楽しい軟禁生活
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「佐野くん、お仕事には行かなくていいのかな?」
「……行かなくてもいい」
嘘だな。
服に始まり細々とした生活用品も買い足してから、数日。私は佐野くんとずっと一緒に部屋にこもりゲームをしているか、ドラマや映画をずっと見ている。健全に不健全だ。
そして、常時鳴っては切られている着信が気になってしょうがない。
「ダメだよ、お仕事には行かなきゃ」
「悪い仕事でもか?」
「そっか、佐野くん悪いお仕事してるんだっけ」
じゃあ、行かせない方が世の為かとも思ったが、いつか三途さんや他のお仲間に邪魔だからと、私の存在を消されてしまうのでは、と考えると天秤にかけてしまう。
私も人間なので、命が惜しい。
「せめて、電話にでてあげたら。心配してるかもよ?」
声が聞ければ少しは安心するだろう、という誘拐犯のような思考で提案すれば、長考し、「わかった」と言って部屋を出ていった。
佐野くんに与えられた、佐野くんの連絡先しか入っていないケータイはネット制限がかけられているので、暇を持て余し日記を読み返すしかない。
なお、自前のケータイは「俺以外と連絡とる必要ないもんな?」と据わった目で包丁を突き立てられた。可哀想なことをした。
帰ってきた佐野くんに、「どうだった?」と聞いたら、「すげー心配された」と言うから、まあ、だろうなと思った。
「それで、やっぱり俺がいないと進まない仕事があるらしい……」
「そっかぁ、いってらっしゃい」
「……」
「そんな嫌そうな顔されてもなぁ……」
行きたくないと駄々をこねる佐野くんを宥めすかして行かせようとしたら、「御堂の夕飯用意しないといけないし」と言う。
「道具もそろってるし、材料があれば自分で作るし」
「材料どうやって買うんだよ」
「近くのスーパーに」
「ダメだ」
食い気味に却下されてしまった。
まだ、一人で外出するには信用を得ていなかったか。悲しい。
いつもは、佐野くんが食材かお弁当を調達してくるか、外に食べに行く。出前も嫌がる人なので、佐野くんが一緒でないと私は食事ができない。
「一晩くらい我慢するよ」
「御堂に我慢させたくねえ」
なら、どうするのかと状況は膠着。
このままだと、本当に行かなくなるのでなんとかしたい。
「じゃあ、佐野くんのお仲間に材料持ってきてもらうとか」
中々理不尽な使いパシリをするな、とは思うが、お仲間相手なら信用してもらえるだろう。
しかし、佐野くんはやはり渋る。なぜ。
「俺の代わりに世話を焼いた男と逃げたり……」
「しないよ?!どこまで疑心暗鬼なの?!それとも、たんに私が信用されてないだけ?!」
あまりにも疑われすぎてビックリしてしまった。
ドラマの見過ぎだよ。
「そんなメロドラマしてまでここから逃げたいとは思ってないし」
「なんでだ?自由に外行けないんだぞ?」
「元から外でなにかするの好きなわけじゃないし、連絡する友だちもいないし。なにかを強要されてるわけじゃないし、暴力振るわれてるわけでもない。はっきり言って、いまの生活に不満はないんだよ」
むしろ、言えば好きなものを与えてもらえるし、佐野くんが遊んでくれるから、私の人生で一番快適とも言えるのではないだろうか。
「だから、私は言われない限りここにいるよ」
「本当か?」
「うん、約束」
そう言って小指を差し出したら、佐野くんは自分の小指を絡め、指切りをしてくれた。
まあ、歌の内容が過激になり放送禁止ワードだらけになっていたが。
「じゃあ、あとで必要な材料、メールして」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
「いってきます」
しっかりと、私がトイレまでしか行けない距離の足枷をつけた佐野くんを見送り、夕飯を何にしようかとレシピ本をペラペラとめくる。
今日は佐野くんがいないし、簡単に済ますか。
「よし、鱈のホイル焼きと、トマトと大葉の梅和えに決まりだ」
佐野くんに必要な食材をメールして、佐野くんに買ってもらった映画を見ていると、「こんばんはー」と誰かが入ってきた。
リビングから顔を出すと、上質なスーツを着た男性がいた。
「あなた、あのとき助けてくれた……」
「灰谷蘭でーす。蘭ちゃん、て呼んでね」
三途さんから助けてくれたお兄さんが、ビニール袋を下げて立っている。
つまり、佐野くんが食材運びを頼んだ人。しかし、あの幹部会のような雰囲気の場にいたってことは……。
「お兄さん、偉い人なのでは」
「偉い人だよ」
佐野くん、なぜそんな偉い人にお使いをさせたのですか。
偉い人ということは、最近、佐野くんが私に付きっきりだったことにお怒りかもしれない。
ドキドキしながら、食材を置いた蘭ちゃんさんに失礼ながら「早く帰ってくれ」と願ったのに、なぜかダイニングの椅子に座った。なぜ。
「ご飯まだ?」
「あ、食べていくんですね」
「ここまで使いパシリされて、タダで帰りたくねーし」
ビニール袋を見れば、たしかに二食分の材料が入っていた。
「お肉の方がよかったですよね」
「魚も嫌いじゃねーから。早く作って」
急かされるまま作っていると、カウンターから蘭ちゃんさんが覗き込んできた。
「マイキーとも、料理するの?」
「するときもありますね。この間は、一緒に餃子作りました」
そう言うと、蘭ちゃんさんは「あのマイキーが餃子作ったの?」と面白そうに言った。
それはもう、楽しそうに作っていた。
「俺とも餃子作ろうよ」
「また今度ですね」
私の言葉に、蘭ちゃんさんは「約束ね」と言う。
ホイル焼きを焼いていると、蘭ちゃんさんが「マイキーとはもうヤッたの?」と新たな質問を投げかけてきた。
「やった……」
「セックスのこと」
だろうなとは思っていましたが。
「それが、まだ……」
私も、軟禁というのだから、そういう体の関係があるだろうと覚悟をしていたのだが、佐野くんは指一本触れないし、同じベッドすら寝ようとしない。
「魅力がないのでしょうか?」
「健全な男女が同じ部屋にいてシないってことは、そういうことなんじゃねーの?」
笑顔でさらりと辛い現実を突きつけられた。
まあ、シたいけどできないという、おあずけ状態にしていないだけマシなのだろうか。
ホイル焼きを皿に移し、トマトと大葉の梅和えを小皿に。蘭ちゃんさんに、ご飯の量を聞いたら無邪気に「大盛り」と言われた。
「ふーん、美味しいね」
「お口にあってよかったです」
「家庭の味ってやつ?」
「どうでしょう。家庭の味が思い出せないので」
「うーん、じゃあ、俺が家庭の味認定出すね」
そんな和気あいあいとした会話の中で聞くのは躊躇われたが、思い切って聞いてみた。
「今回、佐野くんが連絡断ったこと、みなさんお怒りですよね」
ドキドキしながら聞いたら、蘭ちゃんさんは食べながら「お怒りもお怒り。三途に至っては、殺そうって言ってたしな」と言うから、また三途さんか、と胃がキリッ、とした。
私はたぶん、三途さんにすごく嫌われている。
「俺も、マイキーが女にうつつを抜かしてるなら、今日殺っちゃおうかなって思ったけど、マイキーからあんたに手だしたら殺すって言われたからな」
綱渡りみたいな事態に冷や冷やしながら、「すみません。次からは佐野くんには、お仕事に行くように言います」と謝れば、「よろしくねー」と軽く言われた。
「マイキーは俺たちにとっても大切な存在だからさ、独り占めはなしね」
「誠に申し訳ありません」
「じゃあ、今度の餃子よろしくね」
「……行かなくてもいい」
嘘だな。
服に始まり細々とした生活用品も買い足してから、数日。私は佐野くんとずっと一緒に部屋にこもりゲームをしているか、ドラマや映画をずっと見ている。健全に不健全だ。
そして、常時鳴っては切られている着信が気になってしょうがない。
「ダメだよ、お仕事には行かなきゃ」
「悪い仕事でもか?」
「そっか、佐野くん悪いお仕事してるんだっけ」
じゃあ、行かせない方が世の為かとも思ったが、いつか三途さんや他のお仲間に邪魔だからと、私の存在を消されてしまうのでは、と考えると天秤にかけてしまう。
私も人間なので、命が惜しい。
「せめて、電話にでてあげたら。心配してるかもよ?」
声が聞ければ少しは安心するだろう、という誘拐犯のような思考で提案すれば、長考し、「わかった」と言って部屋を出ていった。
佐野くんに与えられた、佐野くんの連絡先しか入っていないケータイはネット制限がかけられているので、暇を持て余し日記を読み返すしかない。
なお、自前のケータイは「俺以外と連絡とる必要ないもんな?」と据わった目で包丁を突き立てられた。可哀想なことをした。
帰ってきた佐野くんに、「どうだった?」と聞いたら、「すげー心配された」と言うから、まあ、だろうなと思った。
「それで、やっぱり俺がいないと進まない仕事があるらしい……」
「そっかぁ、いってらっしゃい」
「……」
「そんな嫌そうな顔されてもなぁ……」
行きたくないと駄々をこねる佐野くんを宥めすかして行かせようとしたら、「御堂の夕飯用意しないといけないし」と言う。
「道具もそろってるし、材料があれば自分で作るし」
「材料どうやって買うんだよ」
「近くのスーパーに」
「ダメだ」
食い気味に却下されてしまった。
まだ、一人で外出するには信用を得ていなかったか。悲しい。
いつもは、佐野くんが食材かお弁当を調達してくるか、外に食べに行く。出前も嫌がる人なので、佐野くんが一緒でないと私は食事ができない。
「一晩くらい我慢するよ」
「御堂に我慢させたくねえ」
なら、どうするのかと状況は膠着。
このままだと、本当に行かなくなるのでなんとかしたい。
「じゃあ、佐野くんのお仲間に材料持ってきてもらうとか」
中々理不尽な使いパシリをするな、とは思うが、お仲間相手なら信用してもらえるだろう。
しかし、佐野くんはやはり渋る。なぜ。
「俺の代わりに世話を焼いた男と逃げたり……」
「しないよ?!どこまで疑心暗鬼なの?!それとも、たんに私が信用されてないだけ?!」
あまりにも疑われすぎてビックリしてしまった。
ドラマの見過ぎだよ。
「そんなメロドラマしてまでここから逃げたいとは思ってないし」
「なんでだ?自由に外行けないんだぞ?」
「元から外でなにかするの好きなわけじゃないし、連絡する友だちもいないし。なにかを強要されてるわけじゃないし、暴力振るわれてるわけでもない。はっきり言って、いまの生活に不満はないんだよ」
むしろ、言えば好きなものを与えてもらえるし、佐野くんが遊んでくれるから、私の人生で一番快適とも言えるのではないだろうか。
「だから、私は言われない限りここにいるよ」
「本当か?」
「うん、約束」
そう言って小指を差し出したら、佐野くんは自分の小指を絡め、指切りをしてくれた。
まあ、歌の内容が過激になり放送禁止ワードだらけになっていたが。
「じゃあ、あとで必要な材料、メールして」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
「いってきます」
しっかりと、私がトイレまでしか行けない距離の足枷をつけた佐野くんを見送り、夕飯を何にしようかとレシピ本をペラペラとめくる。
今日は佐野くんがいないし、簡単に済ますか。
「よし、鱈のホイル焼きと、トマトと大葉の梅和えに決まりだ」
佐野くんに必要な食材をメールして、佐野くんに買ってもらった映画を見ていると、「こんばんはー」と誰かが入ってきた。
リビングから顔を出すと、上質なスーツを着た男性がいた。
「あなた、あのとき助けてくれた……」
「灰谷蘭でーす。蘭ちゃん、て呼んでね」
三途さんから助けてくれたお兄さんが、ビニール袋を下げて立っている。
つまり、佐野くんが食材運びを頼んだ人。しかし、あの幹部会のような雰囲気の場にいたってことは……。
「お兄さん、偉い人なのでは」
「偉い人だよ」
佐野くん、なぜそんな偉い人にお使いをさせたのですか。
偉い人ということは、最近、佐野くんが私に付きっきりだったことにお怒りかもしれない。
ドキドキしながら、食材を置いた蘭ちゃんさんに失礼ながら「早く帰ってくれ」と願ったのに、なぜかダイニングの椅子に座った。なぜ。
「ご飯まだ?」
「あ、食べていくんですね」
「ここまで使いパシリされて、タダで帰りたくねーし」
ビニール袋を見れば、たしかに二食分の材料が入っていた。
「お肉の方がよかったですよね」
「魚も嫌いじゃねーから。早く作って」
急かされるまま作っていると、カウンターから蘭ちゃんさんが覗き込んできた。
「マイキーとも、料理するの?」
「するときもありますね。この間は、一緒に餃子作りました」
そう言うと、蘭ちゃんさんは「あのマイキーが餃子作ったの?」と面白そうに言った。
それはもう、楽しそうに作っていた。
「俺とも餃子作ろうよ」
「また今度ですね」
私の言葉に、蘭ちゃんさんは「約束ね」と言う。
ホイル焼きを焼いていると、蘭ちゃんさんが「マイキーとはもうヤッたの?」と新たな質問を投げかけてきた。
「やった……」
「セックスのこと」
だろうなとは思っていましたが。
「それが、まだ……」
私も、軟禁というのだから、そういう体の関係があるだろうと覚悟をしていたのだが、佐野くんは指一本触れないし、同じベッドすら寝ようとしない。
「魅力がないのでしょうか?」
「健全な男女が同じ部屋にいてシないってことは、そういうことなんじゃねーの?」
笑顔でさらりと辛い現実を突きつけられた。
まあ、シたいけどできないという、おあずけ状態にしていないだけマシなのだろうか。
ホイル焼きを皿に移し、トマトと大葉の梅和えを小皿に。蘭ちゃんさんに、ご飯の量を聞いたら無邪気に「大盛り」と言われた。
「ふーん、美味しいね」
「お口にあってよかったです」
「家庭の味ってやつ?」
「どうでしょう。家庭の味が思い出せないので」
「うーん、じゃあ、俺が家庭の味認定出すね」
そんな和気あいあいとした会話の中で聞くのは躊躇われたが、思い切って聞いてみた。
「今回、佐野くんが連絡断ったこと、みなさんお怒りですよね」
ドキドキしながら聞いたら、蘭ちゃんさんは食べながら「お怒りもお怒り。三途に至っては、殺そうって言ってたしな」と言うから、また三途さんか、と胃がキリッ、とした。
私はたぶん、三途さんにすごく嫌われている。
「俺も、マイキーが女にうつつを抜かしてるなら、今日殺っちゃおうかなって思ったけど、マイキーからあんたに手だしたら殺すって言われたからな」
綱渡りみたいな事態に冷や冷やしながら、「すみません。次からは佐野くんには、お仕事に行くように言います」と謝れば、「よろしくねー」と軽く言われた。
「マイキーは俺たちにとっても大切な存在だからさ、独り占めはなしね」
「誠に申し訳ありません」
「じゃあ、今度の餃子よろしくね」