楽しい軟禁生活
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佐野くんの帰りを待って、ソファーでドラマを見たりゲームをしたりしていると、ドアが開く音がした。
リビングから顔を出すと、佐野くんが靴を脱いでいるところで、「おかえり」と言ったら、「本当に起きてた」と言われた。
「電気消し忘れたのかと思ってた」
「寝てた方がよかった?」
「いや、嬉しい」
そう細く笑い、私の足枷を外すと水を取りに行った。
「……なんで茶碗、二つでてるんだ」
「え?」
そりゃ、蘭ちゃんさんが食べて行ったから……。と言おうとしたが、佐野くんの顔を見てやめた。
無表情だが、その顔が怒っているのはわかった。
なにが地雷だったのかはわからないが、蘭ちゃんさんが食べていった話をしたら、蘭ちゃんさんが死んでしまう気がする。
「ごめん、一人で食べるの寂しくて、蘭ちゃんさんに無理言って食べていってもらったの」
「一人、寂しかったか?」
「最近ずっと佐野くんがいたから、ちょっとね」
なんとか誤魔化せたのか、佐野くんの表情から怒りが消えて、なんだか嬉しそうなオーラになった。
無表情なのは変わりないが。
「やっぱり、仕事行かないでずっとここにいる」
「それはダメ」
いつ何時、三途さんが押し入って来て殺されないとも限らない。
自分の身を守る為というのもあるが、蘭ちゃんさんと佐野くんをお仕事に行かせると約束してしまっている。
「佐野くんを必要としてる人は、私だけじゃないんだから」
「本音は?」
「佐野くんを独り占めして反感を買いたくない」
そこは素直に言っておこう。
綺麗事を言ったところで、佐野くんは納得しないだろう。そもそも、佐野くんが納得する綺麗事が思いつかない。
佐野くんは「オマエに手だしたら、俺が許さねえよ」と言うが、死んだらそこまでなのだ。
「未練があるわけじゃないけど、まだ死にたくはないんだよ。私は」
「俺は……御堂の未練にはなれないのか……?」
「そういうこと言われると、未練になっちゃうでしょ!化けて取り憑くよ?!」
私の冗談に、佐野くんは「それいいな」と乗り気である。
「死んでも俺の側にいてくれ」
私の手を祈るように包み込む佐野くん。
「佐野くん……まず、私が死なないことを願ってほしい」
佐野くんが死んでも側にいてほしいのはわかったし、任せてほしいが、私が生き延びることをまず最優先にしてほしいのだ。
目を瞬かせ、佐野くんは「そうだな、俺も生きた御堂ともっといたい」と言ってくれた。
「だから仕事行きたくない」
「話が戻っている」
「行きたくない、もっと御堂といたい。蘭ちゃんさんとか、なんか仲よくなってるのが気に食わない」
膨れ面の佐野くんに、蘭ちゃんさんと呼んでるのは「蘭ちゃん」と読んでくれ呼んでくれと言われ、さすがに初対面で“ちゃん付け”は気が引け、しかし呼ばないのも失礼かと思った末の折衷案であると説明する。
しかし納得しない佐野くんは、「もう、蘭はこさせねえ」と言い出した。
「一回一緒にご飯食べただけで、そこまで仲よくならないよ」
「わかんねえだろ」
まあ、別に私はどうしても蘭ちゃんさんではないと嫌だというわけではないので、誰が来てもいい。
三途さん以外なら。
「人選は佐野くんに任せるけど、あんまり偉い人を使いパシリにしちゃダメだよ」
「でも、下のやつにこんな重要な任務を下の連中に任せられねえし」
「仰々しい言い方してるけど、お使いだかね?」
「人選は俺に任せるんだろ?なら、文句は言わせねえからな」
言ったけど……、と脱力。まあ、任せるよ。
お風呂に入ったら落ち着くだろう、とお風呂場に押し込み、テレビを見て待っていたら「やっぱ、蘭ちゃんさんはムカつく!」と言いながら出てきた。
なんで怒りが加速してるの。
佐野くんの髪を乾かしながらもう一度説明するが、「納得いかねー」と言う。
「俺だって、まだ名字でしか呼んでもらえてねえのに」
「じゃあ、万次郎くんって呼べばいいの?」
「えっ」
「えっ」
なぜ、そんな驚くのだろう。名前を呼んでもらえないから、不満なのではないのか。
視線をウロウロとさせながら、やっとこちらを見て「もう一回」と言う。
「万次郎くん」
「……もう一回」
「万次郎くん」
「……もう一回」
「万次郎くん」
何度目かのアンコールでようやく満足したのか、猫のようにすり寄り、「ずっと、そう呼んでくれ」と甘えてきた。
「俺も、御堂のこと下の名前で呼んでいいか?」
「知ってたの?」
「当たり前だろ。……悠」
「なに、万次郎くん」
お互いに確認するように、お試し感覚で呼ばれる名前。そんなやりとりが、まるで付き合いたての学生カップルのようだと、おかしくて言ったら、佐野くん……万次郎くんは軽く頬を染めた。
「あれ?照れてる?」
「うるせーな、ちゃんと人と付き合うのは御堂……悠が初めてなんだから、仕方ないだろ」
「……ん?」
いま、あまり聞き流してはいけないワードが含まれていた気がするぞ。
確認の為に「私たち、付き合ってるの?」と聞くと、万次郎くんは「俺の彼女だろ?」と聞き返してくる。
そんな話、以前にあっただろうか?と思い出すも、記憶にない。
申し訳ない気持ちで、「いつ告白された?」と聞けば万次郎くんは拗ねながら、口を開こうとしたが、そこで止まった。
動かない万次郎くんを、「いつ?」と急かしたら「言ってない……」と言われた。
だ、だよねー!よかったー!
「あ、焦った……。大事な思い出を忘れてたのかと思った……」
「うわぁ……もう、最悪だ……。言った気になってた……」
「万次郎くん、私をここに連れてきたときに、自分が主人だ!て言ってたじゃん。だから私、立場的にはヒモかなって思ってたよ」
「ヒモじゃない、愛人」
それもそれでどうかと思うけど。
「もう一回、もう一回やり直させてくれ」
「いいよー」
万次郎くんは深呼吸をして、私の目を見据える。
「こんな環境で俺に不満はあるかも知れねえけど、俺に一生ついて来てくれねえか?」
それはもう、プロポーズではないだろうかとも思うが、万次郎くんの真面目な顔が好きだなと思ったから、私は一言「はい」と言った。
その瞬間、万次郎くんは安心した表情をし、私の手を握って「地獄までオマエを連れて行くから」と言うから、選択肢を誤った気がする。
リビングから顔を出すと、佐野くんが靴を脱いでいるところで、「おかえり」と言ったら、「本当に起きてた」と言われた。
「電気消し忘れたのかと思ってた」
「寝てた方がよかった?」
「いや、嬉しい」
そう細く笑い、私の足枷を外すと水を取りに行った。
「……なんで茶碗、二つでてるんだ」
「え?」
そりゃ、蘭ちゃんさんが食べて行ったから……。と言おうとしたが、佐野くんの顔を見てやめた。
無表情だが、その顔が怒っているのはわかった。
なにが地雷だったのかはわからないが、蘭ちゃんさんが食べていった話をしたら、蘭ちゃんさんが死んでしまう気がする。
「ごめん、一人で食べるの寂しくて、蘭ちゃんさんに無理言って食べていってもらったの」
「一人、寂しかったか?」
「最近ずっと佐野くんがいたから、ちょっとね」
なんとか誤魔化せたのか、佐野くんの表情から怒りが消えて、なんだか嬉しそうなオーラになった。
無表情なのは変わりないが。
「やっぱり、仕事行かないでずっとここにいる」
「それはダメ」
いつ何時、三途さんが押し入って来て殺されないとも限らない。
自分の身を守る為というのもあるが、蘭ちゃんさんと佐野くんをお仕事に行かせると約束してしまっている。
「佐野くんを必要としてる人は、私だけじゃないんだから」
「本音は?」
「佐野くんを独り占めして反感を買いたくない」
そこは素直に言っておこう。
綺麗事を言ったところで、佐野くんは納得しないだろう。そもそも、佐野くんが納得する綺麗事が思いつかない。
佐野くんは「オマエに手だしたら、俺が許さねえよ」と言うが、死んだらそこまでなのだ。
「未練があるわけじゃないけど、まだ死にたくはないんだよ。私は」
「俺は……御堂の未練にはなれないのか……?」
「そういうこと言われると、未練になっちゃうでしょ!化けて取り憑くよ?!」
私の冗談に、佐野くんは「それいいな」と乗り気である。
「死んでも俺の側にいてくれ」
私の手を祈るように包み込む佐野くん。
「佐野くん……まず、私が死なないことを願ってほしい」
佐野くんが死んでも側にいてほしいのはわかったし、任せてほしいが、私が生き延びることをまず最優先にしてほしいのだ。
目を瞬かせ、佐野くんは「そうだな、俺も生きた御堂ともっといたい」と言ってくれた。
「だから仕事行きたくない」
「話が戻っている」
「行きたくない、もっと御堂といたい。蘭ちゃんさんとか、なんか仲よくなってるのが気に食わない」
膨れ面の佐野くんに、蘭ちゃんさんと呼んでるのは「蘭ちゃん」と読んでくれ呼んでくれと言われ、さすがに初対面で“ちゃん付け”は気が引け、しかし呼ばないのも失礼かと思った末の折衷案であると説明する。
しかし納得しない佐野くんは、「もう、蘭はこさせねえ」と言い出した。
「一回一緒にご飯食べただけで、そこまで仲よくならないよ」
「わかんねえだろ」
まあ、別に私はどうしても蘭ちゃんさんではないと嫌だというわけではないので、誰が来てもいい。
三途さん以外なら。
「人選は佐野くんに任せるけど、あんまり偉い人を使いパシリにしちゃダメだよ」
「でも、下のやつにこんな重要な任務を下の連中に任せられねえし」
「仰々しい言い方してるけど、お使いだかね?」
「人選は俺に任せるんだろ?なら、文句は言わせねえからな」
言ったけど……、と脱力。まあ、任せるよ。
お風呂に入ったら落ち着くだろう、とお風呂場に押し込み、テレビを見て待っていたら「やっぱ、蘭ちゃんさんはムカつく!」と言いながら出てきた。
なんで怒りが加速してるの。
佐野くんの髪を乾かしながらもう一度説明するが、「納得いかねー」と言う。
「俺だって、まだ名字でしか呼んでもらえてねえのに」
「じゃあ、万次郎くんって呼べばいいの?」
「えっ」
「えっ」
なぜ、そんな驚くのだろう。名前を呼んでもらえないから、不満なのではないのか。
視線をウロウロとさせながら、やっとこちらを見て「もう一回」と言う。
「万次郎くん」
「……もう一回」
「万次郎くん」
「……もう一回」
「万次郎くん」
何度目かのアンコールでようやく満足したのか、猫のようにすり寄り、「ずっと、そう呼んでくれ」と甘えてきた。
「俺も、御堂のこと下の名前で呼んでいいか?」
「知ってたの?」
「当たり前だろ。……悠」
「なに、万次郎くん」
お互いに確認するように、お試し感覚で呼ばれる名前。そんなやりとりが、まるで付き合いたての学生カップルのようだと、おかしくて言ったら、佐野くん……万次郎くんは軽く頬を染めた。
「あれ?照れてる?」
「うるせーな、ちゃんと人と付き合うのは御堂……悠が初めてなんだから、仕方ないだろ」
「……ん?」
いま、あまり聞き流してはいけないワードが含まれていた気がするぞ。
確認の為に「私たち、付き合ってるの?」と聞くと、万次郎くんは「俺の彼女だろ?」と聞き返してくる。
そんな話、以前にあっただろうか?と思い出すも、記憶にない。
申し訳ない気持ちで、「いつ告白された?」と聞けば万次郎くんは拗ねながら、口を開こうとしたが、そこで止まった。
動かない万次郎くんを、「いつ?」と急かしたら「言ってない……」と言われた。
だ、だよねー!よかったー!
「あ、焦った……。大事な思い出を忘れてたのかと思った……」
「うわぁ……もう、最悪だ……。言った気になってた……」
「万次郎くん、私をここに連れてきたときに、自分が主人だ!て言ってたじゃん。だから私、立場的にはヒモかなって思ってたよ」
「ヒモじゃない、愛人」
それもそれでどうかと思うけど。
「もう一回、もう一回やり直させてくれ」
「いいよー」
万次郎くんは深呼吸をして、私の目を見据える。
「こんな環境で俺に不満はあるかも知れねえけど、俺に一生ついて来てくれねえか?」
それはもう、プロポーズではないだろうかとも思うが、万次郎くんの真面目な顔が好きだなと思ったから、私は一言「はい」と言った。
その瞬間、万次郎くんは安心した表情をし、私の手を握って「地獄までオマエを連れて行くから」と言うから、選択肢を誤った気がする。