並盛の盾 日常小話
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正午。
昼寝をしていると、ぽす、と胸の上になにかが乗った。
アルマ・一郎かとも思ったが、重さ的に違う気がする。
目を開けると、そこには黄色いふわふわがいた。
「ヒバード……」
いつもはヒバリさんにくっついているのに、珍しい。と、指で軽く頭を撫でてあげれば、気持ちよさそうな顔をした。
「危ないから、降りな」
ヒバードは賢いので言葉が通じると思っている節があるが、言うても鳥である。一向に降りる様子はない。
つまみ上げるのも潰してしまいそうで怖いので放っておくと、ヒバードが「純」と私の名前を呼んだ。
「おー、私の名前覚えたの?偉いね」
偉いから、なにか餌でもやるかと起き上がると、ヒバードはパタパタと飛び上がり、そして私の肩に着地した。
ヒバード用に、花の種を用意していたのだよ。
鞄から花の種をとりだしあげると、「純 アリガトウ 純 スキ」と言う。
「どういたしましてー」
「純 スキ 純 スキ」
すり寄ってくるヒバードを撫でながら、「好きだなんて、誰に教わったの?名前も教えた記憶ないんだけどな」と独り言のつもりで言ったら、ヒバードが「ヒバリ」と言う。
「ヒバリさんに教わったの?」
「ヒバリ 純 スキ」
「ヒバリさんが?へー、そうなんだー」
完全に、「鳥が知ってる単語並べてるな」くらいの認識で流していたら、屋上から帰ってきただろうヒバリさんと目が合った。
いつも通り、「お帰りなさいー」と言おうとした瞬間、背負い投げをされた。
どうして……。
「……じゃない」
「な、なんですか?」
「僕は、キミのことを少しも好きだなんて思ってないよ」
「え、は?はぁ……」
なぜ、背負い投げをされた上に、わざわざ好きではない宣言をされたのか謎ではあるが、そうですか……。ちょっと悲しいですね……。
◆
あの背負い投げ、確実に照れ隠しだったんだろうな、と十年経ったいまならわかるが、当時はかなり困惑したものだ。
隠れて一生懸命、名前呼んだり好きって言う練習をしていたんだろうな、と思うとほほえましい気持ちになるが、結局、私が呼んでほしいと言うまで呼ばなかったし、いまだに好きと言う気配もない。強情なやつだ。
一息いれていると、パタパタとヒバードがやってきて私の肩に止まった。
「ヒバード、恭弥はどうしたの?」
「ネテル」
こいつ、本当に鳥か?と思うほど自然に会話を成立させたな。賢い鳥には、花の種をやろう。
「純 純 ヒバリ 純 スキ」
「うん、うん、知ってるよ」
ヒバードの言葉に適当に返して、ふとイタズラ心が芽生えた。
「ヒバードや、新しい言葉を教えてやろう」
そう言い、ヒバードに餌をやりながら新しい言葉を教えこんでから、恭弥の元へとテイクオフさせる。
どんな反応するかな~、とワクワクしていたら、会って早々に大外刈りを決められた。
「ええ~、そんな怒る?」
「ヒバードに変な言葉教えないで。あと、餌も無駄に与えないで」
あの子、最近太り気味なんだから。と厳重注意を受けた。
というか、どうして私が教えたと特定されたんだろう。
◆
「純……純……」
口にするだけなら簡単な言葉なのに、本人を目の前にすると言えなくなる。
いくら練習しても、呼ぼうとすると直ぐに「竪谷」と呼んでしまう。
情けない、らしくない。
「好き……」
「ヒバリ 純 スキ」
「うん、好き」
ヒバード相手なら、こんなにもすんなり言えるのに、どうして本人には言えないのか。
いや、恐らく直球で言ったところで、あの子は真っすぐな瞳で「光栄です!」と言うだろう。確実に、別の意味合いで受け止められる。
考えただけで、ムカつくな。
気分転換に屋上に行くと、ヒバードがどこかに飛んでいった。
まあ、あの子はよく散歩に出かけるし、ちゃんと帰ってくるからいいか、と放っておく。
僕ばかりが一方的に好きで、あの鈍感な純には一切、なにもかもが伝わらない。
機嫌が悪くなっていっているのがわかり、一度寝よう、と眠りについた。
どれくらい寝ただろうか。少し体が痛いのと、チャイムの音で目が覚めた。
屋上は空を見ながら眠れるから嫌いではないが、いかんせん、体が痛くなる。
寝るなら、応接室のソファーだな、と応接室に戻るとヒバードが「ヒバリ 純 スキ」と言っていた。
「ヒバリさんが?へー、そうなんだー」
意味を理解していない、とはわかっていても、僕は咄嗟に純を投げ飛ばして「好きじゃない」と口走っていた。
あのときは、幼稚な照れ隠しをしたな、と十年後のいまならば余裕をもって笑い話にできる。
仮眠から目が覚めると、丁度、ヒバードが散歩から帰ってきた。
指に乗せると「ヒバリ タダイマ」と言う。
「お帰り。ほら、餌だよ」
そう言って餌を差し出すが、食べようとしない。さては、出先で餌をもらったな。
「ヒバリ ヒバリ」
「うん、なに」
なにか一生懸命言おうとするヒバードに先を促すと、「ヒバリ 純 アイシテル」と教えた覚えのない言葉を口走り、期待に満ちた目をする。
こんな馬鹿な言葉を教える人間は一人しか思い当たらないが、一応、ヒバードに「誰に教わったんだい?」と聞くと「純」と答えた。
あの子は、なにがなんでも、僕の口から言わせたいらしい。しかし、そこまでされると言いたくなくなるのが僕だということを、あの子はちゃんと理解しているのだろうか。
とりあえず、次に会ったときに大外刈りくらいはしないと気が済まない。
ヒバードに変な言葉教えないで。
「ヒバリ 純 アイシテル」
「……うん、愛してるよ」
昼寝をしていると、ぽす、と胸の上になにかが乗った。
アルマ・一郎かとも思ったが、重さ的に違う気がする。
目を開けると、そこには黄色いふわふわがいた。
「ヒバード……」
いつもはヒバリさんにくっついているのに、珍しい。と、指で軽く頭を撫でてあげれば、気持ちよさそうな顔をした。
「危ないから、降りな」
ヒバードは賢いので言葉が通じると思っている節があるが、言うても鳥である。一向に降りる様子はない。
つまみ上げるのも潰してしまいそうで怖いので放っておくと、ヒバードが「純」と私の名前を呼んだ。
「おー、私の名前覚えたの?偉いね」
偉いから、なにか餌でもやるかと起き上がると、ヒバードはパタパタと飛び上がり、そして私の肩に着地した。
ヒバード用に、花の種を用意していたのだよ。
鞄から花の種をとりだしあげると、「純 アリガトウ 純 スキ」と言う。
「どういたしましてー」
「純 スキ 純 スキ」
すり寄ってくるヒバードを撫でながら、「好きだなんて、誰に教わったの?名前も教えた記憶ないんだけどな」と独り言のつもりで言ったら、ヒバードが「ヒバリ」と言う。
「ヒバリさんに教わったの?」
「ヒバリ 純 スキ」
「ヒバリさんが?へー、そうなんだー」
完全に、「鳥が知ってる単語並べてるな」くらいの認識で流していたら、屋上から帰ってきただろうヒバリさんと目が合った。
いつも通り、「お帰りなさいー」と言おうとした瞬間、背負い投げをされた。
どうして……。
「……じゃない」
「な、なんですか?」
「僕は、キミのことを少しも好きだなんて思ってないよ」
「え、は?はぁ……」
なぜ、背負い投げをされた上に、わざわざ好きではない宣言をされたのか謎ではあるが、そうですか……。ちょっと悲しいですね……。
◆
あの背負い投げ、確実に照れ隠しだったんだろうな、と十年経ったいまならわかるが、当時はかなり困惑したものだ。
隠れて一生懸命、名前呼んだり好きって言う練習をしていたんだろうな、と思うとほほえましい気持ちになるが、結局、私が呼んでほしいと言うまで呼ばなかったし、いまだに好きと言う気配もない。強情なやつだ。
一息いれていると、パタパタとヒバードがやってきて私の肩に止まった。
「ヒバード、恭弥はどうしたの?」
「ネテル」
こいつ、本当に鳥か?と思うほど自然に会話を成立させたな。賢い鳥には、花の種をやろう。
「純 純 ヒバリ 純 スキ」
「うん、うん、知ってるよ」
ヒバードの言葉に適当に返して、ふとイタズラ心が芽生えた。
「ヒバードや、新しい言葉を教えてやろう」
そう言い、ヒバードに餌をやりながら新しい言葉を教えこんでから、恭弥の元へとテイクオフさせる。
どんな反応するかな~、とワクワクしていたら、会って早々に大外刈りを決められた。
「ええ~、そんな怒る?」
「ヒバードに変な言葉教えないで。あと、餌も無駄に与えないで」
あの子、最近太り気味なんだから。と厳重注意を受けた。
というか、どうして私が教えたと特定されたんだろう。
◆
「純……純……」
口にするだけなら簡単な言葉なのに、本人を目の前にすると言えなくなる。
いくら練習しても、呼ぼうとすると直ぐに「竪谷」と呼んでしまう。
情けない、らしくない。
「好き……」
「ヒバリ 純 スキ」
「うん、好き」
ヒバード相手なら、こんなにもすんなり言えるのに、どうして本人には言えないのか。
いや、恐らく直球で言ったところで、あの子は真っすぐな瞳で「光栄です!」と言うだろう。確実に、別の意味合いで受け止められる。
考えただけで、ムカつくな。
気分転換に屋上に行くと、ヒバードがどこかに飛んでいった。
まあ、あの子はよく散歩に出かけるし、ちゃんと帰ってくるからいいか、と放っておく。
僕ばかりが一方的に好きで、あの鈍感な純には一切、なにもかもが伝わらない。
機嫌が悪くなっていっているのがわかり、一度寝よう、と眠りについた。
どれくらい寝ただろうか。少し体が痛いのと、チャイムの音で目が覚めた。
屋上は空を見ながら眠れるから嫌いではないが、いかんせん、体が痛くなる。
寝るなら、応接室のソファーだな、と応接室に戻るとヒバードが「ヒバリ 純 スキ」と言っていた。
「ヒバリさんが?へー、そうなんだー」
意味を理解していない、とはわかっていても、僕は咄嗟に純を投げ飛ばして「好きじゃない」と口走っていた。
あのときは、幼稚な照れ隠しをしたな、と十年後のいまならば余裕をもって笑い話にできる。
仮眠から目が覚めると、丁度、ヒバードが散歩から帰ってきた。
指に乗せると「ヒバリ タダイマ」と言う。
「お帰り。ほら、餌だよ」
そう言って餌を差し出すが、食べようとしない。さては、出先で餌をもらったな。
「ヒバリ ヒバリ」
「うん、なに」
なにか一生懸命言おうとするヒバードに先を促すと、「ヒバリ 純 アイシテル」と教えた覚えのない言葉を口走り、期待に満ちた目をする。
こんな馬鹿な言葉を教える人間は一人しか思い当たらないが、一応、ヒバードに「誰に教わったんだい?」と聞くと「純」と答えた。
あの子は、なにがなんでも、僕の口から言わせたいらしい。しかし、そこまでされると言いたくなくなるのが僕だということを、あの子はちゃんと理解しているのだろうか。
とりあえず、次に会ったときに大外刈りくらいはしないと気が済まない。
ヒバードに変な言葉教えないで。
「ヒバリ 純 アイシテル」
「……うん、愛してるよ」