並盛の盾 日常小話
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「節分の季節だね」
「恵方巻きですね!楽しみです!」
嬉々として海鮮恵方巻について語る私に、ヒバリさんは「歳の数だけ豆食べたらお腹いっぱいになるんじゃない?恵方巻入るの?」と、まあ、失礼なことを言う。
お腹いっぱいになるほど、歳はとっていない。
「ヒバリさんは、豆撒きするんですか?」
「しないよ。そういうのは信じないから」
たしかに信じなさそうだし、むしろ鬼の方が素足で逃げ出しそうである。
ヒバリさん自身が、ある意味、鬼神のようなものだし。
「そういうキミはするの?」
「うちは、お手玉投げつけあって終わりです」
「なに、その新しい風習」
いや、だって豆の掃除大変だから……。
お手玉の中身は小豆だから、許容範囲ってばあちゃんが言ってた。
「鬼役とかいないの?」
「鬼は人の中にいるので、自分以外の家族にぶつけます」
「ちょっと哲学的なのがムカつくね」
私が哲学するのに、なんの問題があるのか。
しかし、それを聞いたヒバリさんは、にんまりと笑みを浮かべて、「けど、それ面白いね」と言う。
「せっかくだ。竪谷家式豆撒き、しようよ」
「嫌に決まってるじゃないですか」
秒で拒否する私に、ヒバリさんは「キミの意見なんか僕が聞くとでも?」と聞いてきた。
思っていません。
別に、私は全力でお手玉投げつけられても痛くないけれど、恐らくヒバリさんは草壁さんとか風紀委員、それどころか学校を巻き込んでやるだろう。
家族の反応を見る限り、お手玉はあたると意外と痛い。
私の軽率なローカルネタ発言のせいで、節分に並盛で奇祭が行われるかと思うと、申し訳ない。
かくして敢行された、竪谷家式豆撒き。という名目の、ヒバリさんが一方的に生徒を標的にして、お手玉をぶつける祭り。
私は関わり合いたくないので、応接室でお茶を淹れ恵方巻を食べる。
コンパスで北北西を調べ、そちらに向かって座り恵方巻を頬張る。
ヒバリさんが行きつけのお寿司屋さんに作らせた、まぐろ三昧恵方巻、美味。
ヒバリさんに、「それは、ただの鉄火巻じゃないの?」と言われたが、エビとイカと卵も入っているので、恵方巻だ。
太巻き無言で食べれば、みんな恵方巻!
一言も発さないので、遠くから聞こえる阿鼻叫喚が一層痛々しい。
すまねえなぁ……。
一本食べ終わり、おかわりにもう一本頬張っていたら、誰かが入ってきた。
「……」
「……」
「……」
「……ふっ」
「……くくっ!」
ヒバリさんと目があい、草壁さんとも目があったがなぜか顔を背けて笑われた。
な、なに?
「気にしなくていいよ。ほら、食べな」
「はい、我々のことはお気になさらず」
「?」
言われるまま食べるのを再開するが、ずっと小さく笑われ、カメラを向けられては気になる。
完食し、「なんですか」と聞けばまだ笑いを引きずっている草壁さんが、「いえ、ハムスターのようだと思いまして」と言われた。
「恵方巻食べてるときは、みんなそうなりません?」
「エサを与えられて喜ぶ小動物だったよ」
そりゃ、美味しいものを食べていたら誰だって喜ぶものじゃないか。
「それはそうと、竪谷。僕の恵方巻は美味しかった?」
「僕の?」
「君の足りない頭じゃ、言葉足らずだったかな?僕が食べる予定だった恵方巻は、美味しかった?」
用意されていた恵方巻は二本。
一本は私の、もう一本は……。
「あっ」
「君の中の暴食の鬼を、僕が追い払ってあげるよ」
丁寧にアップしたヒバリさんによって、丁寧に締め上げられた。
「恵方巻きですね!楽しみです!」
嬉々として海鮮恵方巻について語る私に、ヒバリさんは「歳の数だけ豆食べたらお腹いっぱいになるんじゃない?恵方巻入るの?」と、まあ、失礼なことを言う。
お腹いっぱいになるほど、歳はとっていない。
「ヒバリさんは、豆撒きするんですか?」
「しないよ。そういうのは信じないから」
たしかに信じなさそうだし、むしろ鬼の方が素足で逃げ出しそうである。
ヒバリさん自身が、ある意味、鬼神のようなものだし。
「そういうキミはするの?」
「うちは、お手玉投げつけあって終わりです」
「なに、その新しい風習」
いや、だって豆の掃除大変だから……。
お手玉の中身は小豆だから、許容範囲ってばあちゃんが言ってた。
「鬼役とかいないの?」
「鬼は人の中にいるので、自分以外の家族にぶつけます」
「ちょっと哲学的なのがムカつくね」
私が哲学するのに、なんの問題があるのか。
しかし、それを聞いたヒバリさんは、にんまりと笑みを浮かべて、「けど、それ面白いね」と言う。
「せっかくだ。竪谷家式豆撒き、しようよ」
「嫌に決まってるじゃないですか」
秒で拒否する私に、ヒバリさんは「キミの意見なんか僕が聞くとでも?」と聞いてきた。
思っていません。
別に、私は全力でお手玉投げつけられても痛くないけれど、恐らくヒバリさんは草壁さんとか風紀委員、それどころか学校を巻き込んでやるだろう。
家族の反応を見る限り、お手玉はあたると意外と痛い。
私の軽率なローカルネタ発言のせいで、節分に並盛で奇祭が行われるかと思うと、申し訳ない。
かくして敢行された、竪谷家式豆撒き。という名目の、ヒバリさんが一方的に生徒を標的にして、お手玉をぶつける祭り。
私は関わり合いたくないので、応接室でお茶を淹れ恵方巻を食べる。
コンパスで北北西を調べ、そちらに向かって座り恵方巻を頬張る。
ヒバリさんが行きつけのお寿司屋さんに作らせた、まぐろ三昧恵方巻、美味。
ヒバリさんに、「それは、ただの鉄火巻じゃないの?」と言われたが、エビとイカと卵も入っているので、恵方巻だ。
太巻き無言で食べれば、みんな恵方巻!
一言も発さないので、遠くから聞こえる阿鼻叫喚が一層痛々しい。
すまねえなぁ……。
一本食べ終わり、おかわりにもう一本頬張っていたら、誰かが入ってきた。
「……」
「……」
「……」
「……ふっ」
「……くくっ!」
ヒバリさんと目があい、草壁さんとも目があったがなぜか顔を背けて笑われた。
な、なに?
「気にしなくていいよ。ほら、食べな」
「はい、我々のことはお気になさらず」
「?」
言われるまま食べるのを再開するが、ずっと小さく笑われ、カメラを向けられては気になる。
完食し、「なんですか」と聞けばまだ笑いを引きずっている草壁さんが、「いえ、ハムスターのようだと思いまして」と言われた。
「恵方巻食べてるときは、みんなそうなりません?」
「エサを与えられて喜ぶ小動物だったよ」
そりゃ、美味しいものを食べていたら誰だって喜ぶものじゃないか。
「それはそうと、竪谷。僕の恵方巻は美味しかった?」
「僕の?」
「君の足りない頭じゃ、言葉足らずだったかな?僕が食べる予定だった恵方巻は、美味しかった?」
用意されていた恵方巻は二本。
一本は私の、もう一本は……。
「あっ」
「君の中の暴食の鬼を、僕が追い払ってあげるよ」
丁寧にアップしたヒバリさんによって、丁寧に締め上げられた。