並中の校歌。ヒバリさんからだ、とわかった瞬間、酔が冷めた。
「はい、竪谷です」
『新年明けましおめでとう。今年もよろしく』
「明けましおめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
意外と律儀に挨拶をするのだな、と失礼なことを考えていると、「僕が電話したのは、キミがちゃんと寝たかの確認の為なんだけど、なんで起きてるの」と言われて、胃がギリッ、となった。
挨拶の為ちゃうんかい。
「ね、寝ますよ、いまから」
『ふーん、ほんと?』
「ホントウデスヨ」
『……信じるからね。おやすみ』
「おやすみなさい」
電話を切って一息。
「うん、飲みなおそ」
これがいけなかったのだろう。
普段は二日酔いにはならないのだが、深酒にくわえ、寝不足でグロッキー状態で翌日のショバ代回収の集合場所に現れた私を、ヒバリさんはこれでもかというほど鋭い目つきで睨んできた。
チョップの構えをとったので、先に「いま頭叩かれたら吐きます」と先制したらピタリと止まった。
「なにやったら、そうなるの」
「いや、父親が送ってくれた日本酒飲んでたら……あっ」
ぽろりしてしまい、ヒバリさんの視線がさらに鋭くなった。
これは、あれが始まる……!
「竪谷。今年から冬休み中は僕の家で生活して。生活習慣見直すから」
「うえーん!正しい生活合宿ー!」
「その送られてきたお酒もこっちで管理するから。あとで、キミの家に行くからね」
「はい……」
せっかくの酒浸り冬休みが……、としおしおしながら仕事をして報告書のメモをまとめる私を連れ、一度私の部屋を訪れ、ヒバリさんは酒瓶の山を見て顔を歪めて、草壁さんにヒバリさんの家へと運ぶよう指示した。
酒瓶を運び出し、ヒバリさんの家へ行くなり、「若桜、お蕎麦あるよね」とお手伝いの若桜さんに声をかけた。
「はい、ありますよ」
いきなり健康的なメニューがきて、物足りなさを感じるが、ほかほかのお蕎麦には、海老が二本。
「年越し蕎麦……」
「本当は、純さんと年を越しながら食べる予定だったんですけど、お越しになられなかったので」
「えっ、私頭数に入ってたんですか?!」
驚いて聞く私に、若桜さんは「恭弥坊ちゃんが、純さんなら来るだろう、と仰っていたので」と言うから、勢いよくヒバリさんを見たら、なに食わぬ顔で蕎麦をすすっていた。
「キミ、意外と寂しがり屋だから用意しただけだよ」
「うぇ〜。それならそうと言ってくださいよ。酒瓶三本くらい持ってお邪魔しましたよ〜」
「僕の家で三本も空けようだなんて、いい度胸だね」
「年末年始はチートデーなので許されます」
「僕が許さないよ」
睨まれたが、私が決めたチートデーなので私が許せばいいんですー。
バチバチと睨み合う私たちを他所に、若桜さんはのんびりとした口調で、「でも、あのお酒どうしましょうか」と言った。
「ああ、大丈夫ですよ。三日あれば飲み切りますから」
「なんの為にうちに泊まらせるか、わかってる?」
「でも、もったいないですよ?」
可愛子ぶって上目遣いをしたら、「露骨な媚は嫌い」と言われてしまった。知ってますよ。
しかし、せっかく貰ったものは消費しないともったいない。
「三日です!三日で、絶対に消費してみせます!」
「そういう問題じゃないんだけど……。消費できなかったら、若桜に処理させるからね」
「任せておいてくださいよ!」
と、大見得を切っただけある。私は見事に、日本酒十本を消費した。二日で。
いやはや、若桜さんのおせち料理とお雑煮と餅が美味しすぎて、お酒がよく進んだ。
ヒバリさんが白い目で毎日のように見てきたが、知ったことではない。
「じゃあ、生活習慣正していくけど、今回はダイエットも時間に組み込んでいくから」
「だいえっと……知らない単語ですね……」
「……」
視線をそらしながら言うも、無言で体重計を出されてしまうと乗らないわけにはいかない。
できるだけそっと乗るという無駄な抵抗をするが、体重は最後に測ったときより五キログラム増だった。
「どうして……」
「あれだけ暴飲暴食したら、太るに決まってるでしょ」
「はい……」
「じゃあ、運動着に着替えて。ランニング行くよ」
「はーい……」
いつの間にやら準備されていた運動着に着替え門の前で集合すると、ヒバリさんから「これから鬼ごっこするよ」と言われた。
「僕に捕まるたびに、キミの明日の食事が全体的に減るから」
「殺生な!」
「嫌なら、必死で逃げるんだね」
そう言うと、数を数えだすヒバリさん。
私は慌てて走り出すが、やはり体重が増えた分、体が重い。
ちらりと後ろを振り向くと、ヒバリさんが既に獲物を捉えた目で迫ってきていた。
あ、ダメだ、こりゃ。後ろなんて見ていたら、何度捕まるかわかったもんじゃない。そう判断して、私はただひたすら前だけを見て並盛町を逃げ回った。
この鬼ごっこトレーニングは毎年行われ、並盛町の名物になったとかなんとか。
お陰様で、私はボンゴレいち逃げ足が速い女と、リボーンくんから評価を受けた。