並盛の盾 日常小話
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「ヒバリさん、人生ゲームを知っていますか?」
「なに、突然」
神妙な顔をして突然聞いてきた竪谷に聞き返せば、「ご存じでしょうか?」ともう一度臆せず聞いてくる。
普段、あんな僕に怯えているのに、変なところで押しが強くなる。
本を置いて「存在は知ってるよ」と言えば、「やったことはありますか?」とさらに聞いてくる。
あると思ってるの、この僕が。
「ですよね、ですよね。ヒバリさんが、人と一緒に遊ぶなんてないですよね」
「言い方が気に食わないんだけど、なにが言いたいの」
「初人生ゲームしませんか、ヒバリさん!」
朝から気になっていた大きな袋から人生ゲームの箱を取り出し、そんなことを言いだした。
なんで、そんな物を持って来たんだろう、この子……。
「学校に玩具を持って来ないで」
「まーまー」
なにが、「まーまー」なんだか……。
人の話を聞かず、机にボードを広げていく竪谷に「一回だけだからね」と前置きをしてから、車の形をした駒を配当される。
まあ、結果は見えているんだけどね。
「どうして……」
顔を覆う竪谷の姿が存外面白くて、顔をそらして笑っていたら「声出して笑われた方がまだマシです!」と言われた。
そんな、声上げて笑うなんて品のないことできるわけないでしょ。
大体予想はしていたけれど、竪谷のルーレットで当たる数字は一か二で牛歩の進み、たまに大きい数字が出ても止まるマスはマイナスマスで借金がかさむ。運がないにも程がある。
「どうする、やめる?」
どうせ、ゴールも総資産も僕の勝ちなのは確定なんだし、と提案するも、諦め悪く「大逆転チャンスがあるかも知れないじゃないですか!」と僕にルーレットを回させる。
「はい、六。……また子供が生まれたね」
「ヒバリさん、四人目じゃないですか?」
どんだけ生まれるんですか、と言われたが、そんなことを言われても勝手に生まれてくるんだから、僕に言われても困る。
車に乗りきらず、横にして乗せると、独り身の竪谷が「子だくさん……羨ましい……」と言ってくる。
「あげないよ」
「意外と、倫理観ちゃんとしてるんですね」
「どういう意味?」
「なんでもありません」
僕が自分の子供を他人にわたすタイプに見えるの?と聞くと、真剣に考えてから「そもそも結婚できるかどうかすら謎ですね」と言うから、余った駒を額めがけて投げつけてやった。
どうせ、痛くも痒くもないんだろうけども。
「だって、ヒバリさん。人を好きになるとか、強さ関係なく興味を持つとかできるんですか?」
「できるよ」
「?」
よくわからないという顔で首を傾げる竪谷に、もう一つ駒を投げつける。
僕だって人間だよ、それくらいできる。
「じゃあ、ヒバリさんの好きなタイプってどんな子なんですか」
「鈍感で、抜けてて、図々しくて、よく表情の変わる子」
「いやに具体的ですね。いるんですか、好きな子」
人生ゲームそっちのけで興味に満ちた目を向けてくる竪谷に、「ルーレット回したら」と先を促すが、「え~、答えてくださいよ~」と完全に目的が変わっている。
さっきまで、逆転勝利がどうの言っていたのに……。人のことを気分屋だなどと言えた義理だろうか。
「はあ……いないよ……」
「またまたぁ!そんなに具体的に言っておいて、いませんで済ませませんよ~!」
ヒバリさんの好きな子の話、聞きたいな!と興奮気味で食いついてくる竪谷に、「竪谷」と静かに名前を呼ぶとようやく正気に戻ったのか、居住まいを正した。
「しつこいよ」
「はい、誠にすみません」
大人しくカラカラと回して、また一をだした竪谷に「まあ、好きになったとしても僕からは言わないけどね」と言うと、「なんでですか?」と不思議そうな顔をする。
いいから、一マス進めて。
「だって、僕が好きだって認めたら僕の負けでしょ。そんなの我慢ならないよ」
「え~、意地っ張り……。そんなことしてると、誰かに奪われちゃいますよ……」
「そうならないように、色々と仕向けるんでしょ」
「直接口説かれるのとでは、効果は雲泥の差ですよ」
わかった風な口をきく竪谷にムカつきながら、「キミは顔と声のいい男に口説かれたら、すぐ落ちそうだね」と嫌味のつもりで言ったのに、「当たり前じゃないですか」と即答されて、苛立ちが増す。
「顔と声のいい男に口説かれて喜ばない女はいないでしょ。知りませんけど」
「……ふーん。例えば、あの人とか?」
誰とは言っていないのに「ディーノくんですか?」とすぐに思いつくということは、普段から口説かれているということなのか。
「ディーノくんは、毎秒息をするようにと口説いてくるので、気を強く持たないと勘違いして恋しそうになりますね」
「へぇ……」
ムカつく。端的に言って、ムカつく。この子が満更でもなさそうな顔をしているのも、あの人が軽々にこの子を口説いているのも気に食わない。
もうゲームの気分ではなくなった僕に、「ヒバリさんも軽率に私を口説いてくれてもいいですよ」と言いだすから、固まった。
「なんで僕が」
「え、ご自分の顔と声がいいのをご存じない?」
「言い方がムカつく。……年下は眼中ないんじゃなかったの」
「恋愛に関してはですけど、口説かれる分には、年齢関係ありません」
ちょっと期待した自分が馬鹿みたいだ。
「……馬鹿竪谷」
「え、なんで怒られたんですか、私」
「もういいよ、ゲームも終わり。片付けて」
「え~」
文句を言いつつ箱に戻し作業を再開する竪谷に、「もし、僕が口説いたらキミは勘違いする?」と聞いたら、「え、さすがにしませんよ」と即答された。
「だって、ヒバリさんですよ。私相手に、本気で口説くとは思いませんよ」
でも、言われるのは嬉しいのでいっぱい言ってください♡と甘えてこられて、一瞬機嫌がよくなりそうだったが、結局、僕の言葉を真には受けていないということに変わりはない。
「絶対に言ってあげないから」
「え~、ケチ~」
「なに、突然」
神妙な顔をして突然聞いてきた竪谷に聞き返せば、「ご存じでしょうか?」ともう一度臆せず聞いてくる。
普段、あんな僕に怯えているのに、変なところで押しが強くなる。
本を置いて「存在は知ってるよ」と言えば、「やったことはありますか?」とさらに聞いてくる。
あると思ってるの、この僕が。
「ですよね、ですよね。ヒバリさんが、人と一緒に遊ぶなんてないですよね」
「言い方が気に食わないんだけど、なにが言いたいの」
「初人生ゲームしませんか、ヒバリさん!」
朝から気になっていた大きな袋から人生ゲームの箱を取り出し、そんなことを言いだした。
なんで、そんな物を持って来たんだろう、この子……。
「学校に玩具を持って来ないで」
「まーまー」
なにが、「まーまー」なんだか……。
人の話を聞かず、机にボードを広げていく竪谷に「一回だけだからね」と前置きをしてから、車の形をした駒を配当される。
まあ、結果は見えているんだけどね。
「どうして……」
顔を覆う竪谷の姿が存外面白くて、顔をそらして笑っていたら「声出して笑われた方がまだマシです!」と言われた。
そんな、声上げて笑うなんて品のないことできるわけないでしょ。
大体予想はしていたけれど、竪谷のルーレットで当たる数字は一か二で牛歩の進み、たまに大きい数字が出ても止まるマスはマイナスマスで借金がかさむ。運がないにも程がある。
「どうする、やめる?」
どうせ、ゴールも総資産も僕の勝ちなのは確定なんだし、と提案するも、諦め悪く「大逆転チャンスがあるかも知れないじゃないですか!」と僕にルーレットを回させる。
「はい、六。……また子供が生まれたね」
「ヒバリさん、四人目じゃないですか?」
どんだけ生まれるんですか、と言われたが、そんなことを言われても勝手に生まれてくるんだから、僕に言われても困る。
車に乗りきらず、横にして乗せると、独り身の竪谷が「子だくさん……羨ましい……」と言ってくる。
「あげないよ」
「意外と、倫理観ちゃんとしてるんですね」
「どういう意味?」
「なんでもありません」
僕が自分の子供を他人にわたすタイプに見えるの?と聞くと、真剣に考えてから「そもそも結婚できるかどうかすら謎ですね」と言うから、余った駒を額めがけて投げつけてやった。
どうせ、痛くも痒くもないんだろうけども。
「だって、ヒバリさん。人を好きになるとか、強さ関係なく興味を持つとかできるんですか?」
「できるよ」
「?」
よくわからないという顔で首を傾げる竪谷に、もう一つ駒を投げつける。
僕だって人間だよ、それくらいできる。
「じゃあ、ヒバリさんの好きなタイプってどんな子なんですか」
「鈍感で、抜けてて、図々しくて、よく表情の変わる子」
「いやに具体的ですね。いるんですか、好きな子」
人生ゲームそっちのけで興味に満ちた目を向けてくる竪谷に、「ルーレット回したら」と先を促すが、「え~、答えてくださいよ~」と完全に目的が変わっている。
さっきまで、逆転勝利がどうの言っていたのに……。人のことを気分屋だなどと言えた義理だろうか。
「はあ……いないよ……」
「またまたぁ!そんなに具体的に言っておいて、いませんで済ませませんよ~!」
ヒバリさんの好きな子の話、聞きたいな!と興奮気味で食いついてくる竪谷に、「竪谷」と静かに名前を呼ぶとようやく正気に戻ったのか、居住まいを正した。
「しつこいよ」
「はい、誠にすみません」
大人しくカラカラと回して、また一をだした竪谷に「まあ、好きになったとしても僕からは言わないけどね」と言うと、「なんでですか?」と不思議そうな顔をする。
いいから、一マス進めて。
「だって、僕が好きだって認めたら僕の負けでしょ。そんなの我慢ならないよ」
「え~、意地っ張り……。そんなことしてると、誰かに奪われちゃいますよ……」
「そうならないように、色々と仕向けるんでしょ」
「直接口説かれるのとでは、効果は雲泥の差ですよ」
わかった風な口をきく竪谷にムカつきながら、「キミは顔と声のいい男に口説かれたら、すぐ落ちそうだね」と嫌味のつもりで言ったのに、「当たり前じゃないですか」と即答されて、苛立ちが増す。
「顔と声のいい男に口説かれて喜ばない女はいないでしょ。知りませんけど」
「……ふーん。例えば、あの人とか?」
誰とは言っていないのに「ディーノくんですか?」とすぐに思いつくということは、普段から口説かれているということなのか。
「ディーノくんは、毎秒息をするようにと口説いてくるので、気を強く持たないと勘違いして恋しそうになりますね」
「へぇ……」
ムカつく。端的に言って、ムカつく。この子が満更でもなさそうな顔をしているのも、あの人が軽々にこの子を口説いているのも気に食わない。
もうゲームの気分ではなくなった僕に、「ヒバリさんも軽率に私を口説いてくれてもいいですよ」と言いだすから、固まった。
「なんで僕が」
「え、ご自分の顔と声がいいのをご存じない?」
「言い方がムカつく。……年下は眼中ないんじゃなかったの」
「恋愛に関してはですけど、口説かれる分には、年齢関係ありません」
ちょっと期待した自分が馬鹿みたいだ。
「……馬鹿竪谷」
「え、なんで怒られたんですか、私」
「もういいよ、ゲームも終わり。片付けて」
「え~」
文句を言いつつ箱に戻し作業を再開する竪谷に、「もし、僕が口説いたらキミは勘違いする?」と聞いたら、「え、さすがにしませんよ」と即答された。
「だって、ヒバリさんですよ。私相手に、本気で口説くとは思いませんよ」
でも、言われるのは嬉しいのでいっぱい言ってください♡と甘えてこられて、一瞬機嫌がよくなりそうだったが、結局、僕の言葉を真には受けていないということに変わりはない。
「絶対に言ってあげないから」
「え~、ケチ~」