並盛の盾 日常小話
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沢田たちが十年前と入れ替わる中、どういうわけか十年前の純までもがこちらに来た。
基本的に回避をしないのは昔からだったが、今回ばかりは避けてほしかった。
純の身柄はこちらで預かっているが、自分のことはそっちのけで食事を作ったり、沢田たちの怪我の手当をしたり、メンタルケアをしたりと忙しく動き回っている。
「純、おいで」
夜。寝る前の純を捕まえ、無理矢理膝の上に乗せ、ゆっくりと頭を撫でる。
「え、あの?な?……え?」
戸惑ったような声を出す純に、「無理しなくていいよ」と言えば、びくり、と体を震わせた。
知ってるよ。キミが不安になると、それを誤魔化す為に仕事を始めるのを。
「いやいや、私は大丈夫だよ。なんせ、お姉さんですからね」
「純。いまのキミは、僕より年下なんだよ。僕の方が、“お兄さん”だ」
頼りなよ、と言うと、純の強張っていた体から力が抜けて、大きな瞳から涙が溢れてきた。
震えながら「怖い」と泣く姿は、十年前の小動物だった頃の純だった。間違っても、酔っぱらって酒瓶振り回したり、僕をからかって楽しむゾウではない。
昔はこんなに弱々しく可愛かったのに、どこであんなにふてぶてしくなったのか。
あのゾウはゾウで好きだけど……。
「大丈夫だよ、純。僕が守ってあげるから」
「わ……私は大丈夫ですから……。沢田くんたちを……守ってあげてください……」
「あの草食動物たちなら、大丈夫だよ。笹川と三浦も、沢田たちが勝手に守る。でも、キミのことは僕が絶対に守るよ」
僕の言葉に、「ごめんなさい……弱くて……」と言うが、弱いから守ると言うよりも、キミだから守るんだ。
「キミが強くても弱くても関係ないよ。僕はキミだから守るんだ」
僕がこういうことを言うと、いまの時代の純だと、僕をからかうか自分を守るなと怒るか。とにかく、可愛げはなさそうだ。
この、僕の腕の中で震え、すがる愛しい小動物の欠片でも可愛げを残していてくれれば、もう少し、僕だって素直になれるのに。
「純、キミがなにを言っても無理をやめないのはわかってるから止めないけど、せめて僕の前だけは無理しないで」
「ヒバリさん……。あの、無理を承知でお願いしたいのですが」
「ヤダって言っても、押し通すんでしょ。聞くだけ聞いてあげるから、言ってみな」
「私にも特訓つけてほしいんです」
「絶対にヤダ」
そんなことしたら、野ウサギがゾウに近づくじゃないか。
それに、付け焼き刃で手に入れた力ほど危険なものはない。
それでもやはり、純は絶対に押し通すという顔で「お願いします、ヒバリさん……!」とすがってくる。
「いまのキミじゃ、まず武器を扱うこともできないよ」
なにせ、あの斧を振り回すのに、純自体もそこそこ苦労していたからね。
もっと楽な武器があったが、どういうわけか他の武器は手からすっぽ抜けてばかりいた。
赤ん坊いわく、初代雲の守護者の恋人も巨斧以外扱えなかったから、純もそうだと当たりをつけたらしい。
どんな因果関係があるのかは知らないけれど、その当たりは見事に的中したわけだが。
「特訓をつけるにしても、まず、匣を開けられるようになって、その中にある武器を持ち上げられるようにならないとダメ。そして僕はキミに戦えるようになってほしくないから、自力でなんとかすること」
「イジワルだ……」
「イジワルだよ」
まあ、どうせ指輪を与える気もないから、まず開けられないけどね。と内心思いながら、放っておいたら、数日後、嬉々としながら純のアルマジロを抱えながら「開きましたー!ヒバリさんのイジワル!」と報告に来た。なに、その語尾。
「指輪、わたしてないけど」
「リボーンくんからもらいました、ヒバリさんのイジワル」
「その語尾やめてくれない」
「だって、わざと指輪わたさなかったんですよね?イジワルじゃないですか」
まあ、イジワルなんだけどね。
「それで?武器は持てた?」
「そのことなんですけど、なんですか、あの斧?!持てるわけないでしょ?!」
「未来のキミは、あれを楽々振り回していたよ」
「嘘……」
「本当」
じゃあ、持てるようになるといいね。などと思ってもいないことを言うと、悔しそうな顔をして訓練場へ走って行った。
少し煽りすぎたか、と思い、無理をしないか後からついて行ったら、へっぴり腰で一生懸命持ち上げようとしていた。
情けない、可愛い。
しかし、あれでは腰を痛める。
手伝いたくはないが、あのまま怪我をされたくはない。
少しだけ助言をしようと近寄ったら、「またイジワルしに来たんですか、ヒバリさん」と威嚇をされた。
「違うよ。そんな持ち方じゃ、怪我するから助言しに来たんだよ」
純の後ろに立ち、握り方を直し、「腰で持たない。腹筋使って、脚で踏ん張って」とアドバイスをすると、僅かながら持ち上がった。
「見ましたか!持ち上がりましたよ!」
「うん……。いまので持ち上がるとは思ってなかったけど……」
まあ、少しだけ持ち上がっただけだし……。と放っておいたら、さらに数日で持ち上げて素振りをするまでになっていた。
なに、そのポテンシャルの高さ。未来のキミはもっと苦労していたんだけど。
笑顔で巨斧を持って駆け寄る姿は、もう野ウサギとは言えない。
「ヒバリさん!持てるようになりましたよ!約束守ってくださいね!」
「はぁ、わかった。でも、僕は教えるなんてことしないよ。戦いは実戦で覚えて」
「え゛」
「特訓つけて、て言ったのはキミなんだから、逃げないでよね」
「そんな話、聞いてませんよー!」
その後、すべてが終わり純にその話をしたら「え、十年前の私こわっ」と自分のことなのにドン引きしていた。
基本的に回避をしないのは昔からだったが、今回ばかりは避けてほしかった。
純の身柄はこちらで預かっているが、自分のことはそっちのけで食事を作ったり、沢田たちの怪我の手当をしたり、メンタルケアをしたりと忙しく動き回っている。
「純、おいで」
夜。寝る前の純を捕まえ、無理矢理膝の上に乗せ、ゆっくりと頭を撫でる。
「え、あの?な?……え?」
戸惑ったような声を出す純に、「無理しなくていいよ」と言えば、びくり、と体を震わせた。
知ってるよ。キミが不安になると、それを誤魔化す為に仕事を始めるのを。
「いやいや、私は大丈夫だよ。なんせ、お姉さんですからね」
「純。いまのキミは、僕より年下なんだよ。僕の方が、“お兄さん”だ」
頼りなよ、と言うと、純の強張っていた体から力が抜けて、大きな瞳から涙が溢れてきた。
震えながら「怖い」と泣く姿は、十年前の小動物だった頃の純だった。間違っても、酔っぱらって酒瓶振り回したり、僕をからかって楽しむゾウではない。
昔はこんなに弱々しく可愛かったのに、どこであんなにふてぶてしくなったのか。
あのゾウはゾウで好きだけど……。
「大丈夫だよ、純。僕が守ってあげるから」
「わ……私は大丈夫ですから……。沢田くんたちを……守ってあげてください……」
「あの草食動物たちなら、大丈夫だよ。笹川と三浦も、沢田たちが勝手に守る。でも、キミのことは僕が絶対に守るよ」
僕の言葉に、「ごめんなさい……弱くて……」と言うが、弱いから守ると言うよりも、キミだから守るんだ。
「キミが強くても弱くても関係ないよ。僕はキミだから守るんだ」
僕がこういうことを言うと、いまの時代の純だと、僕をからかうか自分を守るなと怒るか。とにかく、可愛げはなさそうだ。
この、僕の腕の中で震え、すがる愛しい小動物の欠片でも可愛げを残していてくれれば、もう少し、僕だって素直になれるのに。
「純、キミがなにを言っても無理をやめないのはわかってるから止めないけど、せめて僕の前だけは無理しないで」
「ヒバリさん……。あの、無理を承知でお願いしたいのですが」
「ヤダって言っても、押し通すんでしょ。聞くだけ聞いてあげるから、言ってみな」
「私にも特訓つけてほしいんです」
「絶対にヤダ」
そんなことしたら、野ウサギがゾウに近づくじゃないか。
それに、付け焼き刃で手に入れた力ほど危険なものはない。
それでもやはり、純は絶対に押し通すという顔で「お願いします、ヒバリさん……!」とすがってくる。
「いまのキミじゃ、まず武器を扱うこともできないよ」
なにせ、あの斧を振り回すのに、純自体もそこそこ苦労していたからね。
もっと楽な武器があったが、どういうわけか他の武器は手からすっぽ抜けてばかりいた。
赤ん坊いわく、初代雲の守護者の恋人も巨斧以外扱えなかったから、純もそうだと当たりをつけたらしい。
どんな因果関係があるのかは知らないけれど、その当たりは見事に的中したわけだが。
「特訓をつけるにしても、まず、匣を開けられるようになって、その中にある武器を持ち上げられるようにならないとダメ。そして僕はキミに戦えるようになってほしくないから、自力でなんとかすること」
「イジワルだ……」
「イジワルだよ」
まあ、どうせ指輪を与える気もないから、まず開けられないけどね。と内心思いながら、放っておいたら、数日後、嬉々としながら純のアルマジロを抱えながら「開きましたー!ヒバリさんのイジワル!」と報告に来た。なに、その語尾。
「指輪、わたしてないけど」
「リボーンくんからもらいました、ヒバリさんのイジワル」
「その語尾やめてくれない」
「だって、わざと指輪わたさなかったんですよね?イジワルじゃないですか」
まあ、イジワルなんだけどね。
「それで?武器は持てた?」
「そのことなんですけど、なんですか、あの斧?!持てるわけないでしょ?!」
「未来のキミは、あれを楽々振り回していたよ」
「嘘……」
「本当」
じゃあ、持てるようになるといいね。などと思ってもいないことを言うと、悔しそうな顔をして訓練場へ走って行った。
少し煽りすぎたか、と思い、無理をしないか後からついて行ったら、へっぴり腰で一生懸命持ち上げようとしていた。
情けない、可愛い。
しかし、あれでは腰を痛める。
手伝いたくはないが、あのまま怪我をされたくはない。
少しだけ助言をしようと近寄ったら、「またイジワルしに来たんですか、ヒバリさん」と威嚇をされた。
「違うよ。そんな持ち方じゃ、怪我するから助言しに来たんだよ」
純の後ろに立ち、握り方を直し、「腰で持たない。腹筋使って、脚で踏ん張って」とアドバイスをすると、僅かながら持ち上がった。
「見ましたか!持ち上がりましたよ!」
「うん……。いまので持ち上がるとは思ってなかったけど……」
まあ、少しだけ持ち上がっただけだし……。と放っておいたら、さらに数日で持ち上げて素振りをするまでになっていた。
なに、そのポテンシャルの高さ。未来のキミはもっと苦労していたんだけど。
笑顔で巨斧を持って駆け寄る姿は、もう野ウサギとは言えない。
「ヒバリさん!持てるようになりましたよ!約束守ってくださいね!」
「はぁ、わかった。でも、僕は教えるなんてことしないよ。戦いは実戦で覚えて」
「え゛」
「特訓つけて、て言ったのはキミなんだから、逃げないでよね」
「そんな話、聞いてませんよー!」
その後、すべてが終わり純にその話をしたら「え、十年前の私こわっ」と自分のことなのにドン引きしていた。