並盛の盾 日常小話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここ最近、純と会えていない。
また、仕事にかかりきりになって休むのを忘れているんだろうな、と思いながらダメもとで純に電話をかけると、意外にもすんなり出た。
『どうした、ディーノくん』
「いや、純に会いたいからいまから行ってもいいか?」
『いいけど、ちょっと相手してあげられないかも。待ってもらっちゃうけど、いい?』
「いいよ、ずっと待ってる」
アポをとりつけ風紀財団の事務室に行くと、鬼気迫る勢いで純が仕事をしていた。
修羅場なのだろうか、と思い、静かに空いている事務イスに座って純の横顔を見ていると、職員が俺とロマーリオにお茶を持ってきてくれた。
礼を言い受け取り、また純の横顔を眺める。
普段の柔らかい表情も好きだけど、こういう引き締まった表情も悪くないんだよな。
一区切りついたのか、大きく息をつきながら肩を回す純に「お疲れ」と声をかけると、やっとこちらに向かって申し訳なさそうな笑みを浮かべ「ごめんね、ディーノくん」と言った。
「修羅場?」
「ちょっと、今日中に終わらせないといけない案件が出てきちゃってね。暇じゃない?」
「純ががんばってるところ見られて楽しいよ」
「酷い顔してるでしょ」
「一生懸命な顔してる」
俺の言葉に純は照れたように笑い、「なにか、お菓子持ってくるよ」と腰を上げようとするから「それより、話し相手になってほしいな」と言うと、心配そうに「なにかあった?」と聞いてきた。
「最近、純と話せてなくて寂しくなった」
「え~、彼女じゃん。しょうがないなぁ。純さんが、休憩がてら話し相手になってやろうじゃないか」
茶化しながらこちらに向き直る純に「元気してたか?」と聞くと、「元気だけど、そろそろ休まないと、下の子たちに袋叩きにあいそう」と冗談めいて言ったが、職員たちが「竪谷さん寝ろ!」「休め!」「デート行ってこい!」と口々に言いだすから、しょんぼりと肩を落としていた。
懐かれてるな、と言うと「わかってるよ」と苦笑いをした。
「じゃあ、このあとデートするか?」
「うーん、今日はちょっと難しいから、明日でもいい?明日なら、一日空くから」
「一日も俺の為に使ってくれるのか?」
「寂しがりやな坊やの為に使ってあげようじゃないか」
「ありがとうな、愛してるぜ。純」
「私も愛してるぜ、ディーノくん」
ここでの愛してるぜの用法は、俺と純では完全に差異があるのはわかっているから悲しくなる。
その気がないなら言わないでほしい気もするが、冗談でも言われたい自分がいるから厄介だ。
じゃあ、明日の予定を決めようというとき、「純、この書類の件で」と恭弥が入ってきて職員たちが凍り付いた。
さながら、男女間の修羅場を目撃したかのような凍り付き方だ。
俺も恭弥も純も一切そういう関係ではないのだが、俺は気にしないが恭弥がキレるのは歴然。そりゃ、凍り付きもするか。
見るからに不機嫌になりながら武器を構える恭弥に、一応臨戦態勢をとる。
「なにしに来たの」
「なにって、純に会いに来たんだよ」
「見た通り、純はいま忙しいんだから帰って」
「明日の約束したら、帰るって」
明日の約束……?と片眉をあげ、冷え冷えとした視線を純に投げてよこす恭弥から庇うように前に立つと、恭弥の苛立ちはさらに増した。
「純、明日はちゃんと休んでって言ったよね」
「遊ぶのも休みのうち」
「屁理屈こねないで」
とにかく、この人には帰ってもらうよ。とトンファーを振るう恭弥に応戦して、俺も鞭を振るう。
職員たちが悲鳴をあげながら机の下に隠れるのが見えた。
ちょっとやべぇな、と恭弥に場所を変えようと提案しようとした瞬間、バンッ!と机を叩く音が鳴り響き、俺と恭弥の動きが止まった。
「恭弥♡ディーノくん♡純ちゃんのお願い聞いてほしいな♡これ以上、私の部下を怖がらせるな♡出て行け♡」
声は可愛らしく平静を装うとしているのに、顔が完全にキレたときの顔で純に言われ、俺と恭弥とロマーリオは恭弥の執務室へと移動した。
俺も恭弥も純に怒られたというショックから立ち直れずソファーで項垂れていると、哲がお茶を淹れてくれた。
「あーあ、これ絶対、明日の約束も流れた」
「それでいいんだよ。あの子は、ちゃんと休ませなきゃ」
「恭弥はいいよな。純に会おうと思えば、いつだって会えるんだから」
羨ましそうに言う俺に、恭弥は「いつでも会えないよ」と言う。
「純の仕事の邪魔できないし、僕は僕で世界中飛び回ってるから、会いたいときに会えない。連れて回るわけにもいかないしね」
「……ままならないな」
「ままならないんだよ」
盛大につかれたため息は、純本人は届かないのだろうな。
とにかく、約束が流れたことに気落ちし、アジトに帰ってすぐシャワー浴びて眠ってしまった。
デート、したかったな……。
「……ん」
「んん……?」
誰かが呼んでいる気がする。
気だるい頭を動かすと、ぼんやりと視界が開けてきて音声もはっきりしてきた。
「ディーノくん、起きて」
「ん……純……?……純?!」
「おはよう、お寝坊さん。デートには行かないの?」
横になる俺を覗き込むようにしていた純に驚き、思わず飛び起きると「ハーイ、ハニー」といつもの冗談がくる。
「なんで、純が……」
「なんでって、今日出かける約束したじゃん」
「でも、俺。昨日、純のこと怒らせたけど……」
「いや、そんな約束流すほどの怒りじゃなかったし。ちゃんと、出て行ってくれたしさ」
そんなに気にしてたの、と笑う純に「超気にしてた」と言ったら、申し訳なさそうに「ごめん」と謝られた。
いや、悪いのは俺たちなんだけどな。
もう怒ってないか?と聞くと、いつもの柔らかい笑顔で「怒ってないよ」と言うから、安心して抱き着いてしまった。
「よかった~」
「はいはい、ほら、早く着替えて出かけよう」
「わかった」
純にはエントランスで待っていてもらい、クローゼットから服を選ぶ。
昨日の時点でわかっていたら服もちゃんと選んだんだけどな、と思っていたら、ケータイに着信とメッセージが入っていた。
確認すれば、すべて純からで、今日の待ち合わせ時間の連絡だった。ロマーリオに確認したら、昨夜、純から取り次ぎがあったが俺は寝ていて取り次げなかったと言われ、血の気が引いた。
危うく、自分でデートの約束をふいにするところだったのか。
純にそのことを謝ると、特に気にした風もなく「可愛い寝顔を拝めて役得だったよ」と言われた。うっ、そうか、寝顔見られたのか……。
特にどこに行くとか決めていなかったから、映画でも観てから飲み歩きでもするかと提案すると、嬉しそうに乗ってきた。
飲むの好きだな、お前は。
なにを観ようかと、上映中の映画一覧を見ていると、「これにしよう!」と日本のホラー映画を選択する純に「いいのか?」と確認を取る。
「お前、ホラーダメだろ?」
「観るのは好きなんだよ。それに、一人で観られないからこそ、ディーノくんがいるいまがチャンス」
「いいけど、夜大丈夫か?」
「……お泊りしていっていい?」
「……いいよ。その代わり、今日はギリギリまでデートしてもらうからな」
「オッケー!」
軽いな、と思いながらチケットを買い席に着くと、最初はワクワクしながら観ていたのに、中盤からはずっと俺の腕にしがみついていた。
だから言ったのに、と俺は俺で純が怯える姿ばかり見ていて映画の方はさっぱりだった。
軽く食事をとる為に入ったカフェで、純が一生懸命、映画の話をするのを見ているだけで楽しかった。
「けど、夏はホラーだね」
納涼、納涼。と満足そうな純に、「夜、なにもないといいな」と言えば「ディーノくんのイジワル」と唇を尖らせた。
「けど、今日は本当に俺に付き合わせてよかったのか?恭弥の言うとおり、休んでた方がよかったんじゃないか?」
「どうせ、家にいてもお酒飲んで寝てるだけだし。外に出て遊んでる方が、健康的だし、建設的でしょ」
「なら、よかった。恭弥には、なんか言われなかったか?俺と遊ぶことについて」
「散々文句言われたし拗ねられたけど、予定調節して遊びに行こうって言ったら機嫌治った」
「あいつもチョロいよな、なんだかんだで」
「私のこと大好きだから、恭弥は」
「俺だって、純のこと大好きだぜ?」
「知ってるよ」
「俺と恭弥で二股かけるなんて、悪い女」
「お嫌い?」
「超好き」
いつものやり取りに笑いあっているこの瞬間が、一生続けばいいのにな。
また、仕事にかかりきりになって休むのを忘れているんだろうな、と思いながらダメもとで純に電話をかけると、意外にもすんなり出た。
『どうした、ディーノくん』
「いや、純に会いたいからいまから行ってもいいか?」
『いいけど、ちょっと相手してあげられないかも。待ってもらっちゃうけど、いい?』
「いいよ、ずっと待ってる」
アポをとりつけ風紀財団の事務室に行くと、鬼気迫る勢いで純が仕事をしていた。
修羅場なのだろうか、と思い、静かに空いている事務イスに座って純の横顔を見ていると、職員が俺とロマーリオにお茶を持ってきてくれた。
礼を言い受け取り、また純の横顔を眺める。
普段の柔らかい表情も好きだけど、こういう引き締まった表情も悪くないんだよな。
一区切りついたのか、大きく息をつきながら肩を回す純に「お疲れ」と声をかけると、やっとこちらに向かって申し訳なさそうな笑みを浮かべ「ごめんね、ディーノくん」と言った。
「修羅場?」
「ちょっと、今日中に終わらせないといけない案件が出てきちゃってね。暇じゃない?」
「純ががんばってるところ見られて楽しいよ」
「酷い顔してるでしょ」
「一生懸命な顔してる」
俺の言葉に純は照れたように笑い、「なにか、お菓子持ってくるよ」と腰を上げようとするから「それより、話し相手になってほしいな」と言うと、心配そうに「なにかあった?」と聞いてきた。
「最近、純と話せてなくて寂しくなった」
「え~、彼女じゃん。しょうがないなぁ。純さんが、休憩がてら話し相手になってやろうじゃないか」
茶化しながらこちらに向き直る純に「元気してたか?」と聞くと、「元気だけど、そろそろ休まないと、下の子たちに袋叩きにあいそう」と冗談めいて言ったが、職員たちが「竪谷さん寝ろ!」「休め!」「デート行ってこい!」と口々に言いだすから、しょんぼりと肩を落としていた。
懐かれてるな、と言うと「わかってるよ」と苦笑いをした。
「じゃあ、このあとデートするか?」
「うーん、今日はちょっと難しいから、明日でもいい?明日なら、一日空くから」
「一日も俺の為に使ってくれるのか?」
「寂しがりやな坊やの為に使ってあげようじゃないか」
「ありがとうな、愛してるぜ。純」
「私も愛してるぜ、ディーノくん」
ここでの愛してるぜの用法は、俺と純では完全に差異があるのはわかっているから悲しくなる。
その気がないなら言わないでほしい気もするが、冗談でも言われたい自分がいるから厄介だ。
じゃあ、明日の予定を決めようというとき、「純、この書類の件で」と恭弥が入ってきて職員たちが凍り付いた。
さながら、男女間の修羅場を目撃したかのような凍り付き方だ。
俺も恭弥も純も一切そういう関係ではないのだが、俺は気にしないが恭弥がキレるのは歴然。そりゃ、凍り付きもするか。
見るからに不機嫌になりながら武器を構える恭弥に、一応臨戦態勢をとる。
「なにしに来たの」
「なにって、純に会いに来たんだよ」
「見た通り、純はいま忙しいんだから帰って」
「明日の約束したら、帰るって」
明日の約束……?と片眉をあげ、冷え冷えとした視線を純に投げてよこす恭弥から庇うように前に立つと、恭弥の苛立ちはさらに増した。
「純、明日はちゃんと休んでって言ったよね」
「遊ぶのも休みのうち」
「屁理屈こねないで」
とにかく、この人には帰ってもらうよ。とトンファーを振るう恭弥に応戦して、俺も鞭を振るう。
職員たちが悲鳴をあげながら机の下に隠れるのが見えた。
ちょっとやべぇな、と恭弥に場所を変えようと提案しようとした瞬間、バンッ!と机を叩く音が鳴り響き、俺と恭弥の動きが止まった。
「恭弥♡ディーノくん♡純ちゃんのお願い聞いてほしいな♡これ以上、私の部下を怖がらせるな♡出て行け♡」
声は可愛らしく平静を装うとしているのに、顔が完全にキレたときの顔で純に言われ、俺と恭弥とロマーリオは恭弥の執務室へと移動した。
俺も恭弥も純に怒られたというショックから立ち直れずソファーで項垂れていると、哲がお茶を淹れてくれた。
「あーあ、これ絶対、明日の約束も流れた」
「それでいいんだよ。あの子は、ちゃんと休ませなきゃ」
「恭弥はいいよな。純に会おうと思えば、いつだって会えるんだから」
羨ましそうに言う俺に、恭弥は「いつでも会えないよ」と言う。
「純の仕事の邪魔できないし、僕は僕で世界中飛び回ってるから、会いたいときに会えない。連れて回るわけにもいかないしね」
「……ままならないな」
「ままならないんだよ」
盛大につかれたため息は、純本人は届かないのだろうな。
とにかく、約束が流れたことに気落ちし、アジトに帰ってすぐシャワー浴びて眠ってしまった。
デート、したかったな……。
「……ん」
「んん……?」
誰かが呼んでいる気がする。
気だるい頭を動かすと、ぼんやりと視界が開けてきて音声もはっきりしてきた。
「ディーノくん、起きて」
「ん……純……?……純?!」
「おはよう、お寝坊さん。デートには行かないの?」
横になる俺を覗き込むようにしていた純に驚き、思わず飛び起きると「ハーイ、ハニー」といつもの冗談がくる。
「なんで、純が……」
「なんでって、今日出かける約束したじゃん」
「でも、俺。昨日、純のこと怒らせたけど……」
「いや、そんな約束流すほどの怒りじゃなかったし。ちゃんと、出て行ってくれたしさ」
そんなに気にしてたの、と笑う純に「超気にしてた」と言ったら、申し訳なさそうに「ごめん」と謝られた。
いや、悪いのは俺たちなんだけどな。
もう怒ってないか?と聞くと、いつもの柔らかい笑顔で「怒ってないよ」と言うから、安心して抱き着いてしまった。
「よかった~」
「はいはい、ほら、早く着替えて出かけよう」
「わかった」
純にはエントランスで待っていてもらい、クローゼットから服を選ぶ。
昨日の時点でわかっていたら服もちゃんと選んだんだけどな、と思っていたら、ケータイに着信とメッセージが入っていた。
確認すれば、すべて純からで、今日の待ち合わせ時間の連絡だった。ロマーリオに確認したら、昨夜、純から取り次ぎがあったが俺は寝ていて取り次げなかったと言われ、血の気が引いた。
危うく、自分でデートの約束をふいにするところだったのか。
純にそのことを謝ると、特に気にした風もなく「可愛い寝顔を拝めて役得だったよ」と言われた。うっ、そうか、寝顔見られたのか……。
特にどこに行くとか決めていなかったから、映画でも観てから飲み歩きでもするかと提案すると、嬉しそうに乗ってきた。
飲むの好きだな、お前は。
なにを観ようかと、上映中の映画一覧を見ていると、「これにしよう!」と日本のホラー映画を選択する純に「いいのか?」と確認を取る。
「お前、ホラーダメだろ?」
「観るのは好きなんだよ。それに、一人で観られないからこそ、ディーノくんがいるいまがチャンス」
「いいけど、夜大丈夫か?」
「……お泊りしていっていい?」
「……いいよ。その代わり、今日はギリギリまでデートしてもらうからな」
「オッケー!」
軽いな、と思いながらチケットを買い席に着くと、最初はワクワクしながら観ていたのに、中盤からはずっと俺の腕にしがみついていた。
だから言ったのに、と俺は俺で純が怯える姿ばかり見ていて映画の方はさっぱりだった。
軽く食事をとる為に入ったカフェで、純が一生懸命、映画の話をするのを見ているだけで楽しかった。
「けど、夏はホラーだね」
納涼、納涼。と満足そうな純に、「夜、なにもないといいな」と言えば「ディーノくんのイジワル」と唇を尖らせた。
「けど、今日は本当に俺に付き合わせてよかったのか?恭弥の言うとおり、休んでた方がよかったんじゃないか?」
「どうせ、家にいてもお酒飲んで寝てるだけだし。外に出て遊んでる方が、健康的だし、建設的でしょ」
「なら、よかった。恭弥には、なんか言われなかったか?俺と遊ぶことについて」
「散々文句言われたし拗ねられたけど、予定調節して遊びに行こうって言ったら機嫌治った」
「あいつもチョロいよな、なんだかんだで」
「私のこと大好きだから、恭弥は」
「俺だって、純のこと大好きだぜ?」
「知ってるよ」
「俺と恭弥で二股かけるなんて、悪い女」
「お嫌い?」
「超好き」
いつものやり取りに笑いあっているこの瞬間が、一生続けばいいのにな。