並盛の盾 日常小話
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「ヒバリさん、聞いてくださいよ~!」
「ヤダ」
その入りからくるキミの話は大体ろくでもないから、ヤダ。聞きたくない。と言っても、竪谷はこっちの話も聞かずに「実はですね」と先を話し始める。
ヤダって言ったじゃん。
「実は、近所のファミレスに、ソフトクリームまき放題ができましてね」
「はい、聞いた。おしまい」
「最後まで聞いてくれてもいいんじゃないですか?」
話の落ちが見えたから、終わらせたんだよ。どうせ、それに付き合えとか言うんでしょ。
もう、聞かないよ。と態度で示すも、竪谷は独り言のように続きを話す。しぶとい。
「二五〇円で、ソフトクリームまき放題なんですよ。魅力的じゃないですか?」
「……」
「一緒に行ってくれますよね」
「なんで、断定的なの」
「ヒバリさんは同情的になると、私のお願いを渋々聞いてくれるからです」
図々しいと思うし、いまの話の中のどこに同情する要素があったのか。僕の問いに、竪谷は真面目な顔で「私が一人でソフトクリームまいてきゃっきゃしてる姿は可哀想でしょ」と言うから、ちょっと可哀想だなと思ってしまった。
それに、放課後に竪谷と出かけるのは悪くないかも、と思い、「仕方がないから、行ってあげる」と言えば、嬉しそうにはしゃぐので、どちらが大人かわかったものじゃない。
放課後。
竪谷に連れて行かれたファミレスに入ると、蜘蛛の子を散らすようにファミレスから人がいなくなった。うん、それでいいよ。
「わーい!ソフトクリーム!ソフトクリーム!」
「そんなにソフトクリーム好きなの?」
「え、別に。まくことの楽しみが大切なんですよ、これは」
理解できない、と適当に飲み物を頼むと、竪谷はそそくさとソフトクリームをまきに行った。
席からそのソフトクリームのコーンを持ってまいている姿を見ていたが、たぶん、面白い物が見られるだろうな。
竪谷はそれなりに器用だ。お菓子作りを趣味にしているくらいだから、正確にまけるだろう。しかし、無駄なチャレンジ精神と度胸があるために、やめ時を見誤る。
今回もその無駄なチャレンジ精神と度胸は発揮され、そしてさらに不運体質も発揮されたのか、機械が壊れたらしい。
慌てふためくその姿だけでも面白いのに、パニックになった竪谷は「ヒ、ヒバリさーん!これ、こ、え、これ!!ど!え!?」となぜか僕を呼ぶ。
面白過ぎて席で笑いを必死に耐える僕に、竪谷は怒りながら「笑ってないで助けて!」とさらに叫ぶ。
僕じゃなくて、店員を呼べばいいのに。
仕方がない、と席を立ち、パニックになりながらも器用にソフトクリームをまいていく竪谷に近寄る。
「助けてヒバリさんー!」
「はい、はい」
コンセントを抜いて止めてあげると、一歩でも動けば倒壊しそうなソフトクリームを持った竪谷が「お皿持ってきてください……」と情けなく言う。
お皿を差し出すと、べちゃり、とお皿にソフトクリームを倒した。
「たくさんまけてよかったね。楽しかった?」
「テンパりすぎて、よくわからないですね……」
席まで戻り、思っていたのと違うソフトクリームの完成形をスプーンで掬って食べる竪谷に、「ねえ、一口頂戴」と言うと、自分が食べていたスプーンでソフトクリームを掬って、「はい、どーぞ。あーん」と言うから、本当にこの子のこういうところダメだと思う。
「僕はキミのその無神経なところ、嫌いじゃないけどさ。もう少し、考えてやった方がいいよ」
「むっ。誰が、無神経ですか」
「普通、自分が使ってたスプーンで食べさす?」
そう言うと、数秒考えたあとに気がついた顔をしたが、もう遅い。
竪谷の手をとり、スプーンを口にする。
「ごちそうさま」
竪谷の顔は、クーラーの利いた室内だというのに真っ赤になっていた。
なんだ、そんな顔できる程度には気にするんだ。
「そのスプーン、まだ使うの?」
「や、その……」
そろり、と呼びのスプーンに手を伸ばすので「ふーん、なんかそれって僕を意識してるみたいだね」とからかったら、さらに顔を赤くした。
面白い。
「冗談だよ。ほら、新しいの使いな」
「い、いや!これ使いますよ!ですが、勘違いしないでください!下心はなく、洗い物を増やすのは店員さんに申し訳ないという思いでですね!」
聞いてもいないことを口早に言う竪谷に、「わかったから」と言うも顔から赤みが引かない。
そんなに恥ずかしがるなんて、思ってもいなかった。
「なにかアイス頼む?奢ってあげるよ」
「パフェ食べます」
「夕飯入らなくなるよ」
「パフェが夕食です」
不健康極まりないが、たぶんやけ食いなのだろう。
メニューを差し出すと、季節のパフェを頼んでまたちびちびとソフトクリームを食べ始めた。
「今日は楽しかったね。また一緒に来てあげてもいいよ」
「ヒバリさん、ソフトクリームをまいて楽しんだんじゃなくて、私が慌てふためく姿見て楽しんでただけじゃないですか」
「キミの観察はいい娯楽になるね」
「お楽しみいただけたでしょうか……」
「とても」
僕の満足した顔を見て、悔しそうな顔をする竪谷。その顔すら、僕の娯楽になる。
「ヤダ」
その入りからくるキミの話は大体ろくでもないから、ヤダ。聞きたくない。と言っても、竪谷はこっちの話も聞かずに「実はですね」と先を話し始める。
ヤダって言ったじゃん。
「実は、近所のファミレスに、ソフトクリームまき放題ができましてね」
「はい、聞いた。おしまい」
「最後まで聞いてくれてもいいんじゃないですか?」
話の落ちが見えたから、終わらせたんだよ。どうせ、それに付き合えとか言うんでしょ。
もう、聞かないよ。と態度で示すも、竪谷は独り言のように続きを話す。しぶとい。
「二五〇円で、ソフトクリームまき放題なんですよ。魅力的じゃないですか?」
「……」
「一緒に行ってくれますよね」
「なんで、断定的なの」
「ヒバリさんは同情的になると、私のお願いを渋々聞いてくれるからです」
図々しいと思うし、いまの話の中のどこに同情する要素があったのか。僕の問いに、竪谷は真面目な顔で「私が一人でソフトクリームまいてきゃっきゃしてる姿は可哀想でしょ」と言うから、ちょっと可哀想だなと思ってしまった。
それに、放課後に竪谷と出かけるのは悪くないかも、と思い、「仕方がないから、行ってあげる」と言えば、嬉しそうにはしゃぐので、どちらが大人かわかったものじゃない。
放課後。
竪谷に連れて行かれたファミレスに入ると、蜘蛛の子を散らすようにファミレスから人がいなくなった。うん、それでいいよ。
「わーい!ソフトクリーム!ソフトクリーム!」
「そんなにソフトクリーム好きなの?」
「え、別に。まくことの楽しみが大切なんですよ、これは」
理解できない、と適当に飲み物を頼むと、竪谷はそそくさとソフトクリームをまきに行った。
席からそのソフトクリームのコーンを持ってまいている姿を見ていたが、たぶん、面白い物が見られるだろうな。
竪谷はそれなりに器用だ。お菓子作りを趣味にしているくらいだから、正確にまけるだろう。しかし、無駄なチャレンジ精神と度胸があるために、やめ時を見誤る。
今回もその無駄なチャレンジ精神と度胸は発揮され、そしてさらに不運体質も発揮されたのか、機械が壊れたらしい。
慌てふためくその姿だけでも面白いのに、パニックになった竪谷は「ヒ、ヒバリさーん!これ、こ、え、これ!!ど!え!?」となぜか僕を呼ぶ。
面白過ぎて席で笑いを必死に耐える僕に、竪谷は怒りながら「笑ってないで助けて!」とさらに叫ぶ。
僕じゃなくて、店員を呼べばいいのに。
仕方がない、と席を立ち、パニックになりながらも器用にソフトクリームをまいていく竪谷に近寄る。
「助けてヒバリさんー!」
「はい、はい」
コンセントを抜いて止めてあげると、一歩でも動けば倒壊しそうなソフトクリームを持った竪谷が「お皿持ってきてください……」と情けなく言う。
お皿を差し出すと、べちゃり、とお皿にソフトクリームを倒した。
「たくさんまけてよかったね。楽しかった?」
「テンパりすぎて、よくわからないですね……」
席まで戻り、思っていたのと違うソフトクリームの完成形をスプーンで掬って食べる竪谷に、「ねえ、一口頂戴」と言うと、自分が食べていたスプーンでソフトクリームを掬って、「はい、どーぞ。あーん」と言うから、本当にこの子のこういうところダメだと思う。
「僕はキミのその無神経なところ、嫌いじゃないけどさ。もう少し、考えてやった方がいいよ」
「むっ。誰が、無神経ですか」
「普通、自分が使ってたスプーンで食べさす?」
そう言うと、数秒考えたあとに気がついた顔をしたが、もう遅い。
竪谷の手をとり、スプーンを口にする。
「ごちそうさま」
竪谷の顔は、クーラーの利いた室内だというのに真っ赤になっていた。
なんだ、そんな顔できる程度には気にするんだ。
「そのスプーン、まだ使うの?」
「や、その……」
そろり、と呼びのスプーンに手を伸ばすので「ふーん、なんかそれって僕を意識してるみたいだね」とからかったら、さらに顔を赤くした。
面白い。
「冗談だよ。ほら、新しいの使いな」
「い、いや!これ使いますよ!ですが、勘違いしないでください!下心はなく、洗い物を増やすのは店員さんに申し訳ないという思いでですね!」
聞いてもいないことを口早に言う竪谷に、「わかったから」と言うも顔から赤みが引かない。
そんなに恥ずかしがるなんて、思ってもいなかった。
「なにかアイス頼む?奢ってあげるよ」
「パフェ食べます」
「夕飯入らなくなるよ」
「パフェが夕食です」
不健康極まりないが、たぶんやけ食いなのだろう。
メニューを差し出すと、季節のパフェを頼んでまたちびちびとソフトクリームを食べ始めた。
「今日は楽しかったね。また一緒に来てあげてもいいよ」
「ヒバリさん、ソフトクリームをまいて楽しんだんじゃなくて、私が慌てふためく姿見て楽しんでただけじゃないですか」
「キミの観察はいい娯楽になるね」
「お楽しみいただけたでしょうか……」
「とても」
僕の満足した顔を見て、悔しそうな顔をする竪谷。その顔すら、僕の娯楽になる。